( 別紙様式 2) 学力診断テストの結果分析を踏まえた教科指導の実践事例 1 本年度の指導実践 教科名 国語科 単元名 材料の選び方を考えよう 橋本市立高野口小学校 4 年 国語科 2 授業実践のキーポイント ( 該当する項目全てに 印をつけてください ) * 年間指導計画の工夫 * 単元指導計画の工夫 * 学習指導案の工夫 * S-P分析表の活用 * 指導体制の工夫 * 指導方法の工夫 * 学力補充の取組 * 家庭学習の取組 * その他 ( ) 3 実践教科 単元にこれまでみられた課題や問題点 平成 18 年度の学力診断テストの結果分析から 結果 1 説明文の段落相互の関係や中心となる語や文をとらえて正しく文章を読み取ることができていない 2 内容 言語 における様子を表す言葉や動きを表す言葉なども平均 5 割近くができていない 3 内容 作文 においては 書きたいことの中心を明確して 段落相互の関係を考えて書いたりすることが苦手である 4 評価の観点において 読む 書く が少し他の観点に比べて劣っている 課題と取組 学力診断テストでは 国語以外の教科においても 問題文の読み取りがきちんとできないための誤答と考えられる解答が多くみられ 上記の結果も踏まえて 平成 19 年度は国語科の説明文の授業の構築を基盤に研究を深め 種々取り組んでいこうと考えた H17.4 年 H18.4 年と H19.4 年の国語比較 18 16 14 12 10 8 6 H17.4 年生 H18.4 年生 H19.4 年生 平成 19 年度の学力診断テスト結果から 2 1 作文作成に伴う文章構成の上で 出来事と感想の区別ができていない また 字数を合わせ 段落を分けて文章の形式を意識して作文を書くことになれていない 0 2 問題の意図が読み取れていない 等の前年度と同様の課題がみられた そこで より一層漢字や言葉等の基本的な語彙力を高めるとともに これまで説明 的文章の学習指導で基礎基本とされてきた要点 要旨を要約する能力 段落相互の関 係を捉え文章構成を理解する能力だけでなく その後に今必要とされている表現力に つながる活動にも重点を置くことで 児童の説明文に取り組む意欲を育てようと考え 授業実践に取り組んだ -1-4 0~9 10~19 20~29 30~39 40~49 50~59 60~69 70~79 80~89 90~99 100
4 授業実践の実際国語科学習指導案 (4 年 ) 指導者 蓮尾雅人 1 日時平成 19 年 11 月 12 日 ( 月 ) 5 校時 2 学年第 4 学年 A 組 (35 名 ) 3 単 元 名 材料の選び方を考えよう 教 材 名 アップとルーズで伝える 四年三組から発信します ( 光村図書 4 年下 ) 4 単元の目標 対比 まとめなど 段落相互の関係に気をつけることで内容を把握しやすくなることを知り 読み方に生かすとともに 伝えたいことと伝える方法について興味を持つ 伝えたい事柄について 材料を収集 選択し 相手や目的に応じた伝え方を工夫して表現する 5 単元の評価規準 関心 意欲 態度 段落相互の関係を考え 文章を正確に読み取ろうとしている 伝えたい事柄について 相手を意識し 進んで材料を集めたり 表現を工夫したりしようとしている 読むこと アップとルーズの働きについて 写真と対応させながら中心となる語や文をとらえて読んでいる ( オ ) それぞれの段落が文章全体の中でどんな働きをしているかをとらえている ( イ ) 書くこと 伝えたいことが分かるようにまとめ方を考え 構成メモを書いている ( ア ) 目的に応じた材料を選び 発信者としての意図が伝わるように作品を書いている ( イ ) 言語事項 文末表現 接続語 指示語に着目し 段落相互の関係をとらえたり 文章を書いたりしている ( オ ( ウ ) 6 児童について学級の児童は活発で 興味関心を抱いた事柄については意欲的に取り組み その雰囲気が互いに良い刺激を与え合っている 学習活動でも 多くの児童が自己を表現することに積極的である しかし 自己表現はしたいが 熟慮して取り組む姿勢が身についていないため 何をどう伝えればよいのか分からず 意欲が成果に結びつかないことも多い また 日常生活の中で 自分の思いをきちんと伝えられないことによるトラブルも少なくないのが現状である そこで 相手に正しく伝わるような表現力を身につけるために 何を伝えたいのかを吟味すること 目的や場に応じた内容や伝え方を適切に選ぶ力を高めること 具体的な表現方法の技能を習得すること が課題であると考える これまでに国語科と総合的な学習の時間の取り組みで 伝えたいことを表現する活動として 個人やグループでの新聞づくりを行ってきた その際 事実 と 自分の考え という基本的な文章構成を意識させ また誰に伝えるのかという相手意識も持たせるように指導してきた この活動をすることにより 新聞を書こうとする意欲や読み手を想定した紙面づくりに一定の成果がみられるようになってきた しかし 伝えたいことを精選し文章として表現する力や段落を意識して文章を構成する力が育っていない児童も多い 伝 -2-
えたいことを的確に書く力をより高めていく必要性を強く感じている また 文章の構成をとらえるには 正しく読めることも重要であると考え 読む 指導の一環として 朝学習や国語の時間の初めに音読練習に取り組んでいる それによって 声を出して読むことを楽しめる児童が増えてきている 7 単元について本単元は 情報の発信者としてのリテラシーを高めていくことを目的として設定されている 特に よりよく伝えるために情報の素材を選択するという内容に焦点を当て 二つの教材で構成されている 児童は様々な情報に囲まれ 日々生活をしている 中でもテレビを筆頭として視覚から入ってくる情報に触れる機会は大変多く また影響も大きい 第一教材 アップとルーズで伝える では それらの情報が ただ単純に事実として伝えられるのではなく 送り手の目的や意図によって取捨選択されているのだということに気づかせ その手法 (= アップでとるか ルーズでとるか ) は 自分が何かを伝えようとするときに具体的なスキルとして活用できるものであるということを分かりやすく提示している そして第二教材 四年三組から発信します で実際に自分たちが情報の収集 選択 発信を体験してみるという内容となっている アップとルーズで伝える は 形式段落に対応して具体的な写真資料が提示され さらに事柄を対比させて分かりやすく構成しているため 段落相互の関係をとらえたり 要点をまとめたりする活動によって 正しく文章を読んでいく力を高めていくことができるであろう 四年三組から発信します は 目的のある実際の活動を行うことで 児童の意欲が高まるとともに 伝えたいことの中心をはっきりさせて文章を構成することや 伝えたいことに合致した写真を選択するといった情報発信の具体的な技能の獲得や向上が期待される 本単元の展開に際しては 導入を第二教材 四年三組から発信します から行うことで 最初に活動のめあてを明確にする この学習は自分たちが発信者としてメディアを創造する活動を行うのだという意識をしっかりと持たせ そのゴールに向けて取り組んでいくという流れを大切にしていきたい 具体的には高野口小学校の WEB ページ上で 一枚の写真から と題する作品展示場を設定し そこで実際に作品を投稿して学校外の人に向けて公開するのである その際 保護者や他校の児童等に協力を求めて ネット上でコメントをつけてもらうといった展開も考えられるであろう このような 実の場 をはっきりさせることで 児童の意欲は大いに高まるであろうと考える 次に アップとルーズで伝える においては 説明文であるこの文章の構造的な読みに重点を置いて取り組んでいく そのために本文中の記述を丁寧に読み 適切な語句や表現を見つけていくという活動を主として展開していく 本時も アップ と ルーズ の違いをまとめるために 各段落の中心文を意識させ それを見つける具体的な手がかりである文末表現や 接続語 指示語などに着目できるようにしていきたい その支援として 教材本文をプロジェクターからの投影によって提示し 文章の中のどの言葉に着目したり サイドラインを引いたりしたのかが視覚的にはっきりと分かり 全体で確認できるようにしていきたいと考える さらに 四年三組から発信します では 何を伝えたいのかをはっきりと持たせるための取材活動と 伝えたいことを的確に表現するための 書く 活動を主に 内容をじっくりと推敲させていきたい また 作品投稿後の相互評価や外部から寄せられた感想をふまえて より良いものへと改変を加えていくことも可能である これらの一連の活動が 今後の総合的な学習の時間などでの情報発信の場面に活用していくことができる具体的なスキルとして身についていくように支援をしていきたい -3-
8 単元構想 17 時間扱い どんな写真をのせようかな 四年三組から発信します を読んで活動のめあてを持とう 1 関 意 態 どんな人が見てくれるのかな この写真は何を伝えようとしているのだろう 新聞記事の写真を研究しよう 2 読オ 見出しは何と書いているかな アップとルーズで伝える を読んで伝え方の工夫をとらえよう ( 本時 ) 写真に合うことばを見つけよう 3 読オ アップとルーズの長所 短所をまとめよう 4 読オ言オ ( ウ ) しかし でも が手がかりになるな 段落に小見出しをつけるとまとめやすいな 筆者が最も伝えたいことをとらえよう5 読イ段落の役割をとらえ文章構成をつかもう67 読イ 伝えたい事柄に合った写真を選び わかりやすく伝えよう テーマを決めよう 8 書イ アップ と ルーズ どっちが伝わるだろう? 取材 資料集めをしよう91011 書イ構成メモを書こう1213 書ア WEBページを作ろう1415 書ア わかりやすく工夫しているね 参考にしよう 作品の感想を伝え合い より良くしよう 1617 書ア -4-
9 本時の目標写真と対応させながら文章を読み アップ と ルーズ の長所や短所を対比し それぞれの特徴をまとめることができる 10 本時の展開 学 習 活 動 主な発問 ( ) と予想される児童の 留 意 点 評価の視点と 反応 ( ) 方法 1 発声練習をする しっかりと声を出すことで 本文の音読へとスムーズにつながるようにする 2 本時のめあてを確かめる 3 学習範囲を音読す る アップとルーズのちがいを読みとり まとめよう 視覚的にとらえら 4 第 4 段落からアッ 写真 C に写っていることを れるようにプロジェ プでとると分かるこ 説明している言葉に線を引きま クターを使用する とと分からないこと しょう 写真と文とをよく を読みとる 両手を広げて 見比べて 必要な箇 ユニホームは風をはらみ 所だけに短く線を引 口を大きく開けて くように助言する 筋道を立てて説明 できるように発表の 仕方を示す どうしてそこに線を引いたの か説明しましょう 文末の表現と接続語 しかし に注目 アップでとると分かること させることで その に赤で線を引きましょう 前後に答えが書いて 細かい部分の様子 あることに気がつくようにする アップでとると分からないこ アップで分 とに青で線を引きましょう かることと分 うつされていない多くの部分 からないこと のこと読みとったことが正しいか をみつけることができたか ( 教科書 写真で確認してみましょう 発表 ) -5-
11 本時の評価 具体の評価規準 十分満足できると判断される状況例 努力を要すると判断される児童に対する 読 アップ と ルーズ それぞれの分かること 分か 文末表現と接続語に着目さ の特徴を本文から読み取り らないことが何かを文末表現とせ 中心となる語や文をつかむ む それをもとに簡潔にまとめ接続語に着目して読み取り 中ことができるようにする ている 心文を落とさずに簡潔にまとめ スクリーンや板書によって 能 ている まとめ方を視覚的にとらえられるようにする 力 支援 5 第 5 段落からルー ルーズでとると分かることと ズでとると分かるこ 分からないことを第 5 段落から 文末の表現と接 ルーズで分か とと分からないこと 抜き出しましょう 続語 でも に注ることと分から を読みとる 分かること 目させることで ないことをみつ = 広いはんいの様子 その前後に答えがけることができ 分からないこと 書いてあることにたか ( 教科書 = 各選手の顔つきや視線 気がつくようにす発表 ) それから感じられる気持ち る 読みとったことが正しいか 写真で確認してみましょう このように 6 第 4 5 段落と第 第 4 5 段落と6 段落の関係 が何を指している 6 段落の関係をとら はどのようになっているでしょかに着目すること える う で 6 段落がまとめ 6が4,5のまとめになってになっていることが いる とらえられるように する 教科書に引いた アップとルー 7 アップとルーズの ラインをもとにまズの長所と短所 特徴についてワーク とめられるようにを読み取り ま シートにまとめる 支援する とめられたか ( ワークシート) 8 次時の学習を知る 12 考察 ( 成果と課題 ) 前時までの児童の様子から すぐに答えを見つけることのできる児童と なかなか理解することが困難な児童との差が大きく 本時の授業では展開案よりもゆっくりとした流し方にしようとしたが 結果 本時の目標に迫るところまでの内容を消化することができなかった また 教師の説明や指示が多くなり 児童自身が説明をしたり 意見を交流したりす -6-
る場面を設けることができなかった 教科書の記述から必要な言葉を捜すことだけに終始してしまったが どうしてその部分が重要なのかを説明させることを中心に展開することで より深い読みができる力を育んでいけるのではないか コンピュータとプロジェクターの使用によって 児童を視覚的にひきつけることはできたと思う しかし 板書として残しておくべきことや ノートをとるべきことなどの精選が不十分であった コンピュータを使うことのメリット デメリットを見通した活用の仕方を更に研究していく必要がある 本授業後の展開として 教科書で学習した内容をもとに 児童自身が伝えたいことに合わせてアップかルーズかを意識した写真を撮影し WEB ページにまとめていく活動を行ったが おおむね楽しく意欲的に取り組むことが出来た 総合的な学習の時間とも連動して 最終的には児童一人一人が写真とそのコメントを掲載した自分の WEB ページを作成することができた 伝えたいことをこのような手法で発信できるというスキルを獲得するという部分は達成できたと思う また 表現し 発信することの楽しさを味わうこともできたであろう しかし 適切に文章を構成したり 推敲したりする力は この活動だけではまだ十分に深められていない 今後は 書く 活動をより重視し 豊かに表現する力を育んでいきたい 児童作品例 -7-