Microsoft Word - 報告書.doc

Similar documents
国土技術政策総合研究所 研究資料

アンケート調査の概要 目的東南海 南海地震発生時の業務継続について 四国内の各市町村における取り組み状況や課題等を把握し 今後の地域防災力の強化に資することを目的としてアンケート調査を実施 実施時期平成 21 年 11 月 回答数 徳島県 24 市町村 香川県 17 市町 愛媛県 20 市町 高知県

<4D F736F F D20967B95B681698DC58F498D D8E968C888DD A2E646F63>

事務連絡平成 24 年 4 月 20 日 都道府県各指定都市介護保険担当主管部 ( 局 ) 御中中核市 厚生労働省老健局総務課高齢者支援課振興課老人保健課 大規模災害時における被災施設から他施設への避難 職員派遣 在宅介護者に対する安全確保対策等について 平成 23 年 3 月 11 日に発生した東

<4D F736F F D B4C8ED294AD955C8E9197BF E894A8AFA8B7982D191E495978AFA82C982A882AF82E996688DD091D490A882CC8BAD89BB82C982C282A282C4816A48502E646F63>

「南九州から南西諸島における総合的防災研究の推進と地域防災体制の構築」報告書

マンション棟数密度 ( 東京 23 区比較 ) 千代田区中央区港区新宿区文京区台東区墨田区江東区品川区目黒区大田区世田谷区渋谷区中野区杉並区豊島区北区荒川区板橋区練馬区足立区葛飾区江戸川区

問 2 次の文中のの部分を選択肢の中の適切な語句で埋め 完全な文章とせよ なお 本問は平成 28 年厚生労働白書を参照している A とは 地域の事情に応じて高齢者が 可能な限り 住み慣れた地域で B に応じ自立した日常生活を営むことができるよう 医療 介護 介護予防 C 及び自立した日常生活の支援が

id5-通信局.indd

Microsoft PowerPoint - 参考資料 各種情報掲載HPの情報共有

平成 29 年 12 月 1 日水管理 国土保全局 全国の中小河川の緊急点検の結果を踏まえ 中小河川緊急治水対策プロジェクト をとりまとめました ~ 全国の中小河川で透過型砂防堰堤の整備 河道の掘削 水位計の設置を進めます ~ 全国の中小河川の緊急点検により抽出した箇所において 林野庁とも連携し 中

浸水深 自宅の状況による避難基準 河川沿いの家屋平屋建て 2 階建て以上 浸水深 3m 以上 緊急避難場所, 近隣の安全な建物へ水平避難 浸水深 50 cm ~3m 緊急避難場所, 近隣の安全な建物へ水平避難上階に垂直避難 浸水深 50 cm未満 緊急避難場所, 近隣の安全な建物へ水平避難 自宅に待

Microsoft Word - 02.H28秋 重点提言本文【合本】1110.doc

<4D F736F F F696E74202D E9197BF817C A96688DD081458CB88DD082CC8DA18CE382CC8EE682E DD2E >

地域包括ケア構築に向けた実態調査の実施 ひとり暮らし高齢者 高齢者のみ世帯 の全てを訪問形式で調査 地域全体で生活支援等必要なサービス内容を検討 H24 年度 H24.7 月 ~ひとり暮らし実態調査 ( 訪問 ) 集計 解析 ( 名古屋大学 )1 H 福祉を考える集会 ( 住民 関係者

1 東日本大震災での多くの被害が発生!! 平成 23 年 2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災は 三陸沖を震源としたマグニ チュード 9.0 仙台市内での最大震度 6 強 宮城野区 という巨大な地震でした 東部沿岸地域では 推定 7.1m 仙台港 もの津波により 家屋の浸水やライフラ

九州における 道の駅 に関する調査 - 災害時の避難者への対応を中心としてー ( 計画概要 ) 調査の背景等 道の駅 は 平成 16 年 10 月の新潟県中越地震 23 年 3 月の東日本大震災において 被災者の避難場所 被災情報等の発信や被災地救援のための様々な支援の拠点として活用されたことなどか

目次 1. はじめに 1 2. 協議会の構成 2 3. 目的 3 4. 概ね5 年間で実施する取組 4 5. フォローアップ 8

PowerPoint プレゼンテーション

(2) 金沢市の世帯数の動向 350, , ,000 ( 人 世帯 ) ( 人 / 世帯 ) 世帯数 世帯人員 , , , , ,1

介護保険施設等における利用者の安全確保及び非常災害時の体制整備の強化・徹底について

2014年度_三木地区概要

確認テスト本冊_地理34-55.indd

基本事業評価シートA

資料 2 東海管内における農業水利施設の防災 減災の取組 ( 農村地域防災減災事業 海岸事業 ) 平成 27 年 2 月東海農政局整備部防災課

ハザードマップポータルサイト広報用資料

佐賀県の地震活動概況 (2018 年 12 月 ) ( 1 / 10) 平成 31 年 1 月 15 日佐賀地方気象台 12 月の地震活動概況 12 月に佐賀県内で震度 1 以上を観測した地震は1 回でした (11 月はなし ) 福岡県 佐賀県 長崎県 熊本県 図 1 震央分布図 (2018 年 1

平成16年度 台風災害調査報告書(WEB).indd

重ねるハザードマップ 大雨が降ったときに危険な場所を知る 浸水のおそれがある場所 土砂災害の危険がある場所 通行止めになるおそれがある道路 が 1 つの地図上で 分かります 土石流による道路寸断のイメージ 事前通行規制区間のイメージ 道路冠水想定箇所のイメージ 浸水のイメージ 洪水時に浸水のおそれが

<8B4C8ED294AD955C E31302E E82B782D782E892F18CBE816A2E786C7378>

0524.xdw

<4D F736F F D A81798AEB8B408AC7979D8AAF2088D38CA994BD89668CE3817A817995CA8E86817A8C8B89CA82CC837C E646F63>

平成 29 年 7 月 20 日滝川タイムライン検討会気象台資料 気象庁札幌管区気象台 Sapporo Regional Headquarters Japan Meteorological Agency 大雨警報 ( 浸水害 ) 洪水警報の基準改正 表面雨量指数の活用による大雨警報 ( 浸水害 )

<ハード対策の実態 > また ハード対策についてみると 防災設備として必要性が高いとされている非常用電源 電話不通時の代替通信機能 燃料備蓄が整備されている 道の駅 は 宮城など3 県内 57 駅のうち それぞれ45.6%(26 駅 ) 22.8%(13 駅 ) 17.5%(10 駅 ) といずれも

4 災害時における他機関 他施設との協定の締結状況災害時に他機関 他施設との協定を結んでいる施設は 97 施設で 1 か所と締結している施設が多くありました 締結先は 地元自治会 町内会 病院 近隣施設 社会福祉施設 物流会社 福祉ネットワーク 市町村等でした 図 2 災害時における他機関 他施設と

第 3 次 山形県総合発展計画 短期アクションプラン ( 平成 25 年度 ~28 年度 ) 平成 2 5 年 3 月 山形県

第 2 章高齢者を取り巻く現状 1 人口の推移 ( 文章は更新予定 ) 本市の総人口は 今後 ほぼ横ばいで推移する見込みです 高齢者数は 増加基調で推移し 2025 年には 41,621 人 高齢化率は 22.0% となる見込みです 特に 平成 27 年以降は 後期高齢者数が大幅に増加する見通しです

別紙 1600 年分の自然災害を振り返る災害年表マップ ~スマートフォン タブレット対応のお知らせと Web 技術者向け API 配信項目拡大のご案内 ~ 1. 災害年表マップについて災害年表マップは 過去の自然災害事例を発生年ごとに市区町村単位で Web 地図上に表示する Web サービスです 地

病院等における耐震診断 耐震整備の補助事業 (1) 医療施設運営費等 ( 医療施設耐震化促進事業平成 30 年度予算 13,067 千円 ) 医療施設耐震化促進事業 ( 平成 18 年度 ~) 医療施設の耐震化を促進するため 救命救急センター 病院群輪番制病院 小児救急医療拠点病院等の救急医療等を担

調査結果サマリー 1. 災害時に はぐれた場合でも6 割以上が 優先して探し 避難所への移動時も9 割以上の方が 行動を共にする と回答 ( 次頁設問 1 2 3) 災害に見舞われた時 ペットの対処について尋ねたところ はぐれた場合でも 優先して探す と答えた方が62.9% また指定避難所への移動を

2. 地域防災計画 ( 地震 風水害 原子力 ) の見直し市の防災対策の基本となる地域防災計画は 平成 20 年 1 月の初版策定後しばらくの間は見直しがなかったものの 平成 23 年 3 月 11 日に発生した福島原発事故を受けて 新たな原子力災害の発生に備え内容を全面的に見直し 住民避難計画を別

Microsoft Word 最終【資料-4】.docx

P6-25

<4D F736F F F696E74202D F093EF8A6D95DB8C7689E681768DEC90AC82CC8EE888F882AB2E B8CDD8AB B83685D>

第 7 回大阪市人口移動要因調査報告書 平成 27 年 3 月 大阪市都市計画局

平成 27 年度第 1 回状況説明 ( 要望 ) 活動 平成 27 年 8 月 3 日 ( 月曜日 ) 1 国土交通省 財務省 総務省 内閣府への状況説明 ( 要望 ) 活動について国土交通省へは 岡﨑高知市長と清水大洲市長を先頭に 国土交通省幹部及び関係部局へ状況説明 ( 要望 ) 書の手渡しと要

栃木県高齢者居住安定確保計画 ( 二期計画 ) 概要版 1 計画の目的と背景 高齢化が急速に進行する中 平成 24 年 3 月に県土整備部と保健福祉部が連携のもと高齢者の居住の安定確保に関する法律に基づく 栃木県高齢者居住安定確保計画 ( 以下 現計画 という ) を策定し 高齢者が安心して快適に暮

介護保険制度改正の全体図 2 総合事業のあり方の検討における基本的な考え方本市における総合事業のあり方を検討するに当たりましては 現在 予防給付として介護保険サービスを受けている対象者の状況や 本市におけるボランティア NPO 等の社会資源の状況などを踏まえるとともに 以下の事項に留意しながら検討を

(2) 高齢者の福祉 ア 要支援 要介護認定者数の推移 介護保険制度が始まった平成 12 年度と平成 24 年度と比較すると 65 歳以上の第 1 号被保険者のうち 要介護者又は要支援者と認定された人は 平成 12 年度末では約 247 万 1 千人であったのが 平成 24 年度末には約 545 万

H28秋_24地方税財源

~ 二次的な被害を防止する ~ 第 6 節 1 図 御嶽山における降灰後の土石流に関するシミュレーション計算結果 平成 26 年 9 月の御嶽山噴火後 土砂災害防止法に基づく緊急調査が国土交通省により実施され 降灰後の土石流に関するシミュレーション結果が公表された これにより関係市町村は

防災情報のページ

千葉県 地域包括ケアシステム構築に向けた取組事例 1 市区町村名 銚子市 2 人口 ( 1) 68,930 人平成 25 年 4 月 1 日現在 ( ) 3 高齢化率 ( 1) 65 歳以上人口 20,936 人 ( 高齢化率 30.37%) ( ) (65 歳以上 75 歳以上それぞれについて記載

あおぞら彩時記 2017 第 5 号今号の話題 トリオ : 地方勤務の先輩記者からの質問です 気象庁は今年度 (H 29 年度 )7 月 4 日から これまで発表していた土砂災害警戒判定メッシュ情報に加え 浸水害や洪水害の危険度の高まりが一目で分かる 危険度分布 の提供を開始したというのは本当ですか

奈良県ライフライン 情報共有発信マニュアル 第 3.3 版 平成 24 年 7 月 奈良県ライフライン防災対策連絡会

地区概況 7-6 ( 旧 ) 平三小学校 大字 平蔵 米原 小草畑 概要市の南東部に位置し 長南町 大多喜町に接している 丘陵地と平蔵川沿いの低地からなり 丘陵地にはゴルフ場が複数立地し 低地では 民家や農地が分布する 地区を南北に国道 297 号が通り 国道 297 号沿いには小規模な造成宅地があ

<4D F736F F F696E74202D208E518D6C8E9197BF325F94F093EF8AA98D CC94AD97DF82CC94BB92668AEE8F8082C98AD682B782E992B28DB88C8B89CA2E B8CDD8AB B83685D>

<4D F736F F F696E74202D E6C8D918D8793AF95F18D908F C4816A8A C55F F4390B394C52E707074>

Microsoft Word - 単純集計_センター長.docx

< F2D D F97D18F57978E B8367>

報告書_表紙.indd

<4D F736F F D2089EE8CEC95DB8CAF8E7B90DD82CC8EA991528DD08A5194ED8DD08C6F8CB182C696688DD088D38EAF82C98AD682B782E98CA48B86>

Microsoft Word - j-contents5.doc

35

水防法改正の概要 (H 公布 H 一部施行 ) 国土交通省 HP 1

4 回答者属性 (1) 性別 人数割合 (%) 男性 女性 49.4% 0.4% 男性 5 女性 % 2 0.4% (2) 年代別 人数割合 (%) 20 代 % 30 代 % 40 代 % 50 代 % 60~6

(2) 小学校区別人口特性 2010 年の校区別総人口は 学校区の順に多い 2010 年の校区別人口密度は の順に高くなっており 学校区の殆どの区域と 学校区の一部区域は DID 地区となっている 2040 年の推計人口は 学校区で 2010 年人口を上回る若しくは横ばいの見込みであるが その他の殆

協定の資料 1. 番号の付け方 災害応急対策時に, 各部及び各班で利用する資料が分かるよう, 下記の規定で番号を付ける 部班連番 基準 A1 1 A: 統括部 1. 本部班 2. 情報分析班 3. 情報記録班 4. 広報班 5. 財政班 6. 渉外班 E: 建設部 1. 建設総務班 2. 応急仮設住

はじめに 道では 北海道行政基本条例 に基づき 道政の基本的な方向を総合的に示す計画として 新 北海道総合計画 を策定し 政策展開の基本方向の一つとして 安心で心豊かな北海道ライフスタイル を掲げ 安全 安心な生活の確保 に向け 防災 減災の体制づくり を進めています 保健福祉部では 特に 子ども

161019_発表資料_後日訂正版_HP用

Microsoft Word - 3

1 水害に対する認識 (1) 水害に対する認識 問 1 あなたの家は, 今後 10 年以内に台風や集中豪雨により, 洪水, 高潮, 土砂崩れなどによる水害の被害を受ける可能性があると思いますか この中から 1 つだけお答えください 平成 28 年 1 月 被害を受ける可能性があると思う( 小計 )

各府省からの第 1 次回答 1. 災害対策は 災害対策基本法に規定されているとおり 基礎的な地方公共団体である市町村による第一義的な応急対応と 市町村を包括する広域的な地方公共団体である都道府県による関係機関間の総合調整を前提としている を活用してもなお対応できず 人命又は財産の保護のため必要がある

先行的評価の対象とするユースケース 整理中. 災害対応に関するユースケース. 健康に関するユースケース. 移動に関するユースケース. 教育に関するユースケース. 小売 物流に関するユースケース 6. 製造 ( 提供した製品の保守を含む ) に関するユースケース 7. 農業に関するユースケース 8.

( ウ ) 年齢別 年齢が高くなるほど 十分に反映されている まあまあ反映されている の割合が高くなる傾向があり 2 0 歳代 では 十分に反映されている まあまあ反映されている の合計が17.3% ですが 70 歳以上 では40.6% となっています

4 被災生活の環境整備主な修正概要 避難所毎に運営マニュアルを作成し 避難所の良好な生活環境を確保するための運営基準等を明確にしておく 避難所運営マニュアルの作成 訓練等を通じて 住民の避難所の運営管理に必要な知識の普及に努める 県 DMAT( 災害時派遣医療チーム ) の活動終了以降の医療提供体制

(2) 市原市における区域設定の考え方本市においては 更級地区における商業集積や沿岸における工業地帯の形成等 これまで特色ある土地利用展開を行ってきた経緯を踏まえ 居住誘導区域の設定に合わせ地域の特性に応じた区域を設定します 市原市における区域設定の考え方 市街化区域 1 居住誘導区域 2 一般居住

本検討会で扱う「所有者の所在の把握が難しい土地」とは

< 要約 > < 質問 1> あなたにとって最も備えが必要だと思う災害は何ですか? トップは圧倒的に 地震 約 8 割の方が 最も備えが必要な災害 と回答 北海道 東北では 大雪 雪崩 中国 四国 九州は 台風 大雨 洪水 を警戒 < 質問 2> ご家庭の防災対策は 100 点満点で採点すると何点で

資料1 受援計画策定ガイドラインの構成イメージ

緊急緊急消防援助隊について消防援助隊の概要 目的 地震等の大規模 特殊災害発生時における人命救助活動等を効果的かつ迅速に実施する消防の援助体制を国として確保 創設の経緯等 阪神 淡路大震災での教訓を踏まえ 平成 7 年に創設 平成 15 年 6 月消防組織法の改正により法制化 平成 16 年 4 月

東日本大震災における施設の被災 3 東北地方太平洋沖地震の浸水範囲とハザードマップの比較 4

唐津市農業委員会 農地等の利用の最適化の推進に関する指針 平成 2 9 年 11 月 8 日 唐津市農業委員会 第 1 基本的な考え方農業委員会等に関する法律 ( 昭和 26 年法律第 88 号 以下 法 といいます ) の改正法が平成 28 年 4 月 1 日に施行され 農業委員会においては 農地

報道関係者各位 2019 年 8 月 9 日 SBI リスタ少額短期保険株式会社 [ 関東財務局長 ( 少額短期保険 ) 第 1 号 ] SBI リスタ少短 地震 防災 に関するアンケート調査を実施 ~ 地震だけでなくあらゆる自然災害への警戒意識 高まる~ SBI リスタ少額短期保険株式会社 ( 本

<4D F736F F D2081A196A78F578E738A58926E8DC490B695FB906A B95D2816A2E646F63>

(案)

鬼怒川緊急対策プロジェクト 鬼怒川下流域 茨城県区間 において 水防災意識社会 の再構築を目指し 国 茨城県 常総市など 7市町が主体となり ハードとソフトが一体となった緊急対策プロジェクトを実施 ハード対策 事業費合計 約600億円 ソフト対策 円滑な避難の支援 住民の避難を促すためのソフト対策を

職員の運営能力の強化 避難所担当職員研修の実施 全庁対象の避難所担当職員研修(5 回開催で約 400 名参加 ) 区毎の避難所担当職員研修 男女共同参画の視点に立った避難所づくり 共助による災害時要援護者支援の取り組みについて説明 各区災害対策本部との連絡 避難所内の課題解決の調整など 地域団体等へ

Shape ファイルをシステムに取り込むために 左上のアイコンから 表示されたインポートのウィンドウから シェープファイル を選択します をクリックします 更にウィンドウが開き 入力データの指定が求められます 参照ボタンをクリックして Shape ファイル ( 集落位置情報付き集落データ

<GK クルマの保険 ( 車両保険 )> ( 自動車によるあて逃げに限ります ) お客さまのおクルマは 車両保険 に加入していますか? 自動車保険の車両保険では 一般車両 もしくは 10 補償限定 のいずれでも 台風や集中豪雨による洪水の事故が対象となります 地震 噴火またはこれらによる津波 によっ

PowerPoint プレゼンテーション

本書の目的介護保険サービス事業所は, 高齢者の方が多く利用しており, 災害発生時には避難等の援助が必要となるため, 事業者は, 災害発生時に迅速かつ適切な行動をとれるように備えておく必要があります 本書は, 介護保険サービス事業所が災害対応マニュアルを作成する際に特に留意する点についてまとめています

愛媛地域防災力研究連携協議会 自分で避難できない人 ( 要援護者 ) を 地域がいかに支援するか 災害状況を的確に判断し避難できる住民を育成し 避難率を高めていく

2

国土技術政策総合研究所 研究資料

<4D F736F F F696E74202D20332E8CFA90B6984A93AD8FC E18F8A93BE8D8297EE8ED293998F5A82DC82A B68A888E B8E968BC682CC8D6C82A695FB B8CDD8AB B83685D>

Microsoft Word - 17tiikikouzou.doc

気象庁技術報告第134号表紙#.indd

<4D F736F F D BF88CB4926E88E696688DD08C7689E6918D8A872E646F6378>

<4D F736F F D208EA98EE596688DD DD A8890AB89BB837D836A B2E646F63>

Transcription:

1. はじめに 災害列島 と称される我が国は, 自然災害が発生しやすい地形, 地質, 気象などの条件下にある. なかでも, 佐賀県は中山間地, 平地, 低平地を併せ持ち, 特に県南部の有明海沿岸低平地一帯は, 水害の多発地として古くから知られている. 農林水産省は, 防災 減災対策を着実に推進するために 経済財政改革の基本方針 2007 ( 平成 19 年 6 月 ) の中で, 自治体にハザードマップの作成を推奨しているものの, 現在の地震防災マップの整備率が 5.5 %, 津波ハザードマップが 12.8 % であり, 未だに低調な水準にある ( 農林水産省,2007). また, 近年の自然災害では, 災害犠牲者に占める高齢者の割合が高くなっている ( 厚生省,1996). そのため, 地域高齢者のための防災 減災対策の強化を図ることは, 人口の急速な高齢化に直面する我が国における重大な社会的課題である. 本研究は, 平成 19 年度より佐賀大学で開始した地域安全総合研究 1 において実施した, 地方都市における災害時要援護者および介護保険施設利用者の防災に関するアンケート調査をもとに, 地域高齢者の住環境, 防災意識, 地勢に潜む潜在的な災害リスクを検証し, 地域高齢者, 施設管理者, 地域, 団体などの防災意識の覚醒ならびに変革のための方途を示すことを試みる. 2. 研究の視点および方法平成 19 年度に行った佐賀県内の介護保険施設を対象とした防災意識調査 ( 北川ら, 2007) より, 介護保険施設は, 災害被災者の受け入れには積極的であるものの, 施設利用者の避難や災害に対する備えは十分でないことが明らかになった. この結果を踏まえて, 中山間地, 平地, 低平地といった多様な地形を有し, また自主避難時の要援護者名簿登録を行っている佐賀県小城市において, 自立歩行による避難が可能である 65 歳以上の高齢者を対象に,43 項目の防災意識に関するアンケート調査を実施した. なお, 同調査は, 平成 19 年 11 月の同市の民生委員の定例会にて各地区の民生委員に依頼して行ったもので, アンケート用紙の回収率は 97 % (443 件 ) であった. また, 同市の人口動態, 地勢, 土砂災害リスクを地理情報システム (GIS) を利用して評価し, 各地域の潜在的な災害リスクを検討した. 1 平成 19 年度より, 佐賀大学では重点領域研究として 災害弱者のための地域安全生活総合研究プロジェクト が発足し, 平成 20 年度も継続研究が進行中である.

3. 佐賀県の自然災害状況過去 10 年の我が国の自然災害を顧みると,2000 年の東海豪雨,2003 年の九州北部を中心とした梅雨前線豪雨,2004 年の新潟や福井等での梅雨前線豪雨や観測史上最多の台風上陸,2005 年の東京 23 区内の浸水被害,2006 年の中部, 中国, 九州地方における梅雨前線豪雨など, 水害が多発している.2003 年の梅雨前線豪雨による九州北部を中心とした水害, 2006 年の中部, 中国, 九州地方の梅雨前線豪雨発生による水害などの被害状況からも, 最近の九州における自然災害による被害は, 広域化 甚大化の様相を呈するようになってきている ( 内閣府,2007). 自然災害は, 地震災害, 風水害, 火山災害, 雪害, その他 ( 海上災害, 航空災害 ) に分類される ( 内閣府,2007). 有明海を震源地とした 1966 年の地震 (M5.5) を除けば, 佐賀県は地震の発生頻度や被害規模が極端に小さく, 逆に松浦川, 嘉瀬川, 六角川などの河川氾濫に代表される洪水被害の発生頻度が高い. 佐賀県北部を縦断する松浦川では,1967 年に伊万里市で浸水家屋 9335 戸, 死者 19 名の被害,1972 年に唐津市で浸水家屋 2913 戸, 死者 2 名, 伊万里市では浸水家屋 480 戸, 浸水面積 1145 haの被害,1990 年に伊万里市で浸水家屋 480 戸, 浸水面積 1145 haの被害が出ている. 2006 年の9 16 豪雨の際には, 唐津市に家屋全壊 4 戸, 半壊 3 戸, 床上浸水 45 戸の被害があり, 同年 9 月 19 日には唐津市民災害ボランティアセンターが設置された. ボランティアの登録件数は337 人であったが, 実際に出動したボランティア数は, それを上回る383 人に上った. 佐賀市内を横切る嘉瀬川では,1953 年には浸水家屋 31032 戸, 堤防決壊が78 箇所,1963 年には全壊流失家屋 25 戸, 浸水家屋 219 戸,1980 年には床上浸水 1775 戸, 床下浸水 10854 戸の洪水被害が出ている. 南部の六角川では,1990 年に近年で最大規模の洪水が発生し, 堤防決壊 9 箇所, 浸水家屋 8676 戸の被害が出た. 佐賀県の65 歳以上人口の割合, すなわち高齢化率は 22.1%(2004 年 ) であり, 全国平均を4 年先行していることから, 高齢者のための防災 減災対策の拡充が急がれている. 4. 自然災害に関する意識調査結果 4. 1 小城市の地勢および気候小城市は, 県土の 3.93 % に相当する 95.85 km 2 の面積を占め, 佐賀平野の西端に位置する地方都市である. 同市は, 県庁所在地 佐賀市の市街地まで約 10 km, 福岡市まで 70 km, 長崎市まで 100 km の位置にある. 同市北部には天山山系, 中央の平野部には肥沃な平野部,

中南部の広大な低平地にはクリーク水田地帯, 南岸の有明海には日本最大面積の干潟が広 がり, また市内には天山山系を水源とする祇園川, 晴気川, 牛津川が縦断する, 地形の多様 性に富む地域である. 夏は高温多湿で, 冬には乾燥した北西の季節風 ( 天山おろし ) が吹く. 4. 2 高齢者の生活環境小城市の人口は約 4 万 6 千人 ( 約 14,600 世帯 ) であり, 近年, 佐賀市への通勤者のベッドタウンとして増加傾向にある. そのため, 高齢化率は 20.9% であり, 佐賀県の高齢化率 (22.6 %) を下回る水準にある ( 図 1). 同市には 3 箇所の介護保険施設が立地している. 小城市 : 45,852 人 神崎市 鳥栖市 唐津市 佐賀市 伊万里市多久市武雄市嬉野市鹿島市 0 10km ( 人 ) 200000 150000 100000 80000 60000 40000 20000 10000 人口総数 (( 人 )) 小城市 : 20.9 % 神崎市 鳥栖市 唐津市 伊万里市多久市武雄市大町町 :30 % 嬉野市鹿島市太良町 : 28.1 % 佐賀市 0 10km (%) 30 28 26 24 22 20 65 歳以上人口高齢化率 (%) (%)

図 -1 佐賀県内の市町村の人口および高齢化率. 図中の数値は e-stat( 統計センター, http://www.e-stat.go.jp/sg1/estat/estattopportal.do) から抜粋した 2005 年のもの. また, 市町村の 区分は, 国土数値情報 ( 国土交通省,2007 年 4 月 1 日発行 ) に準拠した. 調査対象となった高齢者の居住地域の大部分が平地 (81.5 %) であり ( 表 1), 農村地域の居住者の割合が 62.3 % と最も高い ( 表 2). また, 単身世帯は 18.7 %,2 世代以上の家族との同居世帯が 50.7 % を占め ( 表 3), 要介護者の持つ世帯は 15.6 % であった ( 表は省略 ). 高齢者が居住する家屋の 69.5 % は木造 2 階建て等, 約 23.3 % は木造平屋建てである ( 表 4). 家屋の築年数は,20 年未満が 33.3 %,20 30 年が 21.7 %,30 年以上が 41.2 % であり ( 表 5), 老朽化が進行していることが伺われる. 表 - 1 居住地域の地形 居住地 数 割合 (%) 山間地 46 10.4 平地 361 81.5 低平地 28 6.3 無回答 8 1.8 表 - 2 自宅所在地 居住地 数 割合 (%) 市街地 121 27.3 農村地域 276 62.3 漁村地域 4 0.9 山間地域 33 7.4 無回答 9 2.0 表 - 3 世帯構成人員数 構成人数 数 割合 (%) 1 人 83 18.7 2 人 129 29.1 3 人 83 18.7 4 人 48 10.8 5 人以上 94 21.2 無回答 6 1.4 表 - 4 家屋の形態家屋 数 割合 (%) 木造平屋 103 23.3 木造 2 階建以上 308 69.5 鉄骨平屋 1 0.2 鉄骨 2 階建以上 22 5.0 鉄筋コンクリート平屋 0 0.0 鉄筋コンクリート2 階建以上 3 0.7 無回答 6 1.4 表 - 5 家屋の築年数 家屋 数 割合 (%) 10 年以下 58 13.1 11 年 ~20 年 94 21.2 21 年 ~30 年 96 21.7 31 年 ~40 年 84 19.0 41 年 ~50 年 45 10.2 51 年 ~60 年 19 4.3 61 年以上 34 7.7 無回答 13 2.9

4. 3 高齢者の防災意識 2004 年および2006 年に台風が佐賀県を直撃し, 県全域で多大な被害が出た. 小城市においても,2004 年には 60 %,2006 年には 41.1 % の高齢者が, 台風の被害を被ったと回答している ( 表 6, 表 7). 自然災害の発生を予め知るための情報源の一つに, 気象情報がある. 本調査においても, 8 割を超える高齢者が気象情報や市役所からの災害情報を日常的に気にかけていると回答したことから, 災害予知に対する関心の高さを伺うことができる ( 表 8). また, 浸水被害には 50.6 %, 地震被害には 74.5 %, 風害には 89.4 %, 火災には 90.5 % の高齢者が気にかけていると回答した. その一方で, 土砂災害や高波 津波を気にかけていると回答した高齢者はそれぞれ 26.2 %,19.6 % であり ( 表は省略 ), 他の災害の場合と比較して少ない. 最近では台風や竜巻, また中南部の平地 低平地では古くから度々水害にみまわれてきた地域であることから, こうした高齢者の災害に対する意識には, 過去の被災経験が大きく関与していると考えられる. 本調査は, 小城市在住の全高齢者を対象に行ったものではないが, 調査は市全域の広範な地域の高齢者を対象に行ったものであることから, 以上の結果は, 同市在住の高齢者の防災意識を反映したものと考えられる. 表 - 6 2004 年に発生した台風の被害 回答 数 割合 (%) はい 266 60.0 いいえ 160 36.1 無回答 17 3.8 表 - 7 2006 年に発生した台風の被害 回答 数 割合 (%) はい 182 41.1 いいえ 246 55.5 無回答 15 3.4 表 - 8 気象情報の注意状況 回答 数 割合 (%) 気にしていない 14 3.2 やや気にしている 57 12.9 気にしている 178 40.2 かなり気にしている 191 43.1 無回答 3 0.7

5. 地図で見る小城市の災害リスク特別な支援を必要とする災害時要援護者にとって, 実効性の高い防災体制を構築することは, 生命に関わる重大な課題である ( 我澤,2006). ところが, 被災の恐れがある自然災害の種類や, 発生した災害に対して必要となる対策は, 居住地の地理的条件や人口動態によって異なると考えられる. 小城市では, 避難連絡, 避難所の運営管理, 要援護者への対応に関する市職員向けの自主避難マニュアル ( 別添 ) を作成しているが, 実効性の高い防災体制を構築するためには, 居住地に潜む自然災害リスクを適切に把握することが必要である. GIS を利用して, 市内 4 町 ( 小城町, 三日月町, 牛津町, 芦刈町 ) の人口形態を評価した結果, 人口は北西部に位置する小城町が最大であるが, 各内の人口密度には地域によって大きなばらつきがあること, また三日月町や牛津町の市街地に人口が密集していることが分かる ( 図 -2).4.2 節で述べたように, 小城市住民の高齢化率は 20.9 % であり, 現行の市町村区分に基づいた数値からは, 著しい高齢化の様相は見られない ( 図 -1). しかし,4 町の高齢化率を比較すると, 最大で 8.6 % の差異が見られた ( 図 -3). さらに, 同市内の高齢化率の分布から, 小城町南部および東部, そして三日月町の西部に, 高齢化率が 30 % を超える地区が存在することが確認できる ( 図 -3). 小城町 小城町 17,669 人 三日月町 三日月町 12,492 人 牛津町 10,538 人 0 2km 芦刈町 6,255 人 ( 人 /km ) 2 ) 16000 14000 12000 10000 8000 芦刈町 0 2km 牛津町 (( 人 /km /km2 2 ) 3200 1600 800 400 200 100 人口 人口密度 図 -2 小城市内の人口および人口密度の分布. 人口と人口密度は 地図 Info( 日本地図センター, http://info.jmc.or.jp/index.html) より抜粋して集計した 2006 年の数値を掲載.

小城町 19.4 % 小城町 三日月町 三日月町 16.4 % 牛津町 19.3 % 芦刈町 25.0 % 0 2km (%) 24 22 20 18 16 牛津町 芦刈町 0 2km (%) 38 36 32 28 24 20 16 図 -3 小城市内の高齢化率の分布. 高齢化率は 地図 Info( 日本地図センター,http://info.jmc.or. jp/index.html) より抜粋して再集計した 2006 年の数値である. ここで, 前述のアンケート調査では, 高齢者の 78.8 % が居住地域に危険な箇所があると感じると回答した ( 表は省略 ). 土砂災害を気にかけている高齢者の割合は, 他の災害の場合と比較して少なかったが, 内閣府の集計 ( 内閣府,2005) によれば, 小城町北部の山間部には, 土砂災害に伴う道路交通網の寸断によって孤立する恐れがある 12 箇所の集落が確認されている ( 図 -4). また, そうした集落の一部は, 高齢化率の高い地域と重なっていることから, 孤立によるライフラインの途絶が, 高齢者の生命活動に多大な影響を及ぼすことが危惧される. そのため, 孤立リスクを抱える高齢化の進んだ集落については, 地域の実態を反映した防災体制の整備が急務であると考える. 6. 避難所としての介護福祉施設の役割要介護高齢者, 障害者, 妊産婦などの特別なニーズを持つ人は, 一般の避難所での共同生活が困難である場合がある. そのため, 生活施設である社会福祉施設は, 地域に居住する災害時要援護者の災害避難所としての役割が期待されている. これまで, 佐賀県は大規模な

川内 本山 寒気 江里山石体清水大塚松本原田焼山小城 孤立リスク + 高齢化 上右原 三日月 下右原 牛津 芦刈 図 -4 土砂災害によって孤立する可能性のある集落の分布. 集落区分は農林業センサス ( 農林水産省,2005) に準拠 したため, 図中の集落名と区分は現在のものと異なる場合がある. 自然災害に襲われなかったという歴史的経緯から, 地域住民の間に 佐賀県は安全な地域である という意識が根強くある. さらに, 日常生活の支援を要する高齢者が多く居住している介護保険施設などの社会福祉施設は安全であり, また避難所として最適であるとの認識が広がっており, 実際に自治体が介護保険施設等を福祉避難所としての指定を進めている. 全市町に福祉避難所が準備されておらず, また受け入れ可能人数にも限りがあるものの, 多くの介護保険施設が, そうした社会の要請に応えることを前向きに検討している. 佐賀県の 92 箇所の介護保険施設のうち, 小城市内には 3 施設ある ( 図 -5). その施設のいずれも平地に位置していることから, 前述の中山間地における土砂災害時には, 避難者の受け入れ施設として, 一般施設にはない特殊な機能が期待される. しかし, 平地や低平地に立地した施設について

は, 洪水時には利用できないことも予測されるため, 災害に対する各避難所の安全性を適切に評価することが必要であると考えられる. また, 介護保険施設の代替避難所として, 一般避難所の利用も考えなければならないが ( 小山,1991), 学校や公民館などの一般避難所は, 福祉避難所のような高い機能を有していない. そのため, 特別なニーズを必要とする高齢者が避難所生活のために,2 次的避難所 ( 県や市町と協定締結して避難所とすることができるゴルフ場関係施設, 公営国民宿舎等, 青少年施設など ) の利用も検討する必要があると考える. 特別養護老人ホーム ( 計 55 箇所 ) 定員 ( 人 ) ( 人 ) 100 90 80 70 60 50 老人保健施設 ( 計 37 箇所 ) 定員 ( 人 ) ( 人 ) 100 90 80 70 60 50 重複した箇所 小城町 三日月町 牛津町 70 人 50 芦刈町 0 2km 定員 ( 人 ) 図 -5 特別養護老人ホームおよび老人保健施設の分布. 合併前の 4 町の区分は, 2007 年 4 月 1 日発行の国土数 値情報 ( 国土交通省,http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/) の行政区分に準拠した.

7. 今後の課題本研究の調査対象地である小城市は, 佐賀県の中で数少ない人口微増地域である. しかし, 小城市全域を俯瞰すると, 高齢化や過疎化が急速に進行する地域もあり, 全市的に人口が増加しているわけではない. また, 佐賀県全体で人口減少と高齢化が同時進行中である状況から, 将来は個々の地域で災害対策を講じるのに十分な人手を確保することが困難になることが懸念される. このような地域では, 自治体あるいは集落同士の広域連携体制の強化を図ることが, 災害時要援護者の救助, 支援, 生活復帰, 減災のために必要であると考えられる. 本研究では, 地方都市在住の高齢者を取り巻く防災に関する社会科学的課題を, 自然科学分野の研究技術を取り入れることによって, 総合的に検討することを試みた. 防災に関するパイロット調査であること, また自然災害リスク分析に必要となるデータベースが十分に整備されていないことなどから, 本研究では, 地域の潜在的な災害リスクの一端を垣間見たに過ぎない. しかし,GIS を利用することにより, 身近な生活環境に潜む災害リスクを可視化できることを示した意義は大きい. 今後は, 高齢者の防災意識, 地勢, 道路交通体系, 情報通信インフラ, 生活 医療物資や防災資機材の備蓄状況などについて地域あるいは集落単位で調査し, それらの情報に基づいてリスク分析を行うことにより, 各地域の固有事情や地勢を鑑みた防災体制を構築することが望ましい. 8. 要約佐賀県小城市は, 人口が約 4 万 6 千人 ( 約 14,600 世帯 ), 高齢化率が 20.6 % の地方都市であり, 北部には中山間地, 中南部には平野が広がる地域である. 自然災害に対する高齢者の防災意識を調べるために, 自立生活が可能である 65 歳以上の同市在住の高齢者を対象に, 質問紙による 43 項目のアンケート調査を実施するとともに, 地理情報システム (GIS) を利用して, 同市の人口形態および地勢の特徴を調べた. 大半の高齢者が気象情報や市役所等からの災害情報を気にする習慣があり, なかでも風害, 地震, 浸水被害への関心が高い一方で, 高波 津波や土砂崩れへの警戒意識は低かった.2004 年と 2006 年に, 台風および竜巻の被害を受けた同市の高齢者はそれぞれ 6 割と 4 割であったこと, また同市南部に広がる低平地では古くから水害にみまわれてきた地域であることなどから, こうした高齢者の防災意識は, 過去の被災体験に強く起因するものと考えられた. 多くの高齢者が居住する地域に災害危険箇所の存在を感じていると回答したことを受け, 本研究では高齢者の関心が低かった土砂災害リスクの判別を実施した結果, 土砂災害によって孤立するリスクを抱える農業集落が中山間地に数多く存在すること, またそうした集落では高齢化率が 30 % を超える集落も多く, 防災基盤の弱体化が懸念された. 正確な災害リスク分析にはさらなる検討が必要であるものの, 本研究を通じて, 地域生活環境に応じた適切な防災対策の整備と, 防災に対する住民意識の啓発が必要であると考えられた.

参考文献厚生省. 人口動態統計からみた阪神 淡路大震災による死亡の状況,1996. 我澤賢之, 山根耕平, 川村宏. 障害者 高齢者のための防災活動における GIS の活用, 信学技報 WIT2006-37,2006 北川慶子ほか. 平成 19 年度佐賀大学災害弱者のための地域安全生活総合研究,2007. 国土交通省. 国土数値情報,http://nlftp.mlit.go.jp/ksj,2007. 小山剛. 大規模災害時における福祉施設の果たす役割と課題, 介護福祉, 社会福祉振興 試験 センター,1991. 統計センター.e-stat,http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/eStatTopPortal.do,2005. 内閣府. 平成 19 年度防災白書,2007. 内閣府. 中山間地等の集落散在地域における地震防災対策に関する検討会提言,2005. 農林水産省.2005 年農林業センサス,2005. 農林水産省. 中山間地域における喫緊の課題をめぐる情勢と対策の方向について,2007. 日本地図センター. 地図 info,http://info.jmc.or.jp/index.html,2006.