~ 事例発表 ~ 無人航空機による河川測量業務 アイコンヤマト株式会社 技術企画部植田拓也 1
会社紹介 UAV( ドローン ) とは? 機体紹介 (αuav) 業務概要 作業内容の紹介 精度検証の結果 結論 まとめ もくじ 2
会社紹介 会社名 アイコンヤマト株式会社 代表者 池谷勇治 所在地 鳥取県鳥取市国府町分上 3 丁目 313 設立 昭和 62 年 6 月 資本金 1,000 万円 事業内容 総合建設コンサルタント GIS 関連事業 ( ソフト開発 販売 ) 3
UAV( ドローン ) とは? UAV とは 無人航空機 の意味 無人航空機 には全幅 30 メートルをこえる大型機から小型のものまで様々 多く利用されているのは マルチコプター タイプ 比較的に操縦が容易なため 広く普及が進む 航空法では 重さ 200g 以上の UAV が 無人航空機 として扱われる 規制対象になる αuav( 当社保有 ) 1 DJI Phantom4( 当社保有 ) 2 RQ-1 プレデター (USAF) 4
機体紹介 (αuav) 機体名 :αuav 質量 :3500g サイズ :99cm 99cm 45cm 飛行時間 : 約 20 分カメラ :Panasonic LUMIX DMC-GX8 特長 測量専用の大型 UAV( モーター 8 個搭載 ) 自動飛行対応 一眼レフデジタルカメラ搭載 2 周波対応 GNSS ロガー搭載 対空標識が置けない状況でも測量可能 ( 災害現場等 ) 5
本日の発表について 無人航空機を用いた測量業務において 作業手法の周知 成果品の精度の統一が重要です 米子県土整備局より発注された本業務における作業フロー 業務成果報告 今後の活用例を紹介し 現地作業や成果作成の参考にしていただければと思います 検証業務で提示された精度は 縦断面図 横断面図共に 地図情報レベル 1000 に相当する精度 ( 水平距離の標準偏差 0.70m 以内 標高点の標準偏差 0.33m 以内 ) 6
業務概要 業務名 無人航空機による河川測量業務委託 発注元 鳥取県西部総合事務所米子県土整備局 業務場所 鳥取県米子市祇園町 ( 加茂川 ) 工期 平成 27 年 11 月 18 日 ~ 平成 28 年 3 月 25 日 延長 約 2km 目的 実測で行っている定期河川測量を UAV 測量のみで行うことができるかを実証する 無人航空機による河川測量業務特記仕様書に沿って作業を進める 7
主な作業内容 現地踏査 フライトプランの作成 関係機関との協議地元説明 周知 河川法線の決定 フライトの実施 基準点設置測量 ( 対空標識設置測量 ) 距離標設置測量 点群データの作成 座標追加 3 次元モデルの作成 縦横断面図作成 現地補測 精度検証検査 完成 8
現地踏査 作業箇所 飛行範囲の現地確認を行う 確認項目 JR 敷地 国道 人口集中地区 高圧送電線 障害物の有無 離着陸場所 護岸にある構造物や植生など 地元地権者の同意確認 現地踏査で確認できた問題点 JR 敷地人口集中地区高圧送電線 9
関係機関協議 現地踏査の結果を踏まえて 関係機関 (JR 国土交通省 県 ) との協議を行い 作業許可の申請を行った JR 国土交通省への許可申請には 1 ヶ月程度かかる 地元地権者の同意確認 JR 協議について 平成 27 年 12 月 10 日の航空法改正に伴い JR 西日本米子支社では作業規則を検討され 右図で示すような区域は飛行禁止にするという回答を得た 鳥取県内の線路では 従来通りに工事管理者 ( 警備員 ) の配置で 車両通過時以外の時間帯は飛行可能との回答を得ている 国土交通省への申請 国道 人口集中地区の上空を飛行する場合は国土交通省の無人航空機の飛行に関する許可 承認申請書での許可承認が必要 飛行許可申請は 他の全ての各関係機関の許可を得なければ 申請を行うことができない 車両が停車 または通過 している場合に適用 10
フライト計画の作成 現地踏査にもとづきフライト計画を作成した 飛行高度 :100m オーバーラップ率 :80% サイドラップ率 :60% 飛行速度 :5m/s 精度確保のために必要なラップ率 フライトコースのイメージ図 11
河川法線の決定 ( 基準点 距離標設置測量 ) 河川台帳を基に発注者と協議し 河川線形を決定し 距離標の設置を実施した 測点間隔 200m 右岸左岸 距離標は対空標識と兼用で 撮影時に写真に写り込むよう明確にした 測点以外でも 現地の状況に合わせ 対空標識として使用できる基準点を追加設置しておく必要性がある 急な勾配変化点や構造物の付近が好ましい 基準点が多いほど 3 次元データの精度は向上する ここでの基準点とは 座標を持った点と考え マンホール 構造物の角を RTK で観測し 写真上で判断できればよい 12
フライトの実施 フライト計画にもとづき UAVを飛行させる 離陸前にチェックリストにて確認漏れがないかチェック 風速 天候 各種センサーのキャリブレーション カメラセッティング 離着陸時を除き フライト計画に沿って自動飛行 バッテリー電圧 積算消費電流を常に監視 目視など安全管理に配慮 バッテリー容量の半分を残して飛行を終えるように管理 作業風景 写真に写り込んだ対空標識 13
3D 点群データの作成 撮影写真 3D 点群化 水面等では 光の反射で点群データが出ない橋の下 オーバーハングなど 写真に写らない部分の点群データは取得できない 14
横断図の作成 1 3 次元点群データから図面を作成 3 次元点群処理ソフトを使用することで 任意の箇所で断面を取得でき 線形データを取り込むことで 測点上の横断面を取得する 地盤が撮影写真に写るような対策が必要 ( 草木の伐採等 ) 3 次元点群にはノイズも含まれているので 手作業で断面図の編集を行う ( 写真から判断し 不要な点を削除する ) 自動作成の横断面図 編集後の横断面図 15
横断図の作成 2 現地との整合を確認し 補測やオフセットで測ったデータを入力する 編集後 再編集後 横断面図が完成した 順を追って説明しているが 編集処理は一括で行った 16
縦断図の作成 1 横断面図と同様に任意の場所で縦断面図を作成できるが 河川中心線と距離の整合を取るために 縦断面図は変化点ごとの座標を拾い 通常と同じように図化を行った ノイズによる余計な線の修正は横断面図作成時と同様に行う 縦断面図の図化イメージ 17
縦横断図の作成 2 取得した座標から縦断面図を作成できる 橋梁部分や構造物の裏面などはオフセットで図化を行う 編集前 編集後 縦断面図が完成しました 河床縦断面図は 単点測量で得たデータを使用して作成します 18
精度検証 作成された図面の精度を検証する 横断面図の精度管理 距離標間の点間距離 左岸右岸の護岸肩間の距離 距離標から護岸肩までの距離と高さ等 縦断面図の精度管理 路面形状が急激に変化するポイント 橋梁付近は現地観測する 対空標識として使用した基準点の位置誤差と標高差が定められた精度範囲内ならば 作成された縦断面図は信頼できる 単点測量で得たデータはあくまで精度向上のために 使用するデータであり 図面には反映できない 19
現地補測 座標追加 精度検証の結果を受け 必要であれば現地補測と座標追加を行う 対空標識の増設 水中の補測など 現地補測の方法は様々あるが 簡易的な単点測量でよい 川幅にもよるが 水中の地盤は左岸尻 最深河床 右岸尻の3 点程度を補測 増設した対空標識を利用して 再び解析処理を行う 20
UAV 測量と実測との比較結果の一例 この箇所では 位置誤差 :0.010m 標高誤差 :0.249m 21
結果 UAV 測量と実測との比較 実測との比較の結果 地図情報レベル1000 以内の精度 位置の誤差 : 最大 0.66m ( 許容 :0.70m) 標高の誤差 :0.02m~0.26m ( 許容 :0.33m) 水面下の高さ : 水位が低く (0.10m 以下 ) 停滞している箇所については測定できた 植生の影響を受けやすい 22
精度向上への改善策 問題点 通常の撮影データだけでは 3 次元データ 縦横断面図の精度が出ない 解決方法 対空標識の増設 :50m ピッチに近い距離でマンホールや構造物角の座標値を観測する キネマティック解析 : 撮影時に記録した GNSS のデータを解析する 現地での補測 : 縦断の水面下の構造物 横断の水面下 ( 左右岸と流心 ) オフセット観測 : 橋梁下部構造 堤外水路等のポール横断 飛行高度を下げて再撮影 100m 70m~50m ラップ率を上げる : オーバーラップ 80% 90% サイドラップ 60% 70% その他 業務中に発生した問題点は 個別に発注者等と協議する必要がある 23
結論 無人航空機を使用した測量方法について 明確な規則が定まっていない事が現状 ( 業務遂行時点において ) 作成された 3 次元点群データにおいて 断面図の精度は地図情報レベル 1000 以内 ( 水平距離の標準偏差 0.70m 標高点の標準偏差 0.33 m) であり 解析に使用した基準点の座標の精度は 4 級基準点の新点位置の標準偏差以内 ( 水平位置 0.10m 標高 0.20m) であれば 全体の精度は信頼できるものと判断する 実際に無人航空機を使用して業務を行い 要した日数 人員を比べると 現地作業は少なくなった 作業範囲が広ければ広いほど この差は大きくなる 現状の測量作業に比べ 作業の効率化が図れると確信 無人航空機 (UAV) を使用することで 現地作業に要する時間を短縮することが可能となるが 求められる精度を出すには 様々な工夫が必要となる 今後多くの作業を実施することで より作業効率の改善対策が搾り出されてくる 24
まとめ UAV 測量を定期河川測量に活用できることを確認した 3D 点群データだけでなく オルソ画像も作成できるため 視覚的にも土砂の堆積状況把握に活用でき 河川台帳の平面図としても役立つ 成果品オルソ画像 25
付録 写真撮影について オーバーラップ率 80% 以上の確保が必要 デジタル一眼レフカメラにて一定間隔で撮影 ちなみに UAV は一定速度で運航 撮影間隔はデジタルカメラの性能に依存する 速い撮影間隔は SD カードへの書き込みが間に合わなくなるおそれ オーバーラップ率に大きな影響 SD カードは最低でも Class10 以上の性能が必須 今後は UHS-1 以上が望ましい 26
付録 3 次元点群処理について 使用した点群処理用 PC について 高性能 PC が必要です CPU: Intel Core i7 5960X( 物理コア 8 個 論理コア 16 個 ) GPU: NVIDIA GeForce GTX 980 2(SLI 接続 ) メモリ : 64GB SSD: 512GB HDD: 6,000GB 3 次元点群処理の高速化のポイント CPU 性能よりも GPU 性能を強化する GPU は増やすほど並列処理能力が強化できる 性能アップ CPU は物理コア数が多いものを選択 並列処理性能重視 メモリは最低 32GB 以上が望ましい 27
付録 点群データの取り扱い 点群データは とにかく大容量 1 フライトあたり 数 GB の大容量データになる 点群データの保存形式 テキストデータ (CSV 等 ) データ互換性 : データサイズ : バイナリデータ (LAS CL3 等 ) データ互換性 : データサイズ : 保存形式は バイナリデータ がおすすめ データサイズが小さくなる テキストデータが必要になるケースはなかった 28