第 3 章木質バイオマス発電 1 木質バイオマスバイオマスの現状 本県のバイオマスの賦存量は, 木質系が全体の約 3/4 を占めており, その中では, 製材残材 が最も多く, 次いで 建設資材廃材, 林地残材 の量が多い また, 製材残材 や 建設資材廃材 は, 原材料の確保やコスト面での優位性が高いことから, 既に活用が進んでいるものと考えられる 一方, 林地残材 については, 賦存量は多いものの, エネルギーとして利用するには, 搬出 など燃料化のプロセスが必要であり, また, エネルギーの価値に対して, 搬出や運送に要するコストが大きいことから, 現状では, ほとんど利用が進んでいないと考えられる また, 県内には, 木質バイオマスを活用した発電施設が 8 施設存在するが, その多くは自社で排出された残材を活用した発電となっており, 山林の木材を燃料目的で活用しているのは, ごく一部である 図表 3-1 県内のバイオマス発電施設 設置者 事業所名 ハ イオマスの種類等 備考 中元クリーニング 本社工場 福山リサイクル発電 RDF 電源開発 竹原火力発電所 (1 号機 ) 下水汚泥 石炭混焼 王子製紙 呉工場 黒液 中国木材 本社工場 中国木材 郷原工場 呉市クリーンセンターくれ シンコー府中工場 安芸地区衛生施設管理組合安芸クリーンセンター 広島市中工場 MCMエネルキ ーサーヒ ス ( マツタ 本社工場 ) 石炭混焼 広島市南工場 広島市安佐北工場 ウッドワン本社工場 ウッドワン合板工場 マルニ木工湯来工場 日本大昭和板紙 大竹工場 黒液 日本大昭和板紙 大竹工場 ( 小島 ) 黒液 2 木質バイオマスバイオマスに係る電力電力買取制度買取制度の特記事項 バイオマス発電については, 燃料種により適用される調達価格が異なる そのため, 使用するバイオマスの種類について, 電力買取制度上, その出所を示す書類 ( ガイドラインに基づいた証明書 ) を添付することとされている - 22 -
(1) 買取区分及び該当木質バイオマス 買取区分に該当する主な木質バイオマスは次のとおりである 固形燃料燃焼 ( 未利用木材 ) 固形燃料燃焼 ( 一般木材 ) 固形燃料燃焼 ( リサイクル木材 ) 図表 3-2 買取区分及び主な該当木質バイオマス買取区分主な該当木質バイオマス 間伐材間伐材等由来の木質バ 主伐材 ( 対象森林 由来のもの ) イオマス < ガイドラインに準拠した公的な証明 分別管理が必要 > 一般木質バイオマス < ガイドラインに準拠した証明 分別管理が必要 > 建設資材廃棄物 支障木 ( 対象森林由来のものであって, 本体工事で伐採 搬出の経費が見込まれているものを除く ) 除伐による木質バイオマス 製材等残材 その他間伐材等由来の木質バイオマス, 建設資材廃棄物に該当しない木質バイオマス 例対象森林以外の森林に由来する主伐材, 被害木 病害虫木, 輸入材, 非森林由来の木質バイオマス 建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律 ( 平成十二年法律第百四号 ) 第 2 条第 2 項に規定する建設資材廃棄物 ガイドラインに準拠して証明 分別管理が行われなかった木質バイオマス 対象森林 とは,1 森林経営計画の対象森林,2 保安林及び保安施設地区,3 国有林野施業実施計画 公有林野等官行造林地施業計画の対象森林のいずれかに該当する森林 (2) 木質バイオマスの証明イメージ 木質バイオマス由来の電力に対する信頼性の確保を図るため, バイオマスの種類別に適切な識別 確認を行うための証明を行うこととされている 発電利用に供する木質バイオマスの証明イメージは, 次のとおりである 図表 3-3 証明のイメージ - 23 -
3 主な課題 燃料としての価格がエネルギーとしての価値を上回っているため, 現状では, 山林へ放置されている間伐材など ( 未利用木材 ) を発電に利用するためには, 燃料化のためのコスト低減 ( 供給側のコスト抑制 ) が必要である 4 取組の方向性 供給側の体制整備等を通じて, 伐木から搬出, 加工, 運搬に至る燃料化のコストを低減し, 未利用木材を燃料として有効活用できる供給システムを構築する必要がある 5 県の具体的具体的な取組 (1) 燃料化コストの低減 建築用材や製紙原料として利用されない間伐材等の木材は, 現状では, コスト的に活用が見込めないことから, 山中へ放置されるなど未利用の状況にある 伐木された木材のうち, 現在利用されている部位は木の中心部であり, それ以外の末木や根元部が未利用木材となっている 図表 3-4 利用木材と未利用木材のイメージ 利用木材 建築用材 パルプ材 末木 根元部 未利用木材 こうした未利用木材の発生量について, 広島県の木材生産量 ( 計画 ) から推計した, 未利用木材の根元部を利用する場合の最大値の見通しは, 次のとおりである なお, 末木については, 嵩張る等効率が悪いため, 算定の対象外としている 平成 23 年度 ( 推計 ):3.7 万生 t 木材生産量から推計 平成 27 年度 ( 見込 ) :6.6 万生 t 平成 32 年度 ( 見込 ) :8.8 万生 t - 24 -
次に, 本県の現状を踏まえ, 未利用木材を発電利用する場合の流通コストを試算した その結果, 伐木から造材までは, 現在行われている建築用材 パルプ材等の生産と同一工程のため, コストを計上しないで試算すると, 発電施設への到着までに, 次のようなコスト負担を生じる結果となった 図表 3-5 流通コストのイメージ 伐木 ~ 造材 運材 積込 運搬 チップ運搬 発電所 コスト コスト コスト コスト 1,932 円 /t 2,357 円 /t 5,500 円 /t 8,000 円 /t 総コスト 17,789 円 /t こうした未利用木材の供給コストの現状に対し, 国が平成 24 年度の買取価格を決定するために事業者からヒアリングを行った際の未利用木材の燃料費としては,12,000 円 / 生 t が想定されている この価格には, 適正な利潤等も考慮されていることから, 発電施設での供給価格を 12,000 円 / 生 t まで低減できれば, 未利用木材の利用拡大が見込まれるものと考えられる こうしたことから,12,000 円 / 生 t を目標価格として燃料化コストの低減策を検討した また, 燃料化コストの低減に当たっては, の能力向上や運搬体制の効率化等がポイントとなることから, これらのコストダウンの可能性について検討を進めた 図表 3-6 現状及び目標価格のイメージ 事例 1 ( 現状 ) 目指す姿 1 2 12,000 円 17,789 円 運材積込 運搬チップ運搬 0 5000 10000 15000 20000-25 -
ア課題への対応案 ( ア ) の能力向上によるコストダウンの可能性 木材の生産現場近くに生産性の高いチッパーを備えた拠点施設を整備し, 周辺地域の未利用木材を集積し, 効率的に大量のチップを生産することによりコストダウンを図る 拠点施設に一定規模の集積機能を整備することにより, 発電施設への切れ目の無い原料 ( チップ ) の供給や, 天然乾燥の効果が期待されるほか, トレーラーなど大型運搬車による搬出が可能となる なお, 拠点施設は, 県内に 3 箇所程度の整備を想定する ( イ ) 運搬体制の効率化等によるコストダウンの可能性 大量に生産されたチップを大型トレーラー等を使って大量に輸送することにより, 効率的な運搬体制が可能となり, 輸送コストの削減が期待される イ燃料化コストの低減策イメージ アの拠点施設の整備イメージは, 次のとおりである 図表 3-7 サテライト土場方式イメージ図 H23 未利用木材 : 6.2 万m3 (3.7 万生 t) H27 未利用木材 :11.0 万m3 (6.6 万生 t) 未利用木材は根元部 未利用間伐材等運搬 未利用間伐材等運搬 サテライト未利用木材収集 サテライト未利用木材収集 未利用間伐材等運搬 未利用間伐材等運搬サテライト未利用木材収集 大型トレーラーによる効率的なバイオマス運搬 利用木材用材 パルプ材 バイオマス発電施設 末木 未利用木材 根元部 - 26 -
ウコスト試算 ( ア ) 供給側のコスト サテライト施設を想定した供給コストについて, 本県の現状と比較し試算した結果は次のとおりである ( 事例 1 が, 本県の現状 ) 図表 3-8 木質バイオマス生産コストの比較 木質バイオマス生産コスト 事例 1( 現状 ) 1,932 2,357 5,500 8,000 17,789 円 運材 積込 運搬 チップ運搬 県内サテライトサテライト土場方式 1,932 2,357 3,900 3,000 11,189 円 目標価格 12,000 円 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 16,000 18,000 20,000 単位 : 円 / 生 t 事例 1( 現状 ) 運材運搬車, バックホウ使用 168.68m3 101 生 t 積込 運搬 6t 車, バックホウ使用 1,414 円 / m3 0.6t/ m3=2,357 円 / 生 t 移動式木材破砕機, バックホウ, 小割機使用年間処理能力 :1 万 ( 生 )t 程度 3,300 円 / m3 0.6t/ m3=5,500 円 / 生 t チップ運搬 10t 車運搬距離 :80km 県内サテライト方式試算結果運材事例 1と同様積込 運搬事例 1と同様固定式破砕機使用年間処理能力 :1.68 万 ( 生 )t 程度チップ運搬 22t 車運搬距離 :80km( 県内聴き取り ) - 27 -
エ今後の取組 木質バイオマス発電所については, 民間事業体が, 平成 26 年度の稼動に向けて発電所の建設を進めており, 当該発電所の稼動までに燃料用チップの供給体制を構築する必要がある このため, 燃料用木材の集荷, チップの大量生産, 大型車による効率的な運搬体制の構築に資する, 拠点施設 ( サテライト施設 ) の設置等, 燃料供給コストの低減を図る取組に対する支援策を具体化する 未利用木材の活用は, 林業の採算性の向上が期待され, 更なる森林整備の促進により, 持続的な林業の確立, ひいては森林の持つ公益的機能の維持 発揮を目指す必要がある こうした取組によって, 木質バイオマスの産業化を推進し, 林業の担い手等の雇用確保などにより, 地域の活性化につなげていくことが必要である - 28 -