す ウイルスの中で検出頻度の高いものはライノウイルス コロナウイルスが多く これに続くのが RS ウイルス インフルエンザウイルス パラインフルエンザウイルス アデノウイルスです また これらのウイルスには季節的流行の特徴があり ライノウイルスは春と秋 RS ウイルス コロナウイルス インフルエンザ

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2017 年 2 月 1 日放送 ウイルス性肺炎の現状と治療戦略 国立病院機構沖縄病院統括診療部長比嘉太はじめに肺炎は実地臨床でよく遭遇するコモンディジーズの一つであると同時に 死亡率も高い重要な疾患です 肺炎の原因となる病原体は数多くあり 極めて多様な病態を呈します ウイルス感染症の診断法の進歩に

は減少しています 膠原病による肺病変のなかで 関節リウマチに合併する気道病変としての細気管支炎も DPB と類似した病像を呈するため 鑑別疾患として加えておく必要があります また稀ではありますが 造血幹細胞移植後などに併発する移植後閉塞性細気管支炎も重要な疾患として知っておくといいかと思います 慢性

別紙 1 新型インフルエンザ (1) 定義新型インフルエンザウイルスの感染による感染症である (2) 臨床的特徴咳 鼻汁又は咽頭痛等の気道の炎症に伴う症状に加えて 高熱 (38 以上 ) 熱感 全身倦怠感などがみられる また 消化器症状 ( 下痢 嘔吐 ) を伴うこともある なお 国際的連携のもとに

糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

インフルエンザ(成人)

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第51回日本小児感染症学会総会・学術集会 採択結果演題一覧

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耐性菌届出基準

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2014 年 10 月 30 日放送 第 30 回日本臨床皮膚科医会② My favorite signs 9 ざらざらの皮膚 全身性溶血連鎖球菌感染症の皮膚症状 たじり皮膚科医院 院長 田尻 明彦 はじめに 全身性溶血連鎖球菌感染症は A 群β溶連菌が口蓋扁桃や皮膚に感染することにより 全 身にい

48小児感染_一般演題リスト160909

で言われています このような 副鼻腔炎と喘息の合併のことを 同一の気道で起こるので One airway one disease と呼ばれ久しくなっています それぐらいに 上気道と下気道の関連が密接であることが 広く認識されています また 副鼻腔炎に下気道の慢性炎症を合併する疾患としては 副鼻腔気管

70 例程度 デング熱は最近増加傾向ではあるものの 例程度で推移しています それでは実際に日本人渡航者が帰国後に診断される疾患はどのようなものが多いのでしょうか 私がこれまでに報告したデータによれば日本人渡航者 345 名のうち頻度が高かった疾患は感染性腸炎を中心とした消化器疾患が

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今週前週今週前週 2/18~2/24 インフルエンザ ヘルパンギーナ 4 4 RS ウイルス感染症 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 7 4 咽頭結膜熱 急性出血性結膜炎 0 0 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 流行性角結膜炎 ( はやり目

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図 1 鼻炎診療の手順とポイント鼻汁や湿性咳嗽を認める小児では 急性鼻副鼻腔炎がある可能性も念頭に置き 丁寧な問診と鼻腔観察を行う まず いつから どのような症状があるのかを問診で聴取する 鼻水の色や量 性質 ( 水っぽいか ねばねばしているか ) のほか いびきの有無についても聞く 鼻が詰まってい

ン (LVFX) 耐性で シタフロキサシン (STFX) 耐性は1% 以下です また セフカペン (CFPN) およびセフジニル (CFDN) 耐性は 約 6% と耐性率は低い結果でした K. pneumoniae については 全ての薬剤に耐性はほとんどありませんが 腸球菌に対して 第 3 世代セフ

染症であり ついで淋菌感染症となります 病状としては外尿道口からの排膿や排尿時痛を呈する尿道炎が最も多く 病名としてはクラミジア性尿道炎 淋菌性尿道炎となります また 淋菌もクラミジアも検出されない尿道炎 ( 非クラミジア性非淋菌性尿道炎とよびます ) が その次に頻度の高い疾患ということになります

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

インフルエンザ院内感染対策

日本内科学会雑誌第98巻第12号

免疫学的検査 >> 5E. 感染症 ( 非ウイルス ) 関連検査 >> 5E106. 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤

A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 第 50 週の報告数は 前週より 39 人減少して 132 人となり 定点当たりの報告数は 3.00 でした 地区別にみると 壱岐地区 上五島地区以外から報告があがっており 県南地区 (8.20) 佐世保地区 (4.67) 県央地区 (4.67) の定点当たり報告数は

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通常の市中肺炎の原因菌である肺炎球菌やインフルエンザ菌に加えて 誤嚥を考慮して口腔内連鎖球菌 嫌気性菌や腸管内のグラム陰性桿菌を考慮する必要があります また 緑膿菌や MRSA などの耐性菌も高齢者肺炎の患者ではしばしば検出されるため これらの菌をカバーするために広域の抗菌薬による治療が選択されるこ

Microsoft Word - 届出基準

蚊を介した感染経路以外にも 性交渉によって男性から女性 男性から男性に感染したと思われる症例も報告されていますが 症例の大半は蚊の刺咬による感染例であり 性交渉による感染例は全体のうちの一部であると考えられています しかし 回復から 2 ヵ月経過した患者の精液からもジカウイルスが検出されたという報告

6/10~6/16 今週前週今週前週 インフルエンザ 2 10 ヘルパンギーナ RS ウイルス感染症 1 0 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 8 10 咽頭結膜熱 急性出血性結膜炎 0 0 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 流行性角結膜炎 ( はやり目 )

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2009年8月17日

インフルエンザ定点以外の医療機関用 ( 別記様式 1) インフルエンザに伴う異常な行動に関する調査のお願い インフルエンザ定点以外の医療機関用 インフルエンザ様疾患罹患時及び抗インフルエンザ薬使用時に見られた異常な行動が 医学的にも社会的にも問題になっており 2007 年より調査をお願いしております

インフルエンザ施設内感染予防の手引き

10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

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医療連携ガイドライン改


日産婦誌58巻9号研修コーナー

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花粉症について

第14巻第27号[宮崎県第27週(7/2~7/8)全国第26週(6/25~7/1)]               平成24年7月12日

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検査項目情報 インフルエンザウイルスB 型抗体 [HI] influenza virus type B, viral antibodies 連絡先 : 3764 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10) 5F410 分析物 インフルエン

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顎下腺 舌下腺 ) の腫脹と疼痛で発症し そのほか倦怠感や食欲低下などを訴えます 潜伏期間は一般的に 16~18 日で 唾液腺腫脹の 7 日前から腫脹後 8 日後まで唾液にウイルスが排泄され 分離できます これらの症状を認めない不顕性感染も約 30% に認めます 合併症は 表 1 に示すように 無菌

二類感染症届出基準

10/3~10/9 今週前週今週前週 インフルエンザ 7 1 百日咳 1 0 RS ウイルス感染症 ヘルパンギーナ 咽頭結膜熱 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 感染性胃腸炎 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 急性出

熊本県感染症情報 ( 第 31 週 ) 県内 170 観測医の患者数 (7 月 28 日 ~8 月 3 日 ) 今週前週今週前週 インフルエンザ 0 1 百日咳 0 0 RS ウイルス感染症 7 0 ヘルパンギーナ 咽頭結膜熱 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 感染性胃腸炎

( 別添 ) インフルエンザに伴う異常な行動に関する報告基準 ( 報告基準 ) ( 重度調査 ) インフルエンザ様疾患と診断され かつ 重度の異常な行動を示した患者につき ご報告ください ( 軽度調査 ) インフルエンザ様疾患と診断され かつ 軽度の異常な行動を示した患者につき ご報告ください イン

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疾患名 平均発生規模 ( 単位 ; 人 / 定点 ) 全国 県内 前期 今期 増減 前期 今期 増減 県内の今後の発生予測 (5 月 ~6 月 ) 発生予測記号 感染性胃腸炎 水痘

花粉症患者実態調査(平成28年度) 概要版

情報提供の例

ROCKY NOTE 食物アレルギー ( ) 症例目を追加記載 食物アレルギー関連の 2 例をもとに考察 1 例目 30 代男性 アレルギーについて調べてほしいというこ

今回の調査では 主に次のような結果が得られました 花粉症の現状と生活に及ぼす影響の実態 スギ花粉症を初めて発症してから 10 年以上経つ人が 66.8% と 長年花粉症に悩まされている人が多いという結果に 10 年以上経つ人の割合が多い地域としては静岡県 栃木県 群馬県 山梨県等が上位に 今までにス

抗菌薬の殺菌作用抗菌薬の殺菌作用には濃度依存性と時間依存性の 2 種類があり 抗菌薬の効果および用法 用量の設定に大きな影響を与えます 濃度依存性タイプでは 濃度を高めると濃度依存的に殺菌作用を示します 濃度依存性タイプの抗菌薬としては キノロン系薬やアミノ配糖体系薬が挙げられます 一方 時間依存性

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ダラツムマブってどんな薬? 初発の患者さん ( 初めて治療を受ける患者さん ) の治験募集についてー 米国で承認された ダラツムマブ という新薬について Q&A 形式でご紹介します Q&A の監修は 名古屋市立大学病院血液 腫瘍内科診療部長飯田真介先生です Q1 ダラツムマブという薬が米国で承認され

2012 年 11 月 21 日放送 変貌する侵襲性溶血性レンサ球菌感染症 北里大学北里生命科学研究所特任教授生方公子はじめに b 溶血性レンサ球菌は 咽頭 / 扁桃炎や膿痂疹などの局所感染症から 髄膜炎や劇症型感染症などの全身性感染症まで 幅広い感染症を引き起こす細菌です わが国では 急速な少子

後などに慢性の下痢をおこしているケースでは ランブル鞭毛虫や赤痢アメーバなどの原虫が原因になっていることが多いようです 二番目に海外渡航者にリスクのある感染症は 蚊が媒介するデング熱やマラリアなどの疾患で この種の感染症は滞在する地域によりリスクが異なります たとえば デング熱は東南アジアや中南米で

緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa グラム陰性桿菌 ブドウ糖非発酵 緑色色素産生 水まわりなど生活環境中に広く常在 腸内に常在する人も30%くらい ペニシリンやセファゾリンなどの第一世代セフェム 薬に自然耐性 テトラサイクリン系やマクロライド系抗生物質など の抗菌薬にも耐性を示す傾

症候性サーベイランス実施 手順書 インフルエンザ様症候性サーベイランス 編 平成 28 年 5 月 26 日 群馬県感染症対策連絡協議会 ICN 分科会サーベイランスチーム作成


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1-11. 三種混合ワクチンに含まれないのはどれか 1 破傷風 2 百日咳 3 腸チフス 4 ジフテリア 疾患と症状との組合せで誤っているのはどれか 1 猩紅熱 コプリック斑 2 破傷風 牙関緊急 3 細菌性赤痢 膿粘血便 4 ジフテリア 咽頭 喉頭偽膜 予防接種が有効なはど

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さらに 職場における感染防止対策の検討を行うに当たっては 産業医等の助 言を受けることや 衛生委員会において対策を審議するなど 労働安全衛生法上 の安全衛生管理体制を活用し 実施していくことが望まれます Q2 発熱や呼吸器症状等のインフルエンザ様症状を呈した労働者にはどのような注意をすればよいですか

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60 秒でわかるプレスリリース 2006 年 4 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 敗血症の本質にせまる 新規治療法開発 大きく前進 - 制御性樹状細胞を用い 敗血症の治療に世界で初めて成功 - 敗血症 は 細菌などの微生物による感染が全身に広がって 発熱や機能障害などの急激な炎症反応が引き起

改訂後改訂前 << 効能 効果に関連する使用上の注意 >> 関節リウマチ 1. 過去の治療において 少なくとも1 剤の抗リウマチ薬 ( 生物製剤を除く ) 等による適切な治療を行っても 疾患に起因する明らかな症状が残る場合に投与すること 2. 本剤とアバタセプト ( 遺伝子組換え ) の併用は行わな

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2012 年 1 月 25 日放送 歯性感染症における経口抗菌薬療法 東海大学外科学系口腔外科教授金子明寛 今回は歯性感染症における経口抗菌薬療法と題し歯性感染症からの分離菌および薬 剤感受性を元に歯性感染症の第一選択薬についてお話し致します 抗菌化学療法のポイント歯性感染症原因菌は嫌気性菌および好

<B 型肝炎 (HBV)> ~ 平成 28 年 10 月 1 日から定期の予防接種になりました ~ このワクチンは B 型肝炎ウイルス (HBV) の感染を予防するためのワクチンです 乳幼児感染すると一過性感染あるいは持続性感染 ( キャリア ) を起こします そのうち約 10~15 パーセントは


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サーバリックス の効果について 1 サーバリックス の接種対象者は 10 歳以上の女性です 2 サーバリックス は 臨床試験により 15~25 歳の女性に対する HPV 16 型と 18 型の感染や 前がん病変の発症を予防する効果が確認されています 10~15 歳の女児および

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彼を知り己を知れば 百戦殆うからず 彼 = 感染症 己 = カラダの仕組み取り巻く環境など 百戦殆うからず は少し言い過ぎですが 感染症を未然に防ぐことや重症化を防ぐには非常に重要です

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2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にあります

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です 経過中に 3 割の人が気管支喘息に移行するとされていますので 咳喘息を疑うなら呼吸器専門医を受診してください がいそうがいそう アトピー性咳嗽 は 咳喘息と同じ 乾性咳嗽 ですが のどのイガイガ感やかゆみを訴える中年女性に多いとされています アレルギー疾患 ( 特に花粉症 ) の合併がみられま

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2016 年 11 月 23 日放送 ウイルス性上気道炎のマネージメント 東京女子医科大学呼吸器内科教授玉置淳はじめに空気の通り道である気道は 鼻前庭に始まり 鼻腔 咽頭 喉頭 気管 気管支 細気管支を経て肺胞まで達しています このうち 鼻前庭から喉頭までを上気道 気管より末梢を下気道と定義しています そして 外界から微生物が侵入して上気道で急性感染が起こったものを急性上気道感染症と称し これにはいわゆるかぜ症候群である急性上気道炎をはじめ 急性咽喉頭炎 急性咽頭 扁桃炎 急性喉頭蓋炎 急性鼻副鼻腔炎などが含まれますが 大部分はかぜ症候群です かぜ症候群は呼吸器疾患のなかでも最も頻度の高い疾患であり 健康成人では 1 年間に 3 4 回罹患するといわれています 原因となる微生物としてはウイルスが全体の 80 90% を占め 残りは一般細菌 マイコプラズマ クラミジアなどで

す ウイルスの中で検出頻度の高いものはライノウイルス コロナウイルスが多く これに続くのが RS ウイルス インフルエンザウイルス パラインフルエンザウイルス アデノウイルスです また これらのウイルスには季節的流行の特徴があり ライノウイルスは春と秋 RS ウイルス コロナウイルス インフルエンザウイルスは冬に多い傾向があります 症状ウイルス性上気道炎の症状としては 通常 1 3 日間の潜伏期を経て 初発症状として鼻汁や鼻閉 くしゃみなどの鼻症状や咽頭痛 倦怠感 発熱などの全身症状も認められるがますが インフエンザと異なり高熱となることは少ないといわれています また 経過中に咳や痰が出てくることもありますが 通常は1 週間から 10 日程度で鎮静化します 米国内科学会の急性気道感染症ポジションペーパーでは かぜ症候群 ( 急性気道感染症 ) をその症状から 非特異的上気道炎型 急性鼻副鼻腔炎型 急性咽頭炎型 急性気管支炎型の4つに分類しています 診断問診が最も重要であり 発症時期や経過 周辺に同様の症状を示す患者がいないかなど流行状況を確認します 確定診断は上記臨床症状とともに 病原微生物としてのウイルスの分離が基本ですが 特別な施設以外では行われることは少なく 日数も要するので日常臨床には不向きです また 血清中の抗体価の上昇の確認もペア血清の採取までに約 2 週間を要するため これも実際的ではありません しかし 近年 インフルエンザウイルス RS ウイルス アデノウイルス A 群 β 溶連菌 肺炎球菌などの同定にはイムノクロマトグラフィーによる迅速診断キットが使用可能です 本疾患の場合は むしろより重症な他疾患との鑑別が重要です 例えば インフルエンザでは高熱 頭痛 強い全身倦怠感 関節痛などが顕著です 百日咳の場合では小児は痙咳と呼ばれる特徴的な激しい乾性咳嗽を呈することがあり 咳発作は比較的長期にわたります さらに マイコプラズマやクラミドフィラなどでも咳嗽は強く 経過も長引くことが多いといわれます 膿性鼻汁 喀痰 耳閉塞感の有無は急性副鼻腔炎 気管支炎 急性中耳炎などの合併症の診断に有用であり 鼻腔 咽喉頭 扁桃などの局所所見の観察や頸部リンパ節腫脹の有無の確認 胸部聴診なども忘れてはなりません また アレルギー性鼻炎との鑑別も重要です アレルギー性鼻炎では 下鼻甲介粘膜は蒼白で

腫脹することが多いですが 時に発赤していることもあります すなわち 下鼻甲介粘膜の腫脹 発赤 くしゃみ 鼻水 鼻閉 咽頭痛などはかぜ症候群でもアレルギー性鼻炎でも起こりうる症状であるため 下鼻甲介粘膜の所見に加えて 花粉症の時期かどうか 眼や鼻の掻痒感を伴っているかどうか などの確認 鼻汁スメア検査における好酸球増多 血中 IgE の高値などが参考となります 治療急性上気道炎の治療のアルゴリズムをスライド 4に示します 急性上気道炎は 概ねかぜ症候群 急性咽頭 扁桃炎 急性喉頭蓋炎 扁桃周囲炎 膿瘍などに分類でき かぜ症候群の原因はウイルス その他の疾患の原因は通常は細菌です 細菌感染症における治療薬の選択は スライドを参照して下さい かぜ症候群の症状が軽度の場合は 罹患した患者の大部分は自宅療養で自然治癒するか いわゆる風邪薬としての売薬を服用します また一部の患者は医師による診断 治療を希望するか あるいは重大な病気であることを心配して医療機関を受診します そして医師は 来院した患者の半分以上に抗菌薬 ( 抗生物質 ) を処方しているのが現状です しかし 多くの感染症専門家は このウイルス性上気道炎に対する抗菌薬の投与こそが耐性菌増加の原因となっていると指摘しています すなわち かぜ症候群は通常は自然治癒するものであり 風邪薬はウイルス感染そのものを治すものではないことを十分理解し 抗菌薬の濫用を避けなければなりません したがって かぜ症候群の治療の基本は 日常の患者に対する啓発と対症療法です また かぜ症候群の症状は不快なものですが それらはウイルス感染に対する生体防御反応として出現している場合もあるため 対症療法としての薬物が防御反応を抑制して治癒を遅らせることもあり得ます よって 対症療法も過剰とならないよう 慎重に行う必要があります 一般的な対症療法 かぜ症候群は自然寛解する疾患であり 体調の管理が重要です すなわち 体力を消 耗しないように安静にし バランスのとれた栄養補給と水分摂取 十分な睡眠をとる

ように指導します 適度な加温と加湿(20 前後で 60 70% が望ましいとされる ) も重要です 加湿により 鼻閉や咽頭乾燥感の軽減が期待できます 発熱時には水分摂取を心がけます 体温上昇は感染したウイルスの増殖を抑制する効果も期待されるので 必ずしもクーリングは必要ではありません 水枕や冷却剤の前額部貼付などは患者が気持のよい範囲で行えばよいのです 薬物による対症療法 1) 発熱への対応 発熱は全身倦怠感や全身の消耗を引き起こすため 患者の苦痛や社会的用件に応じて解熱薬を適宜用います 解熱薬として安全性が高く最も推奨されるのはアセトアミノフェンです 小児への投与も問題なく 妊婦投与への禁忌もありません また シクロオキシゲナーゼ (COX) に対する阻害効果は弱く 非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs) としての副作用はありません NSAIDs は抗炎症薬ですが解熱作用も有しています イブプロフェンは胃腸障害が比較的少なく 解熱を期待して用いる NSAIDs として推奨されています 2) 咽頭痛への対応 咽頭痛に対して多く使用される鎮痛薬は 抗炎症作用を有する NSAIDs です ジクロフェナクやインドメタシンは鎮痛効果に優れますが 体温低下や血圧低下などの副作用もあり NSAIDs の使用は必要に応じての頓用が原則です 3) くしゃみ, 鼻水への対応 アレルギー性鼻炎の場合と異なり 第二世代抗ヒスタミン薬の効果は明らかではありません 欧米のメタ解析では第一世代抗ヒスタミン薬の有効性が示されていますが 眠気や口渇などの副作用を考慮すると必ずしも推奨されません 一方 欧米ではクロモグリク酸ナトリウムやイプラトロピウムが有効との報告があり推奨されています 4) 鼻閉への対応 鼻閉に対しては 点鼻血管収縮薬が有効です

点鼻血管収縮薬の局所投与は比較的即効性がありますが 連用によりリバウンドをきたすことがあり 鼻閉が高度な場合に限り 1 日 2 3 回の投与に留めます 5) 咳嗽への対応 後鼻漏や痰を喀出するための咳嗽は 睡眠障害など日常生活に支障をきたさない限り 治療の対象とはなりません 咽頭 喉頭の粘稠度の高い分泌物は咳嗽を誘発するので 気道分泌物の粘度を減少させ喀出を容易にする目的でブロムへキシン アンブブロキソール カルボシステインなどを必要に応じて用います 鎮咳薬は生理的な咳反射まで低下させる可能性があり その使用はあくまでも必要に応じて短期間とします しかし 一般的なかぜ症候群の経過を越えて高熱が続いたり 膿性喀痰や膿性鼻汁がみられたり 扁桃に膿栓 白苔が付着したり 急性副鼻腔炎 急性中耳炎を合併する場合は 二次的細菌感染が疑われるため抗菌薬を投与します また 高齢者や糖尿病などの基礎疾患を有する いわゆるハイリスクグループに対しても 二次的細菌感染の予防のために抗菌薬を使用することがあります さらに 頻度は低いのですが 細菌や非定型菌の同時感染の疑いがあれば 細菌では A 群 β 溶連菌 肺炎球菌 インフルエンザ菌が多く 非定型菌ではマイコプラズマやクラミドフィラが多いため 菌種の同定とともにエンペリックにこれらの菌に有効な抗菌薬を使用することもあります