千葉県の植物相 千葉県の植物相の特徴房総半島の植物的自然の第一の特色は 暖温帯の照葉樹林と冷温帯の落葉樹林との移行域に位置し 暖温帯と冷温帯の両要素が共存し 多様なフロラを有する 千葉県は維官束植物だけで 2154 種が分布し 日本全体の 7300 種に対して約 3 割が分布することになる 房総半島の脊梁に当たる清澄山系から北の北総にかけた地域では 南斜面は常緑樹林 北向き斜面は落葉樹林と言うハ ターンが見られる これは 常緑広葉樹林が冬の低温から身を守るための落葉樹との棲み分けであり 南房総で見られる大きな群落が関東以北には見られないため 房総半島が暖温帯型常緑広葉樹林のほぼ北限と考えられる 又 房総の山は低い山であるがヒメコマツ イヌフ ナ カツラ オニイタヤ等の北方系の冷温帯性の樹木の分布の南限となっている事も特徴である 次に房総半島の植生の第二の特徴として 殆どの地域が人の影響を受けていて自然林が少ない事が上げられる この事は 古くから森と人が密接な関係にあった事の現れであり 今後里山の問題など人と自然と共存を考える上で対象地となる地域である 又バブル時代にはゴルフ場が多く作られ日本でも有数のゴルフ場の多い県である 千葉県の植物相の区分能勢保氏 (1975) は千葉県の植物相を次の資料のように 5 区に分けて整理しているので紹介する A 区 安房地区千葉県で最も暖かく無霜地帯 暖地系植物が生育する B 区 房総丘陵地帯山と谷が入り混じった複雑な地形で 暖温帯系の植物が生育する C 区 九十九里平野海岸の植物と沼沢地の湿原植物が生育する D 区 東京湾岸と下総台地雑木林と谷津田の景観 気温が最も低い場所であり北方系の植物 コブシ等が特徴である E 区 利根川流域の沖積平野君津史から転記 (1975 能勢より ) 1
各地区の主な植物名地区名植物名 A 区イソギク ハマオモト ハマオモト ダンチク アシタバ バリバリノキ バクチノキ タイミンタチバナ ホルトノキ オガタマ ヤマモモ カゴノキ リンボク マルバチシャノキ オオシマサクラ B 区 山地系ヒメコマツ ツガ モミ カマツカ イヌブナ クマシデ アサダ ハクウンボク カツラ オニイタヤ チドリノキ バイカウツギ スノキリョウブ ウラジロノキ アオハダ フジキ ツクバネ ヒカゲツツジ キヨスミミツバ フサザクラ アズキナシ ツルアリドオシ カンアオイ マメザクラ キヨスミギボウシ ヒガンマムシグサ スズタケ 南方系カゴノキ ホルトノキ バクチノキ リンボク ヤマモモ バリバリノキ イヌガシ タイミンタチバナ ミヤマトベラ カラタチバナ クロバイ リュキュウマメガキ シャシャンポ イズセンリョウ コショウノキ ハナミョウガ フユイチゴ ナツエブネ ウラジロ C 区チョウジタデ ミズオトギリ モウセンゴケ ジカバチソウ イシモイソウ D 区コブシ イヌシデ クマシデ イヌザクラ カタクリ ハシバミ サワフタギ ヤマブキソウ フシグロセンノウ E 区ミツガシワ ミズアオイ オニバス センニンモ ガガブタ 房総の植物群落 1. 照葉樹林房総半島は暖温帯の東端に位置しているので 暖温帯に優先する常緑広葉樹の林 照葉樹林が優勢となる 1) スタ シイ林スタ シ イは 南斜面の暖かい場所で生育し ウラシ ロカ シは 急斜面地及び岩地の表土の薄い乾燥地に出現する 高木層 スタ シ イ カシ類 タフ ノキ亜高木低木層 ヒサカキ サカキ ヤフ ツハ キ カクレミノ林床 テイカカス ラ ヤフ コウシ ホソハ カナワラヒ ースタ シ イ群集 降水量 1800mmの線の南側で 温暖で土壌湿度がある場所に分布する スタ シ イーヤフ コウシ 群集 降水量 1800mmの線の北側や 尾根南斜面のやや乾燥したところに立地する林 2
2) タフ 林海岸近くの林は潮風の影響でスタ シ イを欠く林が発達する 高木層 タフ ノキ モチノキ ヤフ ニッケイ エノキ亜高木低木層 -ヤフ ツハ キ モチノキ ヒメユス リハ マサキ トヘ ラ ヒサカキ ヤツテ 林床 イノテ ツワフ キ イソキ キ 2. 針葉樹林房総半島は昔三浦半島と繋がっていた言う歴史がありその当時冷温帯の植物が入って来たといわれている 1) モミ林一般的に垂直分布は海抜 500~600mに生育する植物であるが 房総では海抜 300m 程度の低山で出現する 高木層 モミ ツカ 亜高木低木層ーウラシ ロカ シ サカキ シキミ ミヤマシキミ ミツハ ツツシ 林床 キッコウハク マ アリト ウシ ツルアリト ウシ 2) ヒメコマツーヒカケ ツツシ 群集モミ林の奥の 崖地で尾根の乾燥する場所に立地する林である 現在極めて僅かになっている 高木層 ヒメコマツ ツカ 亜高木低木層 ネシ キ アセヒ ツクハ ネウツキ スノキ ヒカケ ツツシ シャシャンホ 3) アカマツ林亜高木低木層 ネシ キ アセヒ ツクハ ネウツキ スノキ 林床 スス タケ 3. 落葉樹林暖温帯系の房総半島になぜ 落葉広葉樹林が立地したのか次の事が言われている 人為的に植栽した 二次林の成立 地形的要因急斜面で崩壊地が多く 遷移が進まなかった 光条件の不利急斜面及び沢が多く 又急斜面で沢が向きが合っているので 下部まで十分光が届かない為 常緑樹が生活するには不利である 1) イロハカエテ 林沢の急斜面の岩地 垂直に近い崖地に成立する林 高木層 イロハカエテ オオモミシ エンコウカケテ ケヤキ亜高木低木層 アオキ ハナイカタ ヒメウツキ 林床 カンスケ キヨスミキ ホ ウシ コモチシタ オサシタ ハコネシタ クシ ャクシタ イロハカエテ ーケヤキ群集 根が地上部を支える事が出来る場所で成立する 3
2) フササ クラ林北向きの河川の急斜面地で崩壊の起こった跡地に成立する 水分に恵まれているので アシ サイ類が多く出現するので フサザクラータマアジサイ群集と呼ばれる 高木層 フササ クラ ミス キ アカメカ シワ イイキ リ亜高木低木層 タマアシ サイ サワアシ サイ クサアシ サイ 林床 ウワハ ミソウ シ ュウモンシ シタ 3) オニイタヤ林現在では完全な形で存在しない この樹木が房総で生育している理由は複雑な地形で 南北にやや細長く東西の口が狭い袋状の地形である 高木層 オニイタヤ イタヤカエテ チト リノキ フササ クラ亜高木低木層 アオキ タマアシ サイ林床 モミシ カ サ スハマソウ 4. 二次林 1) 台地の雑木林 クヌキ ーコナラ群集台地の緩やかな斜面地の火山灰土壌の上に成立する 構成種は ムラサキシキフ カ マス ミ ヤマツツシ クロモシ ミツハ アケヒ サルトリイハ ラ チシ ミサ サ等 2) 丘陵地の雑木林 コナラークリ群集丘陵地の急峻な地形の浅い場所に立地する 構成種はアス キナシ メウリノキ マルハ アオタ モ リョウフ アオハタ ヤマホ ウシ ツクハ ネウツキ ネシ キ等で林床にはナカ ハ ノコウヤホ ウキ ヒマカンスケ が生育する オニシハ リーコナラ群集安房郡及び海岸の雑木林に見られる構成種はイヌヒ ワ アカメカ シワ カラスサ ンショウ ハセ ノキ オニシハ リ等である 5. 人工林 1) スキ ヒノキ林 2) マテハ シイ林ノリヒビ及び薪炭材として植えられて物が 樹林となり一つの景観を形成している場所もある しかし純林になると下層植物が全く生育できないので 生物多様性の観点からは問題がある林である 4
3) ハンノキ林水田を放置して後に成立する林で 放棄地が増えているので増える可能性がある 3) 竹林孟宗竹林が異常に増加していて 雑木林をつぶし里山景観が破壊される傾向にあるので対策が必要と思われる 6. その他 氷河期の生き証人カツラ シナノキ等は北海道や東北地方 長野県に分布する 大昔房総半島が三浦半島が陸続きであったころ丹沢から三浦半島を経由して入って来たと言われている その根拠として林床にカンアオイがあることが上げられる カンアオイは分布速度が大変遅く カンアンオイ単独では 1 年で 10cm 1 万年で 1kmの速さであると言われている しかしアリがカンアオイの種子からでる分泌物を好むのでアリによって運ばれると仮定すると その距離は 1 年に 10m 程度と試算できるが 運ばれた種子が必ず発芽するとは限らないし 発芽しても種子が出来るまで 10 年かかるのでそれらを加算すると 分布の速さは 1 年に 10cm 程度の距離である 千葉県のカンアオイの分布は北総台に分布していない事を考えると 直線距離で近い丹沢 多摩から三浦半島経由でわたってきた事が想像できる 垂直分布帯の寸づまり現象異なる植生帯が圧縮されて一つの植生帯の中に生育している事 房総の寸つまり現象は 標高が 400m 程度と低く全域が暖温帯常緑広葉樹林の領域に含まれているにも係わらず その中に山地帯の植生が圧縮され一緒に生育している事が特徴である 例としては 通常海抜 1000m 程度で生育するヒメコマツが房総では清澄山系一体の標高 150~320m 程度の低山で生育している事が言える しかもヒメコマツと共存種であるヒカケ ツツシ も出現している事から短い期間で共存関係が生まれたものでなく 最終氷河期の生き残り樹種とも考えられる 参考文献房総の植物 藤平量郎 うらべ書店 千葉県の自然史 千葉県 君津市史自然編 君津市 ( 平成 17 年 4 月 24 日小池英憲 ) 5