熊本地域の水循環機構の検討

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広瀬 図 1( 左 ) 本研究の対象地域 菊池川 坪井川 白川 緑川流域の4つの流域から成る 図 2( 上 ) 水前寺 江津湖の湧水量の経年変化 青丸が湧水量 赤線が湧水量直線近似 青棒が月降水量を表している 2. 手法 2.1 統合型水循環モデル表面水と地下水の相互作用が重要な役割を担っている熊本地域の水循環機構を明らかにするために 本研究では 地表水と地下水の流れを三次元的に同時に扱うことのできる統合型水循環モデルを用いた この統合型水循環モデルに気象および土地利用の情報を与えることで 自然の水循環に加えて 大規模開発などの人工改変や農業取水などの人間活動による影響も考慮することができ さらには 汚染物質の移流拡散などを再現することができる 以下に統合型水循環モデルによる計算手順を示す 1) 降雨 傾斜などの地形情報 ( 図 3 4) 浸透係数などの水理的パラメータを初期条件として与え ( 表 1 2) 地表水深 地下圧力 飽和度などの状態量を計算し この状態量に基づき 水の流れを物理的に地表流 地下浸透 湧出に振り分ける 2) 地表流れは開水路流れ ( マニング型の乱流状態の速い流れ ) として 地下水の流れは浅部から深部まで含めて 2 相ダルシー流れ ( 層流状態の遅い流れ ) として計算され 両者をつなぐ流れ ( 涵養と湧出 ) は 2 相ダルシー流れとして計算される 3) 硝酸性窒素等の汚染物質の移流拡散を解く場合には 物質循環に係わる畑地 水田 森林における物質循環を再現したそれぞれのサブモデルを組み合わせることによって 物理法則や反応速度論に基づく時間的 空間的解析を行うことができる

表 1 土地利用別の地表面における 水理パラメータ 表 2 帯水層における水理定数 図 3 熊本地域における帯水層の区 分図 図 4 熊本地域の土地利用図 (H9) 国土数値情報より作成 2.2 数値計算の設定条件ケース1 現況の流量および地下水水位を再現するに当たり 本研究ではH14~H18 の5 年間の降雨データを用いてパラメータ同定を行った また同定期間の最終年のH18の実績波形を用いて 非定常解析によるハイドロと地下水波形の観測値との適合性を確認した ケース2 白川中流においてH18 に比べて水田面積が多く また江津湖の湧水量も多く 地下水涵養量が多かったと推定されるS51~S55 についても 流量 地下水位の実績波形とシミュレーション結果と整合を確認した この確認を行うにより モデル内で想定した 水田等の土地利用の変化による影響が 正しく現実を反映しているかどうかを確かめることができる

3. 結果 3.1 ケース1 統合型水循環モデルが再現した河川流量と 代継橋および広瀬地点の観測値との比較を図 6に示した 赤線が統合型水循環モデルによる計算値 青丸が観測値を表しているが 波形及びピーク流量を良く再現している また モデルが再現した地下水水位と 泗水および水前寺地点の観測値との比較を示したものが図 6 であるが 地下水水位の上昇 下降のパターンをほぼ再現している 図 5 代継橋地点 : 白川流域 ( 左 ) および広瀬地点 : 菊池川流域 ( 右 ) における日流量のハイドログラフ 赤線が統合型水循環モデルによる計算値 青丸が観測値を表している 図 6 泗水地点 : 菊池川流域 ( 左 ) および水前寺地点 : 緑川流域 ( 右 ) における地下水の水位変動図 凡例は図 5と同様 3.2 ケース2 図 7は 統合型水循環モデルが出力したS55の代継橋地点における河川流量 およびS51~S55の大津地点における地下水水位変動を 観測値と比較した図であるが 地下水涵養量が多いと推測される時期においても観測値と整合性が概ね取れており モデルが土地利用変化の影響を反映できていることが分かった 図 7 S55の代継橋地点 : 白川流域における河川流量 ( 左 ) およびS51~S 55の大津地点 : 菊池川流域における地下水水位変動図 ( 右 )

以上のことから 統合型水循環モデルが 熊本地域の水循環機構を再現するの に適したモデルであると結論づけられる 4. 今後の取り組みの方向性 4.1 渇水流量の精度向上現状のモデルは 地下水涵養量を適切に表現でき 年間の入出に関する水収支を精度よく再現することが可能だが 河川の渇水流量程度以下に対しては精度に課題がある そのため 河床からの浸透量 ( 浸透能 ) ならびに 農業用取水方法の見直し等によりパラメータを精査することにより モデルの精度を高めることとしている 4.2 地下水関連機関との情報共有熊本地域では 地下水保全の取り組みを牽引してきた ( 財 ) 熊本地下水基金 熊本地域地下水保全活用協議会 熊本地域地下水保全対策会議 の 3 会議が平成 24 年 4 月に統合され くまもと地下水財団 が設立され 地下水の保全 管理の一元化が図られた その一方で 河川流量と地下水涵養量とのバランスを図るためには 河川管理者と地下水関係機関との相互理解が必須であるが そのための情報共有が遅れているのが現状である このような現状を踏まえ 地下水関係機関との情報共有にむけた取り組み事例の一つとして 熊本地域の水循環機構の 見える化 を行っている 図 8および図 9は 現時点における水循環機構の 見える化 の成果の一部であるが 自然の水循環や地下水の流れといった目にすることのできない情報を視覚化することによって 分かりやすい資料作りに努め くまもと地下水財団 などの地下水関係機関と情報の共有化を図る 図 8( 左 ) 地下水の流線軌跡図 赤線が流線を表す ( 第 2 帯水層 ) 図 9( 上 ) 熊本地域の水循環の 見える化

4.3 統合型水循環モデルを用いた今後の展開熊本地域の地下水保全を行うためには 健全な水循環の構築が不可欠である 水田湛水による地下水涵養は 地下水保全を行ううえでは重要な施策であるが 水田湛水の為に大量の水を河川から取水すると 河川水が減少し 河川環境への影響も想定される つまり 河川水と地下水の両者が良いバランスを保つことが熊本地域の健全な水循環を構築するうえで重要となる 統合型水循環モデルでは 熊本地域の土地利用や河川水の取水量等を変更させ 地下水への応答を解析できるため 河川水と地下水の最適なバランスを検討することが可能である 例えば図 10は 白川中流域の水田減反率が白川の河川流量や地下水の賦存量および涵養量に与える影響を明らかにするため 水田減反率を 35%( 現況 ) 20% 0% とした場合を想定した感度分析の結果であるが 減反率の違いが河川流量や地下水涵養量に与える影響を定量的に解析できることを示している このように 社会実験の難しい事象について モデル内で仮想実験することによって 白川の正常流量の設定に向けた検討を行う予定である 図 10 河川取水量 ( 灌漑水量 ) と河川流量および地下水涵養量との関係図 5. まとめ本研究では 地表水と地下水が密接に関わる熊本地域の水循環機構を明らかとすべく 地表水と地下水の流れを一体として捉えることのできる 統合型水循環モデルを用いた 統合型水循環モデルは 河川流量や地下水水位変動などを概ね再現することができ 熊本地域の水循環機構を解明に適するモデルであることが明らかとなった 今後は統合型水循環モデルの精度向上を図り 河川の正常流量検討基礎資料の作成や 地下水関係機関との水循環機構に関する情報の共有化を図ることにより 熊本地域の統合的な水管理施策に資することができればと考えている