佐見 植田 結びつくと考えられている ₅). 畑は, その疾病をいかに深刻なものととらえていたとしても, 罹患の可能性がないと考えている場合には, その疾病への恐れは存在しないことになり, 結果としていかなる予防行動も起こりえないとしている. また, この 重大性 の自覚と 罹患性 の自覚の ₂ つ

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図 ₁ 試験体 図 ₂ 試験体の接合金物 図 ₃ 鋼製金物詳細 表 ₁ 試験体名と形態 斜材 ( 段組数 ( 段 ) 設置形態 B₄₀-₃D ₄₀ ₁₀₅ ₃ 対角止め B₄₀-₃C₁ ₄₀ ₁₀₅ ₃ 中央止め B₄₀-₃C₂ ₄₀ ₁₀₅ ₃ 中央止め B₄₀-₁D ₄₀ ₁₀₅ ₁ 対角止め

標準範囲のBMI でHbA1c 高値の若年女性の生活習慣病リスクに関する検討

問 題 1 ₁ ₃ ₅ ₂ ₄ ₆ 問 題 2 ₁ ₂ ₃ 問 題 3 ₁ ₂ ₃ ₄ ₅ 2 2

₁₀) 表 1. 穀類 100 あたりの栄養成分 エネルギー kcal タンパク質 脂質 炭水化物 カリウム m 水溶性食物繊維 不溶性食物繊維 大麦押麦 ₃₄₀ ₆.₂ ₁.₃ ₇₇.₈ ₁₇₀ ₆.₀ ₃.₆ 大麦米粒麦 ₃₄₀ ₇.₀ ₂.₁ ₇₆.₂ ₁₇₀ ₆.₀ ₂.₇ 小麦 ₃₃₇ ₁

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ⅠⅠ 1 Ⅰ Ⅰ 2 Ⅰ 3 Ⅰ Ⅰ Ⅰ 4 Ⅰ 4 Ⅰ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅰ Ⅲ 1 791

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下里侑子, 他 写真 ₁ 胸痛自覚時の胸部 X 線右胸水を認めた. 写真 ₂ a を開始された. 移植 ₉ 年後より拘束性換気障害 (%VC ₄₁% FEV₁.₀ % ₁₁₆%) を認めたが, 慢性咳嗽の増悪はなく,SpO ₂は大気下で₉₈% と保たれ Activity of daily life

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副作用の 罹患性 の自覚を高める保健授業 実践報告 市販薬の使用における副作用の 罹患性 の自覚を高める保健の授業 佐見由紀子 * ₁ 植田誠治 * ₂ 目的 : 中学校で取り上げる市販薬の使用における副作用の 罹患性 の自覚を高める教材を用いた保健の授業を行い, その効果を検討することを目的とした. 方法 : 平成 ₂₆ 年 ₆ 月の同日に, 都内国立大学附属 A 中学校 ₃ 年生 ₄ クラス₁₆₀ 名を対象に, 準実験計画研究デザインに基づきクラス単位で割付した. ₂ クラス₈₀ 名には, 副作用の 罹患性 の自覚に焦点を当てた事例教材を用いた授業を実施し, 別の ₂ クラス₈₀ 名には, 自然治癒力に焦点を当てた教材を用いた授業を実施した. 授業の ₁ 週間前と ₁ 週間後, ₃ ヵ月後に無記名自記式の質問紙調査から, 副作用の 罹患性 の自覚, 副作用への意識, 副作用予防の自己効力感を得点化し, その変化を分析した. なお, 学習保障として, 全てのクラスに対して, ₃ ヵ月後の調査が終了した後に, 授業で取り上げなかった教材についてのプリントを配布し, 授業者が補足説明を行った. 結果 : 副作用の 罹患性 の自覚に焦点を当てた授業では, 副作用の 罹患性 の自覚の ₃ 項目全て (p< ₀.₀₀₁), 副作用への意識の ₃ 項目全て (p<₀.₀₀₁), 副作用予防の自己効力感では, ₂ 項目全て ( 薬剤師に質問することができる :p=₀.₀₀₃, 説明書を読むことができる :p<₀.₀₀₁) において有意な差が認められた. また, 授業の ₁ 週間前に比して ₁ 週間後の得点の中央値が高くなった. ただし, 副作用予防の自己効力感は, ₃ ヵ月後には授業前に戻っていた. 一方, 自然治癒力に焦点を当てた授業では, 副作用の 罹患性 の自覚に変化はなかった. 副作用への意識と副作用予防の自己効力感では, 有意な差が認められ, 授業の ₁ 週間前に比して ₁ 週間後に得点の中央値が低くなった. 結論 : 罹患性 の自覚に焦点を当てた事例教材を用いた授業では, 副作用の 罹患性 の自覚だけでなく, 副作用への意識に望ましい変化がみられた. 副作用予防の自己効力感の変化の持続については, 今後の検討課題である. 日健教誌,₂₀₁₇;₂₅(₄):269-279 キーワード : 保健の授業, 中学校, 副作用の 罹患性 の自覚, 市販薬の適正使用 Ⅰ. 目的 保健の授業で取り上げる健康問題については, 学習者が 過去のこと, 他人のことと受け止めてしまい, 授業に意欲を示さない, 集中しないという問題がある ₁) ことが指摘されている. すなわち, 保健の授業では, 取り上げる健康問題が, ど * ₁ * ₂ 東京学芸大学 聖心女子大学大学院聖心女子大学連絡先 : 佐見由紀子住所 : ₁₈₄-₈₅₀₁ 小金井市貫井北町 ₄-₁-₁ 東京学芸大学 の程度, 学習者にとって身近な問題であると感じられるかが, 学習意欲の向上に関係する. これまでの健康行動に関する研究では, 自分が病気に罹ったり, 事故に遭ったりする可能性の認識を, 罹患性 の自覚とし, 病気や事故が起こった後の結果が重大であるという 重大性 の自覚と, この 罹患性 の自覚により, 特定の疾病等の恐ろしさの自覚が生まれるとされている ₂-₆). これらが, 勧められた予防的保健行動をとる可能性に結びつく ₁ つめの流れであり, さらに, ₂ つめの流れとして, 保健行動の有効性 が 保健行動の障害 を上回る場合に保健行動をとる可能性に Copyright Japanese Society of Health Education and Promotion 269

佐見 植田 結びつくと考えられている ₅). 畑は, その疾病をいかに深刻なものととらえていたとしても, 罹患の可能性がないと考えている場合には, その疾病への恐れは存在しないことになり, 結果としていかなる予防行動も起こりえないとしている. また, この 重大性 の自覚と 罹患性 の自覚の ₂ つの因子を 疾病への主観的評価 と位置づけ, 保健行動の有効性 と 保健行動の障害 の ₂ つの因子を 保健行動の主観的評価 と位置づけている ₆). 中学校における保健の授業では, 新たに学習する疾病や健康問題を, 生徒がまずどのように受け止めるかという疾病や健康問題への主観的評価が重要であり, そこで, 学ぶ価値があると判断すると, その後の保健行動についての評価につながる. そのため, 本研究では, 教材の工夫をするにあたり, 重大性 の自覚と 罹患性 の自覚という疾病や健康問題への主観的評価に着目することとした. さらに, 高橋は, エイズ教育の海外での教材を紹介し, 日本では, エイズの恐ろしさ, つまり 重大性 に比して, 感染可能性, つまり 罹患性 の自覚に関する内容が不足していることを指摘している ₅). また, 徐らは, 健康情報に基づく認識が自分自身及び自分の生活に意味あるものとして, 個人の記憶にとどまることを, 健康認識の個人化 と名づけ, 他人事意識を変化させ, 健康メッセージを 自分の事 としてとらえるための教材を, 主に看護学生や助産師対象の健康教育の事例をもとに紹介している ₇). しかしながら, 生徒を対象とした保健の授業においては, 病気や事故の 罹患性 の自覚に焦点を当てた教材の提案やその効果性を検証した研究はみられない. 平成 ₂₀ 年度の学習指導要領から, 中学校の保健の授業に医薬品の適正使用の内容が導入された. この内容は, 健康な生活と疾病の予防 の領域に位置づけられ, 医薬品には, 主作用と副作用があることを理解できるようにする. 医薬品には, 使用回数, 使用時間, 使用量などの使用法があり, 正しく使用する必要があることについて理解できるようにする ことが主な学習内容とされている ₈). そのため, 昨今の医薬品の適正使用に関する中学生対象の実践研究では, 医薬品の種類や体内動態, 副作用, 正しい使用法などの学習内容が中心となっている ₉-₁₁). しかし, 医薬品の適正使用の学習において, 生徒にとって身近な市販薬を取り上げた場合でも, 日常的に使用している生徒もいれば, ほとんど使用したことのない生徒もいる. そのため, 市販薬の適正な使用法を学習しても, 自分には関係のないことと考え, 生活への応用に意識が向かない生徒が出てくる可能性がある. よって, すべての生徒が医薬品や市販薬を適正に使用しようという行動意図をもつためには, 何らかの教材の工夫が必要である. そこで, 本研究では, 医薬品の副作用について具体的にイメージし, 自分にも起こりうる可能性があるとの自覚 を, 医薬品における副作用の 罹患性 の自覚と位置づけ, 実際に, 中学生自身が自分で市販薬を使用する場面を想定し, どのような行動をとると問題が生じうるのか, を具体的にイメージすることのできる事例教材の開発を試みた. その教材を用いた授業を実践し, 効果を検証した. Ⅱ. 活動の実際 1. 研究方法および対象本研究では, 準実験計画研究デザインにより, クラス単位で ₂ つの型の授業について割付を行った. 対象は, 東京都内国立大学附属 A 中学校 ₃ 年生 ₄ クラス₁₆₀ 名であり, そのうち ₂ クラス₈₀ 名には, 副作用の 罹患性 の自覚に焦点を当てた市販薬適正使用の教材を取り上げた授業 ( 以下, 罹患性 焦点型授業とする ) を実施した. 別の ₂ クラス₈₀ 名には, 副作用の 罹患性 の自覚とは異なった視点として, 自然治癒力に焦点を当てた市販薬適正使用の教材を取り上げた授業 ( 以下, 自然治癒力焦点型授業とする ) を実施した. 授業は, 270 25 4 2017

副作用の 罹患性 の自覚を高める保健授業 平成 ₂₆ 年 ₆ 月の同日に, ₄ クラスに実施し, ₁ 時間の授業時間は₅₀ 分であった. 2. 授業内容について本研究における 罹患性 焦点型授業と, 自然治癒力焦点型授業の学習目標は同一とし, 学習内容では, 展開部分 ₁ のみで異なる教材を用いたが, 学習内容として押さえる点は同一になるようにした. 罹患性 焦点型授業では, 従来どおりの市販薬適正使用の授業内容に, 副作用の被害にあった事例を詳しく紹介し, 追体験できるような文章教材を加えて授業を実施した. 木村らは, エイズ教育の研究結果をもとに, エイズに関する不安や恐怖の感情が強い者ほど, 患者や感染者を排除する態度が強いことから, エイズへの脅威を強めすぎないよう指摘している ₁₂). このことから, 副作用の 罹患性 の自覚に焦点化し, かつ 重大性 の自覚を過度に強調しないよう配慮して教材を作成した. また, 自然治癒力焦点型授業では, 市販薬適正使用の授業内容として, 対象となる中学校で従来から取り上げている, かぜの症状の意味や日ごろから行っているかぜの予防や対処法としての行動の意味について理解する教材を用いて授業を実施した. ( ₁ ) 授業の目標いずれの授業も学習目標は, 共通であり, 次の ₅ 点とした. 1 市販のかぜ薬の適正な使い方に関心をもつことができる ( 関心 意欲 態度 ). 2かぜ薬の効能は, かぜの諸症状の緩和であり, 治しているのは自然治癒力であることを知る ( 知識 理解 ). 3 市販薬を適正に使用するには, 専門家に相談する, 説明書の用法 用量以外の注意点もよく読むことが必要であると理解することができる ( 知識 理解 ). 4 重篤な副作用が起きる場合もあり, 自分にも副作用が起きる可能性があると気づくことが できる ( 思考 判断 ). 5 自分の今後の市販のかぜ薬の適正な使い方を考えることができる ( 思考 判断 ). ( ₂ ) 学習の導入部分の内容 ( ₅ 分 ) いずれの授業においても, 導入部分の内容は, 共通とした. 1かぜをひいていると感じている人は, どのような症状からそう判断したかを考える. 2これまでの経験から, 特有の症状で かぜ であると判断していたが, その判断は本当にいつでも正しいのか考えてみる. ( ₃ ) 学習の展開部分 ₁ の内容 (₂₀ 分 ) 展開部分 ₁ では, 罹患性 焦点型授業と自然治癒力焦点型授業で異なる内容の教材を取り上げた. それぞれの教材の内容は次のとおりである. ₁) 罹患性 焦点型授業の教材の内容 1 事例と発問の内容 A という中学校教員の体験談をもとにした文章教材を作成した.A のおかれている生活状況や気持ち, 考え, 行動が記載されている文章を読む. 事例の主な概要は, 次のとおりである. A が第一子を出産し, 睡眠不足の末, 体調不良となり, かぜ症状が出現した. 子どもを置いて病院に行くことができず, あることをした結果, 数日間は体調がよかった. 数日後, 四肢, 体幹, 眼球, 手のひら, 足の裏, 呼吸器にじんましんが出た. その後, 受診し, あることをやめ, 肝臓の働きを高める薬を飲んだ結果, 大事には至らなかった. その後, じんましんの症状は, ₁ 年間続き, 散歩の後に, じんましんで呼吸困難になったこともあった. この事例を読み, あることとはどのようなことか, 自分だったらどのようなことをすると思うか との発問から, 自分はこの状況でどうするかを考える. 2あることとは, 市販のかぜ薬を飲むという行 271

佐見 植田 為であったことを知り, 蕁麻疹は, 薬の副作用であること, 主な効能を主作用ということについて理解する. また, かぜを治しているのは, 自然治癒力であり, 薬は補助的に使用する必要があることを知る. 3 事例 A のその後の状況について, 事例の続きを読む. 主な内容は次のとおりである. じんましんが軽快して ₁ 年以上経過した後,A が読んだ新聞記事に, 自分と同様にじんましんが全身に出た後に, 失明してしまった人や死亡してしまった人がいることを知る. その後もあることをするとじんましんが出るため, 使用することができないでいる. また, 事例を読んだ後,A が実際に読んだという新聞記事を読み,A のその時の気持ちを考える. ₂) 自然治癒力焦点型授業の教材の内容自然治癒力焦点型授業では, 自分たちのクラスや学年で, かぜをひいたときに, どのような対処を行っているか事前にアンケート調査した結果を発表し, 生徒に学習意欲をもたせるようにした. 1かぜをひいた時にどのような行動をとっているか, 事前アンケートの結果を知る. 早く寝る₄₉%, 市販のかぜ薬服用 ₃₂%, 水分補給 ₂₂%, 何もしない₁₂.₂%. 日本では多くの市販のかぜ薬が販売され, 購入されていることを知る. 2 市販のかぜ薬の効能 ( 主作用 ) は, 症状の緩和であり, かぜを治しているのは, 体に備わる自然治癒力であることを知り, 自然治癒力の例として, 発熱と, せき くしゃみの意味を理解する. 3かぜを治すために, 睡眠をとる, 体を温めるなどの行動の意味を理解する. どのような場面で薬を補助的に使うとよいかを考える. ( ₄ ) 学習の展開部分 ₂ の内容 (₁₅ 分 ) 展開部分 ₂ では, いずれの授業においても共通の内容とした. 1 新聞記事から, 市販のかぜ薬による副作用の 例として, 蕁麻疹が出たり, 重症な場合には, 失明したり, 亡くなったりした例もあることを知る. 副作用の予防には, 用法 用量を守ることがまず重要であることを知る. また, 用法 用量を守っていても副作用が生じる場合もあることを知る. 2 薬の説明書をよく読むことで₂₀₀₀ 年以前と以後の内容において, 新たに詳しく記載されるようになった箇所を見つける. 新しく記載された内容として, 重篤な副作用の病名や症状, 飲んでもよい回数などが具体的に記載されるようになったことに気づく. また, あらためて, 正しい使用法や注意事項を読む. 3これまでの自分の市販のかぜ薬の使い方を振り返る. 使用したことのある者でも, 薬を飲む際, 医薬品の外箱に記載された用法 用量は見るが, 箱の中にある説明書までは読んだことがないこと, 注意事項までは詳しく読んだことがないことを確認する. 4これから自分が市販のかぜ薬を買うとき, 使うときにどのような行動をとったらよいかを考え, 発表する. 説明書をよく読むこと, 専門家に相談することの重要性を確認する. ( ₅ ) 学習のまとめ部分の内容 (₁₀ 分 ) 自由記述の感想文を記入する. 感想文を発表し, 共有する. Ⅲ. 評価方法 1. 分析方法 ( ₁ ) 授業前後の意識等の変化授業の効果をみるために, 授業の ₁ 週間前 ( 以下, 事前とする ) と授業の ₁ 週間後 ( 以下, 直後とする ), 授業の ₃ ヵ月後 ( 以下, ₃ ヵ月後とする ) に, 生徒を対象に無記名自記式の質問紙調査を行った. また, 事前, 直後, ₃ ヵ月後の調査結果を対応させるため, ₃ 回の回収順が同様になるよう席順で回収し, 回収後に通し番号を付した. ₁) 質問紙の内容について質問紙の内容は,1 副作用の 罹患性 の自 272 25 4 2017

副作用の 罹患性 の自覚を高める保健授業 覚 : 自分にも副作用で蕁麻疹が出る可能性がある 自分も副作用で失明する可能性がある 自分も副作用で死亡する可能性がある の ₃ 問,2 副作用への意識 : 市販薬の副作用で蕁麻疹が起きる 市販薬の副作用で失明する 市販薬の副作用で死亡する の ₃ 問,3 副作用予防行動の自己効力感 : 市販薬の副作用を防ぐために, 購入の際, 薬剤師に相談することができる 市販薬の副作用を防ぐために, 使用の際, 説明書を読むことができる の ₂ 問,4 市販薬への意識 : 市販薬は安全である 市販薬の作用は弱い の ₂ 問からなる計 ₁₀ 問とした. いずれの質問も ₄ 件法 ( ₁. とてもそう思う, ₂. そう思う, ₃. そう思わない, ₄. 全くそう思わない ) で回答を求め, とてもそう思うを ₄ 点, そう思うを ₃ 点, そう思わないを ₂ 点, 全くそう思わないを ₁ 点として点数化した. なお,4の市販薬への意識については, 授業において, 市販薬の使用の仕方によっては, 安全であったりなかったりする場合もあること, 市販薬の作用が弱い場合も強くでる場合もあるという両面を理解させることがねらいであるため, 得点の高低によって, 望ましい変化をしたとは判断せず, 意識に変化があったかどうかを判断するのみとした. ₂) データ分析方法質問紙調査の結果について, 事前, 直後, ₃ ヵ月後の副作用の 罹患性 の自覚, 副作用への意識, 副作用予防の自己効力感, 市販薬への意識の経時的な変化を把握するため, まず ₃ 群間についての差を,Friedman 検定により分析した. そこで有意差が認められた場合, 対応のある ₂ 群間について, 事前と直後, 事前と ₃ ヵ月後, 直後と ₃ ヵ月後のいずれの関係が強いのかを把握するために, Wilcoxon の符号付順位検定により検討した. この際, 第一種の過誤を考慮するために,Bonferroni の不等式を利用して, 有意水準は,₀.₀₅/₃=₀.₀₁₇, ₀.₀₁/₃=₀.₀₀₃,₀.₀₀₁/₃=₀.₀₀₀₃とした. さらに, 効果量についても算出した. なお, 検定の際には,IBM SPSS statistics ₂₂( 日本アイ ビー エム株式会社 ) を使用し, 有意水準は ₅ % とした. また, 効果量の算出には, 水本の計算シート ₁₃) を使用した. ( ₂ ) 授業の自由記述の感想文の分析授業の終わり₁₀ 分間で生徒に自由記述の感想文記入を求め, 感想文の内容から, どのようなことに気づいたかを分析するために, 内容のまとまりごとに, 研究者 ₂ 名がそれぞれカテゴリー化を行い, 協議の上, 最終的なカテゴリーを決定した. また, 学習した内容をどの程度正しく理解できたかについて把握するために, 授業の目標に照らして記述件数とその内容を抜粋し, 分析した. 2. 倫理的配慮本授業は, 筆者が以前勤務していた学校であり, 継続的に行っている大学と附属学校の教育実践の交流の一環として行った. なお,A 中学校は国立大学附属中学校であり, 教育の理論と実際に関する研究と実証を行うことを使命としている. また, 授業内容, 調査方法, 調査結果の公表については, 対象となる中学校の教職員に書面および口頭で説明を行い, 同意を得た. また, 実施にあたっては, 罹患性 焦点型授業, 自然治癒力焦点型授業の生徒に対して,1 教材開発の研究の資料とすること,2 得られたデータは本研究のみに使用し, 他には使用しないこと, 3 回答しないことで不利益はこうむらないこと, 4 回答の途中で答えたくなくなった場合は回答を中止してよいこと,5 学校での保健の授業の成績には影響しないことの ₅ 点を文書および口頭で説明し, 調査用紙への回答をもって同意を得たと判断した. なお, 学習保障のため, 全てのクラスに対して, ₃ ヵ月後の調査が終了した後に, プリントを作成し, 配布した. プリントの内容は, 罹患性 焦点型授業のクラスには, 日ごろの市販薬の使用率やかぜへの対処法, かぜの症状の意味についての内容とし, 自然治癒力焦点型授業のクラスには, 罹患性 焦点型授業で取り上げた事例と副作用を予 273

佐見 植田 防する行動の再確認を促す内容とし, 授業者が補足説明を行った. Ⅳ. 評価結果 1. 授業前後の意識等の変化についての分析結果表 ₁ は, 授業の事前, 直後, ₃ ヵ月後の副作用の 罹患性 の自覚, 副作用への意識, 副作用予防行動の自己効力感, 市販薬の意識の変化を示したものである. 罹患性 焦点型授業では, 授業の事前, 直後, ₃ ヵ月後に, 副作用の 罹患性 の自覚に関する ₃ 問と, 副作用への意識に関する ₃ 問, 副作用予防行動の自己効力感に関する ₂ 問全てにおいて有意な差が認められた. また, 授業の事前と直後, 事前と ₃ ヵ月後, 直後と ₃ ヵ月後のいずれの関係が強いかをみた結果, 副作用の 罹患性 の自覚に関する ₃ 問は, 事前と直後, 事前と ₃ ヵ月後ともに, 有意な差が認められ, 全ての項目において, 事前に比して直後と ₃ ヵ月後に得点の中央値が高くなり, 効果量は中および大であった. また, 副作用への意識の ₃ 問においても, 事前と直後, 事前と ₃ ヶ月後に有意な差が認められ, 全ての項目において, 事前に比して直後と ₃ ヵ月後に得点の中央値が高くなり, 効果量は大であった. 副作用予防行動の自己効力感である 薬剤師に質問することができる 説明書を読むことができる の ₂ 問では, 事前と直後に有意な差が認められ, いずれの項目においても, 事前に比して直後の得点の中央値が高くなったが, ₃ ヵ月後には, 有意な差は認められず, 授業前に戻っていた. 一方, 自然治癒力焦点型授業では, 授業の事前, 直後, ₃ ヵ月後に, 副作用の 罹患性 の自覚に有意な差は認められなかった. 副作用への意識の ₃ 問と, 副作用予防の自己効力感の ₂ 問については, 有意な差が認められた. また, 有意な差が認められた, 副作用への意識と, 副作用予防の自己効力感について, 授業の事前と事後, 事前と ₃ ヵ月後, 直後と ₃ ヵ月後のいずれの関係が強いのかをみた結果, 副作用で蕁麻疹が起きる 副作用 で失明が起きる の ₂ 問は, 事前と直後, 事前と ₃ ヵ月後に有意な差が認められ, 項目の得点の中央値が低くなっていた. さらに, 副作用で死亡する は, 事前と直後で有意な差が認められ, 得点の中央値が低くなったが, ₃ ヵ月後には, 授業前に戻っていた. 副作用予防行動の自己効力感の 薬剤師に質問することができる と 説明書を読むことができる の ₂ 問は, いずれも事前と直後, 事前と ₃ ヵ月後に, 有意な差が認められ, 得点の中央値が低くなっていた. 副作用の 罹患性 の自覚では, 有意な差は認められなかったが, ₃ 問ともに, 授業の事前と直後に効果量が小であった. また, 市販薬への意識の項目では, 罹患性 焦点型授業において, 事前と直後, ₃ ヵ月後に, 市販薬は安全である では有意な差が認められなかったが, 市販薬の作用は弱い で有意な差が認められた. 一方, 自然治癒力焦点型授業では, 市販薬は安全である, 市販薬の作用は弱い のいずれの項目においても, 有意な差は認められなかった ( 表 ₁ ). 2. 自由記述の感想文の分析結果 ( ₁ ) 授業による意識の変化に関わる記述の分析結果自由記述の感想文のカテゴリーと記述例は, 表 ₂ に示したとおりである. 表 ₂ に示した 罹患性 焦点型授業における, 副作用の身近さと意外性の実感 のカテゴリー中, 副作用の身近さに関連する記述としては, こんなに身近に副作用をうけた人がいるのかと驚いた といった事例の身近さを記述したものや, 自分はアレルギー体質で薬でじんましんが出たことがあるので真剣に考えたい といった自分の体質と照らした振り返りや, 今まで気にせずに服用していたので, 何がいつ起こるかわからないと思った といった薬の使用状況に照らした振り返りや, 自分は頭痛もちで鎮痛剤をよく使うが, 注意が必要だ といった体質と薬の使用状況の両面からの振り返りや, 兄がよく薬を飲んでいるので注意してみてあげたいと思った など家族の使用状況から振り返りを行った記述がみられた. 274 25 4 2017

副作用の 罹患性 の自覚を高める保健授業 副作用への意識 副作用予防行動の自己効力感 副作用の 罹患性 の自覚 市販薬への意識 表 1 質問項目ごとの事前, 直後, 3 ヵ月後の変化 質問項目調査時期 中央値 (25% 75% タイル ) 事前 - 直後 - 3 ヵ月後の変化 p 罹患性 焦点型授業自然治癒力焦点型授業 多重比較 効果量 事前 - 直後 - 多重比較 効果量 中央値 (25% 比較時期 p z r 目安 調査時期 75% タイル ) 3 ヵ月後の変化 比較時期 p z r 目安 p 副作用で蕁麻疹が起きる 副作用で失明が起きる 副作用で死亡する 薬剤師に質問することができる 説明書を読むことができる 自分に蕁麻疹が起きる可能性がある 自分が失明する可能性がある 自分が死亡する可能性がある 市販薬は安全である 市販薬の作用は弱い 事前 ₃.₀(₂.₀ ₃.₀) <₀.₀₀₁ -₅.₂₆ ₀.₆₀ 大 事前 ₃.₀(₂.₀ ₃.₀) <₀.₀₀₁ -₅.₇₉ ₀.₆₆ 大 直後 ₄.₀(₃.₀ ₄.₀) <₀.₀₀₁ 事前 ₃ ヵ月後 <₀.₀₀₁ -₄.₆₇ ₀.₆₀ 大 直後 ₁.₀(₁.₀ ₂.₀) <₀.₀₀₁ 事前 ₃ ヵ月後 <₀.₀₀₁ -₅.₅₃ ₀.₆₃ 大 ₃ ヵ月後 ₄.₀(₃.₀ ₄.₀) 直後 ₃ ヵ月後 ₀.₁₄₁ -₁.₄₇ ₀.₁₇ 小 ₃ ヵ月後 ₁.₀(₁.₀ ₂.₀) 直後 ₃ ヵ月後 ₀.₈₅₅ -₀.₁₈ ₀.₀₂ ほとんどなし 事前 ₂.₀(₂.₀ ₃.₀) <₀.₀₀₁ -₆.₂₇ ₀.₇₂ 大 事前 ₂.₀(₂.₀ ₃.₀) <₀.₀₀₁ -₄.₀₈ ₀.₄₆ 中 直後 ₄.₀(₃.₀ ₄.₀) <₀.₀₀₁ 事前 ₃ ヵ月後 <₀.₀₀₁ -₅.₂₆ ₀.₆₀ 大 直後 ₁.₀(₁.₀ ₂.₀) <₀.₀₀₁ 事前 ₃ ヵ月後 ₀.₀₀₁ -₃.₃₁ ₀.₃₈ 中 ₃ ヵ月後 ₃.₀(₃.₀ ₄.₀) 直後 ₃ ヵ月後 ₀.₀₆₀ -₁.₈₈ ₀.₂₂ 小 ₃ ヵ月後 ₂.₀(₁.₀ ₂.₀) 直後 ₃ ヵ月後 ₀.₃₄₃ -₀.₉₅ ₀.₁₁ 小 事前 ₂.₀(₂.₀ ₃.₀) <₀.₀₀₁ -₆.₀₄ ₀.₆₉ 大 事前 ₂.₀(₁.₀ ₃.₀) <₀.₀₀₁ -₃.₈₃ ₀.₄₃ 中 直後 ₄.₀(₃.₀ ₄.₀) <₀.₀₀₁ 事前 ₃ ヵ月後 <₀.₀₀₁ -₅.₁₂ ₀.₅₉ 大 直後 ₁.₀(₁.₀ ₂.₀) <₀.₀₀₁ 事前 ₃ ヵ月後 ₀.₁₀₄ -₁.₆₂ ₀.₁₈ 小 ₃ ヵ月後 ₃.₀(₂.₃ ₄.₀) 直後 ₃ ヵ月後 ₀.₀₂₀ -₂.₃₃ ₀.₂₇ 小 ₃ ヵ月後 ₂.₀(₁.₀ ₃.₀) 直後 ₃ ヵ月後 ₀.₀₁₀ -₂.₅₈ ₀.₂₉ 小 事前 ₂.₀(₂.₀ ₃.₀) ₀.₀₀₃ -₂.₄₆ ₀.₁₁ 小 事前 ₃.₀(₂.₀ ₄.₀) <₀.₀₀₁ -₅.₇₇ ₀.₆₅ 大 直後 ₃.₀(₃.₀ ₄.₀) ₀.₀₀₂ 事前 ₃ ヵ月後 ₀.₀₁₈ -₁.₈₆ ₀.₂₇ 小 直後 ₂.₀(₁.₀ ₂.₀) <₀.₀₀₁ 事前 ₃ ヵ月後 <₀.₀₀₁ -₅.₂₇ ₀.₆₀ 大 ₃ ヵ月後 ₃.₀(₂.₀ ₄.₀) 直後 ₃ ヵ月後 ₀.₅₆₇ -₀.₅₇ ₀.₀₇ ほとんどなし ₃ ヵ月後 ₂.₀(₁.₀ ₂.₀) 直後 ₃ ヵ月後 ₀.₉₂₀ -₀.₁₀ ₀.₀₁ ほとんどなし 事前 ₃.₀(₂.₀ ₄.₀) <₀.₀₀₁ -₃.₅₀ ₀.₄₀ 中 事前 ₃.₅(₂.₃ ₄.₀) <₀.₀₀₁ -₇.₀₄ ₀.₇₉ 大 直後 ₄.₀(₃.₀ ₄.₀) ₀.₀₀₄ 事前 ₃ ヵ月後 ₀.₁₀₁ -₀.₃₄ ₀.₁₆ 小 直後 ₁.₀(₁.₀ ₂.₀) <₀.₀₀₁ 事前 ₃ ヵ月後 <₀.₀₀₁ -₆.₁₂ ₀.₆₉ 大 ₃ ヵ月後 ₄.₀(₃.₀ ₄.₀) 直後 ₃ ヵ月後 ₀.₀₇₂ -₁.₈₀ ₀.₂₁ 小 ₃ ヵ月後 ₁.₀(₁.₀ ₂.₀) 直後 ₃ ヵ月後 ₀.₀₃₁ -₂.₁₆ ₀.₂₅ 小 事前 ₂.₀(₁.₀ ₃.₀) <₀.₀₀₁ -₄.₇₀ ₀.₅₄ 大 事前 ₂.₀(₁.₀ ₃.₀) -₀.₉₉ ₀.₁₁ 小 直後 ₃.₀(₂.₈ ₄.₀) <₀.₀₀₁ 事前 ₃ ヵ月後 <₀.₀₀₁ -₄.₄₇ ₀.₅₂ 大 直後 ₂.₀(₁.₀ ₃.₀) ₀.₉₄₆ 事前 ₃ ヵ月後 - -₀.₅₁ ₀.₀₆ ほとんどなし ₃ ヵ月後 ₃.₀(₂.₀ ₄.₀) 直後 ₃ ヵ月後 ₀.₅₀₂ -₀.₆₇ ₀.₀₈ ほとんどなし ₃ ヵ月後 ₂.₀(₁.₀ ₃.₀) 直後 ₃ ヵ月後 -₀.₃₁ ₀.₀₄ ほとんどなし 事前 ₂.₀(₁.₀ ₃.₀) <₀.₀₀₁ -₄.₅₁ ₀.₅₂ 大 事前 ₂.₀(₁.₀ ₂.₀) -₁.₀₃ ₀.₁₂ 小 直後 ₃.₀(₂.₀ ₄.₀) <₀.₀₀₁ 事前 ₃ ヵ月後 <₀.₀₀₁ -₄.₇₁ ₀.₅₄ 大 直後 ₂.₀(₁.₀ ₃.₀) ₀.₀₉₉ 事前 ₃ ヵ月後 - -₁.₇₉ ₀.₂₀ 小 ₃ ヵ月後 ₃.₀(₂.₀ ₄.₀) 直後 ₃ ヵ月後 ₀.₈₅₃ -₀.₁₉ ₀.₀₂ ほとんどなし ₃ ヵ月後 ₂.₀(₁.₀ ₃.₀) 直後 ₃ ヵ月後 -₀.₆₂ ₀.₀₇ ほとんどなし 事前 ₂.₀(₁.₀ ₃.₀) <₀.₀₀₁ -₄.₀₉ ₀.₄₇ 中 事前 ₂.₀(₁.₀ ₃.₀) -₀.₈₉ ₀.₁₀ 小 直後 ₃.₀(₂.₀ ₄.₀) <₀.₀₀₁ 事前 ₃ ヵ月後 <₀.₀₀₁ -₄.₆₄ ₀.₅₃ 大 直後 ₂.₀(₁.₀ ₃.₀) ₀.₃₅₆ 事前 ₃ ヵ月後 - -₁.₁₉ ₀.₁₄ 小 ₃ ヵ月後 ₃.₀(₂.₀ ₄.₀) 直後 ₃ ヵ月後 ₀.₉₇₃ -₀.₀₃ ₀.₀₀ ほとんどなし ₃ ヵ月後 ₂.₀(₁.₀ ₃.₀) 直後 ₃ ヵ月後 -₀.₂₁ ₀.₀₂ ほとんどなし 事前 ₂.₀(₁.₀ ₂.₀) -₂.₁₀ ₀.₂₄ 小 事前 ₂.₀(₁.₀ ₂.₀) -₀.₄₇ ₀.₀₅ ほとんどなし 直後 ₁.₀(₁.₀ ₂.₀) ₀.₁₂₁ 事前 ₃ ヵ月後 - -₀.₃₆ ₀.₀₄ ほとんどなし 直後 ₂.₀(₁.₀ ₂.₀) ₀.₆₂₁ 事前 ₃ ヵ月後 - -₀.₆₈ ₀.₀₁ ほとんどなし ₃ ヵ月後 ₂.₀(₁.₀ ₂.₀) 直後 ₃ ヵ月後 -₁.₅₄ ₀.₁₈ 小 ₃ ヵ月後 ₁.₅(₁.₀ ₂.₀) 直後 ₃ ヵ月後 -₀.₉₆ ₀.₁₁ 小 事前 ₂.₀(₂.₀ ₃.₀) ₀.₀₀₁ -₃.₃₉ ₀.₃₉ 中 事前 ₂.₀(₂.₀ ₂.₀) -₀.₃₄ ₀.₀₂ ほとんどなし 直後 ₂.₀(₁.₀ ₂.₀) ₀.₀₀₃ 事前 ₃ ヵ月後 ₀.₂₆₁ -₁.₁₂ ₀.₁₃ 小 直後 ₂.₀(₁.₀ ₂.₀) ₀.₃₁₉ 事前 ₃ ヵ月後 - -₀.₉₆ ₀.₁₆ 小 ₃ ヵ月後 ₂.₀(₁.₅ ₃.₀) 直後 ₃ ヵ月後 ₀.₀₁₃ -₂.₄₇ ₀.₂₈ 小 ₃ ヵ月後 ₂.₀(₂.₀ ₂.₀) 直後 ₃ ヵ月後 -₁.₁₅ ₀.₁₃ 小 事前 - 直後 - ₃ ヵ月後の ₃ 群間の差の検定 :Friedman 検定多重比較 :Wilcoxon の符号付順位検定,Bonferroni の不等式に従い, 有意水準は次のように補正した.p<₀.₀₅/₃=₀.₀₁₇,p<₀.₀₁/₃=₀.₀₀₃,p<₀.₀₀₁/₃=₀.₀₀₀₃ z は, 直後 - 事前, ₃ ヵ月後 - 事前, ₃ ヵ月後 - 直後 で算出された数値である. r( 効果量 :₀.₅ 以上で効果が大,₀.₃ 以上で効果が中,₀.₁ 以上で効果が小 ) 275

カテゴリー主な記述例 正しい薬の使用法を私たち使用する側が知る体制をつくりたい. 佐見 植田 表 2 自由記述の感想文のカテゴリーと主な記述例 副作用の身近さと意外性の実感 副作用の被害者への共感 自分なりの薬の使用と副作用予防の意図 薬の使用の新たな環境づくりの意図 自然治癒力と日ごろの行動の大切さの実感 薬の使用と副作用の大変さの実感 自然治癒力と薬の使用のバランスを意識した生活応用の意図 こんなに身近に副作用をうけた人がいるのかと驚いた. 自分はアレルギー体質で, じんましんが出たことがあるので真剣に考えたい. 自分はじんましんがでる体質なので, 被害者の気持ちに共感できた. 副作用をうけて苦しめられている人の気持ちがすごくよくわかった. 用法 用量だけでなく, 注意, 成分をよく読みたい. 説明書を読み, 自分の体を守れるよう心掛けたい. 薬はよいものと限らないことを再認識するようにできないか考えたい. かぜを治すには自然治癒力が重要だと改めてわかった. 早く寝る, 水分補給するなどかぜをひいたときにこうするとよいと言われてきたことの大切さを再認識した. 説明書を読めば安心 安全に使えると知って安心した. 今も被害者がいる事実とその数の多さに驚いた. 薬は風邪を治すのではなく, 補助的なものと知りびっくりした. 早く寝るなどの意味を理解し, 薬に頼らないようにしたい. 授業での理解を活用し, できるだけ飲まないようにしたい. 市販で買うより病院で薬をもらうようにしたい. 一方, 自然治癒力焦点型授業における感想文では, 自然治癒力と日ごろの行動の大切さの実感 のカテゴリー中, 自然治癒力の重要性を再認識するものとして, かぜを治すには自然治癒力が重要だと改めてわかった, かぜを治す力を高めていきたいと思った といった記述や, 症状や行動の意味の再認識に関連するものとして, 早く寝る, 水分補給するなどかぜをひいたときにこうするとよいと言われてきたことの大切さを再認識した, くしゃみ 鼻水などにも意味があると思うと, 単純に薬で症状を止めるのはどうなのかと思った といった記述がみられた ( 表 ₂ ). ( ₂ ) 授業による知識の変化に関する記述の分析結果授業の目標として, 知識 理解に該当する項目として1かぜ薬の効能, 自然治癒力の意味と2 市販薬の適正使用には, 専門家への相談, 説明書をよく読むことを設定した. これらの目標に照らして, 感想文に記載された記述内容と記述数をみた結果が表 ₃ である. 目標 1については, 自分に合った薬の使用 に関する記述と, 薬の効能 に関する記述がそれぞれの授業でみられた. 目標 2 については, 説明書を読む ことの必要性につい ての記述と, 専門家に相談する 必要性についての記述がそれぞれの授業でみられた. その他に, 罹患性 焦点型授業では, 薬は万能ではないということを知って使用すべきだ といった薬の限界を知った上での使用に関する記述が ₄ 件みられたが, 自然治癒力焦点型授業では, 説明書を読めば安心 安全に使えると知って安心した といった使用への安心感についての記述が ₄ 件みられた ( 表 ₃ ). また, いずれの授業の感想においても, 誤った知識と判断される記述は含まれていなかった. Ⅴ. 考察 罹患性 焦点型授業では, 副作用の 罹患性 の自覚の ₃ 項目すべてにおいて, 事前と直後, 事前と ₃ ヵ月後に有意な差が認められ, 効果量が大であった. また, 感想文には, 副作用の身近さに関連して, 自らの体質や薬の使用状況と照らした記述がみられた. 寺町らが アレルギーを持っている人は自分の判断で薬を使うことが多い傾向がある ₁₄) と指摘しており, 自分の体質や体調を考えた振り返りは, 薬を使用する際の的確な判断に 276 25 4 2017

自分に合った使用 薬の効能 専門家へ相談 説明書を読む 副作用の 罹患性 の自覚を高める保健授業 表 3 知識に関連する記述内容と記述数 目標 1 かぜ薬の効能, 自然治癒力の意味 目標 2 専門家へ相談, 説明書を読む その他 自分の体との相性を吟味して薬を服用したい. 自分の体と対話して健康状態を理解して安全に使いたい. など ₁₁ 件 今の自分の状態を考えて使うことが大切だとわかった. 慎重に探して自分にあった薬を買おうと思う. など ₆ 件 薬はかぜを治すと思っていたが症状を緩和させるだけだと知った. 薬はかぜを治すヒーローだと思っていたが副作用もあると知った. など ₉ 件 薬はかぜを治す補助的なものと知った. 薬の効果と欠点を知れた. など ₅ 件 使用する際は, 薬剤師に相談してから使うのがよいとわかった. 自分で勝手に判断せずに専門家に相談してから使いたい. など ₇ 件 副作用がでるのはいやなので薬剤師に相談したい. 市販薬を使用するときは薬剤師に相談するのがよいとわかった. など ₈ 件 説明書や成分表をみて未然に副作用を防ぎたい. 説明書を読み, 自分の体を守れるよう心がけたい. など₁₅ 件 しっかり説明書を読んで使おうと思った. 自分に被害が及ばないよう注意書きをよく読みたい. など₁₂ 件 薬の限界を知った使用 薬は万能ではないということを知って使用すべきだ. など ₄ 件 使用への安心感 説明書を読めば安心 安全に使えると知って安心した. など ₄ 件 つながる意図である. さらに, 副作用の被害にあった事例を通して, 副作用の身近さの実感 の記述に併せて, 被害者の命 死を無駄にしないようにしていきたい といった被害者への共感性を示す記述をした生徒もいた. 前述のエイズ教育の研究において, 自らの HIV 感染の可能性を高く認知する者は, 患者 感染者を排除する傾向が弱い ₁₃) と指摘されていることから, 副作用の 罹患性 の自覚が高まったクラスにおいて, このような感想をもった生徒がいたことは, 今後, 薬の副作用の被害者を排除しない考えにつながっていくと期待される. さらに, 罹患性 焦点型授業では, 副作用への意識において, 事前と, 直後, ₃ ヵ月後に有意な差が認められたことから, 罹患性 焦点型授業は, 副作用の 罹患性 の自覚や副作用への意識を高めるのに有効であった. 市販薬への意識に関する 市販薬の作用は弱い の項目で, 授業の事前と直後に有意な差が認められたのは, 罹患性 の自覚や副作用への意識が高まったことにより, 必ずしも市販薬の作用が弱いとは限らないという理解につながったものと推察された. また, 副作用予防行動の自己効力感において, 授業の直後には有意な差が認められた. 自己効力感の質問項目である 薬の説明書を読むことできる に関連する感想文の内容をみると, 説明書の成分表をみて副作用を防ぎたい, 用量 用法だけでなく, 注意点をよく読みたい, 説明書の注意, おこりうる症状, 回数をよく読みたい など, 説明書のどこを読むとよいかを具体的に記載しているものや, 自分の体との相性を吟味して薬を服用したい, 自分が今, 本当に薬をのんでよいのかを確かめたい, 注意を読み, 自分に ₁ つでもあてはまったら薬をのまないようにしたい といった, 自分の状態に合った薬を選択する意図が記載されており, 自分たちの行動を具体的にどう変えたらよいかイメージすることができたことで自己効力感が高まっていた. しかし, 自己効力感の授業後の変化が ₃ ヵ月後まで持続しなかったことについては, 今後の検討課題である. 一方, 自然治癒力焦点型授業では, 副作用の 罹患性 の自覚と, 市販薬への意識において, 事前と直後, ₃ ヵ月後に有意な差は認められなかった. また, 副作用への意識や, 副作用予防行動の自己効力感では, 事前と直後, ₃ ヵ月後に有意な差が認められた. これらの理由として, 感想文で, 277

佐見 植田 自然治癒力のすばらしさを実感したという記述や, かぜを予防するために, 睡眠をとる, 栄養をとるといった日ごろの対処を行うことの大切さの記述や, 薬の使用への安心感などの記述がみられたことから, 自然治癒力や薬の良い面に視点がいき, 副作用への意識には向かわなかったことがわかる. また, 薬の使用を制限したいとの記述がみられたことから, 薬を使用したくないという気持ちから, 副作用予防行動に対して否定的となり, 自己効力感の回答にマイナスの影響を与えた可能性がある. なお, 本研究の限界として, 同一の学校に通う共通の特性をもつ生徒を対象として, それぞれの教材の有効性を検討したが, 通常の教育課程の中で行われたことから, その割付は無作為ではないこと, また学校とも相談のうえ, 倫理的配慮を慎重に行ったが, 学習保障として行った補足説明は調査の事後にならざるを得ず, 時間差による生徒への影響は否めないことがあげられる. Ⅵ. 結論中学校における市販薬適正使用の内容において, 副作用の 罹患性 の自覚に焦点をあてた教材を用いた保健の授業を実施した. その結果, 授業の事前と直後, ₃ ヵ月後に副作用の 罹患性 の自覚と副作用への意識において, 有意な差が認められた. また, 感想文では, 自分の体質や薬の使用状況と照らすなど, 副作用の身近さの実感を記述しているものがみられた. ただし, 副作用予防行動の自己効力感は, 直後には有意な差が認められたが, ₃ ヵ月後には授業前に戻っていた. 一方, 自然治癒力焦点型授業では, 副作用の 罹患性 の自覚に有意な差は認められず, 副作用への意識と, 副作用予防行動の自己効力感では, 事前と直後, ₃ ヵ月後において, 有意な差が認められ, 直後には, 副作用への意識や副作用予防の自己効力感が低下した. 利益相反利益相反に相当する事項はない. 文献 ₁) 森昭三. 保健の教科内容と教材. 森昭三, 和唐正勝編. 新版保健の授業づくり入門. 東京 : 大修館書店 ;₂₀₀₅. ₁₃₆. ₂) Fishbein M,Ajzen I.Belief, Attitude, Intention, and Behavior. Boston: Addison - Wesley; ₁₉₇₅. ₃₀-₃₂. ₃) Becker MH, Drachman RH, Krinscht JP. A new approach to explaining sick - role behavior in low - incom populations. Am J Public Health. ₁₉₇₄; ₆₄: ₂₀₅-₂₁₆. ₄) Rogers RW, Prentince DS. Protection motivation theory.handbook of Health Behavior Research. New York: Plenum Press; ₁₉₉₇. ₁₁₃-₁₃₂. ₅) 高橋浩之. 健康教育への招待. 東京 : 大修館書店 ;₂₀₀₂.₅₇. ₆) 畑栄一. ヘルスビリーフモデル. 畑栄一, 土井由利子編. 行動科学健康づくりのための理論と応用改訂第 ₂ 版. 東京 : 南江堂 ;₂₀₁₂.₄₂. ₇) 徐淑子, 池田光穂. 健康教育における< 健康認識の個人化 >をうながす実践について.Communication-Design.₂₀₁₅;₁₂:₂₇. ₈) 文部科学省. 中学校学習指導要領解説保健体育編. 京都 : 東山書房 ;₂₀₀₈.₁₆₁. ₉) 山田純一, 高柳理早, 横山晴子, 他. 中学生を対象とした医薬品適正使用に関する意識調査と学校薬剤師による教育の効果. 薬学雑誌.₂₀₁₂;₁₃₂:₂₁₅- ₂₂₄. ₁₀) 寺町ひとみ. 中学校保健体育科 医薬品の正しい使い方 授業プログラムの構築. 薬学雑誌.₂₀₁₃; ₁₃₃:₁₃₂₅-₁₃₃₄. ₁₁) 上田裕司, 鬼頭英明, 西岡伸紀, 他. 中学校学習指導要領による医薬品に関する授業実践研究. 学校保健研究.₂₀₁₃;₅₅:₂₂₀-₂₂₇. ₁₂) 木村堅一, 深田博己. エイズ患者 HIV 感染者に対する偏見に及ぼす恐怖 脅威アピールのネガティブな効果. 広島大学教育学部紀要第一部 ( 心理学 ). ₁₉₉₅;₄₄:₆₇-₇₄. ₁₃) 水本篤, 竹内理. 研究論文における効果量の報告のために 基礎的概念と注意点. 英語教育研究. ₂₀₀₈;₃₁:₅₇-₆₆. ₁₄) 寺町ひとみ, 太田拓希, 香田由美, 他. 小 中 高校生の 医薬品の正しい使い方 に関する知識 意識および指導実施状況. 医療薬学.₂₀₁₂;₃₈: ₇₆₇-₇₇₉. ( 受付 ₂₀₁₆.₁₂.₂₂.; 受理 ₂₀₁₇.₉.₇.) 278 25 4 2017

副作用の 罹患性 の自覚を高める保健授業 Effect of the health class in enhancing the perceived "susceptibility" of adverse effects to the use of nonprescription drugs Yukiko SAMI* ₁, Seiji UEDA* ₂ Abstract Objectives: We examined the effect of a health class in a junior high school, using teaching materials intended to enhance the perceived "susceptibility" of adverse effects towards nonprescription drugs. Methods: In this quasi-experimental study, participants were ₁₆₀ third-year junior high school students, allocated into two groups of ₈₀ students. The first group received a health class using case-based teaching materials, focusing on the perceived "susceptibility" of adverse effects. For the second group, the health class used teaching materials focused on natural healing power. We analyzed the changes of the perceived susceptibility of adverse effects, the consciousness of adverse effects, and the self-efficacy of the prevention of adverse effects, one week prior, one week after, and three months after the health class. Results: In the class using case-based teaching materials that focused on the perceived "susceptibility" of adverse effects, all items regarding perceived "susceptibility," and all items regarding the consciousness of adverse effects became significantly higher (p<₀.₀₀₁). Both items of self-efficacy of the prevention of adverse effects resulted in significant differences. The class using teaching materials that focused on natural healing power resulted in, the same score across all items of the perceived "susceptibility" of adverse effects, but items regarding the consciousness of adverse effects and the self-efficacy of the prevention of adverse effects became significantly lower. Conclusion: Case-based teaching materials focused on the perceived "susceptibility" of adverse effects, resulted in desirable changes for the perceived "susceptibility" of adverse effects, and the consciousness of adverse effects. JJHEP, ₂₀₁₇;₂₅(₄):269-279 Key words: health class, junior high school, perceived "susceptibility" of adverse effects, proper use of nonprescription drugs * ₁ Tokyo Gakugei University Graduate School of University of the Sacred Heart * ₂ University of the Sacred Heart 279