宗谷北部地域での 和牛開始マニュアル 新たに和牛を飼い始めようとしている方々のために 平成 18 年 宗谷北部地区農業改良普及センター -1 -
1 もうかるのか もうからないのか? (1) 経営収支 表 1 和牛を取り入れた経営の経済性 ( 千円 ) 酪農 + 和牛 10 頭 ( 複合経営 ) 和牛専業 想定規模 生産量 乳牛経産 50 頭 (50ha) 15 頭 10ha 和牛繁殖合計 80 頭 50ha 和牛繁殖 牛乳 350t 出荷 AI 牛 11 頭 14 分娩 子牛 55 頭 ET 牛 3 頭 1 事故 2 保留 (70 分娩 5 事故 10 更新 ) 科目 備考 労働力 2 人 労働力 1.5 人 牛乳代金 72 円 /Kg 25,200 25,200 乳牛個体 2, 2, 収肉用素牛 1 頭 40 万円益 5,600 5,600 22,000 その他肉牛 廃用 15 万円 300 300 1, 農業収入計 27,700 5,900 33,600 23, 肥料費 3 万円 /ha 1, 300 1,800 1, 直 飼料費 5,980 1,010 6,990 4,200 接 種子 農薬資材費 250 費授精 登録料 複合はET 代含 400 1,650 2,200 1,250 250 750 300 養畜 診療費 100 100 家畜共済 900 80 980 その他共済 50 50 賃料 利用料金 入牧料 20 頭 750 750 修繕費 2, 250 2,750 電気 水道 油脂 2,115 100 2,215 間 接費 1, 諸材料費 650 80 730 経費酪農所得 1,380 肉牛所得 150 1,530 公課租税 賦課 700 万 150 300 万 50 200 400 減価償却費 3,000 300 3,300 1, 経費合計 20,725 2,820 23,545 14,350 農業所得 6,975 3,080 10,055 9,150 ( 所得率 ) 25% 52% 30% 39% 推定労働時間 ( 時間 1 人当 ) 2,155 646 2,478 1,024 労働 1 時間当たり所得 ( 円 ) 3,237 4,768 4,058 8,936 1 試算 = 酪農肉牛近代化計画類型 (H17 豊富町 ) を参考 2 実際には牧草代金や雑収入が入り 経費には支払い利息等が加わります < 和牛子牛 1 頭当りの所得は? > 経営形態や子牛価格によって異なりますが 子牛 1 頭当り約 15 万円程度の所得と考えればよいでしょう 意外に少ない? 450 400 350 166 300 220 250 千円 200 150 261 100 201 50 0 複合経営専業経営図 1 子牛 1 頭当りの収支 (1 頭収入に廃用含めた ) 複合経営の試算で経費が専業経営より少なくなっているのは 間接費の一部が酪農部門と共有されているから 複合のメリット 所得経費 上手にやれば もうけられます -1 -
(2) もうかる もうからないは腕しだい < 所得に大きな影響を与える要因 > 1 価格 ( 去勢 350 千円 ~550 千円 雌 300 千円 ~450 千円 H17 年相場 ) 2 頭数 子牛事故率 分娩間隔( 産子率 ) 事故率が増加した時の所得変化 モデル経営 複合経営 専業経営 頭数 14 55 事故率 1 頭 7.1% 5 頭 6.9% 率 140% 69% 事故の多い経営 複合経営 専業経営 頭数 8 50 事故率 4 頭 29% 10 頭 14% 率 80% 63% 千円 450 400 350 300 250 200 150 100 50 0 220 201 353 図 2 事故率の変化による所得変化 ( 子牛 1 頭当 ) 85 166 143 261 287 モテ ル事故増モテ ル事故増 複合経営 専業経営 所得経費 (3) 目標とする生産 技術指標 技術指標 繁殖事故生産飼養 項目 現状 H16 基準指標 目標 け回数 - - 1.5 回以内 分娩間隔 14.8ヶ月 13.5ヶ月以内 12ヶ月以内 産子率 80% 90% 以上 母牛事故率 - 3% 以下 3% 以下 子牛事故率 13.7% 5% 以下 5% 以下 出荷率 約 48% 60% 60% 以上 出荷月齢 去勢 10ヶ月 雌 10ヶ月去勢 8ヶ月 雌 9ヶ月 出荷体重 去勢 320Kg 雌 290Kg 去勢 300Kg 雌 280Kg 日齢体重 去勢 1.05 雌 0.95-1 頭当濃厚飼料給与量 上限 5Kg - 飼養形態 - 運動可能な飼養形態 経営安定性指標 項目 現状 H16 基準指標 目標 所得率 約 38% 35~42% 45% 以上 繁殖 1 頭当負債額 - 千円以下 300 千円以下 -2 -
複合経営 規模が小さいと 子牛が1 頭死亡しただけで所得が激減してしまいます 専業経営 規模が大きくなればなるほど施設 機械費がかさみ 所得率は低下する 2 和牛生産のパターン (1) 経営形態 1 繁殖牛をもたず 乳牛借腹のみによる ET 産子生産 メリット : 特別な投資が不要 デメリット :1 乳牛後継牛が減少する懸念 2 乳牛借腹 ET 産子生産で繁殖牛をそろえる メリット : 特別な投資が不要 デメリット:1 乳牛後継牛が減少する懸念 2 生産頭数が少なく所得補完効果少 3 牛をそろえるのに長い年数がかかる 3 和牛繁殖牛を所有し AI による生産 乳肉複合経営 メリット : 余剰資源 ( 草 施設 労働 ) などが活きる 4 和牛専業経営 デメリット: 独立採算がとれないと 酪農部門のお荷物 繁殖専業経営 同規模の酪農より労働時間が少なくて済む 肥育一環経営 ( 注 : 宗谷北部地域では例がなく ノウハウの蓄積が少ない=リスク大 ) 2 と 3 の複合パターン 繁殖牛を所有し ET も行うパターン このパターンが上手に回転すれば 酪農経営 への所得補完効果は充分に発揮される このほか 繁殖牛の預託飼養をし 子とりをして管理料を得るという方式があります 主に ( 有 ) 安愚楽共済牧場 ( 栃木県那須 ) が行っています (2) 和牛経営の特徴 長所 酪農部門の余剰資産 ( 土地 建物 機械 労働 ) が和牛に利用されるしくみになっていると 資産の利用効率が高まり 結果として低コストになります 例 1 良いサイレージができない草地を乾草調整し 繁殖和牛で利用する 例 2 トラクターなどの機械は酪農 肉牛両方で使用されるので 利用効率が上がる など 乳牛初産腹を利用したET 生産をすると さらに効率は高まります 短所 労働時間が増えます 労働力に余裕のない酪農経営は 和牛をやってはいけません 乳牛と和牛両方の技術知識が必要 特に 繁殖技術は和牛部門に直接影響しますから 自信のない方は和牛をやってはいけません 長所 和牛に集中できることから 単価の向上が期待できます 労働時間が同規模 ( 成牛頭数 ) 酪農より少なくて済む ( 労働 1 時間当りの所得が非常に高い ) 短所 頭数が多い分 事故率や分娩間隔が経営に大きく影響 ( 逆もまた真なり 長所にも転換 ) 売上げが小さい分 大型投資がしづらい 単価は市場に左右されるため 暴落時への備えが不可欠 -3 -
3 牛のそろえ方 スタート年 1 月 1 2 年目 1 月 1 3 年目 1 月 1 4 年目 1 月 1 5 年目 1 月 1 6 年目 1 月 1 1 月 7 年目 1 が先行するパターン移植移植移植 分娩 1 頭 1 授精卵移植のみで増やす場合のメージ 授精卵移植のみで増やす場合生まれためすの半分を残す ( 毎年 3 頭 3 年間 ) 2 頭 授精卵移植のみで増やす場合 毎年 3 頭に移植し 3 年間で 9 頭分娩中 4 頭が雌の場合 5 年で 3 頭の繁殖牛を確保できる が先行するパターン 移植移植移植 -4 - 子牛事故率 0% の場合 3 頭 5 頭 が先行するパターン 移植移植移植 4 頭
2 導入 ( 繁殖素牛 10 ヶ月齢を購入 ) で増やす場合のイメージ 導入牛から増やす場合 雌が生まれても売らずに後継牛とすると 1 頭の導入から 5 年で2 頭 (2 倍 ) の繁殖牛を確保できる 7 年で3 頭 ( 初回産子 雌分娩率 40%) の場合 これではする牛が少なくなるので 所得に結びつかない 雌が生まれてもする場合を考慮し 複数頭の導入を計画的に行う 雌の産子は 血統や体格を見ながら後継牛とするかどうかの判断をする スタート年 1 月 1 2 年目 1 月 1 3 年目 1 月 1 4 年目 1 月 1 5 年目 1 月 1 6 年目 1 月 1 7 年目 1 月販 1-5 - 3 頭 1 頭 育成 導入 ( 雌のこす ) 導入 子牛事故率 0% の場合 2 頭
(1) 牛の増やし方の違いによる経済性の差 1 授精卵移植のみで増やす場合 ( 年 3 頭移植 3 年間 =9 頭移植 雌の半分を残す ) 3,000 2, 2,000 累計収入累計経費累積収支 1 授精卵移植による増頭 ( 3 年間で 9 頭移植 ) 受胎率 50% の場合 千円 1, 1,000 0 - スタート年 2 年目 3 年目 4 年目 5 年目 -1,000 5 年後の生産規模 成牛 = 3 頭 7 年後 5 頭 した牛 = 6 頭 3 年間は収入が発生しない その間 移植経費などがかかり収支は厳しい 生まれる産子が雄か雌かで確保できる繁殖牛の数に大きな差が出る 2 導入で増やす場合 ( 10 頭導入 雌が生まれたら残すハ タン : ハ タン =3:7 の比 ) 14,000 12,000 10,000 8,000 累積収入累積経費累積収支 導入による増頭 (10 頭導入 ) 早くそろえたいなら 導入がいい 千円 6,000 4,000 2,000 0-2,000 ート年 スタ 2 年目 3 年目 4 年目 5 年目 -4,000 5 年後の生産規模 成牛 = 13 頭 7 年後 20 頭 した牛 = 30 頭 3 年目から所得が発生する 5 年間の累積所得は約 6,000 千円 ( 年平均 120 万円 ) となる -6 -
(2) 牛はこうやってそろえる 目標 5 年後に繁殖牛 10 頭そろえておきたい 早い段階から牛を確保したい 極力 投資は抑えたい とした場合 < 最も低コストと考えられるモデル例 > 1 増殖計画 2 増殖結果 増殖モデル 授精卵 (3 頭を1 組 ) ( 移植実施 ) 繁殖用育成牛導入 先行 先行 (10ヶ月齢) 1 年目 3 頭移植 3 2 年目 3 頭移植 2 3 年目 3 頭移植 1 先行 =3 頭移植後 2 頭 1 頭分娩の意 予測 - 生産結果 繁殖頭数 頭数 1 年目 0 0 2 年目 3 3 3 年目 5 4 4 年目 7 5 5 年目 12 8 6 年目 15 7 7 年目 21 12 導入総頭数 6 頭 5 年間の頭数累計 20 頭 導入費用(1 頭 千円 ) 3,000 千円 5 年目には 10 頭を超え 7 年後には 20 頭となるので 10 頭で留めておきたい場合は にまわすことができる 3 経済性 経済性 ( 推定 ) ( 千円 ) 経費 収入 収支 1 年目 300 0-300 2 年目 564 1,200 636 3 年目 657 1,600 943 4 年目 549 2,000 1,451 5 年目 974 3,200 2,226 6 年目 815 2,800 1,985 7 年目 1,407 4,800 3,393 子牛事故率 0% の場合 4 考察 6 頭の導入を3 年間かけて行い 残りを授精卵移植で補う方法 こうすることで 投資を抑えられる 授精卵の移植では 受胎率によってコストが大きく変動するので注意が必要 また 産子の性別によっては増殖スピードが大きく変動する 1 酪農経営の特色を活かし 授精卵移植と繁殖素牛の導入を組み合わせる 時間がかかる 2 思い切って最初に牛をそろえてしまう 資金対応の場合 償還計画を慎重に 豊富町和牛生産改良組合のメンバーか JA 普及センターに相談してみよう 経営条件は戸々で異なり そのことによって最適な規模 投資額も様々です 自分の経営に合った和牛生産を考えましょう -7 -
4 資金調達 H16 年 肉用牛導入に向けて ~ 黒毛和種新規導入ハント フ ック ( 発行 : 北海道日高支庁編集 : 日高支庁改良普及員畜産部門 )4P をそのまま引用しました -8 -
5 気になる市場価格 600 550 H13 年 国内初 BSE 確認 黒毛和種白老市場成績 ( 平成 12 年 ~17 年 ) 450 400 350 300 250 200 H15 年 1アメリカ初 BSE 確認 豊富 ( 去 ) 白老 ( 去 ) 豊富 ( 雌 ) 白老 ( 雌 ) 150 H12 H13 H14 H15 H16 H17 1 月 1 月 1 月 1 月 1 月 1 月 9
6 まとめ 1 牛がそろうまでは収支が厳しい そろってしまえば高い所得率 (40~50%) が得られる 2 牛がそろい 子牛の事故率を低く抑えることができ 分娩間隔が短いほど所得は高くなり 酪農経営へ充分な所得補完効果をもたらします 3 和牛は酪農に比べて労働時間当りの所得が高い 2 世代酪農経営に最適 7 残された課題 1 高値ができる血統の選び方 残し方 交配の仕方 2 高値ができる子牛の作り方 3 効率的で低コストな飼い方ができる施設 装備について 10