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8.1 インバータ用語解説 1.IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor) 従来のトランジスタなどのパワー素子に比べ 高速スイッチングが可能ですが 電流特性や耐圧等に優れています インバータのPW 制御のスイッチング周波数 (10kHz15kHz) を高くし 静音化することができます 2.IP(Intelligent Power odule) スイッチング用パワー素子に加えて それらの駆動回路 保護回路などを一緒にしたオールインワンのモジュールとしたもので 放熱の効率化と制御回路の簡素化 小型化に効果的です パワー IC(Power IC) とも呼ばれています 3.DSP(Digital Signal Processor) ディジタルシグナルプロセッサは チップ内に乗算器 加算器 プログラムメモリ データメモリなどを持ち 更にいくつかの動作を並列に処理することができます 数値演算処理 ( 加算 乗算処理 ) 速度の高速化を目的としたマイクロプロセッサの一種 4. オートチューニングモータ巻線の定数や負荷の慣性モーメントの大きさなどを インバータ自身で自動的に判断し 最適な制御を行う方式です HF-430 HF-430αシリーズは この機能を標準で搭載しています この機能によりをより有効に使うことができます 5. 漏れ電流配線ケーブルやモータは絶縁抵抗が正常であっても 大地との間に静電容量が存在するため 常に漏れ電流が流れます インバータでモータ駆動する場合 インバータ電源に含まれる高調波や高速でスイッチングを行うため 出力電圧が急峻に変化し 漏れ電流は商用電源に比べ増加します この漏れ電流は微小であり 歪波のため測定にあたっては注意する必要があります 6. 接地モータの絶縁物は 絶縁体であると同時に誘電体のため 大地間には静電容量があります 固定子粋を接地していないときは 大地との間に誘起電圧を生じることがあります さらに インバータ運転の場合 高速でスイッチングしているため漏れ電流が大きくなります したがって感電による事故を防ぐため 電動機の端子箱または固定子粋などの接地用端子 およびインバータに設けられている接地用端子は必ず確実に接地してください 接地の方法は 電気設備技術基準,JIS や内線規定などで表 8-1のように規定されています (5 章接地を参照 ) 8-2

表 8-1 接地基準の例接地工事の種類対象機器接地抵抗接地線の太さ色別 C 種接地工事 AC300V 以下 100Ω 以下 Ф1.6mm 以上 D 種接地工事 AC300600V 10Ω 以下 Ф1.6mm 以上 接地線接地端子 原則として緑色やむを得ない時には緑と黄のしま模様でもよい 7. 主回路ケーブル主回路ケーブルの選定は 一般のケーブルと同じく各種の配線基準 ( 電気設備技術基準 内線規程 その他メーカの技術資料など ) に準じて行います インバータとモータの間の配線距離が長い場合には 電圧降下が大きくなり 電動機のトルク不足を生じる場合があるので 次の式で示される電圧降下が通常定格電圧の 2% 以内となるよう ケーブルの太さを選定する必要があります V= 3 R L I 10-3 (8.1) V: 線間電圧降下 (V) R: ケーブル抵抗 (Ω/km) L: ケーブル長さ (m) I: 電流 (A) 特に低速運転においては 出力電圧が V/f に比例して変化するので電流値を一定とすると電圧降下の割合が増加することになり ケーブルサイズを太くするか またはケーブル長を短くします 更にインバータの出力電圧を高く設定するなどの対策が必要です 8. 電圧形インバータ直流回路にコンデンサを用いて過渡的に電圧を一定に保つ方式出力インピーダンスが小さく モータに対して電圧源として働きます 9. 電流形インバータ直流回路にリアクトルを用いて過渡的に電流を一定に保つ方式出力インピーダンスが大きく モータに対して電流源として働きます 表 8-2 電圧形と電流形の比較電圧形 電流形 基本構成 出力インピーダンス 小 ( 電圧源 ) 大 ( 電流源 ) 電源回生 回生用回路必要 回生用回路不要 直流平滑回路 小さなリアクトルとコンデンサ又はコンデンサのみ リアクトル 8-3

コンバータ部コンバータコンバータ部コンバータ10.PW 方式コンバータ部でインバータ出力電圧を制御せずインバータ部でチョッピングし パルス幅を制御して電圧を変化させると共に出力周波数を制御する方法 11.PA 方式コンバータ部で可変の直流電圧を作り インバータ出力電圧を制御し インバータ部で出力周波数を制御する方法 可変の直流電圧を作る方式は 位相制御によって可変直流電圧とする方式とチョッパ制御によって可変直流電圧とする方式があります (1)PW 方式 1 等パルス幅制御 ある周波数において パルス幅が等間隔 制御は簡単な構成ですが 高調波が多く含まれます ンバータ部高さ ( 電圧 ) 一定インバータ部イ部W T 1 周期 低い周波数 (W/T 小 ) 高さ ( 電圧 ) 一定 高い周波数 (W/T 大 ) 出力電圧波形 2 不等パルス幅制御 ( 正弦波 PW) 1/2 周期において パルス幅が中央で広く両端で狭い 制御は複雑ですが 低次高調波が少なくなります このため モータに流れる電流が滑らかになり正弦波に近くなります ンバータ部高さ ( 電圧 ) 一定インバータ部イ部W パルス幅を変える 1 周期 低い周波数 高さ ( 電圧 ) 一定 高い周波数 出力電圧波形 8-4

(2)PA 方式 PA 方式はコンバータ部にて電圧の振幅 ( パルスの高さ ) を変化させて 周波数と同期した可変の直流電圧をつくり インバータ部にて任意の周波数に変化させる制御方式です 出力波形は 方形波で第 5 第 7などの低次高調波が多いため モータのトルク脈動が出やすくなります コンバータ部コンバータ高さ ( 電圧 ) 変える部インバータ部インバータ部1 周期 出力電圧波形 低い周波数 高い周波数 高さ ( 電圧 ) が変わる 12.4 象限運転モータの回転方向 ( 正転 逆転 ) と発生トルク ( 正方向 逆方向 ) の組合せで 4 種類の運転モードがあり この4 種類の運転モードを実現する運転です 第 1 象限 ( 電動状態 正転 ) モータが荷重を巻き上げている状態 第 2 象限 ( 制動状態 逆転 ) 巻下ろしの状態 : モータのトルクは荷重が自重で荷下ろすのを逆向きの力 すなわち 正トルクを出して制動しつつ逆回転します 第 3 象限 ( 電動状態 逆転 ) 荷重が非常に小さい場合 巻上機のギアなどの摩擦のため自重だけでは降下しなくなり モータが巻き下ろし方向にトルクを出して巻き下ろす場合 第 1 象限に対して逆方向の電動状態 4 象限運転の例 T: モータトルク TL: 負荷トルク第 4 象限 ( 制動状態 正転 ) 巻き上げの状態 ( 第 1 象限 ) で はじめ高速の a 点で回っていたものを 急に低速の b 点にしようとしても 慣性のため急には変速できず その過渡状態においてモータが a 点から第 4 象限の a 点に移って制動状態 ( 発電作用 ) を呈し 慣性のもつエネルギーを放出して減速し b 点に落ち着きます なお 第 2 象限巻き下ろしで c 点で低速運転していたものを 急に高速の d 点にしようとすると 慣性のため上記と同様に c c d をたどり 過渡的に第 3 象限の運転が行われることになります 8-5

界磁電流13. ベクトル制御と 直流モータと誘導モータとの比較直流モータは下図のように界磁回路と電機子回路が機械的に分離しているため 界磁電流と電機子電流を別々に制御できます 磁束は界磁電流によってつくられ 磁束に直交する電機子電流はトルクになります 磁束を一定にして保てば発生トルクは電機子電流に比例する このためトルク制御性能が優れており 速くて安定した応答が得られます 一方 誘導モータでは固定子巻線へ一次電流が供給されるだけです この1 次電流には 磁束を発生させる励磁電流成分とトルク発生に必要な2 次電流成分が同時に含まれています このため では 各成分が相互に干渉し合うため 安定したトルク応答が得られません 電機子電流 Ф 磁束 1 次電流 I 1 固定子巻線 回転子 ( 電機子回路 )( 界磁回路 ) < 直流モータ> < 誘導モータ > 誘導モータのトルク発生メカニズム固定子に1 次電流を流すと回転磁界が生じる 回転子は磁束を切り 回転子に電圧が誘起されて2 次電流 ( 回転子電流 ) が流れます この回転子電流と磁束との相互作固定子用 ( フレミングの左手の法則 ) により 電磁力 ( トルク ) が発生します すなわち 磁束とそれに直交する 2 次電流の積がトルクとなります 2 次電流磁束力回転子 ( トルク ) ( 磁束 ) (2 次電流 ) <トルク発生のメカニズム> ベクトル制御前記のように 誘導モータでもトルク発生のメカニズムは直流モータと同じです そこに着目し モータ電流 回転速度 指令周波数 等価回路定数からマイコンを使って演算することにより 誘導モータの 1 次電流をベクトル的に磁束方向の励磁電流成分と2 次電流成分に分けて制御します I 2 I 1 ( トルクが大 ):I 0 を変えずに I 2 を大きくする I θ 2 I 1 I 0 ( トルクが小 ) ( 磁束 ) I 0 : 励磁電流 I 2,I 2 :2 次電流 I 1,I 1 :1 次電流 ( 励磁電流と2 次電流の合計電流 ) 8-6 < 誘導モータのベクトル図 >

励磁電流成分 ( 回転子磁束 ) を一定にして 周波数を変化させた場合の速度 - トルク特性は下図の ようになります これは直流他励モータの電機子電圧制御の特性と同様となります すなわち次の 関係に相当します ト < 直流モータ> < 誘導モータ> 電機子電圧 周波数 以上をベクトル制御方式といい 直流モータと同等以上の性能を得ることができます 電機子電流 2 次電流界磁磁束 回転子磁束 ベクトル制御周波数ベクトル制御方式のトルク特性 ベクトル制御では 誘導モータの回転子速度を検出する速度検出器 ( 速度センサ ) が必要ですが この回転速度をインバータの出力電流や電圧を基に演算によって推定し 速度センサを用いずに ベクトル制御を行う方法です センサ付ベクトル制御に比較し 回転子の2 次電流や磁束の値が正確ではないため 制御性能は やや劣りますが オープンループでも負荷を最適な状態で駆動することが可能です [ ベクトル制御 ] [ ] ベクトル制御 汎用インハ ータ インバータセンサレス EC ベクトル制御 速度検出信号 速度は電流値等から 計算により推定 は周波数に関係なく 磁束を一定とする制御ですが 低速時には一次抵抗の電圧降下により 必要な磁束が確保できなくなり トルクが低下します トルクブーストを加えれば 低速におけるトルクは ある程度増加しますが 最適な制御状態で ないとトルク / 電流比が低下し 基底周波数と同等のトルクを得ることはできません ルク可変周波数 モータの運転状況 可変周波数 電圧 最適周波数 電圧 一方通行でモータの状態がインバータには わかりません 8-7

次電流トルク(%)ルク(%) と一般の の相違 項目 制御 速度センサ不要不要 高速運転 トルクの大きさは面積に比例2可変速時の電流成分 低速運転 出力トルク : 小 磁束 : 小 低速時のトルク 低速でも磁束が確保される為 トルク低下無し 低速では磁束減少 トルク低下 ブースト調整 不要 要 トルク / 電流 ( 低速 ) 1.2 1.0 速度変動率 ( 基底回転数において ) ±1% 程度 ±5% 程度 < 出力周波数 - トルク特性例 > 150 125 200 ト100 150 75 50 100 50 25 0 1 6 20 60 100 120 出力周波数 0 10 20 30 40 50 60 出力周波数 (Hz) 8-8