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<ハード対策の実態 > また ハード対策についてみると 防災設備として必要性が高いとされている非常用電源 電話不通時の代替通信機能 燃料備蓄が整備されている 道の駅 は 宮城など3 県内 57 駅のうち それぞれ45.6%(26 駅 ) 22.8%(13 駅 ) 17.5%(10 駅 ) といずれも

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スライド 1

< 被害認定フロー ( 地震による被害木造 プレハブ > 第 次調査 ( 外観による判定 一見して住家全部が倒壊 一見して住家の一部の階が全部倒壊 地盤の液状化等により基礎のいずれかの辺が全部破壊 いずれかに いずれにも ( 傾斜による判定 全壊 外壁又は柱の傾斜が/ 以上 ( % 以上 ( 部位

当面の事業概要 < 平成 25 年度 > 実施設計業務委託 < 平成 26 年度 > 市道 1504 号線電線共同溝整備工事 道路改築工事 < 平成 27 年度 > 市道 1504 号線電線共同溝整備工事 市道 1504,1505,1507 号線道路改築工事 < 平成 28 年度 > 市道 1504

激甚災害制度について

<4D F736F F D D91926E95FB82CC8D C982A882AF82E9926E906B92C CE8DF482CC95EF8A8795FB906A816995BD90AC E348C8E816A2E646F6378>

H28秋_24地方税財源

病院等における耐震診断 耐震整備の補助事業 (1) 医療施設運営費等 ( 医療施設耐震化促進事業平成 30 年度予算 13,067 千円 ) 医療施設耐震化促進事業 ( 平成 18 年度 ~) 医療施設の耐震化を促進するため 救命救急センター 病院群輪番制病院 小児救急医療拠点病院等の救急医療等を担

過去に経験のない規模の巨大地震 津波が発生 東日本大震災の概要 死者 行方不明者数 死者 15,355 名 行方不明者 8,281 名 (6 月 4 日現在 警察庁調べ ) 建築物被害 ( 住家 ) 全壊 10 万 9,147 棟 半壊 6 万 9,789 棟 一部破損 31 万 7,710 棟 全

ii 8. 河川法と漁港法との調整に関する協定 ( 抄 ) 運輸省港湾局と農林省水産庁生産部とに関連ある港湾災害復旧事業の処理について 76 第 2 漁港関係災害関連事業 Ⅰ 補助金交付要綱 1. 漁港関係災害関連事業等補助金交付要綱 77 Ⅱ 災害関連漁業集落環境施設復旧事業 1. 災

02【通知案】年管管発 第号(周知・機構宛)

22年5月 目次 .indd

Microsoft Word - 資料2 第二次報告の想定結果(概要)  最終(確定).doc

平成 29 年 12 月 1 日水管理 国土保全局 全国の中小河川の緊急点検の結果を踏まえ 中小河川緊急治水対策プロジェクト をとりまとめました ~ 全国の中小河川で透過型砂防堰堤の整備 河道の掘削 水位計の設置を進めます ~ 全国の中小河川の緊急点検により抽出した箇所において 林野庁とも連携し 中

Microsoft Word - 02.H28秋 重点提言本文【合本】1110.doc

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平成 31 年度 税制改正の概要 平成 30 年 12 月 復興庁

第 1 章実施計画の適用について 1. 実施計画の位置づけ (1) この 南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画 に基づく宮崎県実施計画 ( 以下 実施計画 という ) は 南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法 ( 平成 14 年法律第 92 号 以下 特措法 と

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1 東日本大震災での多くの被害が発生!! 平成 23 年 2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災は 三陸沖を震源としたマグニ チュード 9.0 仙台市内での最大震度 6 強 宮城野区 という巨大な地震でした 東部沿岸地域では 推定 7.1m 仙台港 もの津波により 家屋の浸水やライフラ

福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律 について <1. 特定復興再生拠点区域の復興及び再生を推進するための計画制度の創設 > 従来 帰還困難区域は 将来にわたって居住を制限することを原則とした区域 として設定 平成 29 年 5 月復興庁 地元からの要望や与党からの提言を踏まえ 1 帰還困難区

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事務連絡 平成 29 年 10 月 25 日 建設業団体の長殿 国土交通省土地 建設産業局建設業課長 平成 28 年熊本地震の被災地域での建設工事等における 予定価格の適切な設定等について 公共工事の予定価格の設定については 市場における労務及び資材等の最新の実勢価格を適切に反映させつつ 実際の施工

02一般災害対策編-第3章.indd

事務連絡 平成 29 年 4 月 3 日 各都道府県財政担当課各都道府県市区町村担当課各指定都市財政担当課 御中 総務省自治財政局公営企業課 平成 29 年度における東日本大震災に係る地方公営企業施設の災害復旧事業等に対する地方財政措置等について 東日本大震災に係る災害復旧事業等については 平成 2

災害復旧制度の目的と沿革 目的 自然災害により被災した公共土木施設を迅速 確実に復旧する 対象施設 河川 海岸 砂防設備 林地荒廃防止施設 地すべり防止施設 急傾斜地崩壊防止施設 道路 港湾 漁港 下水道 公園 沿革 古くは明治 14 年より予算補助の形での国庫補助 明治 32 年 災害準備基金特別

を誘発すると共に 家屋等の災害廃棄物とともに港内外水域に漂流 沈没することとなり 航路や泊地等の水域施設が使用不可能な状況となった また 押し波 引き波により 航路や泊地等の水域施設において 洗掘あるいは埋没が発生し 洗掘された箇所では 防波堤の転倒等が誘発され 埋没した箇所では 計画水深の確保のた

数値目標 事業開始前 ( 現時点 ) 平成 28 年度 (1 年目 ) 平成 29 年度 (2 年目 ) 平成 30 年度 (3 年目 ) 港湾取扱貨物量 556 万トン 4 万トン 0 万トン 20 万トン 観光入込客数 2,899.4 万人回 -9.5 万人回 1.9 万人回 1.9 万人回 7

別紙 14 Q A Q A

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3部第 3 部災害復興計画 ( 仮題 ) 第 4 章震災復興マニュアルのしくみ 第 4 章東京都震災復興マニュアルのしくみ 東京都震災復興マニュアル ( 以下 震災復興マニュアル という ) は 都市復興マニュアル ( 平成 9 年 ) と 生活復興マニュアル ( 平成 10 年 ) を統合し 復興

重点項目表紙

<4D F736F F D E835E B82CD BD90AC E8C46967B926E906B82C982E682E98DD08A518CA995918BE082CC8E788B8B939982C982C282A282C EA95948EE688B582A282F089FC92E882B582DC82B582BD

平成 28 年熊本地震における対応 平成 28 年熊本地震 ( 前震 :4/14 本震 :4/16) において 電力 ガス等の分野で供給支障等の被害が発生 関係事業者が広域的な資機材 人員の融通を実施するなど 迅速な復旧に努めた結果 当初の想定よりも 早期の復旧が実現 また 復旧見通しを早い段階で提

Microsoft PowerPoint - 厳原港(ppt) スライド用(最終).pptx

法人会の税制改正に関する提言の主な実現事項 ( 速報版 ) 本年 1 月 29 日に 平成 25 年度税制改正大綱 が閣議決定されました 平成 25 年度税制改正では 成長と富の創出 の実現に向けた税制上の措置が講じられるともに 社会保障と税の一体改革 を着実に実施するため 所得税 資産税についても


NITAS の基本機能 1. 経路探索条件の設定 (1) 交通モードの設定 交通モードの設定 とは どのような交通手段のネットワークを用いて経路探索を行うかを設定するものです NITASの交通モードは 大きく 人流 ( 旅客移動 ) 物流( 貨物移動 ) に分かれ それぞれのネットワークを用いた経路

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資料1 受援計画策定ガイドラインの構成イメージ

第4回 東日本大震災アスベスト対策合同会議

1 首都直下地震の概要想定震度分布 (23 区を中心として震度 6 強の想定 ) 首都直下地震 想定震度分布 出典 : 中央防災会議首都直下地震対策検討ワーキンググループ 首都直下地震の被害想定と対策について ( 最終報告 ) ( 平成 25 年 12 月 ) 2


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これだけは知っておきたい地震保険

( イ ) 震災の発生後の最近 3 か月間の売上高等が震災の影響を受ける直前の同期に比して 15% 以上減少していること ( ロ ) 原則として震災の発生後の最近 1 か月間の売上高等が前年同月に比して 15% 以上減少しており かつ その後 2 か月間を含む 3 か月間の売上高等が前年同期に比して

2 被害量と対策効果 < 死者 負傷者 > 過去の地震を考慮した最大クラス あらゆる可能性を考慮した最大クラス 対策前 対策後 対策前 対策後 死者数約 1,400 人約 100 人約 6,700 人約 1,500 人 重傷者数約 600 人約 400 人約 3,000 人約 1,400 人 軽傷者

~ 二次的な被害を防止する ~ 第 6 節 1 図 御嶽山における降灰後の土石流に関するシミュレーション計算結果 平成 26 年 9 月の御嶽山噴火後 土砂災害防止法に基づく緊急調査が国土交通省により実施され 降灰後の土石流に関するシミュレーション結果が公表された これにより関係市町村は

東日本大震災に係る災害等廃棄物処理事業の実地調査について

宅地の補修工事に関する費用の貸付 被害建物に関する相談窓口 応急仮設住宅の提供 被災者生活再建支援金 住宅の応急修理制度 住宅の補修工事に関する費用の貸付 ( り災証明書の提出が必要です ) 被災家屋等

東日本大震災 (H ) 地震時の情報収集や提供に関する課題 国 地方公共団体などが連携した被災者や物資輸送者への交通関係情報の提供 大震災直後は 各管理者から別々に通行止め情報等が提供されたため 被災地までの輸送ルートの選定が困難な状況 国が集約して提供を始めたのは10 日以上過ぎた3/

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緊急緊急消防援助隊について消防援助隊の概要 目的 地震等の大規模 特殊災害発生時における人命救助活動等を効果的かつ迅速に実施する消防の援助体制を国として確保 創設の経緯等 阪神 淡路大震災での教訓を踏まえ 平成 7 年に創設 平成 15 年 6 月消防組織法の改正により法制化 平成 16 年 4 月

規制 制度改革に関する閣議決定事項に係るフォローアップ調査の結果 ( 抜粋 ) 規制 制度改革に係る追加方針 ( 抜粋 ) 平成 23 年 7 月 22 日閣議決定 番号 規制 制度改革に係る追加方針 ( 平成 23 年 7 月 22 日閣議決定 ) における決定内容 規制 制度改革事項 規制 制度

Ⅱ 取組み強化のためのアンケート調査等の実施 (1) 建設技能労働者の賃金水準の実態調査国土交通省から依頼を受けて都道府県建設業協会 ( 被災 3 県及びその周辺の7 県を除く ) に対し調査を四半期ごとに実施 (2) 適切な賃金水準の確保等の取組み状況のアンケート調査国は 平成 25 年度公共工事

第3 復興整備計画 参考様式集

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資料1 第3回災害救助に関する実務検討会における意見に対する回答

3. 水供給システム ( 図 7~ 図 8) 3.1 根拠データ 断水戸数: 厚生労働省 平成 年 (2 年 ) 東北地方太平洋沖地震の被害状況及び対応について の中に記載された ( 別紙 ) 水道における被害情報 の市町村別集計データおよび都県別集計データ 2/3/ :3( 報番号不明 水道産業新

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災害公営住宅藤が原アパート入居者募集 ( 随時募集 ) 災害公営住宅入居者募集について 県営藤が原アパート5 号棟は, 東日本大震災により住宅を失った方のための公営住宅 ( 賃貸住宅 ) です 現在, 入居者を随時募集しています 申込書類を提出された方を先着順で受付しておりますので, どうぞお気軽に

2 政策体系における政策目的の位置付け 3 達成目標及び測定指標 4-5 福島 震災復興 租税特別措置等により達成しようとする目標 政策の達成目標と同じ 租税特別措置等による達成目標に係る測定指標 仮設施設の整備数 8 有効性等 政策目的に対する租税特別措置等の達成目標実現による寄与 東日本大震災で

子宮頸がん予防措置の実施の推進に関する法律案要綱

News Release 2014 年 3 月 24 日 伊丹市と新関西国際空港株式会社が 伊丹市域におけるまちづくりの推進 について合意 伊丹市と新関西国際空港株式会社は 伊丹市域の生活環境の改善 地域コミュニティの再生等を図るためのまちづくりを連携して推進するため 2014 年 3 月 24 日

羽村市地域防災計画

一防災 減災等に資する国土強靱化基本法案目次第一章総則 第一条 第七条 第二章基本方針等 第八条 第九条 第三章国土強靱化基本計画等 第十条 第十四条 第四章国土強靱化推進本部 第十五条 第二十五条 第五章雑則 第二十六条 第二十八条 附則第一章総則 目的 第一条この法律は 国民生活及び国民経済に甚

平成24年

東北地方太平洋沖地震への 気象庁の対応について ( 報告 ) 気象業務の評価に関する懇談会 平成 23 年 5 月 31 日 気象庁 1

Microsoft PowerPoint - 資料2 国交省提出資料

Taro 地震通達.jtd

基本方針

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資料 4 平成 29 年 1 月 27 日記者会見 土地区画整理事業に関する土地利活用意向調査の実施結果について 復興推進本部都市整備推進室 1 土地利活用意向調査の目的 市内 4 地区の土地区画整理事業は 平成 29 年度末を目標に全ての宅地引渡しが完了できるよう鋭意工事を進めております 地権者へ

<4D F736F F F696E74202D E6C8D918D8793AF95F18D908F C4816A8A C55F F4390B394C52E707074>

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地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(第7次地方分権一括法)の概要

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事業計画 ( 岩手県久慈市 ) 1. 海岸対策 1 海岸の状況市内の地区海岸数被災した地区海岸数応急対策を実施した地区海岸数本復旧を実施する地区海岸数 7 地区海岸 6 地区海岸 2 地区海岸 6 地区海岸 2 堤防高 9 月 26 日及び10 月 20 日に堤防高を公表 久慈湾 :T.P. 8.0

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第 5 部 南海トラフ地震防災対策推進計画

Microsoft PowerPoint - 参考資料 各種情報掲載HPの情報共有

- 1 - 東日本大震災に対処するための土地改良法の特例に関する法律(趣旨)第一条この法律は 東日本大震災に対処するため 国又は都道府県が行う土地改良事業等について 土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)の特例を定めるものとする (定義)第二条この法律において 除塩 とは 平成二十三年三月十一日

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る 1 減価補償金を交付すべきこととなる被災市街地復興土地区画整理事業において 公共施設の整備改善事業の用に供するために土地等が地方公共団体等に買い取られる場合 2 第二種市街地再開発事業の用に供するために土地等が地方公共団体等に買い取られる場合 (3) 特定住宅被災市町村の区域内にある土地等が 国

参考 生活支援制度 と り災証明書に記載された住家の被害程度 の対応表 ( 目安 ) この表は 生活支援制度 と り災証明書に記載された住家の被害程度 との対応について 目安として作成したものです 各支援制度の詳細な適用条件については 3 生活支援制度一覧 (P.5~) に記載している各制度の お問

共同住宅の空き家について分析-平成25年住宅・土地統計調査(速報集計結果)からの推計-

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九州における 道の駅 に関する調査 - 災害時の避難者への対応を中心としてー ( 計画概要 ) 調査の背景等 道の駅 は 平成 16 年 10 月の新潟県中越地震 23 年 3 月の東日本大震災において 被災者の避難場所 被災情報等の発信や被災地救援のための様々な支援の拠点として活用されたことなどか

の復旧状況に関する長期的な見通しを可能な限り明らかにしながら 復旧の段階に 応じた役割の分析を行う 5) 交通事業者ヒアリング調査沿線地域に関係する交通事業者 ( 鉄道事業者 2 社 バス事業者 2 社 タクシー事業者 2 社その他 ) に聞き取り調査を行い 定性的な利用特性や地域の公共交通の問題点

表 4(A) 交通量整理表 ( 交通量推定不能区間を含む ) 北海道 ( 札幌市を除く ) 高速自動車国道 DID( 商業地域 ) DID( 商業地域を除く )

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9 箇所名 江戸川区 -1 都道府県東京都 市区町村江戸川区 地区 清新町, 臨海町 2/6 発生面積 中 地形分類 盛土地 液状化発生履歴 近傍では1855 安政江戸地震 1894 東京湾北部地震 1923 大正関東地震の際に履歴あり 土地改変履歴 国道 367 号より北側は昭和 46~5 年 南

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東日本大震災による被害状況及び復旧 復興に向けた課題 ~ 国土交通分野を中心に ~ ひろせ りようた 国土交通委員会調査室 廣瀬 亮太 平成 23 年 3 月 11 日に発生した東北地方太平洋沖地震は マグニチュード9.0の地震とそれに伴う巨大な津波によって 東北地方太平洋側を中心に東日本全域の広範な地域にわたって甚大な被害を及ぼした この震災により 被災地の交通インフラが広い範囲で寸断されたため 救援物資の輸送とそのための輸送路の確保が喫緊の課題となった また 津波によって多くの住宅が押し流されたため 多数の住民が避難所生活を余儀なくされるとともに 避難所生活が長期にわたっていることから 住宅の確保が重要な課題となっている さらには 原発事故に伴う風評被害や自粛ムードの広がりによる観光の低迷は 被災地のみならず我が国経済に暗い影を落としている 本稿では 国土交通分野のうち 特に 道路 鉄道 空港 港湾 下水道 住宅 観光の各分野に焦点を絞って 東日本大震災による被害状況 政府の対応 復旧 復興に向けた今後の課題 国会における議論等を整理する 1. 道路図表 1 くしの歯 作戦の概要高速道路は 東北地方から関東地方にわたる広い範囲において 路面亀裂 段差等の損傷が各所で見られ 東北自動車道 常磐自動車道を始めとする15 路線が通行止めとなった また 一般国道では 津波により太平洋沿岸を走る国道 45 号線において5 橋梁の橋げたが流出するなど69 区間が通行止めとなった 国土交通省は 緊急輸送道路を確保するため 第 1ステップとして東北自動車道 国道 4 号線の縦軸を確保し 第 2ステップとして 三陸地区へのアクセスに必要となる横軸を確保 第 3ステップとして沿岸部を走る直轄国道の啓開を行う くしの歯 作戦 ( 図表 1 参照 ) を実施した その結果 震災翌日の3 月 12 日には東北自動車道 常磐自動車道の緊急車両の通行が可能 となり 15 日には東西方向の全 15 ルートが ( 出所 ) 国土交通省資料 立法と調査 2011.6 立法と調査 No.317( 参議院事務局企画調整室編集 発行 2011.6 No.317 ) 149

確保されるなど ひとまず車両の通行が可能な状態となった その後 復旧作業が進められ 18 日には国道 4 号線が 24 日には東北自動車道が 4 月 1 日には常磐自動車道 ( 原発規制区間を除く ) が それぞれ全線で一般車両が通行可能となった また 生活道路である県道等では震災後 536 区間で通行止めとなり復旧作業が進められてきたが いまだに161 区間 (5 月 16 日現在 ) が通行止めとなっており 1 日も早い全区間の復旧が望まれる 今回の震災では 三陸地方の沿岸部を走る国道 45 号線が津波によって通行不能になるなどの大きな被害を受けたが 国道 45 号線に並行する三陸自動車道は津波浸水地域を回避するルートであったことから損傷がほとんど発生せず 迂回道路として緊急物資輸送や救急搬送に重要な役割を果たした このことから 複数の道路網を整備することによって災害に強い道路ネットワークを構築する重要性が指摘されている 1 また 津波による被害に対して 盛土構造だった仙台東部道路が防波堤としての役割を果たし 道路の内陸側の浸水が少なかったことに着目して 宮城県は 復興構想会議において 沿岸部の道路や鉄道を復旧させる際に 盛土構造にして防災 減災機能を保有させる案を提言している 2 被災地の復興のために東北自動車道の無料化を求める要望などもなされているが 3 それには年間で1,600 億円が必要とされており 4 その財源 無料化による効果 影響等について 検証する必要があるだろう なお 去る5 月 2 日に成立した平成 23 年度補正予算 ( 以下 便宜上 平成 23 年度第一次補正予算 という ) では 災害復旧事業費として 国土交通省所管の公共土木施設等 ( 河川 道路 港湾 下水道等 ) 分 7,751 億円が 有料道路分 492 億円が計上されている 2. 鉄道 図表 2 東北新幹線運転再開の経過 東北新幹線は 震災によって 電化柱 架線 区間 運転再開日 高架橋 軌道等 約 1,200か所の被害が発生し さ 東京 ~ 那須塩原 3/15 らに4 月 7 日に宮城県沖で発生した余震により新 那須塩原 ~ 福島 4/12 たに約 550か所の損害が発生した このため 震災 福島 ~ 仙台 4/25 直後は全線で運転が見合わされていたが 3 月 15 仙台 ~ 一ノ関 4/29 日には東京 那須塩原間で運転が再開され 4 月 29 日 一ノ関 ~ 盛岡 4/23 には全線で運転が再開された 盛岡 ~ 新青森 4/13 東北新幹線は 平成 22 年 12 月に新青森まで延伸 ( 出所 ) 国土交通省資料より作成 され 本年 3 月からは東京 新青森間を最短で3 時間 10 分で結ぶ はやぶさ の運転が開始されるなど 観光振興等 地域への経済効果が期待されていた中での今回の震災の発生 1 第 177 回国会参議院国土交通委員会会議録第 3 号 7 頁 ( 平 23.3.25) 2 朝日新聞 ( 平 23.4.24) 第 2 回東日本大震災復興構想会議 ( 平 23.4.23) 村井委員発表資料 3 4 第 177 回国会参議院国土交通委員会会議録第 8 号 3 頁 ( 平 23.4.19) 第 177 回国会参議院財政金融委員会 厚生労働委員会 国土交通委員会連合審査会会議録第 1 号 7 頁 ( 平 23. 5.1) 150

となったことは残念なことであるが 迅速な復旧が成し遂げられたことで 今後の被災地の復興に向けた原動力となることが期待される 一方 新幹線以外の鉄道の状況については 5 月 16 日現在で 旅客鉄道の5 事業者 12 路線で全線又は一部区間が不通の状態が続いており 貨物専用の路線では5 事業者 8 路線で運転を休止している このような路線の中には 沿線自治体が津波によって大きな被害を受けたため 復旧を今後の被災地のまちづくりと一体的に進める必要がある路線や 鉄道事業者の経営体力を上回る被害が発生した路線などもあり 依然として運転再開のめどが立たないものもある 鉄道の災害復旧事業は 鉄道軌道整備法の規定により 一定の条件の下で 国 地方公共団体がそれぞれ4 分の1 以内を負担することとし 残りは事業者が負担することとされているが この制度は通常の規模の災害を想定した制度であり 今回のような想定外の大規模な災害に対しては必ずしも十分な補助とは言えない 例えば 今回 震災によって大きな被害を受けた三陸鉄道では 復旧に要する費用は最大で180 億円に上ると見られているが その2 分の1に当たる90 億円という金額は 同社のような経営状態の厳しい地方鉄道会社が負担できる金額ではない 震災からの復旧 復興において 地方の生活路線である鉄道の果たす役割を踏まえ 補助制度の見直しが求められている 5 3. 空港空港においては 花巻空港 茨城空港のターミナルビルの天井が落下する等の被害があったが 仙台空港では 津波によって空港全体が冠水して使用不可能な状態に陥った その後 在日アメリカ軍及び自衛隊による土砂 がれきの除去作業 航空保安設備の復旧作業が行われた結果 3 月 16 日には1,500メートルの滑走路で救援機のみの暫定的な使用が開始された 29 日からは本来の3,000メートルでの使用が可能となり 4 月 13 日からは 民間機の就航が再開されている 仙台空港の運用が再開されるまでの間 山形空港 福島空港 花巻空港では 24 時間運用がなされるとともに 臨時便が就航するなど 救援物資輸送 旅客輸送に重要な役割を果たした 従来 地方空港は その経済性がクローズアップされてきたが このような 災害時に地方空港が果たす主要空港の代替機能については 今後 議論していく必要があるであろう 仙台空港における災害復旧事業は 空港法の規定により 滑走路等又は政令で定める空港用地につき 国がその費用の80% を 都道府県が20% をそれぞれ負担することとされているが 去る5 月 2 日に成立した 東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律 によって 仙台空港の滑走路については 国の負担率が85% にかさ上げされることとなった また 災害復旧事業の対象に含まれないターミナルビルの復旧についても 同法の成立により ターミナルビルの運営会社に対して無利子融資を実施する制度が創設された これらの支援制度を活用し 仙台空港及びターミナルビルの早期の全面 5 岩手日報 ( 平 23.4.28) 毎日新聞 夕刊( 平 23.4.2) 151

復旧が図られることが望まれる なお 平成 23 年度第一次補正予算において 空港の災害復旧事業費として186 億円が ターミナルビルの運営会社に対して無利子融資を行うための費用として51 億円が計上されている 4. 港湾港湾は 津波によって岸壁 荷役機械 防波堤等に大きな被害を受け 震災直後には青森港以外の被災地の港湾機能が停止した 国土交通省は 初動対応として 被災港湾における航路啓開 岸壁の応急復旧 港湾運送事業者による荷役体制の構築を行い 船舶による被災地への緊急物資輸送を可能とした その結果 5 月 16 日現在で 暫定利用可能岸壁数 ( 水深 4.5m 以上の深さがある公共岸壁 ) は373バース中 142バース (38%) となっている ただし 施設の大部分は更なる復旧工事が必要で 喫水制限や上載荷重制限がかかっている 港湾施設の復旧に当たっては 被害状況を正確に把握し 構造物の効果を検証した上で 復旧の水準を決定する必要がある 例えば 各地の港湾では防波堤が大きな被害を受け 釜石港でも湾口に位置する防波堤が破壊された これは耐震設計を採用した世界最大水深 (63m) の防波堤で 約 30 年の歳月と総事業費 1,200 億円以上を費やして建造されたものである 独立行政法人港湾空港技術研究所の検証では この防波堤によって津波高が4 割削減され 津波高が市街地を守る防潮堤 ( 高さ4.0m) を超えるまでの時間が6 分間遅らせられたなど 一定の効果があったことが示されているが 同規模の施設を復旧することは 財政面やそれに要する時間を考慮すると容易ではない 一方で 今回の津波の規模を踏まえて 計画諸元の見直しが求められており 原形復旧するだけでは不十分な港湾施設もあると思われる 被災地のまちづくりや産業復興とも連携しながら復旧の順位や水準を決定し 各港湾において関係者間の合意形成を図りつつ 地域の実情に応じた復旧 復興の方針を策定することが課題となる また その一方で 台風や高潮が多く発生する時期が迫っていることから それに備えた応急対策は喫緊の課題である 5. 下水道下水道施設は 津波によって岩手県 宮城県 福島県及び茨城県の沿岸部に立地する下水処理場 19か所が被害を受け 主に機械 電気設備等の損壊により機能が停止している これらの処理場のうち 汚水流入のある10か所においては 仮設の沈殿池を設置して その上澄みを消毒処理する簡易処理等により応急対応を実施している また 地震や液状化現象によって管きょにも大きな被害が発生し 135 市町村等の下水管 66,013kmのうち 946 kmで被災しており ( 目視調査ベース )(5 月 16 日現在 ) いまだに被害の全体像を把握できていないものの 被害総額は少なくとも数千億円規模と見られている 6 管きょの破損 6 朝日新聞 ( 平 23.4.3) 152

箇所については仮配管や仮設ポンプによって応急対応を行っている 国土交通省は 社団法人日本下水道協会と共同で学識者等から成る 下水道地震 津波対策技術検討委員会 を設置して 下水道施設の復旧にあたっての技術的緊急提言 を取りまとめ 4 月 15 日付けで被災自治体に通知を行っている 緊急提言では 公衆衛生の確保のため 下水道管の総点検を行って未処理下水がマンホールから溢水する事態を早期に解消させる取組や まもなく迎える出水期に向けた緊急浸水対策として被災した雨水きょの流下能力の回復を図る取組の必要性等が指摘されている また 本復旧の完了までに相当程度の時間を要することが予想されることを踏まえ 地震発生直後の 緊急措置 公衆衛生の確保や浸水被害軽減に迅速に対応するための 応急復旧 従前の機能を回復させ 再度災害を防止することを目的とした 本復旧 の3 段階での対応方針が示されており 本提言も踏まえて 下水道の速やかな復旧が望まれる また 膨大な下水道施設の耐震化が未了となっている現状を一刻も早く改善するとともに 液状化被害への対応の検討が求められる 6. 住宅 (1) 応急仮設住宅の建設 今回の震災では 地震による建物の倒壊に加えて津波による被害が甚大で 多くの被災 者が住居を失ったため 住宅対策が最大の課題となっている 住宅対策の中心となるのが応急仮設住宅の建設である 応急仮設住宅は 災害救助法に 基づいて都道府県が建設することとされており その費用の一部は国庫において負担され る 設置期間は原則として完成から2 年とさ 図表 3 応急仮設住宅建設の進ちょく状況 れている 着工予定 着工済み 合計 被災各県において 当面必要な応急仮設住宅の戸数として 岩手県が14,000 戸 宮 都道府県名着工済みのうち戸数戸数完成戸数 戸数 城県が30,000 戸 福島県が24,000 戸 栃木 岩手県 1,315 戸 9,148 戸 2,977 戸 10,463 戸 県が20 戸 千葉県が230 戸 長野県が55 戸 宮城県 - 12,730 戸 5,802 戸 12,730 戸 ( 合計 68,305 戸 ) という数字が公表されている (5 月 16 日現在 ) 福島県 135 戸 9,556 戸 2,227 戸 9,691 戸 政府では 大畠国土交通大臣が社団法人茨城県 - 10 戸 10 戸 10 戸 住宅生産団体連合会に対して 3 月 14 日 に おおむね2か月間で約 3 万戸を供給することを 更に4 月 5 日には その後の3 千葉県 - 230 戸 80 戸 230 戸 か月間で3 万戸程度の供給が行えるように 栃木県 - 20 戸 20 戸 20 戸 要請している 5 月 16 日現在で 応急仮設住宅建設の進 長野県 - 55 戸 5 戸 55 戸 着工予定及びちょく状況は図表 3のようになっている着工済み合計 1,450 戸 31,749 戸 11,121 戸 33,199 戸 が 今後の応急仮設住宅建設の目標とし ( 出所 ) 国土交通省資料より作成 153

て 国土交通大臣は 5 月末までに 3 万戸という目標を掲げ 7 菅総理大臣はお盆までに希 望するすべての人が応急仮設住宅に入居することを可能にすることを表明している 8 応急仮設住宅の建設に当たって最大の課題となっているのが用地の確保である 今回 津波の被害を受けている東北地方沿岸部には平地が少ない上に 津波の再来の危険性がある場所に応急仮設住宅の建設を行うことは適当ではないことから 用地の確保が難航している 国土交通省では被災 3 県で約 51,500 戸分の用地の確保にめどが立ったとしているが (4 月 25 日現在 ) 確保した用地の中には 応急仮設住宅の建設を要請している市町村以外の市町村によって提供された用地も含まれており 地元に住み続けることを望む被災者のニ 9 10 ーズに必ずしも応えられていない状況にある 民有地の活用や農地の転用等の取組や2 階建ての仮設住宅による効率的な土地利用を進めるとともに 公営住宅やUR 賃貸住宅の活用 民間賃貸住宅を借り上げて応急仮設住宅として活用するなど あらゆる手段を講じて住宅の確保を進めることが求められるところである なお 応急仮設住宅の供与のための費用として平成 23 年度第一次補正予算には3,626 億円が計上され 予備費と合わせて 10 万戸超の仮設住宅の建設 賃貸等のための予算が措置されている (2) 住宅再建の支援被災者の住宅再建支援も重要な課題である 現行の被災者生活再建支援制度は 都道府県が拠出する基金及び国がそれぞれ2 分の1を負担して 自然災害によって生活基盤に著しい被害を受けた被災者に対して世帯当たり最大 300 万円の被災者生活再建支援金の交付を行うものである 現在の基金の残高は約 540 億円であるが 今回の震災による住宅被害は なお全容が判明しておらず 5 月 16 日現在で全半壊合わせて12 万 6,000 棟に達していることを考慮すると 基金が不足することは明らかであり 被災者生活再建支援金の財源をどのように確保するのか 制度の見直しも含めた議論が必要となるであろう なお 平成 23 年度第一次補正予算において 被災者生活再建支援金の基礎支援金 ( 住宅の被害程度に応じて支給する支援金 ( 上限 100 万円 )) の早期支給に向けて520 億円が計上されている また 住宅金融支援機構が行う災害復興住宅融資等の制度の拡充に充てるための費用として560 億円が計上されており これらの支援を活用して被災者の住宅再建が進められることが望まれる また 今回の震災では千葉県 茨城県 埼玉県等で 住宅地における大規模な液状化現 7 第 177 回国会衆議院国土交通委員会議録第 9 号 7 頁 ( 平 23.4.20) 8 9 第 177 回国会衆議院予算委員会議録第 19 号 ( 平 23.4.26) 東日本大震災に係る応急仮設住宅について ( 平成 23 年 4 月 15 日付け厚生労働省社会 援護局総務課長通 知 ) 東日本大震災に係る災害救助法の弾力的運用について ( その 7) ( 平成 23 年 5 月 6 日付け厚生労働省社 会 援護局総務課長通知 ) 10 東日本大震災に伴う応急仮設住宅の建設用地選定に係る農地情報の提供について ( 協力依頼 ) ( 平成 23 年 4 月 15 日付け農林水産省農村振興局長通知 ) 154

象が発生した 住家の被害認定は 国が技術的助言として示した 災害に係る住家の被害認定基準運用指針 等に基づいて市町村が被害程度を認定することとされている 従来の指針では 外観の判定で一見して住家全部が倒壊している場合 一見して住家の一部の階が全部倒壊している場合 基礎のいずれかの辺が液状化で全部破壊されていた場合 傾斜による認定で四隅の外壁又は柱の傾斜の平均が20 分の1 以上の場合 部位による認定で損害割合が50% 以上の場合が全壊とされ それ以外の場合は 各部位の損害程度によって大規模半壊 半壊 一部損壊等の判定がなされていた しかし 液状化による被害では 柱と基礎以外に損害が見られない場合や基礎等が全体的に沈下して傾きを生じない場合などがあり 実際の被害状況よりも軽微な被害と認定されるケースが多いことが問題となった そのため 政府は 5 月 2 日 指針の見直しを行っている 見直された基準では 新たに四隅の傾斜の平均が60 分の1 以上 20 分の1 未満の場合を大規模半壊 100 分の1 以上 60 分の1 未満の場合を半壊と認定するとともに 基礎等が地盤面下に潜り込んだ場合も 基礎の天端下 25cmまでの場合は半壊 床までの場合は大規模半壊 床上 1mまで潜り込んだ場合は全壊と認定することとされた ( 図表 4 参照 ) 図表 4 地盤に係る住家被害認定の運用見直しの概要 見直しの主なポイント 1. 傾斜による判定の追加 ( 基礎と柱が一体的に傾く不同沈下の場合 ) 四隅の傾斜の平均 被害の程度 20 分の 1 以上全壊 ( 従来どおり ) 60 分の 1 以上 20 分の 1 未満大規模半壊 ( 新規 ) 100 分の 1 以上 60 分の 1 未満半壊 ( 新規 ) 2. 住家の基礎等の潜り込みによる判定の追加 ( 新規 ) 潜り込み量床上 1mまで床まで基礎の天端下 25cmまで 被害の程度全壊大規模半壊半壊 ( 出所 ) 内閣府資料より作成 この新たな措置によって 液状化による被害を受けた被災者の速やかな住宅再建支援が行われることが望まれる また 液状化現象の原因分析を進め 液状化対策を強化することが課題となっている 155

7. 観光今回の震災では 地震や津波による物理的な被害に加えて 原発事故による風評被害や自粛ムードの広がりによって被災地以外においても観光産業や飲食産業が大きな打撃を受けている 国際観光では 3 月の訪日外国人旅行者数は 352,800 人で 前年同月比でマイナス50.3% の大幅な減少となった また 開催が予定されていた国際会議のキャンセルが相次いでいる 11 風評被害を防止するためにも情報公開を徹底することが求められるところである また 国内観光においても ホテル 旅館や観光地においてキャンセルが相次いでおり その数は少なくとも3 月 11 日から4 月 8 日までの間に 56 万人分以上 ( 東北 関東地方で 39 万人分以上 それ以外の地域で17 万人分以上 ) とされているが 12 実際は被害状況が十分に把握できていない状況であり 被害は更に大きいものと考えられる このような中で 資金繰りが悪化したホテル 旅館等が倒産する事態も見られており つなぎ資金の融資等の資金面での支援の必要性が指摘されている 13 なお 平成 23 年度第一次補正予算では中小企業等の事業再建及び経営安定のための融資のための費用として 5,100 億円が計上されている 当面の資金繰りとともに ホテル 旅館等の需要の減少による稼働率の低下も深刻な問題である 今回の震災では 必要に応じて民間の宿泊施設や旅館等を借り上げて避難所として活用することが認められているほか 14 避難所の断水等により入浴の機会の確保が困難な場合には 近隣の入浴施設の利用券や送迎バスの借上げ費等についても災害救助費等負担金として国庫負担の対象とされている 15 これらの制度を積極的に活用することで 観光客の減少に苦しむ被災地やその近隣のホテル 旅館等が収入を得ることができるようにする取組が求められるところである 被災地の復旧 復興には地元経済の振興が不可欠である そのためにも観光産業に期待される役割は大きい 震災以来 被災地に向けて多くの救援物資や義援金が寄せられ ボランティア活動も盛んに行われているが 観光によって被災地の経済が活性化して その結果 雇用が生まれることを踏まえると 観光もまた重要な被災地支援の取組である 風評被害や自粛ムードを乗り越えて 被災地が再びにぎわいを取り戻すことを期待したい ( 内線 3098) 11 12 13 第 177 回国会参議院災害対策特別委員会会議録第 5 号 10 頁 ( 平 23.4.20) 第 177 回国会参議院国土交通委員会会議録第 6 号 7 頁 ( 平 23.4.12) 旬刊旅行新聞 ( 平 23.4.21) 第 177 回国会参議院国土交通委員会会議録第 6 号 7 頁 ( 平 23.4.12) 14 平成 23 年 (2011 年 ) 東北地方太平洋沖地震に係る災害救助法の弾力的運用について ( 平成 23 年 3 月 19 日付 け厚生労働省社会 援護局総務課長通知 ) 15 東日本大震災に係る災害救助法の弾力的運用について ( その 6) ( 平成 23 年 4 月 27 日付け厚生労働省社 会 援護局総務課長通知 ) 156