理科第 3 学年熊野町立熊野東中学校指導者磯方源太 単元名 酸とアルカリ 本単元で育成する資質 能力 高い志, 先を見通す力, チャレンジ精神, 他者理解 単元について 本単元は, 中学校学習指導要領の理科第 1 分野の内容 (6) 化学変化とイオンイ酸 アルカリとイオン を受けて設定した ここでは, 酸とアルカリの性質を調べる実験や中和反応の実験を行い, 結果を分析して解釈し, 酸とアルカリの特性や中和反応をイオンのモデルと関連付けて理解させることが主なねらいである この学習に関連する内容としては, 小学校では, 水溶液には酸性, アルカリ性, 中性のものがあること, 金属を変化させる水溶液があることについて学習している また, 中学校では, 第 1 学年の (2) 身の周りの物質 において, 水溶液では溶質が均一に分散していること, 溶質は取り出すことができること, 第 2 学年の (4) 化学変化と原子 分子 において, 化学変化及び化学変化における物質の質量の規則性について, 学習している ここで扱う事象は日常生活や社会生活でも見られるものである それに気付かせ, 物質や化学変化に対する興味関心を高めるとともに, 身の回りの物質や事象を新たな見方や考え方でとらえさせることができる単元である 生徒の実態 本学年の生徒は, 平成 28 年度広島県 基礎 基本 定着状況調査のタイプⅡの 実験結果を分析 解釈し, 事象を推測する 問題における通過率は 29.5% と低く, 実験結果を分析 解釈する力に課題がある これまでの授業では, 結果 と 結果からいえること を区別してまとめるワークシートを用いて, 生徒の思考を整理させ結果を分析 解釈するための工夫を行ってきた しかし, 事象を推測する力については生徒が観察 実験を行うことの目的意識をもてておらず, 何のために観察 実験を行うのか理解できていないため事象の推測を行えない生徒が多い そこで, 観察 実験に目的意識がもてるような事象提示を行い, 事象提示から生徒の予想や仮設につながる視点がもてるような働きかけを行っていきたい 単元の指導 生徒に自分の言葉で説明させるために, 単元の終わりにイオン式やモデル図などを根拠に示しながら説明させるパフォーマンス課題に取り組ませる 具体的には, 生徒を薬局の販売員として, 胃薬が胃の痛みや胸やけに効果がある理由をお客さんが納得できるように, イオン式やモデル図など学習したことを用い, 根拠に示しながら説明させる このような課題に取り組ませるための工夫として, 単元を通して, 酸とアルカリの性質や中和反応での塩の発生を粒子のモデル図で表して説明したりするよう, 必然性が生まれるような指導を行う そのために, 単元の始めに, 日本人は胃の病気が多いことから胃の病気を抑えてくれる胃薬について調べさせる また, 胃の中の状態を知るために胃液の成分も調べさせる 胃の痛みや胸やけは胃酸の異常分泌による胃酸過多であることを知り, さらに, 胃薬と胃液が混ざるとどのような現象が起こるのかを, 胃薬を溶かした水溶液と塩酸を薄めて作成した人工胃酸で演示実験を行う その現象から, この課題を解理科 -1-
決するための学習の見通しをもたせ, 単元を貫く課題を意識させ, 目的意識をもたせた授業を展開していきたい 本単元では, 理科での学習内容が日常生活で見られる事象に関連することに気付かせたい 日常生活の事象から酸とアルカリの性質を粒子で考え中和反応をイオンのモデルと関連付けて理解させたい それを通して, 物質は粒子でできており結合性や保存性があることを学ばせたい そこで, 観察 実験に目的意識がもてるような事象提示を行い, 事象提示から生徒の予想や仮設につながる視点がもてるような働きかけを行っていきたい 単元の目標 酸とアルカリの性質を調べる実験を行い, 酸とアルカリのそれぞれの特性が水素イオンと水酸化物イオンによることを理解する 学習指導要領の内容項目(6) イ ( ア ) 中和反応の実験を行い, 酸とアルカリを混ぜると水と塩が生成することを理解する 学習指導要領の内容項目(6) イ ( イ ) 単元の評価規準 ア自然事象への関心 意欲 態度 1 胃の痛みや胸やけの原因や, それらに効果がある胃薬の成分を調べる方法を考えようとしている 2 身の回りの水溶液のpを, 興味を持って調べようとしている 3 胃薬の作用の説明のためにイオン式やモデル図を使って考え, 課題を解決しようとしている イ科学的な思考 表現 1 酸性とアルカリ性の水溶液の性質の共通点を見出し, 目的意識をもって観察 実験などを行い, 事象や結果を分析して解釈し, 自らの考えを表現している 2 酸性とアルカリ性の水溶液に共通なイオンである水素イオンと水酸化物イオンを見出し, 目的意識をもって観察 実験などを行い, 事象や結果を分析して解釈し, 自らの考えを表現している 3 水素イオンと水酸化物イオンが結びついて塩と水ができ, 互いの性質を打ち消し合う中和の反応が起きることを見出し, 目的意識をもって観察 実験などを行い, 事象や結果を分析して解釈し, 自らの考えを表現している 4 酸性の水溶液とアルカリ性の水溶液を混ぜ 理科 -2- ウ観察 実験の技能 1 酸性とアルカリ性のそれぞれの水溶液の性質を調べるための実験を行い, 共通点をまとめることができる 2 酸性やアルカリ性になる理由を調べる実験を行い, 考察をまとめることができる 3 実験器具を正しく使用し, 少しずつ液体を加え, 中和できる エ自然事象についての知識 理解 1 水溶液にしたとき, 電離して水素イオンを生じる化合物を酸, 水酸化物イオンを生じる化合物をアルカリと理解している 2 塩には水に溶ける塩と, 水に溶けない塩があることを理解している 3 身の周りの中和を利用した例について理解している
合わせて中性になるときの濃度と体積についてモデル図を使って類推することができる 5 胃酸と胃薬が混ざり合い中和反応が起こることで, 胃の痛みや胸やけが治まることを根拠を示しながら説明できる 育成しようとする資質 能力の本単元とのかかわり 本校が身につけさせたい 7 つの力 高い志 日常生活で起こる現象について, 科学的に見ようとする 知識 振り返る力 先を見通す力 胃薬の作用を調べるためにはどのような学習をするか計画を立てる チャレンジ精神 難しい課題に果敢に挑戦する 粘り強さ 他者理解 1 自分の意見を押し通すのではなく, 他の人の意見を尊重し, 妥当性のある意見をつくろうとする 2 自分の意見を相手に理解してもらえるように, 説明する 指導と評価の計画 ( 全 14 時間 ) 次学習内容 ( 時数 ) 1 課題の設定 胃薬の成分や, 胃の痛みや胸やけの原因を調べる (1 時間 ) 日本人の胃が 世界で最も汚く, 弱い胃 と呼ばれていることを知り, 胃の痛みや胸やけなどの胃の異常を治してくれる胃薬について調べる 胃の痛みや胸やけが起こっている胃の中はどのような状態になっているのか調べる 関考技知 評価評価規準 ( 評価方法 ) ア 1 資質 能力の評価 ( 評価方法 ) 先を見通す力 理科 -3-
胃薬の成分表を見て, 胃薬の主な成分を知る 2 酸性の水溶液 ( 胃液 ) とアルカリ性の水溶液 ( 胃薬 ) の性質について調べる (2 時間 ) 実験から胃液が酸性で, 胃薬がアルカリ性であることを知る その他の酸性の水溶液とアルカリ性の水溶液を用意し, 酸性の水溶液の共通点と, アルカリ性の水溶液の共通点を実験結果から考える イ 1 ウ 1 3 水溶液が酸性やアルカリ性になる理由を考える (2 時間 ) 酸性の水溶液, アルカリ性の水溶液に共通しているイオンについて考える BTB 溶液を入れて緑色にした寒天の中央に, 水溶液をしみこませた爪楊枝を差し込み, 電圧を加えて BTB 溶液の色の変化を観察し, イオンの移動について記録する 陰極側や陽極側の色の変化から, 陰極や陽極に移動したイオンを考え, 発表する イ 2 ウ 2 エ 1 4 酸性やアルカリ性には強弱があることに気付き,p とフェノールフタレイン溶液,BTB 溶液の色の変化と身近な製品の p 値について知る (1 時間 ) 身のまわりの物質の p 値の測定を p メーターや万能 p 試験紙を用いて行う ア 3 高い志 5 酸性の水溶液とアルカリ性の水溶液を混ぜ合わせると水溶液の性質は変化するのか調べる 酸性の水溶液とアルカリ性の水溶液を混ぜ合わせたときに発生する物質を調べる (4 時間 ) 酸性の水溶液にマグネシウムリボンを入れ酸の影響で溶けているところへ, アルカリ性の水溶液を混ぜ合わせマグネシウムリボンと酸の反応が止まることを確認する BTB 溶液を用いて水溶液の性質の イ 3 理科 -4-
変化を調べる 酸性の水溶液が徐々に薄まり中性になることを確認する 酸性とアルカリ性の水溶液を混ぜ合わせると性質が変化するが, 目に見えて新しい物質ができていないので, 目に見えない物質をどうやって確かめるか考える 水溶液を蒸発させて残った物質を調べる 中和反応と塩について説明する 6 これまでの水溶液とは違う水溶液を混ぜ合わせたときの様子を観察する (1 時間 ) これまでの学習の説を確かなものにするために, これまでとは違う酸性とアルカリ性の水溶液を混ぜ合わせる実験を行う これまでとは違い水に溶けない塩ができることを確認する 水に溶ける塩と水に溶けない塩ができることについて説明を聞く エ 2 7 水溶液の濃度を変えると酸とアルカリの反応はどうなるか実験する (1 時間 ) 第 5 次と同じ実験を塩酸の濃度を変えて行う 水溶液の濃度に注目させ, 水素イオンと水酸化物イオンの粒の数と関連させて考えをまとめ, 発表を行う イ 4 ウ 3 8 創造 表現まとめ 薬局の店員になって, 胸やけで胃薬を買いに来たお客に, なぜこの胃薬を服用と効果があるのかを説明する (2 時間 ) 本時 1/2 時間 これまでの学習を振り返り説明に必要な要素を確認する 薬局の店員になって, お客さんが胃薬の効果が納得できるような説明資料を班で作成する 作成資料を基に個人で説明を考え, 教員に説明を行う ア 3 イ 5 エ 3 高い志 チャレンジ精神 他者理解 12 理科 -5-
本時の学習 (13/14 時間 ) (1) 本時の目標イオン式やモデル図を用いて, 胃の痛みや胸やけに効果がある胃薬の作用について考察し, 根拠を示して, 胃薬の作用の説明を考えることができる (2) 本時の学習展開 学習活動 指導上の留意事項 ( ) 努力を要する 状況と判断した生徒への手立て ( ) 評価規準 ( 評価方法 ) 資質 能力の評価 ( 評価方法 ) 1 (5 分 ) 復習として, 胃薬の成分と胃の痛みや胸やけしている胃の内部の状態を確認する 胃薬の主な成分 炭酸水素ナトリウム 胃薬の種類の中に, 炭酸水素ナトリウムが約 60% 含まれているものがあることを確認する 胃の痛みや胸やけは胃酸が大量に分泌されている胃酸過多の状態であることを確認する ( 一番多い成分 ) 胃の状態 胃酸過多で酸性の状態 本時の課題を確認する あなたは, 薬局の店員です 胃の痛みや胸やけで胃薬を買いに来たお客さんに, なぜ胃薬 が胃の痛みや胸やけに効果があるのかお客さんが納得できるように説明する 本時のめあてを確認する 胃薬を服薬するとどのような変化が起きているのか考え, お客さんに薬の作用の説明をす ることができる 2 班で課題を解決する (25 分 ) 学習の流れを確認する 1 これまでの実験の結果を整理する 2 班でお客様に説明するための資料をつくる 3 班の意見を他の班に説明し, 質問を受け改善していく ( 派遣員方式 ) 4 班で作成した説明資料を基に, 個人で説明を書く 5 お客様 ( 教員 ) に説明する ( 薬を販売する気持ちで説明する ) これまでの実験の結果を整理する 胃液は酸性, 胃薬は弱アルカリ性 酸性とアルカリ性が混ざると中和反応が起きる 中和反応には濃度も関係している 理科 -6-
4 人班で胃薬を服薬するとどのような作用が起こるか考える 説明の準備をする 店員の立場になってお客さんが納得できる, 理解できるような説明を考えさせる 炭酸水素ナトリウムと人工胃液 ( うすい塩酸 ) はともに電解質であることを確認する 特に課題のある班には以下のような支援を行う 炭酸水素ナトリウムと人工胃酸 ( うすい塩酸 ) の化学式を確認する 分かりやすい説明にするためには, 中和反応を化学式やイオン式を用いて説明すればよいことに気付かせる また, 見た目で理解しやすいようにするためにはモデル図を用いればよいことに気付かせる 3 班で作成した説明資料を基にして説明を書く (10 分 ) なぜ胃薬が胸やけに効くのか 根拠を明らかにしてプリントに まとめる 個人 ア 3 イ 5 エ 3 高い志 チャレンジ精神 他者理解 12 おおむね満足できる 状況 (B) と判断する根拠 胃薬の効果を中和作用を根拠として, 説明を書くことができる 記述例 薬の効果 胃薬が胃の痛みや胸やけに効くのは, 胃薬の成分である炭酸水素ナトリウムが水に溶けたときに電離し, 2C 3 と - になる その - と胃酸の + と結びつき中和され,NaCl と 2 と C 2 などの体にとって無害な物質になり, 胃の中が中性になり胃の痛みや胸やけが治まる 胃薬 C Na + - 胃液 Cl - + Na Cl C 十分満足できる 状況 (A) と判断する根拠 胃薬の効果を中和作用を根拠として説明することができ, さらに胃薬を服用することの注意点の説明も書くことができる 記述例 薬の効果 胃薬が胃の痛みや胸やけに効くのは, 胃薬の成分である炭酸水素ナトリウムが水に溶けたときに電離し, 2C 3 と - になる それらが胃酸の + と Cl - と結びつき中和され,NaCl と 2 と C 2 などの体にとって無害な物質になり, 胃の中が中性になり胃の痛みや胸やけが治まる ( 図は B と同様 ) 服用時の注意点 服用時の注意点と服用時に酸性の飲料と一緒に服用すると酸性の飲料の中和に使われてしまうので効果がなくなります また, 胃酸が多いと発生する C 2 も多くなりげっぷがでることがありますので, 注意してください 理科 -7-
努力を要する 状況 (C) と判断する生徒への手立て 酸性とアルカリ性の物質を混ぜ合わせるとどのような反応が起こったか考えさせる 4 まとめをする (10 分 ) 本時の学習のまとめをする ねらいに対して本時の授業で学習したことを自己評価カードに書かせる 次時の学習の内容の確認を 次時の説明の仕方を確認さ する せる (3) 板書計画 本時の課題 あなたは, 薬局の店員です 胸やけで胃薬を買いに来たお客さんに, なぜ胃薬が胸やけに効果があるのかお客さんが納得できるように説明する これまでの実験結果 胃液は酸性, 胃薬は弱アルカリ性 酸性とアルカリ性が混ざると中和反応が起きる 中和反応には濃度が関係している 本時のめあて 胃薬を服薬するとどのような変化が起きてい るのか考え, お客さんに薬の作用の説明をする ことができる 学習の流れ 本時のまとめ 1 これまでの実験の結果を整理する 2 班でお客様に説明するための資料をつくる 3 班で作成した説明資料を基に, 個人で説明を書く 4 お客様 ( 教員 ) に説明する 検 証 あなたは薬局の薬剤師です お客さんが胃の痛みや胸やけに効果がある胃薬が欲しいと言って います 次の問いに答えなさい (1) この胃薬が効果があるのはなぜか 中和, 中性 という語句を使って簡潔に説明しなさい (2) この胃薬を服用するときの注意点として下線部 X が描かれているが, その理由を 中和 という語句を使って簡潔に答えなさい 効能 効果胃の痛み, 胸やけ 用法 用量 用法 用量に関連する注意 X 水またはぬるま湯で服用してください 主な成分炭酸水素ナトリウム (60%) ( 予想通過率 (1)90%,(2)90%) 理科 -8-