Taro-ハウストマト養液土耕マニュ

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PC農法研究会

目 的 大豆は他作物と比較して カドミウムを吸収しやすい作物であることから 米のカドミウム濃度が相対的に高いと判断される地域では 大豆のカドミウム濃度も高くなることが予想されます 現在 大豆中のカドミウムに関する食品衛生法の規格基準は設定されていませんが 食品を経由したカドミウムの摂取量を可能な限り

リン酸過剰の施設キュウリほ場(灰色低地土)における基肥リン酸無施肥が収量に及ぼす影響


3 園芸作物 < 果菜類 > 1-1 トマト [ ハウス ] ア導入すべき持続性の高い農業生産方式の内容 トマトは主に道央 道南および道北の施設で栽培され 作型は促成 ( ハウス加温 マルチ ) 半促成 ( ハウス マルチ ) 抑制 ( ハウス ) などである 品種は 桃太郎 ハウス桃太郎 桃太郎

チャレンシ<3099>生こ<3099>みタ<3099>イエット2013.indd

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Ⅰ ミニトマトの袋培地栽培マニュアル 1 ミニトマト袋培地栽培システムの設置 ア ほ場の準備 袋培地を用い 地床と完全に分離した隔離栽培を実現します 下敷シートと発泡スチロールにより根の土壌への侵入を防ぎ 土壌病害をシャットアウトします 下敷シート 発泡スチロール板 ほ場を整地し 土ぼこりや雑草を防

表 30m の長さの簡易ハウス ( 約 1a) の設置に要する経費 資材名 規格 単価 数量 金額 キュウリ用支柱 アーチパイプ ,690 直管 5.5m 19mm ,700 クロスワン 19mm 19mm ,525 天ビニル 農 PO 0.1mm

研究成果報告書

取組の詳細 作期の異なる品種導入による作期分散 記載例 品種名や収穫時期等について 26 年度に比べ作期が分散することが確認できるよう記載 主食用米について 新たに導入する品種 継続使用する品種全てを記載 26 年度と 27 年度の品種ごとの作付面積を記載し 下に合計作付面積を記載 ( 行が足りない

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コシヒカリの上手な施肥

15 表 1 平成 7 野菜の 1a 当たり収量 及び ( 全国 ) 計 品目 1 a 当たり収量 対前比 1 a 当たり収量 474,7 1,654, 11,66, 99 nc nc 根 菜 類 164,7 5,11, 4,49, nc だ い こ ん,9 4,6 1

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Ⅱ-3 環境負荷低減技術 ( 1) 土壌分析結果を生かした施肥量削減 1 技術の内容土壌分析により土壌養分の量を把握し 現況の養分量にあわせ施肥量を加減する方法である 2 期待される効果養分が過剰にある場合は施肥量を減らすことができ 肥料のコスト低減にもつながる 特に施設園芸や果樹園 茶園では土壌中

Ⅲ-3-(1)施設花き

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スプレーストック採花時期 採花物調査の結果を表 2 に示した スプレーストックは主軸だけでなく 主軸の下部から発生する側枝も採花できるため 主軸と側枝を分けて調査を行った 主軸と側枝では 側枝の方が先に採花が始まった 側枝について 1 区は春彼岸前に採花が終了した 3 区 4 区は春彼岸の期間中に採

亜硝酸態窒素除去 タルシオン A-62MP(FG) はじめに平成 26 年 1 月 14 日 水質基準に関する省令 ( 平成 15 年厚生労働省令第 101 号 ) の一部が改正され 亜硝酸態窒素に係る基準 (0.04mg/L) が追加され 平成 26 年 4 月 1 日から施行となりました ( 厚

失敗しない堆肥の使い方と施用効果

平成 26 年度補正予算 :200 億円 1


11 表 1 平成 5 野菜の 1a 当たり収量 及び ( 全国 ) 計 1 a 当たり収量 対前比 1 a 当たり収量 ( 参考 ) 対平均収量比 481,1 1,551, 11,451, 99 nc nc 根 菜 類 169,5 5,144, 4,6, 98 nc nc

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日本の農業の現況 就農人口 100 万人減 /10 年 耕作放棄地 424 千 ha 農家の平均年齢 67 歳 農業法人 1 万 8 千 10 年で倍増 1

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今後の管理のポイント [懸案事項] ①早期作型における2番花 房の花芽分化遅延 ②炭そ病とハダニ類の発生 拡大 [対策] ①寒冷紗を被覆して 花芽分化を誘導する 2番花房 の花芽分化を確認して被覆を除去する 被覆期間の目安 9月25 10月20日 ②定期的に薬剤による防除を行う 特に葉かぎ後の 葉か

大分県農業共済組合 大分県農業共済組合作成 収入保険と既存制度の掛金及び補てん金の比較 ( 大分県 ) 品目 : 米 平均収入 100 万円作付面積 83a 単収 504kg/10a シナリオ 1 販売価格が 地域平均で シナリオ 2 販売価格が 個人のみで シナリオ 3 自然災害により 地域全体が

新梢では窒素や燐酸より吸収割合が約 2 分の1にまで低下している カルシウム : 窒素, 燐酸, カリとは異なり葉が52% で最も多く, ついで果実の22% で, 他の部位は著しく少ない マグネシウム : カルシウムと同様に葉が最も多く, ついで果実, 根の順で, 他の成分に比べて根の吸収割合が高い

農業指導情報 第 1 号能代市農業総合指導センター環境産業部農業振興課 発行平成 26 年 4 月 25 日二ツ井地域局環境産業課 確かな農産物で もうかる 農業!! 農家の皆さんを支援します!! 農家支援チームにご相談ください! 今年度 農業技術センター内に農家支援

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Ⅲ-2-(1)施設野菜

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農家圃場における    メタン発酵消化液を用いた              栽培実証試験

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技術名

窒素吸収量 (kg/10a) 目標窒素吸収量 土壌由来窒素吸収量 肥料由来 0 5/15 5/30 6/14 6/29 7/14 7/29 8/13 8/28 9/12 9/ 生育時期 ( 月日 ) 図 -1 あきたこまちの目標収量確保するための理想的窒素吸収パターン (

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技術資料 一段密植栽培による高糖度トマトの周年安定生産技術

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1 考え方および注意点 (1) 土壌診断基準化学性については 作物全般において良好な生育および収量を得るために基本的に満たすべき基準を示した 物理性については 作物全般において良好な生育および収量を得るために望ましい基準を示した (2) 作物栄養診断基準各園芸作物が正常に生育した場合の栄養状況の目安

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Y001〜044 『三国史記』 「地理志」 の高句麗地名漢字:おもに日本語との比較による考証.pwd

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目 次 はじめに 1 概要編 1 袋培地栽培の推進方針 1 2 袋培地栽培の特徴 1 3 袋培地栽培システムの構成 2 施工編 1 ほ場の準備 6 2 袋培地の配置及び整地 7 3 定植穴の作成 8 4 排水孔の作成 9 5 点滴チューブの改良 10 6 点滴チューブの配置 10 7 通水テスト 1

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すとき, モサプリドのピーク面積の相対標準偏差は 2.0% 以下である. * 表示量 溶出規格 規定時間 溶出率 10mg/g 45 分 70% 以上 * モサプリドクエン酸塩無水物として モサプリドクエン酸塩標準品 C 21 H 25 ClFN 3 O 3 C 6 H 8 O 7 :

( 約 9.3ml)を 加 えて 磨 砕 して 粥 状 物 とし それを 10g 採 り メタリン 酸 酢 酸 溶 液 で 100mlに 定 容 した これを 濾 過 後 10ml 採 り 5%メタリン 酸 溶 液 を 20ml 加 えて 試 料 とした これにインドフェノール 試 液 (2,6-ジ


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メラレウカ苗生産技術の検討 供試品種は レッドジェム, レボリューションゴールド を用い, 挿し木を行う前日に枝を採取し, 直ちに水につけ持ち帰り, 挿し穂の基部径を 0.8~1.2mm,1.8~2.2mm,2.8~3.3mm で切り分けた後, 長さ約 8cm, 基部から 3cm の葉を除いた状態に

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3 流動比率 (%) 流動資産流動負債 短期的な債務に対する支払能力を表す指標である 平成 26 年度からは 会計制度の見直しに伴い 流動負債に 1 年以内に償還される企業債や賞与引当金等が計上されることとなったため それ以前と比べ 比率は下がっている 分析にあたっての一般的な考え方 当該指標は 1

最 近 散 歩 や 通 勤 の 途 中 で 見 か け る こ と が 多 く な っ た と 感 じ た こ と は あ り ま せ ん か? 住 宅 の 掃 き 出 し の 窓 が 涼 し げ で 鮮 や か な 緑 に 覆 わ れ て い る 光 景 や ビ ル の 壁 面 に 植 物 が ぴ

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ハウストマト養液土耕マニュアル 北海道立道南農業試験場 目 次 本書の利用にあたって 1 養液土耕栽培技術の概要 2 トマトの窒素栄養診断について 3 養液土耕に必要なもの 4 養液土耕のシステム例 7 養液土耕栽培の手順 8 養液土耕で留意する点 12 養液土耕栽培事例 13 付表 付録施設園芸における堆肥類の減肥可能量 15 下層土診断に基づく窒素評価量 15 トマト栄養診断の手順 16 栄養診断に基づく夏秋どりトマトの養液土耕栽培手順 17

本書の利用にあたって 2004 年 1 月に道南農試から 窒素栄養診断に基づく夏秋どりトマトの養液土耕栽培技術 が提案され普及推進事項となりました 養液土耕は従来の栽培と比べ施肥とかん水が効率的で 施設土壌の塩類集積を防ぐことが可能です また 養液土耕ではタイマーや液肥混入機でかん水や施肥を自動に行うためかん水と施肥作業の省力化も可能です 施肥の判断に栄養診断を用いることで 栽培経験が少ない生産者でもトマトを良好に育てることが可能になります 本書は農業改良普及センター 農業生産者グループ等が養液土耕栽培技術に取り組む際の技術指導マニュアルとして利用してください マニュアルを利用できる条件 作 型 : ハウス夏秋どり ( 定植時期 3 月下旬 ~6 月 ) 作物 品種 : 大玉トマト全般 整枝法 : 主枝 1 本仕立て その他 : 定植前に土壌診断を行うこと 養液土耕栽培が困難な条件 用水 井戸または水道などのかん水設備が整っていない 水の鉄やマンガンの濃度が濃い 赤い色をしている または時間を置くと赤くなる水では 析出した鉄やマンガンが点滴チューブの吐出口を詰まらせることがあります 栽培面積が小さい 液肥混入機や点滴チューブなどの機材や資材を必要とするため 小規模の栽培では経済的に不利と考えられます 試験や研修などを目的とする ( 経済性を優先しない ) 場合は小規模の栽培でも構いません 養液土耕のメリット 慣行栽培と比べ効率的な施肥ができ減肥ができる 果実収量は慣行栽培と比べ同等以上となる 副成分を含まない肥料を用いると土壌のpH 低下やEC 上昇が抑えられる 施肥やかん水の労力が軽減され 労働時間が削減できる 養液土耕と慣行栽培であまり変わらないもの 果実の糖度 ( 本書の栽培方法では高糖度トマトにはなりません ) 生理障害果の割合や病害の発生 - 1 -

養液土耕栽培技術の概要 慣行栽培では定植前に基肥を施用しますが 養液土耕では定植後 株元に薄めた液肥 ( 養液 ) を与えるため基肥を施用しません また 養液土耕では作物が必要とする分だけ肥料と水を与えることで慣行栽培と比べ施肥量が少なくなります 慣行栽培で数日に一度大量にかん水を行った場合 土壌が保持できなかった水は土壌養分とともに下層へ流れ 地下水を汚染する恐れがあります 一方 養液土耕では養水分を毎日少量ずつ与えるため 養水分は下層へ流れにくくなります また 養液土耕ではタイマーや液肥混入機でかん水や施肥を自動に行うため かん水と施肥を省力化できます 養液土耕では作物体の栄養診断を組み合わせることで 栽培経験が浅い生産者でもトマトを良好に育てることができます 養液土耕慣行栽培 点滴チューブベッド ベッド 養液灌水チューブ灌水または液肥 基肥なし 基肥全面全層 図. 養液土耕 ( 左 ) と慣行栽培 ( 右 ) におけるかん水および施肥のイメージ 表. 養液土耕と慣行栽培の比較 養液土耕 慣行栽培 かん水方式 毎日少量かん水施肥 数日に一度の大量かん水 ( 養分が流出する恐れあり ) かん水作業 自動化 ( 省力化が可能 ) 手作業 ( 労力の負担大 ) 基肥 なし あり ( 全面全層施肥 ) 施肥効率 高い 低い 塩類集積 極小 あり ( 副成分を含まない肥料を使用 ) ( 従来の肥料を使用 ) 栄養診断に基づいて施肥量を決 管理を誤ると土壌の乾燥 過湿や養 栽培管理 める 施肥 かん水は自動化さ 分の過不足になりやすい れている ( 従来より容易 ) - 2 -

トマトの窒素栄養診断について トマト栽培では生育期間が比較的長く その間に茎葉と果実の生長をバランス良く進め る必要があるため 生育量に合わせた施肥が求められます 窒素栄養診断は一定の時期ごとにトマトの葉柄を採取して葉柄硝酸濃度 植物が根から 吸収した窒素の体内濃度 を調べ その結果から施肥量を判断する技術です 栄養診断時における葉柄の採取部位 トマトの窒素栄養状態を良く反映している第1果房直 下葉を栄養診断の採取葉位とします 診断葉位の葉全体を採取すると 周辺の果実肥大に大 きく影響するため 先端小葉の葉柄を採取します 先端小葉 先端小葉葉柄 (ここが採取部位) 表 夏秋どりトマトの養液土耕における窒素栄養診断基準 診断時期 第2果房開花始および各果房肥大期 摘心位下方3段目まで 採取部位 第1果房直下葉の先端小葉葉柄 窒素栄養診断基準 (葉柄硝酸濃度) 第2果房開花始 500 5000ppm 第1果房肥大期 1000 7000ppm 第2果房肥大期以降 4000 7000ppm 果房肥大期は果実がピンポン玉大になった時を指す 栄養診断を活用することで収量を確保しながら環境にもやさしいトマト生産が可能にな ります 栄養診断の手順は本書の16ページをご覧下さい - 3 -

養液土耕に必要なもの 養液土耕を行うには 原水と液肥を混入する液肥混入機や原水中の砂やゴミなどを除去 するフィルター 原水の水圧を安定させる減圧弁 養液の供給を自動化するための電磁弁 と制御盤 タイマー が必要となります 養液土耕では点滴チューブを用いて作物の株元に肥料と水を同時に与えます 点滴チュ ーブは一般的な散水型のかん水チューブとは異なり 一定間隔の孔から一定速度でかん水 や養液を点滴で与えることができます 原水フィルター 減圧弁 制御盤 タイマー 原水 液肥タンク 液肥混入機 電磁弁 養液 各圃場へ 液肥 養液土耕のシステム概略図 注意 原水についてはポンプなどで一定の圧力がかかっていることを前提としています 必要な機器および資材 ①液肥混入機 原水と液肥原液を設定した割合で混合する機器で す ピストン式の混入機や電動式の混入機がありま す これらの方式の混入機は混入の精度が比較的安定 しているため 養液土耕に使用できます ピス トン式液肥混入機 混入機 にピ ストンが内蔵されている 表 ピストン式液肥混入機の性能と価格 商品名ドサトロンの例 配管の直径 作動流量 設定希釈倍率 価格 20mm 0.17 40L/分 64 500倍 約 9万円 30mm 1.67 75L/分 67 500倍 約13万円 40mm 8.3 133L/分 50 500倍 約20万円 - 4 -

②点滴チューブ 点滴状に水や液肥を与えることができるチューブです 散水型のチューブと比べるとチ ューブ1m当たりの吐出量が少なく 長さ50m前後までは均一にかん水できます ただし 圃場内に高低差があると低い所に水が溜まることがあります 点滴チューブには 硬質と軟質のタイプがあり硬質のチューブの方が価格は高くなりま すが 耐用年数が長くなります 他に 点滴チューブと配管部材を接続する部品や チューブの末端を留める部品も必要 です 表 点滴チューブの種類と特徴 タイプ 商品名 耐用年数 価格(円/m) 硬質 ラム17など 10年程度 34,000円/200m (ラム17 30cm間隔) 軟質 ストリームラインなど 1 3年 21,250円/250m (ストリームライン 20cm間隔) 価格は商品の種類や吐出口の間隔によって異なります 注意 養液土耕に散水型のチューブは使用しないで下さい ③フィルター 減圧弁(定圧弁 圧力調整弁) フィルター フ ィ ル タ ー は 原 水 中 の ゴミ や 砂 を 取り 除 く機 材 です ディ ス クフィルター スクリーンフィルターなどがあります 原 水 の 水 圧 が 強 す ぎ る と機 器 や 点 滴チ ュ ーブ を 破損 さ せる 恐 れが あ り ま す 原 水 の 圧 力が 強 い 点滴 チ ュー ブ の適 正 圧力 よ り強い 場合は 減圧弁を取り付けてください ④電磁弁 タイマー 電磁弁を用いることでかん水を自動化できます 減圧弁 タイマー 電磁弁を制御するためにはタイマーが必要です タ 電磁弁 イマーは1系統を制御するものから8系統以上を制 御できるものまで様々あります また タイマー付きの電磁弁もあります ⑤その他配管部材 これまで紹介した機材を組み合わせるには 水 栓ソケット バルブソケット バルブなど様々な 配管部材が必要です 複数のハウスで栽培する場 合は冬期に配管が破損しないように 配管を地中 に埋める必要もあります - 5 - 電源

初期にかかる費用について 表 液肥混入システムにかかる費用例 5.4 50mのハウス4棟 約10a相当 機 材 名 液肥混入機 タイマー 電磁弁 フィルター 原液タンク 減圧弁 配管部材等 点滴チューブ 合 計 能 力 等 φ30mm 75L/分 4系統型 φ25 DC24V φ25 100L/分 黒 200L φ25 2.0kg/cm 2 φ20 φ40等 硬質200m 単価(円) 台数 価格(円) 132,000 99,800 20,000 13,500 15,000 12,200 35,000 34,000 1 1 4 1 1 1 一式 6 132,000 99,800 80,000 13,500 15,000 12,200 35,000 204,000 591,500円 ビニールハウス ベッド 電磁弁 液肥供給システム 地中配管 図 液肥混入システムの設置図 1つの液肥混入機で4棟のハウスを4系統管理 注意 これらはかん水の設備が整っていて自分で配管 配線を行える場合の費用です ある方が良い機器および資材 ①量水計 点滴チューブの種類によっては水圧の違いにより点滴の吐出量が変動するものがありま す かん水量を把握するためには量水計を取り付けることを奨めます ②pFメータ pfメーターは土壌水分状態を把握する道具で 灌水の時期や量を判断する助けとなりま す トマトの養液土耕では土壌が乾燥や過湿にならないように養液を与えていくことにな ります pfメータがある場合は深さ20cmでpf2.0 2.6を目安としてください ③簡易診断機器 栄養診断では即座に診断結果を出す必要があり ますが 最近は硝酸を簡易に測定できる機器が市 販されています 左 反射式光度計(RQ flex:merck) 右 コンパクトイオンメーター(Cardy:堀場) - 6 -

養液土耕のシステム例 ①試験場の圃場 取扱業者のシステムを設置し 制御盤 タイマー ている 最大で8系統の制御が 可能である 写真では5系統設 減圧弁 置している 試験場では小面積に分けて栽 培しているが システム1台で 複数のハウスに養液を供給する 電磁弁 能力を持っている ②現地生産者のハウス フィルター 渡島管内の生産者圃場に設置 制御盤 タイマー されている ①とは別の取扱業 液肥混入機 者のシステムである 8系統の 配管が行われている 電磁弁 システムを導入した生産者は 花きとトマトについて約30a栽培 しているが 規模の拡大は十分 可能である ③簡易の液肥混入システム 檜山管内の建設業者が設置し フィルター 軍手で少し隠れている 液肥混入機 たハウスでトマトの養液土耕を 行 っ た 配 管 の 径 が 20mmの 液 肥 混入機 フィルター 電磁弁の 組み合わせであるが 500株程度 までなら栽培可能である 電磁弁 タイマー付き - 7 - 液肥原液

養液土耕栽培の手順 トマトの養液土耕に関わる基準について 養液土耕では定植前に基肥を行わず 定植以降にトマトが必要とする分だけを施肥して いきます 定植前の土壌に硝酸態窒素などの養分が溜まっていると トマトは与えられた 養液に加えて土壌の養分も吸収し 茎葉が過繁茂してしまいます 定植前には土壌診断 生育中は栄養診断を行い トマトの栄養状態に見合った施肥をすることになります 定植前土壌硝酸態窒素の基準 5mg/100g未満 (0 20cm) 表 夏秋どりトマトの養液土耕における窒素施肥基準 生育時期 1日当たりの窒素施肥量 定植 第1果房肥大期 N 0.15kg/10a 日 45mg/株 日 第1果房肥大期 摘心 N 0.30kg/10a 日 90mg/株 日 摘心後1ヶ月間 N 0.15kg/10a 日 45mg/株 日 摘心1ヶ月後以降 無施肥 栽植密度 は3333株/10a 100 30cmまたは 90 33cm を基本として10a当たりの窒素施肥量を示してい ます 栽植密度が大きく異なる場合は括弧内の株当たりの窒素施肥量を参考としてください 表 夏秋どりトマトの養液土耕における窒素栄養診断基準 診断時期 第2果房開花始および各果房肥大期 摘心位下方3段目まで 採取部位 第1果房直下葉の先端小葉葉柄 窒素栄養診断基準 (葉柄硝酸濃度) 第2果房開花始 500 5000ppm 第1果房肥大期 1000 7000ppm 第2果房肥大期以降 4000 7000ppm 果房肥大期は果実がピンポン玉大になった時を指す - 8 -

まず定植前に土壌診断 土壌診断は作付け前に行い 土壌硝酸態窒素の量に応じて定植後の施肥量を決定します また 堆肥などの有機物を施用する場合や 深さ20cm以上の層に硝酸態窒素が蓄積して いる場合は それらについて窒素評価量の75 を減肥することとします 堆肥類や下層土の窒素評価については15ページに記載しています 定植後の管理① 定植時 第2果房開花始め 定植から第1果房肥大期はトマトの草勢が決まる重要な時期です 養分が少ないと生育 が停滞し 養分が過剰になると茎葉が繁茂し過ぎて果実の着果や肥大が悪くなります 定植時の土壌硝酸態窒素に応じて トマトの生育にちょうど良い量の養分を与えること が重要です 1 定植時 2 第2果房開花始め 定植後約2週間 第2果房 (花が1つ咲いた頃) 第1果房 (花が1つ咲いた頃) 第1果房 ポリポット 実際のトマトでは第1果房下の本葉は8枚程度です 表(1) A 表(2) A 定植前土壌硝酸態窒素が ① 5mg/100g未満の場合 第2果房開花始めまで 窒素施肥量0.15kg/10a 日 第2果房開花始めの葉柄硝酸濃度に対応する 第1果房肥大期までの窒素施肥量は ①500ppm未満 0.30kg/10a 日 ②500 5000ppm 0.15kg/10a 日 ③5000ppmを超える 0.075kg/10a 日 ② 5 15mg/100gの場合 第2果房開花始めまで ③15mg/100g以上の場合 第1果房肥大期まで 表(3) Aへ 表(2) B 第2果房開花始めの葉柄硝酸濃度が ①5000ppm以下 上の表へ ②5000ppmを超える 第1果房肥大期まで 表(3) Bへ - 9 - 表(3) Bへ

定植後の管理② 第1 2果房肥大期 第1果房肥大期以降は茎葉と果実をバランス良く育て続けることが重要です トマトの 栄養状態を調べながら 生育量に合わせた施肥を行いましょう 3 第1果房肥大期 4 第2果房肥大期 定植後約3週間 定植後約5週間 第3果房 第4果房 (開花直前) 第3果房 第2果房 第2果房 (果実がピンポン球大) 第1果房 第1果房 (果実がピンポン球大) 表(3) A 表(4) A 第1果房肥大期の葉柄硝酸濃度に対応する 第2果房肥大期までの窒素施肥量は ①1000ppm未満 0.60kg/10a 日 ②1000 7000ppm 0.30kg/10a 日 ③7000ppmを超える 0.15kg/10a 日 第2果房肥大期の葉柄硝酸濃度に対応する 収穫の場合は 第3果房肥大期までの窒素施肥量は 表(5) Aへ ①4000ppm未満 0.60kg/10a 日 ②4000 7000ppm 0.30kg/10a 日 ③7000ppmを超える 0.15kg/10a 日 表(3) B 表(4) B 第1果房肥大期の葉柄硝酸濃度が 上の表へ 第2果房肥大期の葉柄硝酸濃度が 上の表へ ②7000ppmを超える 第2果房肥大期まで ②7000ppmを超える 第3果房肥大期まで 5段収穫の場合は表(3)-A,Bから表(6)-A,Bへ 7段以上 7段以上 収穫の場合は 表(5) Bへ 6段収穫の場合は表(4)-A,Bから表(6)-A,Bへ 定植後の管理③ 第3果房肥大期 摘心位下方4段目肥大期 7段以上収穫する場合は摘心段下方4段目肥大期までこれらの表で対応してください 表(5) A 繰り返し表 A 第3果房肥大期の葉柄硝酸濃度に対応する 第4果房肥大期までの窒素施肥量は ①4000ppm未満 0.60kg/10a 日 ②4000 7000ppm 0.30kg/10a 日 ③7000ppmを超える 0.15kg/10a 日 第n果房肥大期の葉柄硝酸濃度に対応する 第(n+1)果房肥大期までの窒素施肥量は ①4000ppm未満 0.60kg/10a 日 ②4000 7000ppm 0.30kg/10a 日 ③7000ppmを超える 0.15kg/10a 日 表(5) B 繰り返し表 B 第3果房肥大期の葉柄硝酸濃度が 上の表へ 第n果房肥大期の葉柄硝酸濃度が 上の表へ ②7000ppmを超える 第4果房肥大期まで ②7000ppmを超える 第(n+1)果房肥大期 まで 7段収穫の場合は表(5)-A,Bから表(6)-A,Bへ (n+4)段収穫の場合は表(6)-a,bへ - 10 -

定植後の管理④ 摘心位下方4段目肥大期以降 生長点を取り除く 摘心する と 茎葉が伸びなくなるため摘心前と比べ施肥量を減ら すことになります 無駄な肥料を栽培跡地に残さないように摘心1ヶ月後以降は栽培終了 まで肥料を与えないようにしましょう (6)摘心位下方4段目肥大期 (7)摘心位下方3段目肥大期 摘心時期 摘心位置 第7果房 第6果房 第6果房 第5果房 第5果房 第4果房 摘心位下方4段目 摘心位下方3段目 果実ピンポン球大 第4果房 果実ピンポン球大 第3果房 第3果房 第2果房 第2果房 第1果房 第1果房 図は7段収穫の例です 表(6) A 表(7) A 摘心位下方4段目肥大期の葉柄硝酸濃度に 対応する摘心までの窒素施肥量は ①4000ppm未満 0.60kg/10a 日 ②4000 7000ppm 0.30kg/10a 日 ③7000ppmを超える 0.15kg/10a 日 摘心後1ヶ月間の窒素施肥量は0.15kg/10a 日 とし 摘心1ヶ月後以降は無施肥とする 表(6) B 表(7) B 摘心位下方4段目肥大期の葉柄硝酸濃度が 上の表へ 摘心位下方3段目肥大期の葉柄硝酸濃度が 上の表へ ②7000ppmを超える 摘心段下方3段目肥大 期まで ②7000ppmを超える 栽培終了まで無施肥 表 収穫段数と摘心段下方4および3段目の関係 5段収穫 6段収穫 7段収穫 摘心段下方4段目 摘心段下方3段目 第2果房 第3果房 第4果房 第3果房 第4果房 第5果房 - 11 -

養液土耕で留意する点 ①地力の消耗について 養液土耕では慣行栽培と同様に栽培を行うごとに地力窒素を消耗していきます 地力を 維持するため堆肥など有機物を施用する必要があります 施設栽培における堆肥施用量の 基準は4t/10a 4kg/ となっています ②有機物の施用にあたって 堆肥などが施用された場合は これに含まれる肥料成分を施肥量から減らす必要があり ます 施設園芸における堆肥類の減肥可能量は15ページに記載 養液土耕における窒素減肥について 減肥可能量の75 を減肥することとします ③リン酸とカリの施肥について 土壌のリン酸とカリが適正である場合 リン酸とカリの施肥量は窒素を1とするとリン 酸は 0.6程 度 カ リ は1.8程度 の 比率 が 適当 と 考え ら れま す 慣 行 栽培 の 施肥 標 準と 比 べ ると 養液土耕におけるリン酸総施肥量は65% カリ総施肥量は同等となります リン酸やカリが土壌診断基準値に満たない場合は 基肥でリン酸やカリの不足分を施用 してください リン酸やカリが多い場合はそれらの比率が低い肥料を選んでください 参考 試験場圃場(土壌のリン酸 カリともに基準値内)では肥料に養液栽培用複合肥料 N-P2O5-K2O 14-8-25 他にCaO,MgOや微量要素を含む を使いました ④下層土に硝酸態窒素が残存する場合 下層土に硝酸態窒素が存在する場合 トマトの根が下層土まで伸びた時点から 表層か らの施肥に加え 下層土の窒素も吸収すると考えられます そのため 下層に窒素が存在 する場合は 下層土窒素診断を行うことを勧めます 下層土診断に基づく窒素評価量は 15ページに記載 下層土窒素診断を行った場合 第1果房肥大期以降における1日当たりの窒素減肥量を 下層土窒素評価量(kg/10a) 0.75 (第1果房肥大期 摘心1ヶ月後の予定日数)とします ⑤土壌水分管理について 圃場が乾燥すると尻腐れ果等の障害果が発生する恐れがあり 過湿になると病害の発生 も心配されます 土壌水分管理については pf2.0 2.6を目安としてください - 12 -

養液土耕栽培事例 試験場における栽培例 表は道南農試の圃場 褐色低地土 で5月中旬定植 7月中旬 9月下旬の収穫で栽培 を行った時の施肥量とかん水量を示しています 栽培圃場の水はけや地下水位の違いよって 適切なかん水量および肥料希釈倍率は異な ります 表 試験場における時期別の施肥およびかん水量 7段収穫 栽植密度3333株/10a 生育ステージ 定植 第1果房肥大期 第1果房肥大期 摘心 摘心 摘心1ヶ月後 摘心1ヶ月後 栽培終了 合計 期間 (月日) 5/14 6/ 6 6/ 7 7/25 7/26 8/24 8/25 9/16 9/17 9/25 5/14 9/25 窒素施肥量 (kg/10a 日) (mg/株 日) 0.15 45 0.30 90 0.15 45 0 0 0 0 23.25 6975 かん水量 (ml/株 日) 180ml 450ml 450ml 450ml 0ml 50490ml 肥料希釈 倍率(倍)* 560倍 700倍 1400倍 慣行栽培では定植前に基肥を 行い 生育に従って追肥を行い ますが 養液土耕では基肥を行 わず 定植後に養液を与えてい き ま す 2002 2003年 に お い て 養液土耕では慣行栽培と比べ窒 素 施 肥 量 が 22 23 削 減 さ れ 果実収量7 26 増加しました ま た 栽 培 跡 地 土 壌 の ECは い ず 積 算 窒 素 施 肥 量 ( k g / 1 0a ) 肥料は養液栽培用複合肥料 N-P2O5-K2O 14-8-25 を用いた 土壌水分はpF2.0 2.6で管理した 定植時 1段目肥大 摘心1ヶ月後 栽培終了 慣行栽培 30kg/10a 30 追肥 基肥 養液土耕 約23kg/10a 20 10 れの年も慣行栽培より低く 肥 基肥を行わず 毎日少量の施肥 0 5/14 料成分の残存が少ないことが示 されました 摘心 6/13 7/13 8/12 9/11 図 養液土耕と慣行栽培における窒素施肥量の推移 表 トマト栽培試験の結果 夏秋どり7段収穫 道南農試 栽培方法 養液土耕 慣行栽培 窒素施肥量 良果収量 跡地土壌EC (kg/10a) (t/10a) (ms/cm) 2002年 23.0 ( 77%) 14.6 (107%) 0.10 2003年 23.3 ( 78%) 12.2 (126%) 0.10 2002年 30.0 (100%) 13.7 (100%) 0.27 2003年 30.0 (100%) 9.7 (100%) 0.31 年度 - 13 -

養液土耕では収量が多くなることから 収入が増加します 一方で費用は資材費や液肥 供給システム費などが加わるため高くなります 養液土耕は慣行栽培と比べ所得率は若干 低くなりますが 10a当たりの所得は高くなります 労働時間について養液土耕では慣行栽培と比べ かん水 追肥の時間が大幅に短縮され ることから全体の労働時間はやや短縮されます 養 液 土 耕 は 慣 行 栽 培 と 比べ 10a当 た り の 粗 収 益 お よび 所 得 が 高 く 労 働 時間 が 短く な る ことから 投下労働1時間当たりの農業所得は高くなると評価できます 養液土耕と慣行栽培の経済性評価 項目 粗収益(千円/10a) 費 用(千円/10a) 所 得(千円/10a) 所得率 ( ) 労働時間(時間/10a) 投下労働1時間 当たりの所得(円) 養液土耕 慣行栽培 2570 1637 933 36.3 1006 2245 1415 830 37.0 1028 928 830 内 訳 果実収量 販売単価(230円/kg) 資材費 液肥供給システム費など 粗収益 費 用 所 得 粗収益 かん水 施肥 収穫 調整など 所 得 労働時間 渡島中部地区農業改良普及センター作成資料より試算 評価 果実収量は試験場の圃場試験結果をもとに計算 現地における栽培例 ①渡島管内A氏 2002年は定植前土壌硝酸態窒素が11.8mg/ 100gの 圃 場 で 施 肥 と か ん 水 を 行 っ た 結 果 第 1 果 房 肥 大 期 の 茎 径 が 13.3mmで あ り 草 勢 が 強 く 生 育 し ま し た 右 の 写 真 2003年 は定植直後の施肥とかん水を控えたため 茎 は 2002年 と 比 べ 細 く な り 草 勢 も 中 庸 と なりました ②渡島管内B氏 前作の残肥があったため 定植前の土壌 硝 酸 態 窒 素 が 15mg/100g以 上 あ り ま し た 定植 第1果房肥大期までは施肥を行わ ず その後栄養診断に基づいて施肥対応を 行 っ た 結 果 窒 素 施 肥 量 の 合 計 は 約 2 kg/ 10aになりました こ の 圃 場 で は 11段 収 穫 を 行 い 13t/10a 程度の収量を得ました 右の写真 - 14 -

付表 付録 施設園芸における堆肥類の減肥可能量 施設園芸における堆肥類の減肥可能量(kg/現物t) 完熟たい肥 連用年数 N P2O5 K2O 5年未満 2 1 4 5年以上 3 1 4 1 4 0.5 3 未熟たい肥 バークたい肥 注1 ここでの完熟たい肥は牛糞尿由来たい肥であり 材料の種類などにより減肥可能量は変動する 注2) 栽培期間中の草勢維持 たい肥による窒素投入量と作物体による持ち出し量との差 周辺環境への 負荷回避等の点から 連用条件における施用量の上限を年4t/10aとする 注3 リン酸の減肥対応は黒ボク土を除く 平成15年普及推進事項 施設栽培におけるたい肥施用効果と窒素 リン酸減肥基準 より抜粋 養液土耕における窒素減肥にあたっては 減肥可能量の75 を減肥する 下層土診断に基づく窒素評価量 深根性の長期どり野菜 トマトまたはキュウリな ど の基肥施用前 作付け 前 に診断を行うこととし ます 平 成 15 年 普 及 推 進 事 項 施 設 栽 培における下層土診断に基づく 窒素施肥改善 より抜粋 トマト養液土耕の場合 第1果房肥大期以降における1日当たりの窒素減肥量を 下層土窒素評価量(kg/10a) 0.75 (第1果房肥大期 摘心1ヶ月後の予定日数)とする - 15 -

トマト栄養診断の手順 RQ flexを用いる場合 用意するもの はさみ ビニール袋 チャック付きが望ましい はかり(0.1g単位) 乳鉢 蒸留水(水道水でも硝酸態窒素がなければ差し支えない) RQ flex等の硝酸を測る器具 栄養診断の手順 ①トマト5株以上から第 ② 葉 身 を 取 り 除 き 葉 柄 ③ き ざ ん だ 葉 柄 を 1.0g計 り 1果房直下葉の先端小 を細かくきざむ 取る 葉を切り取る ④葉柄を乳鉢に入れ よくす り つ ぶ し 蒸 留 水 49mlを 加 ⑤ RQ flexで 硝 酸 濃 度 を 測定する え (50倍 希 釈 )撹 拌 す る 葉柄硝酸濃度の計算方法 計算方法 葉柄硝酸濃度 (ppm) RQ flexの測定値 50 (ppm) RQ flexの測定値が 80ppmの場合 葉柄硝酸濃度は4000ppm RQ flexの測定値が140ppmの場合 葉柄硝酸濃度は7000ppmと推定できます 注意 RQ flexの硝酸イオン試験紙は2種類(3 90ppmと5 255ppm)ありますが 5 255ppmの試験紙を使ってください - 16 -

栄養診断に基づく夏秋どりトマトの養液土耕栽培手順 本書の養液土耕栽培の手順 8 11ページ を要約した図です 第1果房 肥大期 第2果房 開花始め 定植時 第3 第2 第2 第1 第1 第1 定植前土壌硝酸態窒素が ① 5mg/100g未満の場合 第2果房開花始めまで 窒素施肥量0.15kg/10a 日 第2果房開花始めの葉柄硝酸濃度に対応する 第1果房肥大期までの窒素施肥量は ①500ppm未満 0.30kg/10a 日 ②500 5000ppm 0.15kg/10a 日 ③5000ppmを超える 0.075kg/10a 日 第1果房肥大期の葉柄硝酸濃度に対応する 第2果房肥大期までの窒素施肥量は ①1000ppm未満 0.60kg/10a 日 ②1000 7000ppm 0.30kg/10a 日 ③7000ppmを超える 0.15kg/10a 日 ② 5 15mg/100gの場合 第2果房開花始めまで 第2果房開花始めの葉柄硝酸濃度が ①5000ppm以下 上の対応表へ 第1果房肥大期の葉柄硝酸濃度が 上の対応表へ ②5000ppmを超える 第1果房肥大期まで ②7000ppmを超える 第2果房肥大期まで ③15mg/100g以上の場合 第1果房肥大期まで Bへ 摘心位置 第6 摘心位下方 4段目肥大期 第2果房 肥大期 第4 第3 第5 B 第7 栽培終了 摘心位下方 3段目肥大期 摘心時期 第6 第5 第4 第4 第2 第3 第3 第1 第2 第1 A Aへ 第2果房肥大期の葉柄硝酸濃度に対応する 第3果房肥大期までの窒素施肥量は ①4000ppm未満 0.60kg/10a 日 ②4000 7000ppm 0.30kg/10a 日 ③7000ppmを超える 0.15kg/10a 日 第2果房肥大期の葉柄硝酸濃度が 上の対応表へ ②7000ppmを超える 第3果房肥大期まで 摘心位下方4段目肥大期の葉柄硝酸濃度に 対応する摘心までの窒素施肥量は ①4000ppm未満 0.60kg/10a 日 ②4000 7000ppm 0.30kg/10a 日 ③7000ppmを超える 0.15kg/10a 日 摘心位下方 3段目 第2 第1 摘心後1ヶ月間の窒素施肥量は0.15kg/10a 日 とし 摘心1ヶ月後以降は無施肥とする 摘心位下方4段目肥大期の葉柄硝酸濃度が 上の対応表へ 摘心位下方3段目肥大期の葉柄硝酸濃度が 上の対応表へ ②7000ppmを超える 摘心段下方3段目肥大 期まで ②7000ppmを超える 栽培終了まで無施肥 第3果房肥大期 摘心位下方4段目肥大期までは果房肥大期ごとに同様の診断を繰り返す 注1 有機物の施用に伴う窒素減肥にあたっては 減肥可能量の75 を減肥する 注2 下層土窒素診断を行った場合 第1果房肥大期以降における1日当たりの窒素減肥量 を下層土窒素評価量(kg/10a) 0.75 (第1果房肥大期 摘心1ヶ月後の予定日数)とする - 17 -

参考文献 農業技術大系 野菜編 第12巻 追録第27号 養液土耕栽培の基本と応用 養液土耕栽培の理論と実際 北海道施肥ガイド 青木宏史 梅津憲治 小野信一編 農文協 誠文堂新光社 北海道農政部 平成15年普及奨励ならびに指導参考事項 道南トマト栽培の手引き 北海道農政部 道南地区野菜産地改革協議会 ハウストマト窒素栄養診断マニュアル 道南農試 渡島中部農改 JA新はこだて ハウストマト養液土耕マニュアル 作成 2004年2月 北海道立道南農業試験場 協力機関 渡島中部地区農業改良普及センター JA新はこだて 大野支店 連絡先 北海道立道南農業試験場 041-1201 亀田郡大野町本町680番地 TEL 0138-77-8116 FAX 0138-77-7347 http://www.agri.pref.hokkaido.jp/dounan/dounan.htm - 18 -