しびれの評価 (101126) 30 代男性 右手のしびれを主訴に来院 手背 / 手掌橈側 ( 手背 > 手掌 ) に強い異常知覚 手関 節背屈 MMT2 DTR は左右とも陰性で左右差指摘できず 腕橈骨筋の収縮無し 肩や背部に放 散痛無し 頚部の伸展や側屈でしびれの増悪無し C6 障害というより橈骨神経傷害と診断 これを機会に しびれについて復習 しびれというと原因疾患が多くの科にまたがるので 系統 的な診察が必要と思う どうしても漫然とした診察になりがちなので ポイントを押さえた診察が出 来るように努力したいと思う しびれの中でも 多発神経炎の分布 ( 典型的には手袋 靴下型 ) は特徴的なので これをキーワードにすれば他の所見と合わせて診断はそれほど難しくないと思う 神経疾患 整形外科疾患は部位診断も含めて知識の整理が必要 多発神経炎 ( 多発ニューロパチー ) と その他のしびれ ( 神経疾患 整形外科疾患など ) について分けて勉強してみる 多発神経炎 ( 多発ニューロパチー ) によるしびれ ( しびれの鑑別診断には ) 内分泌 代謝疾患 中毒 薬物 感染症 アレルギー リウマチ 悪性腫瘍といった 神経内科以外の疾患が数多く挙がっている これらの疾患は多発ニューロパチーの形をとってしびれを起こす 5) ( 参考 ( 文献 5 より引用 )
多発性神経炎の鑑別 1) A:Alcholic Amyloidosis B:Beriberi C:Collagen disease(pn SLE) Carcinoma Chemical substance( 砒素 水銀 タリウム スチレン n-ヘキサン ) D:DM Drug(INH vincristine) DANG THERAPIST 6) 7) Diabetes Alcohol Nutritional (eg B12 deficiency) Guillain-Barre Toxic (eg amiodarone, heavy metals, other drugs) Hereditary Endocrine Recurring (10% of G-B) Amyloid Pb (lead), Porphyria Idiopathic, infectious Sarcoid, systemic Thyroid, tumor 多発性神経炎と神経根障害との鑑別点は多発性神経炎では下腿の前も後ろも同じように知覚障害があるが 神経根障害ではその神経根支配領域のみの神経障害である 6) 多発神経炎のキーワード : つま先から徐々に上行 感覚障害 > 運動障害 手から始まる多発神経炎は無い 原因疾患を考慮 ( 糖尿病やアルコール 薬剤など ) 2) 通常は四肢末梢に強いしびれを認めた場合 多発神経炎などを考えるが 頚椎症でも四肢末梢に強いしびれを呈することも多い 体幹があまり侵襲されない理由はよくわかっていない 3) 機序がはっきりしないが 脊髄症で多発性神経炎と似た両手と両足のシビレを起こすことがあり Babinski の有無に注意しよう 6) 多発単神経炎を起こす病気はいくつかあり それぞれ特徴的な症状が現れます 多発単神経炎の原因で最も多いのは おそらく糖尿病です しかし糖尿病は 多発神経障害を起こす方がさらに多くなります 多発単神経炎の他の原因は 結節性多発動脈炎 全身性エリテマトーデス シェーグレン症候群 関節リウマチ サルコイドーシス アミロイドーシス ライム病 HIV 感染症などがあります ハンセン病では 細菌が直接神経に侵入して多発単神経炎を引き起こします 治療は 原因によります 10) その他のしびれ ( 神経疾患 整形外科疾患など ) 基本
障害部位の臨床的分類 1) 脳障害 脊髄症 ( デルマトームの多分節にわたりしびれが生じる 膀胱直腸障害 ) 神経根障害 ( しびれの領域はデルマトームの一分節となる ) 末梢神経障害 (entrap syndrome) 脱髄性疾患の代表 1) 多発性硬化症 =UMD ギランバレー症候群 =LMD デルマトーム 合併する運動障害 その他の神経異常所見を総合して判断する 1) 触覚 関節覚は脊髄後索を 温痛覚は外側脊髄視床路を上行するので 脊髄の半側障害では両者が解離することがある 4) 高齢者のしびれの原因は多彩であり いくつかの原因が併存することがある 4) まず自発的なしびれの部位を人体チャートに記す 4) ( 研修医.com カンペーズより引用 : http://kensyui.com/kanpesyu.ppt )
( 参考文献 9 より引用 )
( 参考文献 9 より引用 )
( 参考文献 4 より引用 ) 主に四肢 末梢神経について 末梢神経障害は多少オーバーラップする場合もあるが 障害部位の境界が比較的はっきりしているのが特徴 3) プライマリケアで重要なのは手のしびれでは頚髄病変 ( 頚椎症 ) 手根管症候群 足のしびれでは脊髄病変 ( 頚髄 胸髄 腰髄 ) 多発神経炎 Cryptogenic Sensory Polyneuropathy 2) 5) 手根管症候群のキーワード : 中年女性 妊娠 職業歴 ( コンピュータ 演奏など ) 原因疾患を考慮 ( 透析 甲状腺機能低下 末端肥大症など ) 2) 正中神経障害と C6-7 神経根障害とは紛らわしいが 正中神経傷害では手首より遠位のみの障害であるのに対し 根障害では前腕にも感覚障害がある 6) 尺骨神経障害も手首より遠位の知覚障害であるが C8-Th1 障害では前腕にも感覚障害が
ある 6) 橈骨神経傷害では垂れ手 (drop hand) になるが C6 障害と紛らわしい 鑑別は腕橈骨筋でみるとよい すなわち上腕中央圧迫で生ずる橈骨神経麻痺では腕橈骨筋も麻痺するが C6 麻痺だと腕橈骨筋 (C5,6 支配 ) は麻痺しない これを Duchenne 徴候という 6) 頸椎椎間板ヘルニアで 椎間孔が狭窄していると頸椎を伸展かつ健側へ側屈すると患側上肢への放散痛が見られる (Spurling s test) 6) 頸椎神経根症の放散痛は C5 C6 は肩へ C7 C8 は肩甲骨 ( 間 ) である 6) 頸椎神経根症では頚部痛や肩の痛み 肩甲骨 ( 間 ) 部の痛みで発症し 上肢痛やしびれで初発することは無い 脊髄症 (myelopathy) では頚部痛は起こさず 上肢のしびれで発症する したがって 訴えが上肢のしびれのみで頚部痛が無い場合 脊髄症か末梢性神経絞扼障害を考え 神経根症は除外してよい 6) 脊髄病変 ( 頚髄 胸髄 腰髄 ) のキーワード : 便秘 排尿障害 歩行障害 ( 特に下り ) 怒責による放散痛 運動歴 / 職業歴 ( 柔道 レスリング ラグビーなど ) 2) 昇りが苦手な場合は筋力低下 下りが苦手な場合には下肢の痙性 運動失調 ( 歩行障害については ) 上りよりも下りが辛いという病歴が取れたらしめたもの それだけで 下肢の痙性 運動失調 のどちらかがあると考えてよく 脊髄病変を強く疑う 一方 上りの方が辛い場合には 特異性がなく 鑑別には役立たない 5) 膀胱 直腸の機能を司る伝導路は 脊髄の中でも障害を受けやすい性質がある 5) 下肢の疼痛が主訴のときは神経根病変 ( 神経根痛 ) が多く しびれが主訴の時は脊髄症や馬尾神経障害のことが多い 6) 脊柱管狭窄症の時の坐骨神経痛は立っただけでも生じるが血管閉塞による下肢の痛みは歩行により出現する 6) ABI<0.9 のときは下肢血管閉塞を考える 足背動脈が触れれば血管閉塞が否定出来るわけではないことに注意 6) 足裏のしびれを見た時 内果後方の脛骨神経が屈筋支帯で圧迫される足根管症候群のことがあり 内果後方で Tinel を確認するとよい 6) 足背のしびれで第 1 2 足趾間に限局する時は深腓骨神経圧迫による前足根管症候群のことがあり この神経は足背動脈と伴走しているので足背動脈の Tinel を確認する 6) 母趾と第 2 趾の間は L5 の固有領域 外果の下方は S1 の固有領域 6) おもに中枢神経について 日常診療でのしびれのほとんどは 脳由来ではなく 末梢神経由来か脊髄由来のいずれか である しびれだけの脳卒中はない と断言していただいて結構 5) 大脳皮質の体部位局在を考えれば極めて局在的な皮質病変で単肢の感覚障害だけを生じ
るはずだが ( 中略 )( プライマリケア医の ) 日常診療で考慮する必要はない 5) 皮質下では 体部位局在はさらに不明確になり 視床あるいはそれ以下の病変では 単肢のしびれは起こりえない 5) たとえ純粋にしびれを呈する場合でも 脳由来のしびれは 片麻痺と同様の分布 すなわち片側の上下肢 あるいは非常にまれな形だが 片側の手と口周囲のしびれの形 (Cherio-Oral 型 ) をとる (2500 例の脳卒中患者のうち 運動麻痺がなく 純粋にしびれを呈した pure sensory stroke は 99 例で そのうち 80 例が片側の上下肢 残り 19 例が Cherio-Oral 型であったという論文を紹介している )5) ( 参考 ) 足背動脈 足関節の外果と内果を結ぶ線の中点から母趾と第 2 趾の間に線を引く この線状に足背動脈がある 6) 足背動脈は長母趾伸筋腱より外側にあり 内果と第 3 趾の付け根を結んだその中点あたりが最も触知しやすい 8) 足背動脈は 3~14% の患者で触れない 後脛骨動脈も 0~10% の患者で触れない 健常人で両方とも触れないのは 0~2% にすぎないので 症状のある時に両方の動脈が触れないことは末梢循環障害があることを強く示唆している (LR+ 14.9) 連続歩行やつま先立ちなどの負荷後も足背動脈を触知すれば末梢血管障害が無いことを示唆する (LR- 0.2) 8) 参考文献 1. 田中和豊. しびれ Step By Step! 初期診療アプローチ. 診療の達人 2008 年 3 月号. 2. 池田正行. えっ! シビレの診断それだけでいいの? マッシー池田の神経内科快刀乱麻! 診療の達人 2005 年 1 月号. 3. 澤田幹雄. 四肢のしびれ. 研修医セミナー 2005. 4. 犬塚貴. 手足のしびれ -よくみられる主訴に対する対処-.Geriatric Medicine( 老年医学 ), 42(1) : 47-49, 2004. 5. 池田正行. 手足のしびれ. 綜合臨牀, 55 : 807-811, 2006. 6. 仲田和正. しびれ-おおざらい. 講演会資料.2010 年 10 月 7. Medicalmnemonics.com http://www.medicalmnemonics.com/cgi-bin/return_browse.cfm?discipline=neurology&syste m=nervous&browse=1
8. 宮崎景ら. エビデンス身体診察. 東京, 文光堂,2007. 9. 田崎義昭ら. ベッドサイドの神経の診かた. 南山堂, 東京,1994. 10. 多発単神経炎. メルクマニュアル家庭版 http://merckmanual.jp/mmhe2j/sec06/ch095/ch095g.html