日本獣医がん学会教育講演化学療法 抗がん治療の治療効果の判定 埼玉動物医療センター腫瘍科林宝謙治 WHO と RECIST WHO RECIST 効果判定 2 方向で計測 最長径 CR 病変無し 病変無し PR 50% 縮小 30% 縮小 SD PR< 病変 <PD PR< 病変 <PD PD 25% 以上の増大 20% 以上の増大 奏効率と臨床的有用率 ² 奏効率完全寛解と部分寛解を加えたもの n 病変が 50%(30%) 以上縮小した症例の割合 n 維持病変は含めない ² 臨床的有用率 n 10 週間以上, 維持病変以上が持続した症例の比率 RECIST:Response Evaluation Criteria in Solid Tumors ( 固形腫瘍の反応評価基準 ) 抗がん剤 : 各論, リンパ性白血病 n 様々な肉腫 ( 骨肉腫, 軟部組織肉腫 ) n 甲状腺癌 n 乳腺癌 n 血管肉腫投与経路 n 静脈内点滴 1
禁忌 n 心収縮力が著しく低下した動物 (FS が 28% 以下 ) n 総ビリルビンが1.5mg/dl 以上では50% 減量 n ヘパリン生食でのフラッシュを避ける ( 沈殿する ) ² 1. 心臓毒性 n 投与できる量に制限がある (180mg/ m2 ) 2. 絶対に漏らしては駄目! n 血管外に少しでも漏れたら断脚となることもあり ² 3. 胃腸障害 4. 骨髄抑制 5. 脱毛 6. アレルギー ² 血管外に漏らさないようにするには! n 留置針は確実に入れること n 投与中は確実に監視する n 保定しながらの投与 n 暴れる動物は鎮静下で投与 ( 点滴 ) ² 漏れてしまった時の対処法 1. 投薬を中止 2. 留置針は引き抜かず, その留置針周囲から周囲に漏れた薬液を可能な限り吸引 3. 患部を冷やす : 冷湿布 n 1 回 10 分,1 時間毎,24 時間 4. 漏れた場所を外科的に切除? 5. 拮抗薬 :2014 年から日本でも発売開始 拮抗薬 : デクスラゾキサン 漏出疑い 3 時間以内に 600mg/ m2を生理食塩水に希釈し 15 分かけて静脈内投与 漏れた薬剤を局所に留めることが重要! サビーン 500mg 45 593 円 (2014 年 4 月 17 日 ) 2
ビンクリスチン ビンクリスチン n 軟部組織肉腫 (VACプロトコール) n 可移植性性器肉腫代謝 排泄 n 肝臓で代謝され胆汁から排泄 n 便秘 ( 末梢神経毒性 ) n L- アスパラギナーゼとの同時投与で重度の骨髄抑制 n 血管外漏出で周辺組織の壊死 n : 総ビリルビンが 1.5mg/dl 以上の動物では 50% の減量が必要 ビンクリスチンを漏らしたら! ビンクリスチン 1. 投薬を中止 2. 留置針は直ぐに引き抜かない! 3. 留置針から周囲に漏出し薬剤を可能な限り吸引 4. 生理食塩水を局所注射 5. 温湿布を数時間適用 保存方法 n 室温 25 で3 日間 n 冷所 (8 ) で7 日間 n 保存剤の添加なし 無菌操作極めて重要 局所吸収を促進することが重要! ビンブラスチン ビンブラスチン n 肥満細胞腫 ( 猫 ) でビンクリスチンの代替薬として n T.Bil 1.5mg/dl 以上の動物では 50% 減量 n 骨髄抑制 n 血管外漏出で周辺組織の壊死 n 神経毒性は稀 Krick E,JVIM 2013 保存方法 n 冷所 (5 ) で 14 日間 n 保存剤の添加なし 無菌操作が極めて重要 3
n 白血病 n 骨髄異形成症候群 n 軟部組織肉腫 シクロフォスファミド n 免疫抑制剤として様々な免疫疾患に 投与経路 n 静脈内投与, 経口投与 ( 空腹時に投与 ) ² シクロフォスファミド 1. 出血性膀胱炎 これが最も重要な ² 出血性膀胱炎が起こるメカニズム n 膀胱内にアクロレインが蓄積 2. 胃腸障害 3. 骨髄抑制 シクロフォスファミド クロラムブシル ² 取り扱いの注意 n 安全キャビネットがない施設では, 錠剤を潰して粉にしては駄目!( 原末の調剤も ) n 分割する際も必ず手袋, マスク着用 n 分割には専用のピルカッターを使用 n 投与後の尿に注意 ( 特に小さい子供 ) n 慢性リンパ性白血病 n 肥満細胞腫 n 多発性骨髄腫投与経路 n 経口投与 クロラムブシル メルファラン ² 1. 遅延性 蓄積性骨髄抑制 2. 胃腸障害 ( 稀 ) ² 1. 粉にしては駄目! 分割も要注意! 2. 要冷蔵 3. 日本未発売 4. 薬剤出荷後の有効期限は 12 ヵ月間 n 多発性骨髄腫 n 慢性リンパ性白血病 n 慢性骨髄性白血病 投与経路 n 経口投与 と n クロラムブシルと似る n 骨髄抑制はクロラムブシルより強い 4
ロムスチン ロムスチン n 肥満細胞腫 n 脳腫瘍 n 組織球性肉腫 n 皮膚型リンパ腫 投与経路 n 経口投与 ² 1. 蓄積性骨髄抑制 ( 重度 ) 2. 肝酵素上昇 n 必ず投与直前に肝酵素もチェックする事! 3. 胃腸障害 ( 稀 ) 4. 蓄積性腎毒性 ( 稀 ) 無症候性門脈シャントの症例にも注意が必要かも? シスプラチン シスプラチン n 悪性中皮腫 n 骨肉腫 n 様々な上皮性腫瘍 n 腎毒性 n 投与直後の重度の嘔吐 n 骨髄抑制 n 聴覚器毒性 n 猫には禁忌 ( 肺水腫が発現 ) n クレアチニンが上昇している犬では使用を控える n 投与前後の点滴 ( 利尿 ) が必須保存方法 n 室温で3 年間保存可能 ( プリプラチン ) カルボプラチン カルボプラチン n 骨肉腫 n 悪性黒色種 n 様々な上皮性腫瘍 n 猫の鼻鏡の扁平上皮癌 n 骨髄抑制 ( 蓄積性 ) n 胃腸障害 ( 通常は軽度 ) n 生理食塩水で希釈しては駄目! シスプラチンに変化 n 5% ブドウ糖で希釈する n 猫でも使用可能 保存方法 n 注射水溶液で販売されているものは室温で 2 年間 5
L アスパラギナーゼ L アスパラギナーゼ n リンパ性白血病 n 過敏症 n 急性膵炎 過敏症の予防には投与 30-60 分前のデキサメサゾン, ジフェンヒドラミンの投与を行う! n 過去に急性膵炎の病歴がある動物には特に注意が必要 n ビンクリスチンと同時投与で強い骨髄抑制あり保存方法 n 保存不可 ( 溶解後は速やかに使用 ) 分子標的薬 獣医学領域の分子標的薬 l がん細胞の特定の分子を狙い撃ちし, がん細胞の増殖を抑制する薬 l 従来の抗癌剤は, がん細胞だけでなく正常な細胞も区別なく攻撃してしまうため重度のあり l 分子標的薬はがん細胞を狙い撃ちできるためが軽減 1. イマチニブ 2. トセラニブ 3. マシチニブ l イマチニブ : 肥満細胞腫 ( 犬, 猫 ),GIST( 犬 ), 肉腫 l マスチニブ : 肥満細胞腫 ( 犬 ) l トセラニブ : l 犬肥満細胞腫, 肛門嚢アポクリン腺癌, 転移性癌, 移行上皮癌, 多発性骨髄腫, 悪性黒色種, 肉腫 l 猫肥満細胞腫, 扁平上皮癌, 注射接種部位肉腫, 乳腺癌, 様々な癌腫, 肉腫 イマチニブ イマチニブの報告 標的 :KIT,PDGFR,Acl となる腫瘍 1. 転移性あるいは切除不能の肥満細胞腫 ( 犬, 猫 ) 2. GIST( 消化管間質腫瘍 ) 1. 胃腸障害 2. 肝障害 Ø 肥満細胞腫の犬 21 例に対しイマチニブ (10mg/kg SID) Ø 全例で肉眼的病変あり Ø 腫瘍直径の中央値 =7.2cm Ø 全体の奏効率 = 48%(10/21) Ø c-kit に変異がある症例の奏効率 = 100%(CR= 1, PR= 4) Ø 肝毒性を含め明かななし Isotani M, JVIM, 2008 6
イマチニブの報告その 2 Ø 肉眼病変を有する肥満細胞腫の犬 13 頭 Ø 全体の奏功率 :61.5%(8/13, CR=5,PR=3) Ø c-kit 変異あり =100%(6/6,CR=3,PR=3) Ø c-kit 変異なし =28.5%(2/7,CR=2) Ø 奏功期間の中央値 :30 日 (n=8) Ø CR 188 日 (n=5) Ø PR 22 日 (n=3) Nakano Y,Chushorin Proc,2010 トセラニブ 2014 年に日本で発売開始! 標的 :KIT,VEGFR,PDGFR,Fit-3 l 臨床応用 l 犬 肥満細胞腫, 肛門嚢アポクリン腺癌, 転移性癌, 移行上皮癌, 多発性骨髄腫, 悪性黒色種, 肉腫 l 猫肥満細胞腫, 扁平上皮癌, 注射接種部位肉腫, 乳腺癌, 様々な癌腫, 肉腫 トセラニブの MCT に対する効果 Ø 再発性あるいは外科不の肥満細胞腫の犬 Ø グレード II III Ø 無作為化二重盲検比較臨床試験 (n= 149) Ø 全体の奏効率 = 42.8%(CR= 14.5%, PR= 28.3%) Ø 奏効期間の中央値 = 12 週間 Ø 無進行期間の中央値 = 18.1 週間 Ø c-kit 変異あり Ø 奏功率 =81% Ø c-kit 変異なし Ø 奏功率 =30% London CA, Clin Cancer Res, 2009 イマチニブ vs トセラニブ Ø 本邦では c-kit 変異のある肥満細胞腫に対して第 1 選択となるのはイマチニブの事が多い Ø 理由 Ø イマチニブはが非常に少ない Ø 薬価? Ø 米国では, 肥満細胞腫でもトセラニブが第 1 選択? Ø 都市伝説でイマチニブの肝毒性が懸念? Ø トセラニブは発売に先立って専門医に無料で配布 Ø トセラニブは肥満細胞腫以外の固形がんに試されている Ø イマチニブにはない血管新生阻害作用に期待 固形癌におけるトセラニブの臨床応用 Preliminary evidence for biologic activity of toceranib phosphate (Palladia ) in solidtumours C. London et.al Veterinary and Comparative Oncology 2011 肛門嚢アポクリン腺癌 32 頭 u 25 頭が以前に何らかの治療 u 7 頭に高 Ca 血症 u トセラニブ 2.81mg/kg (2.2-3.25mg/kg) u EDO, 週 2 回, 月, 水, 金 u PR 25%(med duration 22weeks) u SD 62.5%(med duration 30,5 weeks) u 治療期間中央値 :31 週 7
骨肉腫 23 頭 ( 転移症例 ) u 21 頭が手術 + 化学療法 u 1 頭は無治療,1 頭は放射線治療のみ u トセラニブ 2.7mg/kg(2.3-3.25 mg /kg) u EOD, 月, 水, 金 u PR 1 頭 (4.3%),SD 10 頭 (43.5%) u 治療期間中央値 :24 週 甲状腺癌 ( 犬 15 頭 ) u 15 頭中 10 頭は以前に何らかの治療あり u 手術 4, 化学療法 7, 放射線 3 u 原発性腫瘍は 13 頭 u 9 頭は肺転移,1 頭は肝臓, 脾臓に転移 u PR 4 頭 (26.7%) SD 8 頭 (53.3%) u 治療期間中央値 :25 週 頭頸部癌 8 頭 u 鼻鏡の扁平上皮癌 4 頭 u 口腔内扁平上皮癌 3 頭 u 耳道腺癌 1 頭 u 5 頭は無治療,2 頭が手術,1 頭が放射線治療 u 2 頭で下顎リンパ節転移,1 頭で肺転移 u CR 1 頭 (12.5%),PR 5 頭 (62.5%),SD1 頭,PD1 頭 u 治療期間中央値 :20 週 鼻腔内腺癌 7 頭 u 4 頭が以前に放射線治療 u 4 頭でリンパ節転移,1 頭で肺転移 u 治療後に CT を取れた犬は 2 頭のみ u 1 頭は CR, 1 頭は SD u 3 頭で臨床症状が改善 (CT なし ) u 全体の奏効率は 71.4%(5 頭 ) u 5 頭の治療期間の中央値 :18 週 トセラニブとメトロノーム u 約半数で NSAID とシクロフォスファミドのメトロノームを併用 u 本当にトセラニブのみの効果? u 真の評価には比較臨床試験が必要 本論文のトセラニブの u 全体として85 頭中 66 頭 (77.6%) で何らかのあり u 胃腸障害 u 下痢 (n = 44,51.8%), 食欲不振 (n = 30,35.3%), 嘔吐 (n = 16,18.8%) u 筋骨格疼痛および / または虚弱 (n = 16,18.8%) u 体重減少 (n = 15,17.6%) u 嗜眠 (n = 11,12.9%) u 好中球減少 (n = 9,10.6%) u 皮膚障害 (n=6,7.1%) 膿皮症色素脱失 8
1. 消化器症状 n 下痢 (46%), 血便 (12.6%), 嘔吐 (32.2%) 2. 食欲不振 (34%) トセラニブ : 2009 年の報告 ( トセラニブ :3.25mg/kg,n=87) 3. 跛行, 筋骨格疾患 (25%) 4. 骨髄抑制 n 好中球減少症 (46%), 血小板減少症 (24.1%) 5. ALT 上昇 (24.1%) 6. アルブミン低下 (12.6%) London CA, Clin Cancer Res, 2009 u Phase Ⅰ u ピロキシカムとの併用 u ビンブラスチンとの併用 u CCNU との併用 多剤併用効果 u との併用 ( 血管肉腫 ) u 生存期間を改善なし u カルボプラチン, メトロノームとの併用 ( 骨肉腫 ) u 生存期間の改善なし Pan X, Vet Compar Oncol, 2014 Robat C, Vet Compar Oncol, 2011 Chon E, Vet Compar Oncol, 2011 Gardner HL, BMC Vet Res,2015 London CA,PLOS One,2015 マシチニブ マシチニブ ヨーロッパで 2008 年から発売 ( 日本未発売 ) 標的 :KIT,PDGFR 肥満細胞腫 ( 犬 ) 1. 消化器症状 : 下痢, 嘔吐, 食欲不振 2. 脱毛 3. 腎不全 4. 好中球減少症 5. 浮腫 獣医学領域の分子標的治療薬まとめ まとめ 薬剤名商品名ターゲット腫瘍薬用量 Ø 化学療法は, 誰にでもできそうだが本当は難しい Toceranib Palladia KIT VEGFR PDGFR FLT3 Masitinib Kinavet Masivet KIT PDGFR MCT 癌腫肉腫メラノーマ骨髄腫 MCT 3,25mg/kg EOD 2,5-2,75mg/kg EOD 12.5mg/kg SID Ø 薬剤の特性やを熟知してから使用すべき Ø を抑えこみながら薬剤強度を高く保つ事が重要 Ø 今後は従来の化学療法と新規薬剤 ( 分子標的薬など ) の併用の時代に Imatinib Gleevec KIT PDGFR Acl MCT GIST 5-10mg/kg SID 9