Microsoft Word - tohokuuniv-press web_.pdf.docx

Similar documents
University of Tsukuba2014

<4D F736F F D20824F C8E AAA93AA8CBE814596DA8E9F2E646F63>

調査 統計 歯科心身症患者における自律神経機能の評価 - 心拍変動に対する周波数解析を用いた検討 - 1, 三輪恒幸 * 天神原亮 ) 小笠原岳洋 ) 渡辺信一郎 ) 亀井英志 ) 1) 東京歯科大学臨床検査学研究室 ) 長栄歯科クリニック 抄録目的 : 長栄歯科クリニックでは 歯科心身症が疑われる

2017 年 12 月 15 日 報道機関各位 国立大学法人東北大学大学院医学系研究科国立大学法人九州大学生体防御医学研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 ヒト胎盤幹細胞の樹立に世界で初めて成功 - 生殖医療 再生医療への貢献が期待 - 研究のポイント 注 胎盤幹細胞 (TS 細胞 ) 1 は

University of Tsukuba 2015 School of Health & Physical Education

No. 1 愛知学院大学 Ⅰ. 緒言 咀嚼行為による自律神経系への活動は 1 咀嚼筋が活動する時の交感神 経の興奮 2 唾液分泌や消化管刺激を生ずる副交感神経の活動 3 味覚や 匂いによる唾液分泌の条件反射があり その複雑性のために咀嚼行為が自 律神経のどの方向に働くかについては 異なった報告がある

微小粒子状物質曝露影響調査報告書

Microsoft Word - tohokuuniv-press _01.docx

Microsoft Word - tohokuuniv-press _02 - コピー.docx

Microsoft Word - tohokuuniv-press _02.docx

報道機関各位 2017 年 9 月 26 日 東北大学大学院医学系研究科 慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対する新規治療 - バルーン肺動脈形成術は効果的で安全な治療法である - 研究のポイント 注 国の指定難病である慢性血栓塞栓性肺高血圧症 (CTEPH) 1 は 肺の動脈に血栓が生じて血管が狭くなる

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典


平成18年度厚生労働科学研究費補助金(労働安全衛生総合研究事業)

研究報告書レイアウト例(当該年度が最終年度ではない研究班の場合)

康度の評価を実施した また リーグ戦日前後を含む 3 日間における栄養調査を思い出し記述法を用いた調査票を回収した ボウリングプレー時の集中度と全身疲労感の主観的評価は 第 1 タームと第 2 ターム リーグ戦ゲーム前後に毎回測定を実施した 各ターム リーグ戦最終日にはプレー前の安静時において 唾液

ン投与を組み合わせた膵島移植手術法を新たに樹立しました 移植後の膵島に十分な栄養血管が構築されるまでの間 移植膵島をしっかりと休めることで 生着率が改善することが明らかとなりました ( 図 1) この新規の膵島移植手術法は 極めてシンプルかつ現実的な治療法であり 臨床現場での今後の普及が期待されます

第80回日本温泉気候物理医学会.indd

表紙69-5,6_v10.eps


Microsoft Word _nakata_prev_med.doc



スライド 1

助成研究演題 - 平成 23 年度国内共同研究 (39 歳以下 ) 重症心不全の集学的治療確立のための QOL 研究 東京大学医学系研究科重症心不全治療開発講座客員研究員 ( 助成時 : 東京大学医学部附属病院循環器内科日本学術振興会特別研究員 PD) 加藤尚子 私は 重症心不全の集学的治療確立のた

「手術看護を知り術前・術後の看護につなげる」

研究内容 心不全は 心臓の筋肉が障害されることにより心臓のポンプ機能が低下し 肺や全身の臓器に必要な血液量を送り出すことができない病態です 心不全患者の一部において 左心房の血圧の上昇が肺に血液を送り出す動脈 ( 肺動脈系 ) に影響し 肺動脈の収縮や肥厚 ( リモデリング ) が引き起こされ 肺高

統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

< 方法 > 被験者は心身ともに健康で歯科医療関係者以外の歯科受診経験のある成人男女 15 名 ( 男 6 名 女 9 名 22.67±2.89 歳 ) とした 安静な状態で椅子に腰掛け 歯科治療に関する質問紙への回答により歯科受診経験の有無 実験前のカフェインやアルコールの摂取がないことを確認した


られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

1 2

1. はじめに近年の計算機パワーおよび数理的な解析手法の向上を背景に, 生命現象について, 数理モデルを用いて明らかにする研究の重要性は増している. そのような研究は今後, 医療, 健康管理などにおいてますます必要になると考えられる. そこで, 筆者はこれまでに生体計測 信号処理等工学技術の生活支援

表紙PDF作成用/PDF表紙作成用

平成 29 年 6 月 9 日 ニーマンピック病 C 型タンパク質の新しい機能の解明 リソソーム膜に特殊な領域を形成し 脂肪滴の取り込み 分解を促進する 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長門松健治 ) 分子細胞学分野の辻琢磨 ( つじたくま ) 助教 藤本豊士 ( ふじもととよし ) 教授ら

漢方薬

理学療法士科 区分 平成 30 年度教科課程 開講科目名 必修授業 ( 英語表記 ) 選択形態 時間数 ( 単位数 ) 講義概要 心理学 Psychology 必修 講義 15 (1) 認知 思考 行動などにおける心理の過程を知り 人の内面を見る手がかりとする 教育学 Pedagogy 必修講義 1

Memoirs Dep. of Health Scis. Sch. of Med Kyushu Univ., 2006, vol.7, Kyoko WatanabeHarumi ShinkodaEtsuko Kitahara Key Words

博士論文 考え続ける義務感と反復思考の役割に注目した 診断横断的なメタ認知モデルの構築 ( 要約 ) 平成 30 年 3 月 広島大学大学院総合科学研究科 向井秀文

の略語で, 隣り合う RR 間隔の差を 2 乗し, 合計したものを平均し, 平方根化したもので, 隣り合う RR 間隔の差が大きいほど数値は大きくなる 心電図の短時間解析 (shortterm analysis; 5 min) では, SDNN の低下と RMSSD の低下は, 副交感神経活性の低下

解禁時間 ( ラジオ テレビ WEB): 平成 30 年 4 月 7 日 ( 土 ) 午後 1 時 ( 日本時間 ) ( 新聞 ): 平成 30 年 4 月 7 日 ( 土 ) 付夕刊 [PRESS RELEASE] 平成 30 年 4 月 3 日 夏の夜は心筋梗塞の増加に注意 日本 イタリアなど世

表紙PDF作成用/PDF表紙作成用

<4D F736F F D208DC58F4994C581798D4C95F189DB8A6D A C91E A838A838A815B83588CB48D EA F48D4189C88

2) では, 図 2 に示すように, 端末が周囲の AP を認識し, 認識した AP との間に接続関係を確立する機能が必要である. 端末が周囲の AP を認識する方法は, パッシブスキャンとアクティブスキャンの 2 種類がある. パッシブスキャンは,AP が定期的かつ一方的にビーコンを端末へ送信する

日本消化器病学会雑誌第102巻第8号

セッション 6 / ホールセッション されてきました しかしながら これらの薬物療法の治療費が比較的高くなっていることから この薬物療法の臨床的有用性の評価 ( 臨床的に有用と評価されています ) とともに医療経済学的評価を受けることが必要ではないかと思いまして この医療経済学的評価を行うことを本研

Microsoft Word - 博士論文概要.docx

第 3 節心筋梗塞等の心血管疾患 , % % % %

上原記念生命科学財団研究報告集, 31 (2017)

表紙PDF作成用/PDF表紙作成用

要旨健常者では何事もなく日常行われる体位変換動作が 脳血管障害や頸髄損傷においては起立性低血圧などの調節異常を引き起こす 血圧変動を評価するだけではなく簡便かつ有効な手段で自律神経機能を評価することができれば起立性低血圧のリスクをより管理できるのはないかと考えられる 本研究は 立位訓練時の起立性低血

The Plasma Boundary of Magnetic Fusion Devices

要望番号 ;Ⅱ-183 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者学会 ( 該当する ( 学会名 ; 日本感染症学会 ) ものにチェックする ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 1 位 ( 全 8 要望中 ) 要望する医薬品

表紙1.eps


H26_大和証券_研究業績_C本文_p indd

Microsoft Word - Ⅲ-11. VE-1 修正後 3.14.doc

ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク





2 R K/S K/S K/S K/S K/S K/S K/SR R K/S K/S K/S K S R K/S K/S K/S K/S K/S K/S

表紙PDF作成用/PDF表紙作成用

untitled

機能分類や左室駆出率, 脳性ナトリウム利尿ペプチド (Brain Natriuretic peptide, BNP) などの心不全重症度とは独立した死亡や入院の予測因子であることが多くの研究で示されているものの, このような関連が示されなかったものもある. これらは, 抑うつと心不全重症度との密接な

<4D F736F F D D88E389C88A7790EA8D5582C982A882AF82E98F438BC6944E8CC082CC93C197E182C98AD682B782E9905C8D8782B

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

<4D F736F F D208D7393AE8C6F8DCF8A7789EF8FB4985E905C82B58D9E82DD91E5927C919F8AED D322E646F63>

報道機関各位 2017 年 8 月 22 日 東北大学大学院医学系研究科 世界初 腎 - 脳 - 心臓 連関 : 腎臓から心臓を治療する - 冠攣縮性狭心症に対する腎動脈交感神経除神経治療の可能性 - 研究のポイント 虚血性心疾患注 1 に対する冠動脈ステント治療後に 治療部近くで冠攣縮が生じること

Microsoft Word - 日本語要約_4000字_.docx



運動療法の効果 運 動療 法は 心 臓手 術を受けるに至った 冠 動脈 疾 患の危険因子を減らす2次予防だけでなく 手術を受けたことによるいろいろな問題点を改善します 1 運動能力 体力が向上します 心臓手術後の運動療法は運動能力を改善させます 弁膜症の場合 弁置換術によって心機能は正常化しま すが

様式 1 研究拠点形成事業平成 29 年度実施計画書 B. アジア アフリカ学術基盤形成型 1. 拠点機関日本側拠点機関 : フィリピン拠点機関 : インドネシア拠点機関 : カンボジア拠点機関 : ザンビア拠点機関 : 東北大学大学院医学系研究科熱帯医学研究所シャリフ ヒダーヤットゥラ国立イスラム

臨床研究実施計画書

CiNii) において 2004 年 ~2006 年の

05_両角.indd

56 15) ± ) ALF21 2 C ThermovisionCRP570 JPEG ES H ffi C 60%

( 様式乙 8) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 米田博 藤原眞也 副査副査 教授教授 黒岩敏彦千原精志郎 副査 教授 佐浦隆一 主論文題名 Anhedonia in Japanese patients with Parkinson s disease ( 日本人パー


<4D F736F F F696E74202D AAE90AC94C5817A835F C581698FE39E8A90E690B6816A2E >

TV視聴コンテンツの種類が 感情状態の生理心理計測に及ぼす影響

School of Health &Physical Education University of Tsukuba

06. 【送付】プレスリリース原稿 LCZ696

汎発性膿庖性乾癬の解明

リハビリテーションを受けること 以下 リハビリ 理想 病院でも自宅でも 自分が納得できる 期間や時間のリハビリを受けたい 現実: 現実: リ ビリが受けられる期間や時間は制度で リハビリが受けられる期間や時間は制度で 決 決められています いつ どこで どのように いつ どこで どのように リハビリ

™…0ケ0ン0?トyム[f}


名大_医学部保健学科年報第8巻/巻頭

Microsoft Word - 【確定】東大薬佐々木プレスリリース原稿

~

< A796BD8AD991E58A77976C2D8CBE8CEA C B B835E2E706466>

臨床試験の実施計画書作成の手引き


学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 中谷夏織 論文審査担当者 主査神奈木真理副査鍔田武志 東田修二 論文題目 Cord blood transplantation is associated with rapid B-cell neogenesis compared with BM transpl

fl™‹ä1.eps

indd



Transcription:

報道機関各位 2016 年 2 月 10 日 東北大学大学院医学系研究科 音楽で運動後の心疾患リスクを減らす可能性 ~ 音楽は運動後の副交感神経活動の低下を和らげる ~ 研究概要 東北大学大学院医学系研究科内部障害学分野の小川佳子 ( おがわよしこ ) 助教 上月正博 ( こうづきまさひろ ) 教授らのグループは 心拍変動解析注 1 を用注 2 いて音楽が運動後の自律神経活動に良い効果をもたらすことを科学的に実証しました 運動を行うと 短期的には交感神経活動が増加したり副交感神経活動が低下したりしますが この変化は運動後しばらくして回復します 副交感神経活動の回復反応の遅れは運動後の致死性の不整脈の発生や心臓突然死のリスクを高めるので 運動後の副交感神経活動の回復を高めることは重要な課題となっています 今回 若年健常者を対象とした研究において 自転車こぎ運動の際に気分を落ち着かせる音楽を聴きながら運動を行うことで 運動後の副交感神経の低下を抑えることができました 運動療法に音楽療法を組み合わせることで 様々な疾病に対する新しいリハビリテーションプログラムの確立につながることが期待されます この研究成果は 2016 年 2 月 3 日午後 2 時 ( 米国東部標準時 日本時間 2 月 4 日午前 3 時 ) にPLoS ONE 誌 ( 電子版 ) に掲載されました 研究のポイント 運動は習慣的に継続すると自律神経活動のバランスを整える ( 運動の慢性注 3 注 3 効果 ) が 一回の運動は交感神経活動を増加させたり 副交感神経活動を低下させたりする ( 運動の急性効果 ) 気分を落ち着けるような音楽は 副交感神経の活動を高める 気分を落ち着けるような音楽を聴きながら運動すると 運動後の副交感神経活動の低下を和らげることができる

研究内容 運動は 健康の維持や増進のみならず 生活習慣病や心疾患の予防や治療にも有用です 心大疾患患者では 交感神経活動と副交感神経活動のバランスが乱れていますが 運動を習慣的に継続するとこの自律神経活動のアンバランスが改善します しかし 一回一回の運動に関しては 運動によって交感神経活動が増加したり あるいは副交感神経活動が低下したりします 運動を終了すると 運動中には低下していた副交感神経活動が急激に回復しますが この運動後の副交感神経活動の回復反応は心臓へのストレス回避のための反応であり 回復反応の遅れは運動後の致死性の不整脈の発生や心臓突然死と関連しています したがって 運動あるいは運動療法を安全に行う上で 運動後の副交感神経活動の回復を高め 運動に伴う心臓へのストレスをいかに減らすかということは非常に重要な課題となっています 一方 音楽は 自律神経活動を調整する効果を有していると言われており 特に 気分を落ち着かせるような音楽は副交感神経活動を高めることが明らかになっています したがって 気分を落ち着かせるような音楽を聴きながら運動を行えば 運動後の副交感神経活動を高めることができるかもしれません そこで 我々は 若年健常者に対して (1) 何もしないで座っている ( 安静セッション ) (2) 被験者自身が選んだ気分を落ち着かせるような音楽を聴きながら座っている ( 音楽セッション ) (3) ややきつい と感じるくらいの自転車こぎ運動を行う ( 運動セッション ) および (4) 音楽を聴きながら自転車こぎ運動を行う ( 併用セッション ) という 4 つのセッションをそれぞれ別の日に 15 分間行い セッション前後の自律神経活動を心拍変動解析ソフトを用いて測定し比較しました その結果 音楽セッションでは セッション終了後の副交感神経活動が有意に増加し 運動セッションではセッション終了後の副交感神経活動が有意に低下していましたが 音楽を聴きながら運動した併用セッションでは セッション終了後の副交感神経活動は介入前の値とほぼ同じでした ( 図 1 および図 2) この結果は 被験者自身が選んだ気分を落ち着かせるような音楽が運動による副交感神経活動の低下を和らげたことを意味しています 本研究の結果は 音楽が運動後の副交感神経活動に良い効果をもたらすことを科学的に明らかにした初めての報告です 本研究により音楽と運動を併用することでより安全に運動を実施することができることが明らかになったことにより より積極的な運動あるいは運動療法の実施につながると思われます また 今回はそれぞれ一回の実施の効果を検証していますが 音楽と運動の併用療法を長期的に繰り返すことにより音楽療法あるいは運動療法単独よりもより大きな効果が得られる可能性も考えられ 様々な疾病に対する新しいリハビリテーションプログラムの確立につながることが期待されます

用語説明 注 1. 心拍変動解析 : 心拍は ゆらぎ を持っており この ゆらぎ の周波数成分を解析することにより自律神経活動を測定することができます 注 2. 自律神経 : 平滑筋 心筋および腺に分布し 循環 呼吸 消化 吸収 代謝 排泄 分泌 生殖 体温維持などの自律機能を制御している神経のことです 注 3. 交感神経と副交感神経 : 末梢器官からの情報を中枢神経系へ伝える自律神経のことで 原則的に一つの効果器に両方の神経が分布し 一つの効果器にそれぞれ反対の作用を及ぼします したがって 心身の健康維持には交感神経と副交感神経がバランスよく働くことが重要です 図 1. 自転車こぎ運動の際に気分を落ち着かせる音楽を聴きながら運動を行うことで 運動後の副交感神経の低下を抑えることができた

図 2. 各セッション前後の副交感神経活動の大きさ HF(High Frequency Power; 高周波成分 ) は心拍変動解析によって求められる指標の一つで 副交感神経活動を表している HF は 音楽を聴くと増加し 運動すると低下しているが 音楽を聴きながら運動した時にはセッション前後で変化がなかった ** はセッション前に比べてセッション後の HF 値が有意に高いあるいは低いことを示している (P < 0.01) はセッション後の HF が音楽セッションに比べて運動セッションにおいて有意に低かったことを示している (P < 0.05) 論文題目 English Title: Music Attenuated a Decrease in Parasympathetic Nervous System Activity after Exercise Authors: Tiantian Jia 1*, Yoshiko Ogawa 1, Misa Miura 2, Osamu Ito 1, Masahiro Kohzuki 1 (* First author, Corresponding author) Affiliation:1) Department of Internal Medicine and Rehabilitation Science, Tohoku University Graduate School of Medicine, Sendai, Japan 2) Course

of Physical Therapy, Faculty of Health Science, National University Corporation Tsukuba University of Technology, Tsukuba, Japan ( タイトルの日本語訳 : 音楽は運動後の副交感神経活動の低下を減弱した ) 著者名 : 賈添天 1 *, 小川佳子 1, 三浦美佐 2, 伊藤修 1, 上月正博 1 (* 筆頭著者, 責任著者 ) ( 日本語名称 :1) 東北大学大学院医学系研究科機能医科学講座内部障害学分野 2) 筑波技術大学保健科学部保健学科理学療法学専攻 ) 掲載誌名 :PLoS ONE お問い合わせ先 ( 研究に関すること ) 東北大学大学院医学系研究科機能医科学講座内部障害学分野助教小川佳子 ( おがわよしこ ) 電話番号 :022-717-7353 FAX 番号 :022-717-7355 E メール :yoshikogawa@med.tohoku.ac.jp 教授上月正博 ( こうづきまさひろ ) 電話番号 :022-717-7353 FAX 番号 :022-717-7355 E メール :kohzuki@med.tohoku.ac.jp ( 報道に関すること ) 東北大学大学院医学系研究科 医学部広報室講師稲田仁 ( いなだひとし ) 電話番号 :022-717-7891 FAX 番号 :022-717-8187 E メール :hinada@med.tohoku.ac.jp