臨床リウマチ,28: 7~15,2016 7 総説 関節エコー画像診断の進歩 Key words: rheumatoid arthritis, musculoskeletal ultrasonography, guidelines for musculoskeletal ultrasonography, classification criteria for rheumatoid arthritis, power doppler imaging 北海道内科リウマチ科病院谷村一秀 要 旨 関節リウマチ (RA) の診療は, 最終目標が関節破壊の進行抑制であることから, 画像検査は非常に重要である. 我が国における関節エコー標準化の現状, 診断と治療における関節エコーの有用性, 他疾患との鑑別画像について紹介する. RA の診断には2010 年 ACR/EULAR から提唱された関節リウマチ分類基準が利用されている. しかし腫脹, 疼痛の評価や滑膜炎の証明などを視覚的に判断する事が可能であれば, その診断精度はますます向上すると思われる. また RA 治療においても,DAS 評価など臨床的評価に加え, 関節エコー検査を用い経時的な所見を得ることで総合的評価も可能となる. 2010 年 1 月, 日本リウマチ学会関節超音波標準化委員会が設立され, 翌年 2 月に 関節エコー撮像法ガイドライン,2014 年 5 月には 関節エコー評価ガイドライン が発刊された. この標準化によって誰もが同じ撮像法で関節や腱, 異常血流など描出する事が可能となった. また関節滑膜炎, 腱鞘滑膜炎などの重症度分類, 撮像時のピットフォール, 機種間格差の是正なども提示された. 従来,RA 診療での画像検査としてはレントゲン,MRI,CT などが用いられていたが, この関節エコーガイドラインが提唱されたことで, さらなる画像ツールとしての位置づけがなされ, 診療に応用することが可能となった. また RA と他疾患との鑑別を簡便に行う上でも, その意義は大きいと考える. はじめに関節リウマチ (RA) の診療においては, 早期に正確な診断を行うこと, 腫脹, 疼痛の改善による ADL の改善, 最終的には関節破壊の進行抑制をターゲットとした患者単位での治療評価が重要である. 現在,RA の診断は, 血液検査所見とともに腫脹, 圧痛罹患数などからなされている. また治療評価も同様に炎症反応や理学所見, さらに主観的評価である VAS による DAS28の経過をもとに, その薬剤の有効性が決められている 1). RA 治療の最終目標が関節破壊の進行抑制であることから, 画像所見の経時的推移を注視することも非常に重要である. しかし画像診断の分野では, 手技, 時間, 機種間格差, コストなど課題が多く, また読影力格差も存在する. 近年, 画像評 Progress in diagnostic imaging for musculoskeletal ultrasonography. Kazuhide Tanimura. Hokkaido Medical Center for Rheumatic Diseases. DOI: 10.14961/cra.28.7
8 Clin Rheumatol 28 7 15 2016 価法のひとつとして 簡便な操作 低コスト 検 診察者による主観的な評価も加わっているため 査時間 さらに関節腫脹や炎症を視覚的に捉える 臨床現場でその実証に差が生じるのも事実であ 事ができる関節エコー検査 特にパワードプラ法 る また疾患からの炎症 変形や作業に付随する PD を用いたエコー検査が施行されるようにな 炎症症状 またその混在への鑑別などで診断を難 り その有効性が指摘されている2-4) 今回 我が しくすることがある 国における関節エコー標準化の現状 診断におけ そこで関節肥厚や滑膜炎の証明など いわゆる る関節エコーの有用性 また生物学的製剤治療に 疼痛や腫脹などを視覚的に判断する事が可能で おける DAS28 評価と関節エコー評価の関係 さ あれば この診断精度はますます向上すると思わ らに最近の話題と他疾患との鑑別画像について れる そこで2010年1月 日本リウマチ学会関節 紹介する 超音波標準化委員会 小池隆夫委員長 が設立さ 関節リウマチ診断の関節エコーの応用 れ 翌年2月に日本独自の 関節エコー撮像法ガ イドライン が策定された6) この標準化によっ 現在 実臨床の場では2010年 ACR/EULAR か て誰もが同じような撮像法で関節や腱 異常血流 ら提唱された関節リウマチ分類基準がその診断 など描出する事が可能となった また同時に滑膜 として利用されている 5) この基準は早期から 所見に対する分類スコア 図1 も提示されたこ RA を分類できること さらにその感度 特異度 とで 関節の理学所見 とくに炎症所見に対する も従来の RA 診断基準に比べて有意なものとさ 共通した判断が可能となり 臨床所見の傍証とな れている しかし炎症反応など血液所見以外 疼 りえる有用性が示された7)8) 痛や腫脹の評価 遷延する滑膜炎の証明など患者 図1 関節エコーによる RA の滑膜所見のスコア化 R-MP2 縦断像
臨床リウマチ,28: 7~15,2016 9 右手造影 MRI 手指関節エコー R-MP1 Gd.2-3 R-MP2 Gd.3-3 MPJ1,3に異常増強効果あり骨髄浮腫, 骨びらん, 腱鞘炎は認めない Gd( グレード ), 滑膜肥厚スコア 滑膜血流シグナルスコア R-PIP2 Gd.2-2 R-MP1 Gd.0-0 初診時 R-PIP3 Gd.2-3 R-MP2 Gd.0-0 R-PIP2 Gd.0-0 投薬後 R-PIP3 Gd.1-1 図 2 MRI 所見, 関節エコー所見と治療による所見の改善 具体的な症例を図 2に提示する.35 歳女性, 数か月前から時々両手指に関節症状を自覚し来院された. 炎症反応は陰性であったが軽度の関節症状とともに血清学的因子は高力価陽性であった ( 分類基準 6 点 ). レントゲン検査では骨びらんは認めなかったが, 関節エコー検査においてグレード2 以上の滑膜の肥厚, また同部位に血流シグナルを確認, さらに造影 MRI 検査でも異常増強効果が確認された. そこで,MTX を投与し, 関節症状とともにエコー所見においても著明な改善が得られた. 関節リウマチ分類基準では6 点であったが炎症反応も陰性で, また臨床的所見にも乏しかったが, 関節エコーおよび MRI によって早期リウマチと診断された症例である. 関節リウマチ活動性評価への関節エコーの応用関節エコー検査では罹患関節やその近傍を観 察することにより, 滑膜肥厚や炎症性の滑膜炎として, 血流シグナル ( 血管新生, 異常血流 ) をリアルタイムに見ることができる.2014 年 5 月には 関節エコー評価ガイドライン が日本リウマチ学会から発刊され, 関節滑膜炎, 腱鞘滑膜炎などの重症度分類, さらに撮像時のピットフォール, 機種間格差の是正なども提示され, 関節エコー検査の課題も徐々に解決されるようになってきた 9). RA 診療では画像検査としてはレントゲン, MRI,CT などが用いられていたが ( 表 1), 関節エコーガイドラインが提唱されたことで, 関節エコー検査で経時的な所見を得ることが可能となり, その治療評価に応用されるようになっている 10-12). 典型的な症例を示す. 高疾患活動性 RA 患者に生物学的製剤を投与, その結果, 次第に臨床症状の改善を示し,DAS28も32 週で臨床的寛解を達成した ( 図 3). 患者の経時的な関節エコ
10 Clin Rheumatol,28: 7~15,2016 ー所見の推移も同様であった ( 図 4). なお我々は患者の経過を追う上で, 関節エコー定量評価として, 独自に作成した Box 法を用いている. これはあらかじめ定めた方形の region of interest (ROI) を, 関節腔内異常血流シグナルが集中した中心部分に位置させ, 両手指 20 関節における各血流ピクセル占有率を計測, その測定値総和を Total vascularity( 以下 T-Vs(%)) として表示する方法である 13). この患者の経時的な T-Vs (%) は DAS28に一致して改善した. なお72 週時点のレントゲン検査でも罹患部に関節破壊の進行は認めなかった. 最近の話題最新のエコー装置には, 従来からのパワードプラ (PD) 法のみならず, 低流速も検出可能となったカラードプラ (CD) 法, 高精細のカラードプラ (ADF) 法, さらに他法により微細で低流速の血流を描出可能にした Superb Micro vascular Imaging (SMI) 法などのソフトが種々搭載され, 画像描出感度の改良とともに微細な異常血流を検出することが可能となっている ( 図 5). すべての画像が手指第 2 指 MCP 関節滑膜炎 ( 背側 / 縦断 ) 像であるが, 現在用いられているエコー装 置の最適条件設定下での各法による特徴が理解いただけると思う. 鑑別診断への応用今や関節エコーは RA の診断や臨床経過を追う上で必要不可欠なツールであることに間違いはないが,RA との鑑別診断にも有用である. 嚢胞性病変と充実性病変の鑑別のみならず, 疾患としての決め手を得ることも可能である. たとえば痛風では時に関節内骨軟骨上や腱, 腱付着部などに尿酸ナトリウム塩結晶沈着を認め, 特に関節周囲の組織に血流シグナルを確認すること, 関節腔内では活動性 RA より比較的軽微な異常血流シグナルを見ることが多い. さらに偽痛風の多くは大腿骨の硝子軟骨内にピロリン酸カルシウム結晶沈着を見る事が特徴的であり ( 図 6), その診断には苦慮しない 14). リウマチ結節とガングリオンは触診や形成部位にて多くは鑑別可能であるが, ガングリオンは関節や腱の近傍に好発する嚢胞性の腫瘤で血流はみられない 15). また, リウマチ結節は皮下の充実性病変で RA の活動性に伴い血流シグナルがみられるという特徴がある ( 図 7). 表 1 RA 診療における画像検査の有用性一覧 超音波 M R I 単純 X 線 CTMPR 3DCT 診断 血流 ( 血管新生 ) 骨髄浮腫 滑液貯留 滑膜肥厚 ( 関節腔開大 ) 軟骨破壊 ( 関節裂隙狭小化 ) 軟部組織観察 ( 腱 靭帯 ) 骨破壊 ( 骨びらん ) 機器 検査コスト 装置コスト 簡便性 操作時間 被爆 ( 放射線 ) なし その他 精度 再現性 技術格差
臨床リウマチ,28: 7~15,2016 11 62 歳女性 StageⅢ DAS 8 PSL 5mg MTX 8mg Bio ESR VAS 80 6 6.10 DAS 疼痛腫脹 VAS ESR 60 4 4.22 4.07 4.06 3.57 good response 40 2.41 2.60 2.31 2 20 0 0W 4W 8W 12W 16W 32W 52W 72W 0 図 3 症例の経過 ( 臨床所見 ) 図 4 症例の経過 ( 関節エコー像 )
12 Clin Rheumatol 28 7 15 2016 図5 各関節エコーソフトによる画像 同一部位 図6 痛風 偽痛風のエコー画像
臨床リウマチ,28: 7~15,2016 13 図 7 リウマチ結節, ガングリオンのエコー画像 おわりに関節症状とともに滑膜炎を呈し, 関節内に異常血流シグナルが検出される疾患や病態は数々存在する. そこで診断に苦慮した場合には関節エコー検査を施行することが有用である. また, 関節エコー法で滑膜炎を捉えたとしても, それが活動性 RA による滑膜炎なのか, 変形後遺症による機械的な炎症なのか, また他疾患によるものかを鑑別することができれば診療上, 非常に有益である. RA の治療経過において, 血流シグナルの持続陽性と関節破壊 ( びらん形成 ) には関連性があり, RA 病態の予後予測にもなり得る事から, 臨床的評価とともにエコー所見を経時的に記録しておく必要がある 16)17). 今後は関節エコー評価関節部位についても焦点を絞り, 検査の簡略化を目的とした検討も必要である 18)19). またこれらの標準化と研修により術者, 施設間格差, プローブの劣化を加えた誤差調整, 画像描出での機種間格差を解消することも課題である. 将来は RA 診断およ び寛解基準への関節エコーの組み入れ, また検査関節標準化の検討とともに, 疾患活動性と画像所見との整合性,RA 予後判定が示されることを期待したい. まとめ RA 診療で関節エコー検査を用いることは (1) 診断では, グレード分類を用いて関節リウマチ分類基準の理学的所見の傍証として利用することが可能である.(2)RA の活動性の評価において DAS28に代表される臨床的評価と異常血流シグナルの経時的測定をもとに総合的に判断することが可能である.(3) 他疾患や合併症の鑑別が, 臨床的所見だけではなく,GS や異常血流シグナルにより可能となるなど, その利点が指摘される. 文献 1)van der Heijde DM, van 't Hof MA, van Riel PL, et al: Judging disease activity in clinical practice in rheumatoid arthritis:
14 Clin Rheumatol,28: 7~15,2016 first step in the development of a disease activity score. Ann Rheum Dis, 49:916-920, 1990. 2)Grassi W, Filippucci E: Is power Doppler sonography the new frontier in therapy monitoring? Clin Exp Rheumatol,21:424-428, 2003. 3)Naredo E, Moller I, Cruz A, et al: Power Doppler ultrasonographic monitoring of response to anti-tumor necrosis factor therapy in patients with rheumatoid arthritis.. Arthritis Rheum, 58:2248-2256, 2008. 4)Fukae, J, Shimizu, M, Tanimura K, et al: Screening for rheumatoid arthritis with finger joint power Doppler ultrasonography: quantification of conventional power Doppler ultrasonographic scoring. Mod Rheumatol, 19:502-506, 2009. 5)Aletaha D, Neogi T, Silman AJ, et al: 2010 rheumatoid arthritis classification criteria: an American College of Rheumatology/European League Against Rheumatism collaborative initiative. Ann Rheum Dis, 69:1580-1588, 2010. 6) 小池隆夫ほか : リウマチ診療のための関節エコー撮像法ガイドライン. 第 1 版.( 日本リウマチ学会関節リウマチ超音波標準化委員会編 ), 株式会社羊土社,2011. 7)Wakefield RJ, Balint PV, Szkudlarek M, et al: Musculoskeletal ultrasound including definitions for ultrasonographic pathology. J Rheumatol, 32:2485, 2005. 8)Szkudlarek M, Court-Payen M, Jacobsen S, et al: Interobserver agreement in ultrasanography of the finger and toe joints in rheumatoid arthritis. Arthritis Rheum, 48:955-962, 2003. 9) 小池隆夫ほか : リウマチ診療のための関節エコー評価ガイドライン滑膜病変アトラス. 第 1 版.( 日本リウマチ学会関節リウマチ超音波標準化小委員会編 ), 株式会社羊土社, 2014. 10) 谷村一秀 :RA 診療における関節エコーの意義 どのような場面で必要か. リウマチ科, 48:337-345,2012. 11)Ostergaard M, Pedersen SJ, Dohn UM: Imaging in rheumatoid arthritis--status and recent advances for magnetic resonance imaging, ultrasonography, computed tomography and conventional radiography.. Best Pract Res Clin Rheumatol, 22:1019-44, 2008. 12)Hetland ML, Ejbjerg BJ, Horslev-Petersen K, et al: MRI bone oedema is the strongest predictor of subsequent radiographic progression in early rheumatoid arthritis. Results from a 2 year randomized controlled trial (CIMESTRA). Ann Rheum Dis, 68:384-390, 2008. 13) 谷村一秀, 小池隆夫 : 超音波検査による関節炎の評価. 関節リウマチ治癒をめざす. 医学のあゆみ,234:48-53,2011. 14) 瀬戸洋平 : 偽痛風. 高尿酸結晶と痛風,19: 1-4,2011. 15) 超音波診断要覧 Ⅵ. 乳房 甲状腺 その他の体表臓器編. ( 東海大学病院超音波検査室編 ),p248-249, 東海大学出版会,2007. 16)Fukae J, Isobe M, Kitano A, et al: Radiographic prognosis of Finger Joint Damage Predicted by Early alteration in synovial vascularity predicts radiographic prognosis of finger joint damage in patients with rheumatoid arthritis: Potential utility of power doppler sonography in clinical practice. Arthritis Care Res, 63:1247-1253, 2011. 17)Fukae J, Isobe M, Kitano A, et al: Structural deterioration of finger joints with ultrasonographic synovitis in rheumatoid arthritis patients with clinical low disease activity.rheumatology (Oxford), 53:1608-1612, 2014. 18)Naredo E, Rodriguez M, Campos C, et al:
臨床リウマチ,28: 7~15,2016 15 Validity, reproducibility, and responsiveness of a twelve-joint simplified power doppler ultrasonographic assessment of joint inflammation in rheumatoid arthritis. Arthritis Rheum, 59:515-522, 2008. 19)Backhaus M, Ohrndorf S, Kellner H, et al: Evaluation of a novel 7-joint ultrasound score in daily rheumatologic practice: A pilot project. Arthritis Care & Research, 61:1194-1201, 2009. ABSTRACT Progress in diagnostic imaging for musculoskeletal ultrasonography Kazuhide Tanimura Hokkaido Medical Center for Rheumatic Diseases Given that the ultimate treatment goal with rheumatoid arthritis (RA) is to inhibit progressive joint damage, imaging is very important. We herein introduce the current situation of standardized ultrasonography of joints in Japan, usefulness of musculoskeletal ultrasonography in the diagnosis and treatment of RA and differential diagnosis of RA using imaging modalities. RA is diagnosed based on the Classification Criteria for Rheumatoid Arthritis advocated by the ACR/EULAR in 2010. If it is possible to evaluate joint swelling and pain and demonstrate the presence of synovitis visually, the diagnostic accuracy can be further improved. Also, it will become able to assess RA comprehensively by considering joint changes over time by musculoskeletal ultrasonography in addition to clinical assessment including DAS. In January 2010, the Japan College of Rheumatology Committee for the Standardization of Musculoskeletal Ultrasonography was established; Guidelines for Imaging Technique of Musculoskeletal Ultrasonography and Guidelines for Evaluation of Musculoskeletal Ultrasonography were published in February 2011 and in May 2014, respectively. This standardization has enabled anybody to obtain images on joints, tendons and abnormal blood flow using the same imaging technique. The Guidelines also provide classification of severity of joint synovitis and vaginal synovitis, pitfalls for capturing images and correction in difference between device models. Conventionally, radiography, MRI and CT scans have been used as imaging modalities for diagnosis of RA. These Guidelines for Musculoskeletal Ultrasonography have positioned these imaging techniques as more advanced imaging tools, which has enabled these techniques to be more frequently and actively applied in clinical practice. It may also be significant in differentiating RA from the other diseases more readily.