健康的な暮らしのためのらしのための情報 Vol.7 平成 21 年 5 月 1 日 TEL 0770-25-1600 特集食道がんのがんの話 1. 食道がんとは 1) 食道の構造構造と機能食道は のど ( 咽頭 ) と胃の間をつなぐ長さ 25cm ぐらい 太さ2~3cm 厚さ4mm の管状の臓器です 食道の大部分は胸の中 一部は首 ( 約 5cm 咽頭の真下) 一部は腹部( 約 2cm 横隔膜の真下) にあります 食道は身体の中心部にあり 胸の上部では気管と背骨の間にあり 下部では心臓 大動脈と肺に囲まれています 上図の青い部分が食道です 2) 食道がんがんの発生部位発生部位と細胞日本人の食道がんは 約半数が胸の中の食道の真ん中から 次に 1/4 が食道の下 1/3 に発生します 食道がんは食道の内面をおおっている 粘膜の表面にある上皮から発生します 食道の上皮は扁平上皮でできているので 食道がんの 90% 以上が扁平上皮癌です 欧米では胃がんと同じ腺上皮から発生する腺癌が増加しており 現在では半数以上が腺癌です 腺癌のほとんどは胃の近くの食道下部に発生します 生活習慣 食生活の欧米化により 今後はわが国でも腺癌の増加が予想されます 3) 食道がんのがんの統計年齢別にみた食道がんの罹患 ( りかん ) 率 死亡率は ともに 40 歳代後半以降増加し始め 特に男性は女性に比べて急激に増加します 罹患率 死亡率ともに男性のほうが高く 女性の5 倍以上です 死亡率の年次推移は 男性では戦後大きな増減はなく近年は漸減傾向 女性では 1960 年代後半から 80 年代後半まで急激に減少し近年は漸減傾向にあります 一方 罹患率は 男性では 1975 年以降増加傾向 女性では 1975 年以降 80 年代後半まで減少傾向にあり その後はっきりとした増減の傾向は見られません 4) 食道がんのがんの発生要因食道がんについては 喫煙と飲酒が確立したリスク要因とされています 特に扁平 ( へんぺい ) 上皮がんではその関連が強いことがわかっ
ています また 喫煙と飲酒が相乗的に作用してリスクが高くなることも指摘されています 食道がんが多く見られる南ブラジルやウルグアイでは 熱いマテ茶を飲む習慣があります 中国や日本 香港からも 熱い飲食物が食道粘膜の炎症を通して 食道がんのリスクを 上げることを示す研究結果が多く報告されています 熱いものを飲んだり食べたりする食習慣が おそらく確実なリスク要因でしょう 近年 欧米で急増している腺がんについては 胃 食道逆流症に加えて 肥満で確実にリスクが高くなるとされています 予防要因では 野菜 果物の摂取がおそらく確実とされています 2. 症状 1) 無症状健康診断や人間ドックの時に 内視鏡検査などで発見される無症状の食道がんも 20% 近くあります 無症状で発見された食道がんは早期のがんであることが多く 最も治る確率が高いがんです 2) 食道がしみるがしみる感じ食べ物を飲み込んだときに胸の奥がチクチク痛んだり 熱いものを飲み込んだときにしみるように感じるといった症状は がんの初期のころにみられるので 早期発見のために注意してほしい症状です 軽く考えないで内視鏡検査を受けることをお勧めします がんが少し大きくなると このような感覚を感じなくなります 症状がなくなるので気にしなくなり 放っておかれてしまうことも少なくありません 3) 食物がつかえるがつかえる感じがんがさらに大きくなると食道の内側が狭くなり 食べ物がつかえて気がつくことになります 特にまる飲みしやすい食物 ( かたい肉 すしなど ) を食べた時 あるいはよくかまずに食べた時に突然生ずることが多い症状です このような状態にな ってもやわらかいものは食べられるので 食事は続けられます また 胸の中の食道が狭いのにもっと上ののどがつかえるように感じることがあります のどの検査で異常が見つからない時は食道も検査しましょう がんがさらに大きくなると食道を塞いで水も通らなくなり 唾液も飲み込めずにもどすようになります 4) 体重減少一般に進行したがんではよくみられる症状ですが 食べ物がつかえると食事量が減り 低栄養となり体重が減少します 3ヶ月間に5~ 6kg の体重が減少したら注意して下さい 5) 胸痛 背部痛がんが食道の壁を貫いて外に出て まわりの肺や背骨 大動脈を圧迫するようになると 胸の奥や背中に痛みを感じるようになります これらの症状は他の病気でもみられますが 肺や心臓の検査だけでなく食道も検査してもらうよう医師に相談して下さい 6) 咳食道がんがかなり進行して気管 気管支 肺へおよぶと むせるような咳 ( 特に飲食物を摂取する時 ) が出たり血のまじった痰が出るようになります
7) 声のかすれ食道のすぐわきに声を調節している神経があり これががんで壊されると声がかすれます 声に変化があると耳鼻咽喉科を受診する場合が多いのですが 喉頭そのものには腫瘍や炎症 はないとして見すごされることもあります 声帯の動きだけが悪い時は 食道がんも疑って食道の内視鏡 レントゲン検査をすることをお勧めします 3. 診断 食道がんの診断方法には 一般に X 線 ( レントゲン線 ) による食道造影検査と内視鏡検査があります その他 がんの拡がりぐあいを見るために CT MRI 検査 内視鏡超音波検査 超音波検査などを行います がんの進行程度を正確に診断することは 治療法を選択する上で非常に重要なことです 1) 食道造影検査 ( レントゲン検査 ) バリウムを飲んで それが食道を通過するところをレントゲンで撮影する検査です 内視鏡検査が普及した今日でも 造影検査は苦痛を伴わず検診として有用です 造影検査では がんの場所やその大きさ 食道内腔の狭さなど全体像が見られます 2) 内視鏡検査内視鏡検査は内視鏡 ( ビデオスコープ ) を用いて 直接 消化管粘膜を観察する方法です 内視鏡検査は病変を直接観察できることが大きな特徴です 病変の位置や大きさだけでなく 病変の数 病巣の拡がりや表面の形状 色調などから 病巣の数や ある程度のがんの進展の深さを判断することができます もう1つの内視鏡検査の大きなメリットは 直接組織を採取し ( 組織生検 ) 顕微鏡でがん細胞の有無をチェックすることができ 病変の診断に役立つことです ためには最も優れた診断法といえます リンパ節転移の存在も頸部 胸部 腹部の 3 領域にわたって検索ができます さらに肺 肝臓などの転移の診断にも欠かせません 進行したがんにおいては進行度を判定するために最も重要な検査です MRI 検査は CT とほぼ同等の診断能力がありますが リンパ節をはじめとして描出能の点で CT をしのぐものではありません 3) CT MRI 検査 CT( コンピューター断層撮影 ) はコンピューターで処理することで身体の内部を輪切りにしたように見ることができる X 線検査です CT 検査は がんと周囲臓器との関係を調べる
4) 超音波内視鏡検査超音波内視鏡は 外見上は内視鏡と変わりないのですが 食道内壁の表面を観察する内視鏡検査と異なり 内視鏡の先端についた超音波装置を用いて粘膜下の状態 食道壁そのものや食道壁外の構造などを観察することができます つまり 食道がんがどのくらい深く進展しているか 周りの臓器へ喰い込んでいないか 食道の外側にあるリンパ節が腫れていないか ( リンパ節転移の有無 ) などについてのより詳細な情報を得ることができます 5) 超音波検査体外式 ( 体表から観察する ) の超音波検査は腹部と頸部について行います 腹部では肝臓への転移や腹部リンパ節転移の有無などを検索 し 頸部では頸部リンパ節転移を検索します 頸部食道がんの場合は 主病巣と気管 甲状腺 頸動脈などの周囲臓器との関係を調べるため行います 6) PET 検査 PET 検査では 放射性ブドウ糖を注射しその取り込みの分布を撮影することで悪性腫瘍細胞を検出します 食道がんでも進行度診断での有効性が報告されています 7) 腫瘍マーカー他のがんにおける場合と同様に 腫瘍マーカーは進行した悪性腫瘍の動態を把握するのに使われているのが現状であり 早期診断に使えるという意味で確立されたものは残念ながらまだありません 4. 治療 各種検査の結果を総合的に評価して がんの進展度と全身状態から治療法を決めます 食道がんの治療には大きく分けて 4つの治療法があります それは 内視鏡治療 手術 放射線治療と抗がん剤の治療です その他に温熱療法や免疫療法などを行っている施設もあります ある程度進行したがんでは 外科療法 放射線療法 化学療法を組み合わせてこれらの特徴を生かした集学的治療も行われます 以下 各治療法について説明します 1) 外科療法手術は身体からがんを切りとってしまう方法で 食道がんに対する現在最も一般的な治療法です 手術ではがんを含め食道を切除します 同時にリンパ節を含む周囲の組織を切除します ( リンパ節郭清 ) 食道を切除した後には食物の通る新しい道を再建します 食道は頸部 胸部 腹部にわたっていて それぞれの部位によりがんの進行の状況が異なっているので がんの発生部位によって選択される手術術式が異なります 外科療法の合併症手術に続いて発生する余病 ( 合併症 ) は肺炎 縫合不全 ( つなぎめのほころび ) 肝 腎 心障害です これらの合併症が死につながる率 すなわち手術死亡率 ( 手術後 1ヵ月以内に死亡する割合 ) は2~3% です これらの発生率は 手術前に他の臓器に障害をもっている人では高くなります 2) 放射線療法放射線療法は手術と同様に限られた範囲のみを治療できる局所治療ですが 機能や形態を温存することをめざした治療です 高エネルギ
ーのX 線などの放射線を当ててがん細胞を殺します 放射線療法は治療の目的により大きく 2つに分けられます がんを治してしまおうと努力する治療 ( 根治治療 ) と がんによる痛み 出血などの症状を抑さえようとする治療 ( 姑息治療 対症治療 ) です 放射線療法の副作用放射線療法の副作用は 主には放射線が照射されている部位におこります そのため治療している部位により副作用は異なります また副作用には治療期間中のものと 治療が終了してから数ヶ月 ~ 数年後におこりうる副作用があります 治療期間中におこる副作用は 頸部を治療した場合 嚥下時の違和感 疼痛 咽頭の乾き 声のかすれ 胸部を治療した場合は嚥下時の違和感 疼痛 腹部を治療した場合は腹部不快感 嘔気 嘔吐 食欲低下 下痢などの症状が出る可能性があります 照射部の皮膚には日焼けに似た症状が出てきます その他に身体のだるさ 食欲低下といった症状を訴える方もいます 血液障害として白血球が減少することがあります 以上の副作用の程度には個人差があり ほとんど副作用の出ない人も強めに副作用が出る人もいます 症状が強い場合は症状を和らげる治療をしますが 時期がくれば自然に回復します 治療が終了してからおこりうる副作用としては 心臓や肺が照射部に含まれているとこれらの臓器に影響が出ることがあります 脊髄に大線量が照射されると神経麻痺の症状が出ることがありますが 神経症状が出る危険がないとされている程度に照射線量を設定するのが普通です 3) 化学療法 ( 抗がんがん剤治療 ) 抗がん剤治療はがん細胞を殺す薬を注射します 抗がん剤は血液の流れに乗って手術では切りとれないところや放射線を当てられないところにも 全身に行き渡ります 多くは他の臓器にがんが転移している時に行われる治療ですが 単独で行われる場合と 放射線療法や外科療法との併用で行われる場合とがあります 化学療法の方法抗がん剤治療は 何種類かの抗がん剤を組み合わせて使うほうがよく効きます 抗がん剤として現在 フルオロウラシルとシスプラチンの併用療法が最も有効とされています 抗がん剤は点滴の中に混ぜて4~5 日間続けて注射します 腎臓の障害を防ぐために1 日に 2,500~ 3,000ml の点滴を同時に行います このために入院が必要です これが 1 回分の治療で 3 週間ほどの休みをおいてもう1 回行い 効果があればさらに繰り返します 効果がない場合は別の抗がん剤に切り替えます 抗がんがん剤の副作用副作用は個人差がありますが 薬剤使用中は嘔気 嘔吐 食欲不振はほとんどの人にある程度認められます しかし 薬剤使用終了後 2 ~3 日で回復の兆しがみられます また毎回 投与前には血液 腎機能などのチェックが必要です 特にシスプラチン投与では腎障害をおこすことがあります したがって薬剤使用中 3,000ml ぐらいの大量の点滴が行われ 利尿剤を併用し 十分な尿排泄をうながす必要があります そのため夜間頻回にトイレに行くことから不眠となりがちです 尿が出ること
は副作用が出ないことにつながるので心配はありません また 白血球 血小板が減少することがあるので 二次的な細菌感染の引き金になる風邪をひかないことをはじめとして その他の細菌感染を受けないよう注意が必要です 4) 化学放射線療法食道癌に対して放射線療法単独よりも化学療法と併用して行ったほうがより効果が高いことがわかっています また 放射線と化学療法を順番に行う方法と 同時併用する方法の比較では 同時併用のほうで効果が高いとされています 現在放射線照射を外照射にて 28 回 ~30 回行いながらフルオロウラシルや シスプラチンといった抗癌剤を同時に投与する方法が一般的に行われています 化学放射線療法には 目的によって 根治的化学放射線療法と 緩和的化学放射線療法があります 化学放射線療法の副作用化学療法と放射線療法を併用することで 効果は上昇しますが 副作用も増加します 食欲不振 口内炎 食道炎や白血球減少などは両者ともに引き起こす可能性があります 副作用の出る時期やその対策を前もって頭に入れておいて 早め早めに薬や食事の工夫などで対応していくことをおすすめします 出たらダメというわけではなく 副作用をいかに安全にコントロールしながら治療を続けるかがポイントです 5) 内視鏡的粘膜切除術食道壁の粘膜下層までにとどまる 表在型 のがんのうち 粘膜層にとどまりリンパ節転移のない食道がんを早期食道がんと定義しています 内視鏡的粘膜切除術 (EMR) は この粘膜にとどまったがんを内視鏡で見ながら食道の内側から切り取る治療法です 1 時間くらいで治療でき 翌日から食事も可能で 入院も短期間で済みます 治療後は食道粘膜が再生してきますので 治療前と同様の生活ができます ただし 広範囲に切り取った場合には治療した痕が引き攣れたり 狭くなる場合があります 過度に狭くなった場合には 内視鏡を用いた拡張術 ( 内腔を広げる治療 ) が必要になることがあります 切除した組織を顕微鏡で詳細に検索した結果 もし治療前診断と異なりがんがより深く進展していたり リンパ管や静脈へがんが及んでいた場合には がん細胞が食道の外側のリンパ節などに広がっている可能性があるため 追加の外科手術や放射線治療 化学放射線治療が必要になります 6) 食道内挿管法がんによる食道の狭窄のために食事摂取が困難な場合に シリコンゴムや金属の網でできたパイプ状のものを食道の中に留置して食物が通過できるようにする方法です 食道に穴があいて食物が外に漏れて肺炎などをおこす場合には 穴をおおうためにも使います 手術をしなくとも内視鏡を用いてできるので負担が少なく QOL 向上のためには有用な治療法です ( 国立がんセンターがん情報サービスから抜粋 )
1 副院長半田裕二先生 専門脳神経脊椎脊髄外科 2 小児科巨田元礼先生 専門小児科一般主に小児神経 脳ドッグ ( 半日コース ) を 6 月から週 1 回 開始します 脳ドッグの内容は 身体計測 血液 生化学検査 心電図 頭部 MRI 脳血管 MRA 頸動脈超音波検査 脳神経外科医師による神経的学的診察です ( オプションとして認知症スクリーニングを行います ) 費用は 35,000 円です 一時的に手足の力が抜けたり意識がもうろうとする発作を経験した方 血圧が高く 頭痛 めまいやふらつきがある方 手足のしびれがある方 最近物忘れが強くなった方など 動脈硬化や 認知症が心配な方は脳ドッグをお勧めします 詳しくは医事係 脳神経脊椎脊髄外科受付でご相談下さい
日時平成 21 年 5 月 23 日 ( 土曜日 )13:00~16:00 場所美浜町保健福祉センター はあとぴあ 美浜町郷市 25-20 美浜町役場隣電話 0770-32-3111 13:00~14:00 地域地域で支えあうえあう健康健康 看 護 師 骨密度測定 AED の実技体験 栄 養 士 食事についてのご相談 薬 剤 師 薬についてのご相談 臨床検査技師 あなたの血管年齢を測定します 14:00~16:00 講演 1. 経鼻胃カメラの実際 美浜町東部診療所所長村寄文人先生 2. 福井病院における放射線検査 国立病院機構福井病院診療放射線技師長粟井一夫先生 3. 手のシビレ 頸椎( 首 ) の病気 国立病院機構福井病院副院長半田裕二先生 当院周辺の皆様には 会場までのバスの運行を検討 しています 詳しいことは福井病院地域連携室まで お問い合わせ下さい