ポイント 糖尿病性腎臓病の進展に関わる新しいメカニズムを解明! ~2 つのフルクトース代謝酵素の異なる役割 ~ 糖尿病性腎臓病の進展において 2 種の果糖 ( フルクトース ) の代謝酵素 ケトヘキソキナー ゼ (KHK-A KHK-C) の相反する役割を解明しました 糖尿病ではポリオール経路の活性

Similar documents
られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

スライド 1

スライド 1

第6回 糖新生とグリコーゲン分解

シトリン欠損症説明簡単患者用

第6回 糖新生とグリコーゲン分解

生理学 1章 生理学の基礎 1-1. 細胞の主要な構成成分はどれか 1 タンパク質 2 ビタミン 3 無機塩類 4 ATP 第5回 按マ指 (1279) 1-2. 細胞膜の構成成分はどれか 1 無機りん酸 2 リボ核酸 3 りん脂質 4 乳酸 第6回 鍼灸 (1734) E L 1-3. 細胞膜につ

<4D F736F F D EA95948F4390B3817A938C91E F838A838A815B835895B68F F08BD682A082E8816A5F8C6F8CFB939C F

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

解糖系でへ 解糖系でへ - リン酸 - リン酸 1,-2 リン酸 ジヒドロキシアセトンリン酸 - リン酸 - リン酸 1,-2 リン酸 ジヒドロキシアセトンリン酸 AT AT リン酸化で細胞外に AT 出られなくなる 異性化して炭素数 AT の分子に分解される AT 2 ホスホエノール AT 2 1

新規遺伝子ARIAによる血管新生調節機構の解明

ストレスが高尿酸血症の発症に関与するメカニズムを解明 ポイント これまで マウス拘束ストレスモデルの解析で ストレスは内臓脂肪に慢性炎症を引き起こし インスリン抵抗性 血栓症の原因となることを示してきました マウス拘束ストレスモデルの解析を行ったところ ストレスは xanthine oxidored

<4D F736F F D20322E CA48B8690AC89CA5B90B688E38CA E525D>

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

平成 29 年 6 月 9 日 ニーマンピック病 C 型タンパク質の新しい機能の解明 リソソーム膜に特殊な領域を形成し 脂肪滴の取り込み 分解を促進する 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長門松健治 ) 分子細胞学分野の辻琢磨 ( つじたくま ) 助教 藤本豊士 ( ふじもととよし ) 教授ら

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

Microsoft Word - (最終版)170428松坂_脂肪酸バランス.docx

PowerPoint プレゼンテーション

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

平成24年7月x日

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

次の 1~50 に対して最も適切なものを 1 つ (1)~(5) から選べ 1. 細胞内で 酸素と水素の反応によって水を生じさせる反応はどこで行われるか (1) 核 (2) 細胞質基質 (3) ミトコンドリア (4) 小胞体 (5) ゴルジ体 2. 脂溶性ビタミンはどれか (1) ビタミン B 1

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

犬の糖尿病は治療に一生涯のインスリン投与を必要とする ヒトでは 1 型に分類されている糖尿病である しかし ヒトでは肥満が原因となり 相対的にインスリン作用が不足する 2 型糖尿病が主体であり 犬とヒトとでは糖尿病発症メカニズムが大きく異なっていると考えられている そこで 本研究ではインスリン抵抗性

1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

<4D F736F F F696E74202D2093AE95A88DD C88A77824F DD CC91E38ED3205B8CDD8AB B83685D>

Microsoft Word - 【最終】Sirt7 プレス原稿

Microsoft Word - FHA_13FD0159_Y.doc


生物時計の安定性の秘密を解明

平成14年度研究報告

Microsoft Word CREST中山(確定版)

<4D F736F F D F4390B388C4817A C A838A815B8358>

スライド 1

今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

2006 PKDFCJ

2017 年度茨城キリスト教大学入学試験問題 生物基礎 (A 日程 ) ( 解答は解答用紙に記入すること ) Ⅰ ヒトの肝臓とその働きに関する記述である 以下の設問に答えなさい 肝臓は ( ア ) という構造単位が集まってできている器官である 肝臓に入る血管には, 酸素を 運ぶ肝動脈と栄養素を運ぶ

1. 電子伝達系では膜の内外の何の濃度差を利用してATPを合成するか?

研究背景 糖尿病は 現在世界で4 億 2 千万人以上にものぼる患者がいますが その約 90% は 代表的な生活習慣病のひとつでもある 2 型糖尿病です 2 型糖尿病の治療薬の中でも 世界で最もよく処方されている経口投与薬メトホルミン ( 図 1) は 筋肉や脂肪組織への糖 ( グルコース ) の取り

統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

糸球体で濾過されたブドウ糖の約 90% を再吸収するトランスポータである SGLT2 阻害薬は 尿糖排泄を促進し インスリン作用とは独立した血糖降下及び体重減少作用を有する これまでに ストレプトゾトシンによりインスリン分泌能を低下させた糖尿病モデルマウスで SGLT2 阻害薬の脂肪肝改善効果が報告

ルグリセロールと脂肪酸に分解され吸収される それらは腸上皮細胞に吸収されたのちに再び中性脂肪へと生合成されカイロミクロンとなる DGAT1 は腸管で脂質の再合成 吸収に関与していることから DGAT1 KO マウスで認められているフェノタイプが腸 DGAT1 欠如に由来していることが考えられる 実際

平成 29 年 8 月 4 日 マウス関節軟骨における Hyaluronidase-2 の発現抑制は変形性関節症を進行させる 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 : 門松健治 ) 整形外科学 ( 担当教授石黒直樹 ) の樋口善俊 ( ひぐちよしとし ) 医員 西田佳弘 ( にしだよしひろ )

2. 看護に必要な栄養と代謝について説明できる 栄養素としての糖質 脂質 蛋白質 核酸 ビタミンなどの性質と役割 およびこれらの栄養素に関連する生命活動について具体例を挙げて説明できる 生体内では常に物質が交代していることを説明できる 代謝とは エネルギーを生み出し 生体成分を作り出す反応であること

第1回 生体内のエネルギー産生

図 1 マイクロ RNA の標的遺伝 への結合の仕 antimir はマイクロ RNA に対するデコイ! antimirとは マイクロRNAと相補的なオリゴヌクレオチドである マイクロRNAに対するデコイとして働くことにより 標的遺伝 とマイクロRNAの結合を競合的に阻害する このためには 標的遺伝

小児の難治性白血病を引き起こす MEF2D-BCL9 融合遺伝子を発見 ポイント 小児がんのなかでも 最も頻度が高い急性リンパ性白血病を起こす新たな原因として MEF2D-BCL9 融合遺伝子を発見しました MEF2D-BCL9 融合遺伝子は 治療中に再発する難治性の白血病を引き起こしますが 新しい

スライド 1

のと期待されます 本研究成果は 2011 年 4 月 5 日 ( 英国時間 ) に英国オンライン科学雑誌 Nature Communications で公開されます また 本研究成果は JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) の研究領域 アレルギー疾患 自己免疫疾患などの発症機構

11 月 16 日午前 9 時 ( 米国東部時間 ) にオンライン版で発表されます なお 本研究開発領域は 平成 27 年 4 月の日本医療研究開発機構の発足に伴い 国立研究開発法人科学 技術振興機構 (JST) より移管されたものです 研究の背景 近年 わが国においても NASH が急増しています

平成 28 年 12 月 12 日 癌の転移の一種である胃癌腹膜播種 ( ふくまくはしゅ ) に特異的な新しい標的分子 synaptotagmin 8 の発見 ~ 革新的な分子標的治療薬とそのコンパニオン診断薬開発へ ~ 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 髙橋雅英 ) 消化器外科学の小寺泰

Untitled

抑制することが知られている 今回はヒト子宮内膜におけるコレステロール硫酸のプロテ アーゼ活性に対する効果を検討することとした コレステロール硫酸の着床期特異的な発現の機序を解明するために 合成酵素であるコ レステロール硫酸基転移酵素 (SULT2B1b) に着目した ヒト子宮内膜は排卵後 脱落膜 化

<4D F736F F D DC58F4994C5817A C A838A815B83588CB48D F4390B3979A97F082C882B5816A2E646F6378>

既定の事実です 急性高血糖が感染防御機能に及ぼす影響を表 1 に総括しました 好中球の貧食能障害に関しては ほぼ一致した結果が得られています しかしながら その他の事項に関しては 未だ相反する研究結果が存在し 完全な統一見解が得られていない部分があります 好中球は生体内に侵入してきた細菌 真菌類を貧

1 編 / 生物の特徴 1 章 / 生物の共通性 1 生物の共通性 教科書 p.8 ~ 11 1 生物の特徴 (p.8 ~ 9) 1 地球上のすべての生物には, 次のような共通の特徴がある 生物は,a( 生物は,b( 生物は,c( ) で囲まれた細胞からなっている ) を遺伝情報として用いている )

共同研究チーム 個人情報につき 削除しております 1

別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

<4D F736F F D E30392E32398B5A8F70838A838A815B83588BE391E594C55F8D4C95F18DC58F49816A2E646F63>

2019 年 3 月 28 日放送 第 67 回日本アレルギー学会 6 シンポジウム 17-3 かゆみのメカニズムと最近のかゆみ研究の進歩 九州大学大学院皮膚科 診療講師中原真希子 はじめにかゆみは かきたいとの衝動を起こす不快な感覚と定義されます 皮膚疾患の多くはかゆみを伴い アトピー性皮膚炎にお

U50068.indd

Peroxisome Proliferator-Activated Receptor a (PPARa)アゴニストの薬理作用メカニズムの解明

メディカルスタッフのための腎臓病学2版

わが国における糖尿病と合併症発症の病態と実態糖尿病では 高血糖状態が慢性的に継続するため 細小血管が障害され 腎臓 網膜 神経などの臓器に障害が起こります 糖尿病性の腎症 網膜症 神経障害の3つを 糖尿病の三大合併症といいます 糖尿病腎症は進行すると腎不全に至り 透析を余儀なくされますが 糖尿病腎症

糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

報道関係者各位

Microsoft Word - 01.doc

関係があると報告もされており 卵巣明細胞腺癌において PI3K 経路は非常に重要であると考えられる PI3K 経路が活性化すると mtor ならびに HIF-1αが活性化することが知られている HIF-1αは様々な癌種における薬理学的な標的の一つであるが 卵巣癌においても同様である そこで 本研究で

1治療 かっていたか, 予想される基礎値よりも 1.5 倍以上の増加があった場合,3 尿量が 6 時間にわたって 0.5 ml/kg 体重 / 時未満に減少した場合のいずれかを満たすと,AKI と診断される. KDIGO 分類の重症度分類は,と類似し 3 ステージに分けられている ( 1). ステー

細胞の構造

脂質の分解小腸 脂肪分解とカルニチン < 胆汁 > 脂肪の乳化 < 膵液 膵液リパーゼ ( ステアプシン )> 脂肪酸 グリセリン 小腸より吸収吸収された脂肪酸は エステル結合により中性脂肪として蓄積されます 脂肪酸は 体内で分解されエネルギーを産生したり 糖質や余剰のエネルギー産生物質から合成され

60 秒でわかるプレスリリース 2008 年 10 月 22 日 独立行政法人理化学研究所 脳内のグリア細胞が分泌する S100B タンパク質が神経活動を調節 - グリア細胞からニューロンへの分泌タンパク質を介したシグナル経路が活躍 - 記憶や学習などわたしたち高等生物に必要不可欠な高次機能は脳によ

Microsoft Word - tohokuniv-press _01.docx

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

Mincle は死細胞由来の内因性リガンドを認識し 炎症応答を誘導することが報告されているが 非感染性炎症における Mincle の意義は全く不明である 最近 肥満の脂肪組織で生じる線維化により 脂肪組織の脂肪蓄積量が制限され 肝臓などの非脂肪組織に脂肪が沈着し ( 異所性脂肪蓄積 ) 全身のインス

Untitled

市民公開講座(2011/04/16)

0724

<4D F736F F D BE391E58B4C8ED2834E C8CA48B8690AC89CA F88E490E690B62E646F63>

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

血糖値 (mg/dl) 血中インスリン濃度 (μu/ml) パラチノースガイドブック Ver.4. また 2 型糖尿病のボランティア 1 名を対象として 健康なボランティアの場合と同様の試験が行われています その結果 図 5 に示すように 摂取後 6 分までの血糖値および摂取後 9 分までのインスリ

<4D F736F F D F4390B38CE3816A90528DB88C8B89CA2E646F63>

( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

別紙 自閉症の発症メカニズムを解明 - 治療への応用を期待 < 研究の背景と経緯 > 近年 自閉症や注意欠陥 多動性障害 学習障害等の精神疾患である 発達障害 が大きな社会問題となっています 自閉症は他人の気持ちが理解できない等といった社会的相互作用 ( コミュニケーション ) の障害や 決まった手

2017 年 12 月 15 日 報道機関各位 国立大学法人東北大学大学院医学系研究科国立大学法人九州大学生体防御医学研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 ヒト胎盤幹細胞の樹立に世界で初めて成功 - 生殖医療 再生医療への貢献が期待 - 研究のポイント 注 胎盤幹細胞 (TS 細胞 ) 1 は

1-1 栄養素の代謝と必要量 : 糖質 炭水化物 1 糖質の消化吸収 デンプンは唾液中のα アミラーゼの作用により加水分解され かなりの部分が消化を受ける ヒト の唾液中に存在するデンプン消化酵素は α アミラーゼがほとんどである 胃では糖質の消化酵素は 分泌されないが 食道から胃内に流入した食塊が

Microsoft Word 高尿酸血症痛風の治療ガイドライン第3版主な変更点_最終

4 章エネルギーの流れと代謝

平成24年7月x日

RNA Poly IC D-IPS-1 概要 自然免疫による病原体成分の認識は炎症反応の誘導や 獲得免疫の成立に重要な役割を果たす生体防御機構です 今回 私達はウイルス RNA を模倣する合成二本鎖 RNA アナログの Poly I:C を用いて 自然免疫応答メカニズムの解析を行いました その結果

日本の糖尿病患者数は増え続けています (%) 糖 尿 25 病 倍 890 万人 患者数増加率 万人 690 万人 1620 万人 880 万人 2050 万人 1100 万人 糖尿病の 可能性が 否定できない人 680 万人 740 万人

Microsoft Word - tohokuuniv-press _02.docx

脂肪滴周囲蛋白Perilipin 1の機能解析 [全文の要約]

液中に存在する AIM が活性化し 尿中に移行してゴミを掃除する役目を果たす それにより迅速に尿細管の詰まりが解消され その結果 腎機能は速やかに改善することを明らかにしていた 今回本研究グループは ネコの AIM はマウスやヒトの AIM と異なる特徴を持ち 急性腎障害が生じても活性化せず尿中に移

加工デンプン(栄養学的観点からの検討)

Microsoft Word - Cir_Res_ docx

Microsoft Word - 3.No._別紙.docx

Transcription:

平成 30 年 4 月 25 日 糖尿病性腎臓病の進展に関わる新しいメカニズムを解明! ~2 つのフルクトース代謝酵素の異なる役割 ~ 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 : 門松健治 ) 腎臓内科学の道家智仁 ( どうけともひと ) 客員研究員 ( 筆頭著者 ) 同大学医学部附属病院( 病院長 : 石黒直樹 ) 腎臓内科の石本卓嗣 ( いしもとたくじ ) 助教 ( 責任著者 ) および同大学医学系研究科分子生物学の門松健治 ( かどまつけんじ ) 教授 腎臓内科学の丸山彰一 ( まるやましょういち ) 教授らの研究グループは 我が国の透析導入原因として第 1 位の原疾患である糖尿病性腎臓病の進展における新しいメカニズムを解明し 本研究成果は 国際科学誌 Metabolism に掲載されました (2018 年 3 月 29 日付の電子版 ) 20 世紀以降 先進国を中心に砂糖の摂取量は増加し また 天然甘味料である果糖ブドウ糖液が開発されて以降 清涼飲料水 加工食品に広く使用されることで それらに多量に含まれる果糖 ( フルクトース ) の摂取量は飛躍的に増加しており フルクトース摂取と肥満 糖尿病 高血圧 脂肪肝などの代謝性疾患の発症には相関関係があることが知られています また フルクトースは食事由来 ( 外因性 ) のみならず 糖尿病においてはポリオール経路 1 を介して体内にて ( 内因性に ) フルクトースが産生されます 本研究グループは これまでに 外因性及び内因性のフルクトースの過剰な代謝を抑制することで メタボリックシンドロームや糖尿病性腎臓病が改善することを報告してきました フルクトースは主にフルクトース代謝酵素であるケトヘキソキナーゼ (KHK) で代謝され KHK には KHK-C と KHK-A の 2 種類があります KHK-C は腎臓 肝臓 小腸に存在しており フルクトースの代謝能力が高い一方で KHK-A は腎臓を含め幅広い臓器に分布していますが フルクトースの代謝能力は低く 詳細な機能は不明な部分が多い状態でした そのため 本研究では糖尿病性腎臓病における KHK-A 及び KHK-C それぞれの役割の解析を行いました その結果 KHK-C によるフルクトース代謝は 酸化ストレス 核酸分解を介して尿細管障害を引き起こすことを見出し KHK-C によるフルクトース代謝が糖尿病性腎臓病の増悪の一因であることを解明しました 一方で KHK-A の欠損は腎臓でのさらなるフルクトース代謝の亢進 炎症の増悪 低酸素を誘導し より重度の尿細管障害 腎機能障害を引き起こすことから 糖尿病性腎臓病において KHK-A は保護的な役割を持つことが新たに解明されました また これらは KHK-A がフルクトース代謝酵素以外の機能を持つことに由来することを見出しました 本成果は 糖尿病性腎臓病の進展における KHK-C KHK-A の相反する役割を示すものであり 選択的な KHK-C 阻害薬の開発は 糖尿病性腎臓病の進展抑制が期待されるだけではなく メタボリックシンドロームの新規治療法に結びつくことが期待されます

ポイント 糖尿病性腎臓病の進展に関わる新しいメカニズムを解明! ~2 つのフルクトース代謝酵素の異なる役割 ~ 糖尿病性腎臓病の進展において 2 種の果糖 ( フルクトース ) の代謝酵素 ケトヘキソキナー ゼ (KHK-A KHK-C) の相反する役割を解明しました 糖尿病ではポリオール経路の活性化を介して 腎臓でのフルクトース産生が増加します 腎臓 での KHK-C によるフルクトース代謝は炎症 酸化ストレス 核酸分解を介して糖尿病性腎臓 病を悪化させことが考えられます 〇一方で KHK-A の欠損は 腎臓でのさらなるフルクトース代謝 炎症の増悪 低酸素を引き 起こし より重度の尿細管障害 腎機能障害を引き起こすことから 糖尿病性腎臓病において KHK-A は保護的な役割を持つことが新たに解明されました KHK-A を抑制せず KHK-C を選択的に阻害することが 末期腎不全の第 1 位の原疾患である 糖尿病性腎臓病の新規治療法の開発につながると期待されます 1. 背景わが国における透析を始める原因となる疾患の第 1 位は糖尿病腎症であり 増加の一途を辿っています 顕著な蛋白尿 むくみがみられ急速に腎機能が低下することが典型的ですが 近年 糖尿病において顕著な蛋白尿の増加のない腎機能障害例が増加しており 新たに 糖尿病性腎臓病 という概念が提唱されています これらの腎臓組織では尿細管間質の炎症 線維化 細動脈硬化など 主に糸球体外での病変が認められますが 糖尿病性腎臓病における尿細管障害のメカニズムは解明されていません 糖尿病には多くの治療薬がありますが 腎障害の進行を完全に抑えることは難しく 糖尿病性腎臓病の病態の解明 新たな治療薬の開発が望まれています 近年 フルクトースが多く含有されている清涼飲料水 加工食品の摂取は増加しており 外因性のフルクトース摂取と肥満 糖尿病 脂肪肝 高血圧の発症に相関関係があることが注目されています また糖尿病では 高血糖によりポリオール経路が活性化し 体内において ( 内因性に ) グルコースからフルクトースが産生されます フルクトースはケトヘキソキナーゼ (KHK) により代謝され フルクトース 1 リン酸へ変換されます KHK には 2 種類 (KHK-A KHK-C) があり ともに腎臓では近位尿細管のみに存在しています 腎 肝 小腸などの限られた臓器にのみ存在する KHK-C は KHK-A に比してフルクトースの代謝能力は高く 一方で KHK-A は広く全身に存在しています 本研究グループはこれまでに 過剰なフルクトース代謝が重要なエネルギーの単位である ATP の枯渇 1 核酸分解 2 尿酸産生 炎症 酸化ストレスを引き起こし フルクトースを代謝することができないマウス (KHK-A/C 両欠損マウス ) では肥満 脂肪肝 高インスリン血症および糖尿病性腎臓病が改善することを報告してきました 一方で 野生型マウスと比較して KHK- A 単独が欠損したマウスでは フルクトース摂取により 誘導される肥満 脂肪肝がより悪化することを報告しており KHK-A 及び KHK-C が異なった役割を担っていることが示唆されています また KHK-A はプロテインキナーゼ ( 蛋白質をリン酸化する酵素 ) としての機能 ( ホスホリボシルピロリン酸シンターゼ 1 (PRPS1) をリン酸化し 肝細胞癌の増殖に関与する ) も有するとの報告がなされています 本研究では KHK-A,C のそれぞれが糖尿病性腎臓病に及ぼす影響を新たに検討しました

2. 研究成果本研究グループは KHK-A/C を有した糖尿病野生型 (D-WT) 糖尿病 KHK-A/C 両欠損マウス (D-KHK-A/C KO) 糖尿病 KHK-A 単独欠損マウス (D-KHK-A KO) 及びそれぞれのタイプに対して非糖尿病である群を作成し 腎機能 尿細管障害 炎症 酸化ストレス 低酸素について検討しました さらに 腎組織 血清 尿検体を対象にして代謝産物を網羅的に測定できるメタボロミクス解析を行い フルクトース代謝を含め 基本的な糖代謝 ( 解糖系 3 TCA 回路 4 ) 核酸代謝 2 NAD 代謝 5 など詳細な代謝産物の動態を解析しました 全ての糖尿病群において 腎のグルコース フルクトース値の有意な上昇 アルドース還元酵素 ( グルコースをソルビトールに変換する酵素 ) の有意な発現上昇が認められ 腎でのポリオール経路 6 の活性化が確認されました ( 図 1) KHK-A/C を有した糖尿病野生型 (D-WT) 糖尿病 KHK-A 単独欠損マウス (D-KHK-A KO) では 腎腫大 尿細管障害の増悪を認められ 酸化ストレス 核酸代謝の亢進を伴っていましたが フルクトースを代謝できない糖尿病 KHK-A/C 両欠損マウス (D-KHK-A/C KO) では これらは有意に軽減していました ( 図 2) 一方で 血液中の老廃物などの濾過装置として機能している糸球体の障害については糖尿病群間で有意な差は認めませんでした フルクトース代謝では ATP 1 が消費され AMP 7 が増加し核酸分解経路が活性化することが知られています 核酸代謝の最終代謝産物であるアラントイン 6 の尿中濃度は 腎 AMP 及び尿細管障害マーカー 9 である尿中 NGAL 10 と有意な相関関係を認めました ( 図 3) これらの結果から 野生型および KHK-A 欠損マウス両者に存在する KHK-C によるフルクトース代謝は尿細管障害を引き起こし 糖尿病性腎臓病の進展の一因になっていることが示唆されました さらに 糖尿病 KHK-A 単独欠損マウス (D-KHK-A KO) は KHK-A/C を有した糖尿病野生型 (D-WT) と比べ 有意に腎機能が低下しており より強い炎症 尿細管障害が認められました フルクトース代謝産物を詳細に検討した結果 D-WT と比べ D-KHK-A KO において 腎フルクトース フルクトース代謝の下流に位置するジヒドロキシアセトンリン酸 (DHAP) 11 や TCA 回路の中間代謝産物 4 が有意に増加しており 腎フルクトース代謝が D-KHK-A KO でより活性化していることが示唆されました ( 図 4) さらに D-KHK-A KO では D-WT と比べ腎 NAD 5 の有意な減少とともに 腎 hypoxia inducible factor 1 (HIF1 ) 12 の発現及び尿中乳酸の有意な上昇を認め 腎の低酸素状態が示されました ( 図 5) NAD 低下は Sirtuin1 13 の不活性化を介して HIF1 の発現を上昇させます KHK-A はプロテインキナーゼとしての機能を有しており PRPS1 をリン酸化することで ホスホリボシルピロリン酸 (PRPP) という酸を産生します PRPP は NAD 合成経路に必要であるため D-KHK-A KO では PRPP の不足により NAD 産生が低下し 低酸素状態を形成したと考えられました 本研究の成果により KHK-C によるフルクトース代謝は糖尿病性腎臓病を増悪させることが示唆され 一方で KHK-A は糖尿病性腎臓病の進展に保護的に作用することが示唆されました ( 図 6)

3. 今後の展開ケトヘキソキナーゼ (KHK) によるフルクトース代謝は肥満 高血圧 脂肪肝 インスリン抵抗性などのメタボリックシンドロームや糖尿病性腎臓病の進展に関わっています 本研究の結果によ 14 り 肥満 脂肪肝 インスリン抵抗性に加え 末期腎不全の第 1 位の原疾患である糖尿病性腎臓病において KHK-C によるフルクトース代謝が増悪因子として考えられ KHK-A は保護的な役割を有していることが解明されました KHK-C の選択的阻害薬の開発は これらのメタボリック

シンドローム及び糖尿病性腎臓病の進展抑制につながる新規治療法の開発につながることが期待 されます 4. 用語説明 1, ATP: adenosine triphosphate の略 アデノシン三リン酸と呼ばれ 体内で細胞が活動するときに使うエネルギ を貯蔵しており 生体のエネルギー通貨とも呼ばれている 2, 核酸 : リボ核酸 (RNA) とデオキシリボ核酸 (DNA) の総称 アデニン (A) グアニン(G) チミン (T) シトシン(C) ウラシル(U) などの塩基骨格を持つ ATP,AMP はアデニンとリボースからなるアデノシンにリン酸基が結合しているもので 核酸の 1 種である フルクトースが KHK により代謝される際 核酸である ATP が使用され AMP へ代謝される AMP はその後 ヒトでは尿酸 げっ歯類ではアラントインまで代謝されるため 尿酸やアラントインは核酸関連物質と呼ばれている 3, 解糖系 : グルコースを代謝する主な経路であり ほとんどすべての生物に認められる 最終的にピルビン酸まで代謝される 嫌気的条件では乳酸へ変換され 好気的条件では TCA 回路に合流する 4, TCA 回路 : TCA 回路はクエン酸回路とも呼ばれ ミトコンドリア内で酸素を用いて好気的代謝を行うことで効率の良いエネルギー産生を可能にしている クエン酸 シス アコニット酸 イソクエン酸 ケトグルタル酸 コハク酸 フマル酸 リンゴ酸 オキザロ酢酸などが TCA 回路の中間代謝産物である 5, NAD: nicotinamide adenine dinucleotide の略 NAD は Sirtuin1 の活性化に必要であり NAD 不足は Sirtuin1 の不活性化から HIF1 の上昇を引き起こし 低酸素状態を形成する NAD 低下は糖尿病性腎症の進展と密接な関係を持っている NAD は 生体内で主に salvage 経路を介して合成される NMN (nicotinamide mononucleotide) は NAD の前駆体であり NMN は NAM (nicotinamide) と PRPP(phosphoribosyl pyrophosphate) から合成される KHK-A は PRPS1 (phosphoribosyl pyrophosphate synthetase 1) をリン酸化することで PRPP の合成を促進するため KHK-A 欠損により PRPP の供給が不足し NAD が減少することで低酸素状態を形成すると考えられる 6, ポリオール経路 ; グルコースを代謝する経路の一つ 解糖系はグルコース代謝の主経路であるが ポリオール経路はグルコース代謝の副経路であり 体内においてグルコースからフルクトースを産生する アルドース還元酵素を介してグルコースからソルビトールができ ソルビトール還元酵素によりソルビトールからフルクトースが産生される 7, AMP: Adenosine monophosphate の略 アデノシン一リン酸と呼ばれ ATP の加水分解により得られる有機化合物である 8, アラントイン : げっ歯類における核酸代謝の最終代謝産物 フルクトースが代謝される際に ATP が消費される結果 AMP が産生される AMP はその後 キサンチン ヒポキサンチン 尿酸へと代謝されていく ヒトでは尿酸を代謝する酵素であるウリカーゼが欠損しており 尿酸が最終代謝産物になるが げっ歯類では ウリカーゼが保存されているため アラントインへ変換され 尿中へ排泄される 9, 尿細管障害マーカー : 尿細管上皮細胞は腎臓を構成する主な細胞である 糸球体で濾過された水分や栄養素を再吸収する役割をもつ 尿細管障害は腎機能低下と密接な関係にあることが知られ

ており 尿細管障害を反映する種々のマーカーが知られている 10, NGAL: 尿中の好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン (Neutrophil Gelatinase-Associated Lipocalin) 尿細管障害を反映するバイオマーカーであり 腎障害のマーカーとして広く用いられている血清クレアチニンよりも感度が高いことが知られている 急性腎障害 (AKI) 及び慢性腎臓病 (CKD) の両方に有用なバイオマーカーとして期待されており 保険適用もなされている 11, ジヒドロキシアセトンリン酸 (DHAP): フルクトースの下流代謝産物の1つ フルクトースからフルクトース 1 リン酸へ代謝され さらにジヒドロキシアセトンリン酸とグリセルアルデヒドへ代謝される その後 ジヒドロキシアセトンリン酸は解糖系へ流入しエネルギー産生に使用される他 トリグリセリド合成にも使用される 12, Hypoxia inducible factor 1 (HIF1 ): 低酸素誘導因子 細胞の酸素供給不足に応じて発現する蛋白質である 低酸素状態に対する細胞の防御機構と考えられているが 持続的な HIF1 の発現は組織の線維化を起こすことが報告されている 13, Sirtuin1: 長寿遺伝子として知られているサーチュイン遺伝子から合成される蛋白質 サーチュインはヒストン脱アセチル酵素であり HIF1 の転写調節に関与している サーチュインの活性化には NAD が必要である 14, インスリン抵抗性 : 細胞がインスリンに対して感受性が低下すること 肥満などのメタボリックシンドロームの患者では インスリン抵抗性が高いことが知られている 5. 発表雑誌 Tomohito Doke,1, 4 Takuji Ishimoto, 1 Takahiro Hayasaki, 1 Satsuki Ikeda, 2 Masako Hasebe, 2 Akiyoshi Hirayama, 2 Tomoyoshi Soga, 2 Noritoshi Kato, 1 Tomoki Kosugi, 1 Naotake Tsuboi, 1 Miguel A. Lanaspa, 3 Richard J. Johnson, 3 Kenji Kadomatsu, 4 and Shoichi Maruyama 1 1 Departments of Nephrology, Nagoya University Graduate School of Medicine 2 Institute for Advanced Biosciences, Keio University 3 Division of Renal Diseases and Hypertension, University of Colorado Denver 4 Departments of Biochemistry, Nagoya University Graduate School of Medicine " Lacking Ketohexokinase-A Exacerbates Renal Injury in Streptozotocin-induced Diabetic Mice. " Metabolism(2018 年 3 月 29 日付の電子版に掲載 ) DO:10.1016/j.metabol.2018.03.020 English ver. https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_e/research/pdf/metabolism_20180425en.pdf