地域医療支援臨床倫理研修会 2018 年 7 月 21 日 2 患者個別の臨床倫理的問題への対処方法 当院での臨床倫理コンサルテーション活動の紹介 臨床倫理 合意形成支援センター 金田浩由紀 臨床倫理とは? 3 臨床倫理とは? 4 臨床倫理 意思決定のプロセスと合意形成のあり方にまつわる問題を考える 治療やケアの選択 意思決定の問題が中心 価値の選択により 治療 ケアの選択を行うこと 臨床倫理 意思決定のプロセスと合意形成のあり方にまつわる問題を考える 治療やケアの選択 意思決定の問題が中心 生命倫理 生命に関する問題に対して規則根拠は何かについて考える 安楽死 尊厳死 臓器移植 生殖医療 再生医療 医療事故 薬害といった医療安全をめぐる問題 遺伝情報に関わる問題 ロボティクスをめぐる問題 環境 平和をめぐる問題 等研究倫理 臨床研究にまつわる生命倫理的問題を考える ヘルシンキ宣言が引用される 最近では 研究活動の公正さについても含む職業倫理 職業に対しての社会的役割を果たすための心がけ 医の倫理綱領 看護者の倫理綱領 ヒポクラテスの誓い ナイチンゲール誓詞が引用される 1
5 意思決定のモデル 6 モデル 医師の役割 患者の役割 情報の流れ パターナリスティック Paternalistic 自律的 Autonomous 命令的 受容的 受動的 命令的 一方向 ( 医師 患者 ) 一方向 ( 患者 医師 ) 共有意思決定 Shared decision making 協働的意思決定 Collaborative decision making 情報供給的 支援的 情報供給的 積極的 双方向知識の相互交換 双方向創造知識の共有 人生の最終段階における医療 ケアの決定プロセスに関するガイドライン 意思決定に必要な要素 7 8 意思決定 医療者 患者 専門的知識 / 経験 論理的思考 社会的公平性 社会的環境 ( 家庭環境, 生活環境など ) アイデンティティ ( 価値観, 死生観など ) 2
当院での臨床倫理の組織 9 臨床倫理コンサルテーションの形式 10 臨床倫理 合意形成支援センター 臨床倫理コンサルテーションチーム 個別的な臨床上の問題に対応 臨床倫理委員会 院内の方針を定める 長所 委員会形式 多角性 (10 人以上 ) 公式的 チーム形式 機動性が比較的 (4~5 人くらい ) 高い 短所 機動性が低い批判的 常時人材が要る 個人 機動性 多角性が低い 組織の立ち上げに参考にした書籍 11 コンサルテーションチームの活動 12 病院倫理委員会と倫理コンサルテーション D. ミカ 前田正一 児玉聡勁草書房 2009 年 [ 活動要領 ] 医療従事者 患者 家族 代理意思決定者 その他の関係者から 臨床の様々な場面の診療やケアにおいて生じる個別的な倫理的諸問題に関して依頼を受け これに応じて臨床倫理コンサルタントが助言助言及び支援支援するものとする [ 実際の活動内容 ] 倫理的問題の整理や分析を行い 解決策の提案を行う 病棟などでカンファレンスを開催 / 参加し 倫理的問題の整理や分析の手助けを行う 意思形成の支援を行う [Motto] できるだけ早く対応すること 依頼がしやすいこと できるだけ実効性のある助言や支援を行うこと 3
どの様な依頼を受けているか? 13 臨床倫理的問題の検討の方法 14 患者 ( 家族 ) が有益な治療を拒否 患者 ( 家族 ) が適応のない治療を要求 守秘義務 / 個人情報保護の問題 患者の意思決定能力が不明 患者の意思決定能力が不十分 意思決定能力のない患者に身寄りがない 患者と家族の意見不一致 患者 ( 家族 ) が治療の中止を希望 患者 ( 家族 ) が治療の差し控えを希望 家族が本人への病名告知を望まない 患者 ( 家族 ) が意思決定をしない 応召義務に抵触する可能性 [ 情報整理 ] [ 分析 ] [ 検討 ] [ 対応 ] 4 分割表 4 分割表医学的無益性 判断能力 医療倫理 4 原則 など対立軸の調整 解消比較考量 推奨内容 支援方法の決定 医学的無益性 15 判断能力と代理判断 16 生物学的無益望まれる生理学的反応が得られない完全な不可逆性 確率的無益介入が成功しない可能性が高い量的な無益 質的無益価値のある結果が得られない価値には意見が分かれる 判断能力の構成要素 1. 病状理解 2. 認識 3. 論理的思考 4. 意向の表明 判断能力がない場合 1. 本人の事前の意向 2. 代理判断 ( 代理判断者は 本人の意向を推定可能な者 ) 3. 考えられる患者の最善 4
判断能力の評価の注意点 17 医療倫理 4 原則 18 意思決定能力が明確に ない と判断されるまで ある と見なして対応する 認知機能と判断能力は必ずしも相関しない ( 医療において その他よりも優先される価値 ) 自律尊重原則患者の自律的な意思決定を尊重せよ 全般的な判断能力を評価するのではなく 特定の医療行為に関して評価を行う 無危害原則患者に危害を及ぼすことを避けよ 一度の評価は永久的なものではない 必要あれば 何度も評価を行う 善行原則患者に利益をもたらせ インフォームド コンセントは無理でも インフォームド アセントを得るように努力する 公正 正義原則利益とリスク 費用を公平に配分せよ 4 分割表 医学的適応 QOL 患者の意向 周囲の状況 医学的適応 [ 疾患について ] 病歴と診断名 急性 / 慢性 重症度 可逆性 治療の有無による予後 [ 医学的介入について ] 目的 効果とその確率 リスクとその確率 他の選択肢 奏功しない場合の計画医学的無益性の判断 患者の意向 判断能力 治療への協力姿勢 インフォームド コンセント ( 知っている情報 理解度 ) 判断能力の判断 QOL 社会復帰の見込み 治療に伴う障害は何か 周囲の状況 家族の意向 守秘義務 公共の利益 5
21 依頼 電子カルテ 電子メール PHS 22 情報 4 分割表 分析 4 分割表 検討 倫理原則 対立軸の調整 解消 助言 電子カルテに記載 PHS 病棟カンファレンスの開催 振り返り 臨床倫理コンサルテーション報告書 匿名化を行い 臨床倫理委員会への報告 議事録を事務で保管 23 医師国家試験問題 24 第 110 回 B-42 34 歳の男性 統合失調症で入院中統合失調症で入院中である である 3 年前に統合失調症と診断され 父親の同意によって医療保護入院となった 精神症状は難治であるが 本人には統合失調症についての病識がなく精神科治療を受ける考えもないため 医療保護入院が続いている 2 週前に肺癌で手術が必要肺癌で手術が必要と診断された 本人に伝えると 手術しないといけないのはわかるが手術は怖い このまま癌で死んでもかまわない と手術を拒否手術を拒否した 一方 父親は手術を希望した 現時点での対応として適切なのはどれか a 抗精神病薬を増量する b 本人の意向を無視して手術を行う c 手術をあきらめるように父親を説得する d 患者の同意を得るための努力をさらに続ける e 地域の精神保健福祉センターに判断を求める 6
医師国家試験問題 25 リスボン宣言 26 第 110 回 C-19 55 歳の女性 飛び降りによる腹部外傷のため救急車で搬入腹部外傷のため救急車で搬入された 1 か月前に胃癌と診断胃癌と診断され ここ数日は絶望してされ ここ数日は絶望して気持ちが不安定になっていた 今朝 自宅マンションの階から飛び降りて受傷した 大量の腹腔内出血があり救命のためには速やかな開腹止血術が必要である ショック状態で患者の意識はなく 意思の表示はできない 患者本人は以前から癌に対する手術治療を拒否以前から癌に対する手術治療を拒否していたが 救急車で付き添って来た夫は開腹止血術や救命治療を希望している リスボン宣言に基づく対応はどれか a 速やかに開腹止血術を行う b 開腹止血術以外の方法で経過をみる c 院内倫理委員会を開催するよう要請する d 本人と配偶者との意見が異なるため 他の家族の意見を待つ e 多職種カンファレンスで方針を決定するまで治療を行わない リスボン宣言は医療従事者が是認し 推進すべき患者の権利 1981 年 ポルトガル リスボンで開催された世界医師会世界医師会総会で採択されたもの 1995 年 インドネシア バリにおける同総会にて改訂 1. 良質の医療行為を受ける権利 2. 選択の自由の権利 3. 自己決定の権利 4. 意識喪失患者の代理人の権利 5. 法的無能力者の代理人の権利 6. 患者の意思に反する行為 7. 情報に関する権利 8. 秘密保持に関する権利 9. 保険教育を受ける権利 10. 尊厳の権利 11. 宗教的支援を受ける権利 7