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JIS A9521 F JIS A9521 F 計資料 JIS A 6930 A JIS A9521 F JIS A 6930 A JIS A9521 F JIS A 6930 A JIS A9521 F JIS A 6930 A JIS A9521 F JIS A 6930 A JIS A9521

1 外皮断熱性能の強化 1.1 断熱強化の必要性 昭和 40 年代以降 大量に供給された公営住宅ストックを建て替えのみで更新していくことは困難であり 既存ストックの有効活用は重要性を増しています 既存の道営住宅の年代別ストックを見ると 北海道環境共生型公共賃貸住宅整備指針 が策定され断熱水準が強化さ

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もくじ 1. 表紙 2. もくじ 3. 床施工前 > 透湿防水シート 4. 床施工前 > 断熱材用受け材 5. 床施工前 >ユニットバス人通口 6. 床施工 > 床用透湿防水シートの施工 7. 床施工 >セルローズファイバー吹込み工事 8. 壁施工前 > 横胴縁 気密コンセントカバー 9. 壁施工前

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はじめに 平素は格別のご高配を賜り 厚く御礼申し上げます 平素は格別のご高配を賜り 厚く御礼申し上げます この度は 屋根改修に際し 弊社 イソタンシステム ご提案の機会を賜りまこの度は 屋根改修に際し 弊社 イソタンシステム ご提案の機会を賜りました事を重ねて御礼申し上げます した事を重ねて御礼申し

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玄関ドア 2018 年 9 月 14 日株式会社 LIXIL リシェント玄関ドア 3 グランデル 2 アヴァントス 製品シリーズ 防火 / 防火 登録名 リシェント玄関ドア3 高断熱仕様 17N 型 ( 子扉ガラス付組合せ らんま付を除く ) リシェント玄関ドア3 防火戸断熱 k2 仕様 M17 型

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本日の発表内容 1 これまでのエコ関連事業展開 2 健家化リフォームとは 3 提案アプローチ 2

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住宅性能診断士ホームズ君 省エネ診断エキスパート すまいのエコナビ ホームズ君レポート 壁体内結露判定 壁の中の結露は どこまで予測できる? 2018/9/5 1

飽和水蒸気量 露点温度とは 空気は温度によって含むことができる水蒸気の量 ( 飽和水蒸気量 ) が異なり 暖かい空気ほど多くの水蒸気を含むことができます 飽和水蒸気量 水蒸気をたくさん含んだ空気が冷やされ 飽和水蒸気量 が小さくなると これを超えた余分な水蒸気が液体に変わります この温度を露点温度と言います 露点温度 相対湿度とは この飽和水蒸気量に対する 実際に含んでいる水蒸気量 ( 絶対湿度 ) の割合のことをいいます 2

住宅における結露とは 結露は 美観 耐久性 木部の腐朽といった直接的な被害以外に さらにはダニカビによる健康被害が考えられます ただし わずかな結露が 即座に深刻な被害につながるとは限らないので 許容範囲内にあるかを検討することが重要です また 住まい方での改善も有効といえます 結露の種類冬型結露夏型結露放湿型結露 冬期 外気温が低い時期に発生する 室内の水蒸気が低温の部位に結露するものを言う 夏期 外の湿気をたくさん含んだ高い温度の空気が 冷たい部位に結露するものを言う 夜間に吸湿 低温化した木材や合板から 太陽があたることで放出される水蒸気が冷たい部位に結露するものを言う 3

さまざまな結露トラブル 2 壁内部の結露 ( 断熱材の室内側 ) 4 小屋裏の結露 1 窓回りの結露 2 収納のカビ 2 野地板周辺からの水垂れ 建築関連図書で結露に関する特集が相次いだ (2017~2018) 5 壁内部の結露 ( 断熱材の外気側 ) 3 浴室洗面室の結露 1 壁通気層からの水垂れ 1 床下の結露 現象 対策 冬型結露 表面結露 1 窓回りの結露 2 収納のカビ 3 浴室 洗面室の結露 4 小屋裏の結露 断熱性能の向上 発生水蒸気量の抑制 換気通風による室内低湿化 内部結露 5 壁内部の結露 ( 外気側 ) 外気側は水蒸気を通しやすく 室内側は通しにくくする 夏型結露 表面結露 1 床下の結露 断熱性能の向上 床下への湿気流入の抑制 除湿 内部結露 2 壁内部の結露 ( 室内側 ) 室温を極端に低くしない 壁面にエアコンの吹だしを当 てない 放湿型結露 1 野地板周辺の水垂れ 2 壁通気層からの水垂れ 野地板裏面の断熱材等の非吸湿化 サイディング裏面の非吸湿化 4

結露対策に関する基準等 下記のように 省エネ基準では防露については注意喚起程度の記述となっているが 計算による結露チェックを行い 結露の発生リスクの程度を確認しておくことは有用と思われる 省エネ基準住宅に係る判断の基準 1-5 結露性能の確保 (1) 表面結露の防止断熱構造化すべき部位において 表面結露の発生のおそれのある 著しく断熱構造を欠く部分 ( 開口部を除く ) を設けないこと (2) 内部結露の防止断熱材の内部または断熱材よりも屋外側で外気に開放されていない部分においては 内部結露の発生を防止するため 水蒸気の侵入および排出について考慮し 当該部分に多量の水蒸気が滞留しないよう適切な措置を講じること 住宅性能表示制度温熱等断熱等級 4 結露の発生防止に関する基準 1 防湿層の設置グラスウール ロックウール セルロースファイバー等の繊維系断熱材 プラスチック系断熱材その他これらに類する透湿抵抗の小さい断熱材を使用する場合は 防湿層 ( 断熱層の室内側に設けられ 防湿性が高い材料で構成される層で 断熱層への漏気や水蒸気の侵入を防止するもの ) を設けること ( 但し書きあり ) 2 通気層の設置屋根または外壁を断熱構造とする場合は 断熱層の外気側に通気層を設置するなどの換気上有効 な措置を講じること ( 但し書きあり ) 5

結露判定方法 1 仕様による判定は断熱層内側の防湿層と外側の通気層の設置必要性を判定するものです 対象になっている材しか判定できません 4 非定常計算は結露判定のみならず 湿度影響を考慮した省エネ効果やカビ繁殖程度なども予測できますが 非常に難解です 2 透湿抵抗比による計算は断熱層の外側と内側の透湿抵抗の合計の比率の大小で結露リスクを簡易判定します 3 定常計算は断面を構成する材の境界面の水蒸気圧を求め 内部結露の発生リスクを判定します ホームズ君では3 定常計算による結露判定を行えます 計算ルート 概要 摘要範囲 難易 度 1 仕様による判定 2 透湿抵抗比による簡易判定 3 定常結露計算を行う簡易判定 防湿層 通気層の設置の必要性を仕様から判断する 壁体を構成する各層の透湿抵抗から算出する 壁体を構成する各層の熱 湿気伝導率に基づき計算する 壁体構成の仕様が対象にある場合のみ 断熱層が単相の場合はどのような壁体構成でも OK ( 断熱層が複層の場合は適用できない ) 簡易 簡易 精度 どのような壁体構成でも OK 複雑 AA A A 4 非定常計算による判定 壁体の熱容量 湿気容量を考慮し 熱 湿気 ( 水蒸気 ) 水の移動を計算する どのような壁体構成でも OK ( 調湿建材も考慮できる ) 定常計算とは室内空気の温湿度 外気の温湿度は一定であり 壁内部の状態が均衡している定常状態と考える計算方法です 複雑 AAA 6

壁体内結露判定 壁の材料の熱伝導率にしたがい 冬季の場合 高温 ( 室内 ) 側から低温 ( 外気 ) 側に熱が移動する 壁内部の温度の推移 ( 温度の勾配グラフ )1 が決まる 温度グラフから 壁内部の飽和水蒸気圧の勾配グラフ 2 が決まる 熱と同様に湿気 ( 水蒸気 ) も 壁の材料の透湿率にしたがい高湿 ( 室内 ) 側から低湿 ( 外気 ) 側に移動する 壁内部の水蒸気圧の勾配グラフ 3 が決まる 壁内部の各点において水蒸気圧 3 と飽和水蒸気圧 2 を比較し 水蒸気圧 3> 飽和水蒸気圧 2 のとき水蒸気が飽和して結露が発生する 1 温度勾配 ( 熱抵抗の比率に応じて下降する ) 2 飽和水蒸気圧の勾配 ( 温度に伴って下降する ) 3 水蒸気圧の勾配 ( 透湿抵抗の比率に応じて下降する ) 熱抵抗の大きい断熱材の中で 温度および飽和水蒸気圧が大きく下がる 結露が発生するエリア 熱の移動 水蒸気の移動 外気側に防湿シートがあると湿気の排出が妨げれてしまう (NG) 透湿抵抗の大きい防湿シートで 水蒸気圧が大きく下がる 温度が大きく下がる断熱材より手前 ( 室内側 ) に防湿シートを設置することが 冬型結露の防止に有効です 断熱材より外気側には 透湿抵抗の小さい透湿防水シートを設定します 7

主な断熱材 シートの性質 断熱材 シート 透湿抵抗 x10^-3 [ m2 s Pa/ng] 材料名 厚さ 熱伝導率 λ 熱抵抗 R 透湿率 透湿抵抗 [mm] [W/(m K)] [ m2 K/W] [ng/(m s Pa)] [ m2 s Pa/ng] GW16K 100 0.045 2.222 170.00 HGW16K 105 0.038 2.763 170.00 0.00062 HGW24K 100 0.036 2.778 170.00 XPS 3 種 ba 15 0.028 0.536 3.60 0.00417 XPS 3 種 ba 45 0.028 1.607 3.60 0.01250 XPS 3 種 ba 80 0.028 2.857 3.60 0.02222 せっこうボード 12 0.221 0.054 39.70 合板 12 0.160 0.075 1.11 サイディング 15 0.280 0.054 2.10 天然木材 12 0.120 0.100 4.00 0.00300 セメント モルタル 20 1.500 0.013 1.62 0.01235 防湿シート - - 0.000-0.14400 透湿防水シート - - 0.000 - 調湿シート ( 夏 ) - - 0.000-0.00100 調湿シート ( 冬 ) - - 0.000-0.15000 25.00 20.00 15.00 10.00 5.00 0.00 0.59 0.62 0.59 4.17 22.22 12.50 0.30 10.81 7.14 144.00 3.00 12.35 0.12 150.00 1.00 断熱材 シート 8

様々な工法を結露チェックしてみる 工法やシート 判定条件 ( 外気温 室温 ) を変えてホームズ君の結露チェック機能を用い 結露リスクの頻度と程度について検討を行った Case 工法比較内容まとめ 1 充填断熱 室内側気密層 防湿シート有 VSなし 2 充填断熱 外気温 -11.9 VS 0.9 ( 地域 1) ( 地域 5) 3 充填断熱 室温 20 VS22 4 充填断熱付加断熱 断熱材 GW16K VS HGW24K+XPS80mm 5,6 充填断熱 室内側気密層 防湿シートVS 調湿シート 室内側に防湿層を設けないと室内側水蒸気が断熱層に侵入し 外気側防湿層の手前で結露する 外気温が低くなると 外気側の層の表面温度が低くなり 飽和水蒸気圧が低くなるため 相対的に結露リスクが高くなる 室温の 2 程度の変化による結露リスクは変化なし 断熱性能も防湿性能も高い断熱材の場合 結露リスクを低減できる 透湿抵抗が可変型の調湿シートでは 夏は透湿 冬は防湿性を確保でき 夏型結露リスクを低減できる 9

Case1 地域 5( 室内 :20,50% 外気 :0.9,70%) 防湿シート有 vs 無 地域 5( 室内 :20,50% 外気 :0.9,70%) 10 透湿防水シート 防湿シート 透湿防水シート 4.36% 6.60% Total: 0.16392 Total: 0.01899 0.36% 88.41% 37.61% 0.63% 56.93% 3.10% 1.59% 防湿シートありの場合 : 温度降下前に湿度を下げており 結露リスクを低減する 防湿シートなしの場合 : 断熱層に湿気が侵入し表面温度が低い合板で結露の危険性がある 10

Case2 外気温 -11.6 ( 地域 1) vs 0.9 ( 地域 5) 地域 1( 室内 :20,50% 外気 :-11.6,70%) 地域 5( 室内 :20,50% 外気 :0.9,70%) 11 透湿防水シート防湿シート透湿防水シート防湿シート -11.6 0.9 4.36% 6.60% Total: 0.16392 0.36% 88.41% 4.36% 6.60% Total: 0.16392 0.36% 88.41% いずれの場合も 飽和水蒸気圧 > 水蒸気圧ではあるが 外気温が-11.6 と低い場合は 外気側の層の表面温度がより低くなり飽和水蒸気圧が小さく かつ 水蒸気圧との差異が少なくなるため 相対的には外気温が低いほうが結露リスクが高まることがわかる 11

Case3 地域 5( 室内 :20,50% 外気 :0.9,70%) 室温 20 vs 22 地域 5( 室内 :22,50% 外気 :0.9,70%) 12 透湿防水シート 防湿シート 20 透湿防水シート 防湿シート 22 4.36% 6.60% Total: 0.16392 0.36% 88.41% 4.36% 6.60% Total: 0.16392 0.36% 88.41% 室温の設定温度の 2 の差では 飽和水蒸気圧も水蒸気圧も変化は少なく 結露リスクも同程度と言える 12

Case4 地域 5( 室内 :20,50% 外気 :0.9,70%) GW16K vs HGW16K+XPS80mm 地域 5( 室内 :20,50% 外気 :0.9,70%) 防湿 + HGW16K+XPS80mm(U: 0.17) + サイディング 13 透湿防水シート防湿シート透湿防水シート 防湿シート 4.36% 6.60% Total: 0.16392 0.36% 88.41% 3.84% 0.06% 0.02222 11.94% Total: 0.16811 5.81% 0.00062 0.33% 77.85% 0.16% 6 サイディング 15mm 3HGW16K 105mm 5XPS 3 種 ba 80mm XPSの透湿抵抗は断熱材としては比較的大きい 熱抵抗も大きく 透湿抵抗も大きい場合 つまり 熱も水蒸気も通しにくいので 結露リスクを高めにくいことがわかる 断熱層において熱抵抗のみ大きいと 飽和水蒸気圧と水蒸気圧のグラフが交わりやすくなる すなわち 結露リスクが高くなりやすくなる 13

Case5 地域 5( 夏 )( 室内 :25,40% 外気 :35,70%) 夏防湿シート vs 調湿シート 地域 5( 夏 )( 室内 :25,40% 外気 :35,70%) 調湿 + GW16K(U: 0.40) + サイディング 14 透湿防水シート 防湿シート 透湿防水シート 調湿シート 4.36% 6.60% Total: 0.16392 Total: 0.01999 0.36% 88.41% 35.73% 0.60% 54.08% 2.94% 0.00100 5.00% 1.51% 夏 断熱層の湿気 ( 水蒸気圧 ) が高まる場合 防湿層 ( 室内側 ) で透湿抵抗が低いと 結露リスクが小さくなる 調湿シートとは : 周囲の絶対湿度 ( 水蒸気の量 ) が低下すると透湿抵抗が増加するシート ( ベースは透湿シート ) 絶対湿度が高い夏においては透湿抵抗が低く透湿シートとして機能するため 壁体内の湿気を室内に逃がす 絶対湿度が低い冬においては透湿抵抗 14 が高くなるため 室内の湿気を壁体内に逃がさない

Case6 地域 5( 室内 :20,50% 外気 :0.9,70%) 冬防湿シート vs 調湿シート 地域 5( 室内 :20,50% 外気 :0.9,70%) 調湿 + GW16K(U: 0.40) + サイディング 15 透湿防水シート 防湿シート 透湿防水シート 調湿シート 4.36% 6.60% Total: 0.16392 0.36% 88.41% 4.23% 6.40% Total: 0.16899 0.35% 88.76% 冬 室内の湿気 ( 水蒸気圧 ) が高まる場合 防湿層 ( 室内側 ) で透湿抵抗が高いと 結露リスクが小さくなる 調湿シートとは : 周囲の絶対湿度 ( 水蒸気の量 ) が低下すると透湿抵抗が増加するシート ( ベースは透湿シート ) 絶対湿度が高い夏においては透湿抵抗が低く透湿シートとして機能するため 壁体内の湿気を室内に逃がす 絶対湿度が低い冬においては透湿抵抗 15 が高くなるため 室内の湿気を壁体内に逃がさない

結露発生の頻度と害の大きさをある程度 予測できる 壁結露の対策の原則は 室内側に防湿層 外気側に通気層をつくり 外気に対して透湿抵抗を小さくする ただし 内外の気温差で結露のリスクの大小が変わってくるので 地域の外気温を考慮してチェックするのがよい 暖房室温の設定の 2,3 程度の違いでは 結露リスクは変わらないが 室内湿度によっては大きくかわってくる 住まい方 ( 加湿器の使い過ぎや換気装置の停止 ) などの注意が必要となる 付加断熱等では断熱層の温度勾配が大きくなるので 境界部の仕様 ( 透湿させるのか させないのか ) が目的どおりとなっていることが より重要となる 可変型調湿シートは 年間を通して気密を確保しつつ 冬は防湿性 夏は透湿性を発揮する 室内の湿度変動を抑制するので 結露対策に有効といえる 16

結露防止の原則 ( 住まい方 ) 住まい方によって 室内湿度を適切に保てば 結露の抑制が可能となる 住まい手にも理解を促すことも重要と思われる 結露防止ハンドブック (IBEC 発行 ) 室内では洗濯物をできるだけ干さない 室内の水槽や植物を少なめにする 浴室の戸を開け放しにしない 暖房器にやかんなどをのせない 加湿器の仕様は最小限にとどめる できるだけ密閉型の暖房器を使用する 窓を開けて換気する 小窓や換気口で換気する 換気扇で換気する 浴室や仕様しない部屋も換気する 壁 床に接して家具などを置かない 押入れの中でも壁 床に接して物を置かない 床下換気口の近くに物を置かない 室温は適温 ( 冬 20 ~23 夏 25 ~28 ) 家の中で低温の場所を作らない ホームズ君レポート ガラス結露判定 もご覧ください 17