目次 1. やまだわら の特性 _ 1 収量特性 1 2 品質 炊飯米特性 2 3 用途別適性 3 2. 生育の特徴 4 3. 収量 品質の目標 5 4. 各地域での主な作付スケジュール 6 5. 栽植密度 7 6. 肥培管理 1 施肥量 施肥時期 8 2 生育診断 9 7. 収穫適期

Similar documents
コシヒカリの上手な施肥

山形県における 水稲直播栽培の実施状況 平成 28 年 8 月 26 日 ( 金 ) 山形県農業総合研究センター 1 1 山形県における水稲直播栽培の現状 1 (ha) 2,500 2,000 1,500 1, 乾田直播 湛水 ( 点播 ) 湛水 ( 条播 ) 湛水 ( 散播 )

<4D F736F F D A6D92E894C5817A966B945F8CA C E482AB82B382E282A9816A81698DC58F4994C5816A2E646F63>

<4D F736F F F696E74202D2082C982B182DC82E9837D836A B955C8E862E >

取組の詳細 作期の異なる品種導入による作期分散 記載例 品種名や収穫時期等について 26 年度に比べ作期が分散することが確認できるよう記載 主食用米について 新たに導入する品種 継続使用する品種全てを記載 26 年度と 27 年度の品種ごとの作付面積を記載し 下に合計作付面積を記載 ( 行が足りない

仙台稲作情報令和元年 7 月 22 日 管内でいもち病の発生が確認されています低温 日照不足によりいもち病の発生が懸念されます 水面施用剤による予防と病斑発見時の茎葉散布による防除を行いましょう 1. 気象概況 仙台稲作情報 2019( 第 5 号 ) 宮城県仙台農業改良普及センター TEL:022

新品種育成の背景 経緯一般の良食味米 ( 中アミロース ) で作成した麺は ゆで麺の表面の粘りが強く 麺離れが悪いのに対し 高アミロース米は麺離れが良く 製麺適性が高いことから 北陸地域向けの 越のかおり 北海道向けの 北瑞穂 などがこれまでに育成され 米粉麺が製品化されています しかしながら これ

ダイズ紫斑病に対するアミスター20フロアブルの散布適期

プレスリリース 平成 26 年 9 月 5 日農研機構 高温下でも品質が優れ 良食味で多収の水稲新品種 恋の予感 を育成 ポイント 玄米の外観品質 1) が ヒノヒカリ より優れ 高温年でも品質が低下しにくい特長があります ヒノヒカリ と比べ約 8% 多収で 米飯食味は ヒノヒカリ 並に良好です い

附則この要領は 平成 4 年 1 月 16 日より施行する この要領は 平成 12 年 4 月 3 日より施行する この要領は 平成 30 年 4 月 1 日より施行する 2

Taro-H30(32-37).本çfl°æŒ½è‡¥.jtd

総籾数 ( 千 / m2 ) 1 穂籾数 ( 粒 / 穂 ) わら重 (kg/a) 精籾重 (kg/a) 柴田ほか : 水稲新品種 ゆめおばこ の栽培特性 (2) 結果 ゆめおばこ と あきたこまち を比較すると ゆめおばこ は あきたこまち より全重 わら 重 精籾重 玄米重が多く 玄米千粒重が大

< F2D D8289B78FE18A51838C837C815B B91CC>

レイアウト 1

2 穂の発育過程 (1) 穂の形態 イネの穂は 穂軸が枝分かれして し 1 次枝こう 2 次枝こうがつき それ にえい 花 ( 小穂 ) がつく 1 つのえい花 ( 小穂 ) は 1 花から成 っており その数は 1 次枝こうの先に 5~6 個 2 次枝こうに 2~4 個つき 1 穂全体では 80

「そらゆき」栽培マニュアル

麦 類 生 育 情 報

窒素吸収量 (kg/10a) 目標窒素吸収量 土壌由来窒素吸収量 肥料由来 0 5/15 5/30 6/14 6/29 7/14 7/29 8/13 8/28 9/12 9/ 生育時期 ( 月日 ) 図 -1 あきたこまちの目標収量確保するための理想的窒素吸収パターン (

平成 26 年度補正予算 :200 億円 1

Microsoft PowerPoint - 11 新潟米戦略

1 はじめに北海道の麦作には 二つの大きな目標があった 一つは 秋まき小麦の全道平均反収を一〇俵の大台に乗せること もう一つは E U 並みの反収一トンどりをめざすことである この数字は 決して夢のような話ではなかった 麦作農家のなかには 圃場の一部ではあるが一トンどりを実現したとの声があったし 実

水田メタン発生抑制のための新たな水管理技術マニュアル(改訂版)

圃場試験場所 : 県農業研究センター 作物残留試験 ( C-N ) 圃場試験明細書 1/6 圃場試験明細書 1. 分析対象物質 およびその代謝物 2. 被験物質 (1) 名称 液剤 (2) 有効成分名および含有率 :10% (3) ロット番号 ABC 試験作物名オクラ品種名アーリーファ

委託試験成績 ( 平成 25 年度 ) 担当機関名 部 室名 実施期間 大課題名 課題名 目的 担当者名 山口県農林総合技術センター 農業技術部土地利用作物研究室 資源循環研究室 平成 24~26 年度 Ⅰ 大規模水田営農を支える省力 低コスト技術の確立 うね立て同時条施肥機を利用した被覆尿素の深層

資料報告

H26 中予地方局産業振興課普及だより 新技術情報 -1 いちご新品種 紅い雫 ( あかいしずく ) 1. 紅い雫 の来歴県農林水産研究所が育成したいちご新品種 紅い雫 は あまおとめ ( 母親 ) 紅ほっぺ ( 父親 ) の交配により誕生し 平成 26 年 6 月 25 日に品種登録出願されました

<4D F736F F D B F4390B CF91F58E8E8CB18EC090D18C9F93A289EF90AC90D18F B7B8DE8918D945F8E8E816A2E646F6378>

2 作物ごとの取組方針 (1) 主食用米本県産米は 県産 ヒノヒカリ が 平成 22 年から平成 27 年まで 米の食味ランキングで6 年連続特 Aの評価を獲得するなど 高品質米をアピールするブランド化を図りながら 生産数量目標に沿った作付けの推進を図る また 平成 30 年からの米政策改革の着実な

5 事務局 審査会の事務局は 福島県農林水産部農業振興課におく 第 5 奨励品種決定調査の実施県は 奨励品種の決定に当たっては 奨励品種決定調査を行うものとする 1 奨励品種決定調査の種類 (1) 基本調査供試される品種について 県内での普及に適するか否かについて 栽培試験等によりその特性の概略を明

Microsoft Word - 九農研プレス23-05(九州交3号)_技クリア-1.doc

材料および方法

水稲調査結果の主な利活用 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律 ( 平成 6 年法律第 113 号 ) に基づき毎年定めることとされている米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針及び米穀の需給見通しのための資料 食料 農業 農村基本計画における生産努力目標の策定及び達成状況検証のための資料 米

炊飯米特性の理化学測定 れる 人による食味官能試験では, 所定の条件で準備した炊飯米の食味を選抜されたパネラーにより, 評価している 農林水産省 ( 旧食糧庁 ) で採用した標準計測法では, 炊飯米の食味について, 外観, 香り, 味, 硬さ, 粘り, 総合 の項目を点数で評価することと定めている

2 石川県農業総合研究センター研究報告第 26 号 (5) It reviewed relation between the number of days after the heading and the quality change. Also, about the index which es

08U00表紙最終

農作物のカドミウム吸収抑制のために(3)低蓄積品種(石川覚)(図表)

<82BD82A294EC82C697CE94EC82CC B835796DA>

調査研究課題:○○▽▽の調査研究

<4D F736F F D2091E593A48DCD947C82CC837C E646F63>

青大豆を用いた厚揚げの緑色保持法

2016 岩船米農作業カレンダー いよいよデビュー! 晩生新品種 新之助 昨年命名された 新之助 は 平成 28 年に県内で約 100ha 栽培される予定です 岩船地域では 2JA を含む 4 つの 新之助 栽培研究会 で栽培が行われます 稲株 玄米 新之助 の特徴 1 粒が大きく コクと甘さに特徴

主要産地における平成 29 年産水稲の収穫量及び作柄概況等について第 1 報 (8 月 31 日現在 ) 全国 道府県 全国 予想収穫量 (29 年 8 月 15 日現在 )1 収穫量 ( 早期栽培等 ) 予想収穫量 (28 年 8 月 15 日現在 )2 前年産との比較 (1-2) 作況 ( 早期

平成30年播種用「飼料用イネの栽培と品種特性」

untitled

機関名 ( 地独 ) 北海道立総合研究機構農業研究本部 部署名 企画調整部企画課 記入者氏名 山崎敬之 電話番号 レーザー式生育センサを活用した秋まき小麦に対する可変追肥技術 レーザー式の生育センサを使って秋まき小

スライド 1

20 石川県農業総合研究センター研究報告第 28 号 (2008) Ⅰ はじめに家畜ふん尿処理施設では 収集 運搬された家畜ふん尿は固液分離機に搬入され 固形分は堆肥化処理後 農耕地へ還元利用されている 液状分は好気発酵処理 さらに生物処理等の工程の順に適切な浄化処理が行われ その後 放流されている

水稲の反射シート平置き出芽 & プール育苗 福島県須賀川市 藤田忠内さん 出芽は平置きした苗箱に反射シートをかけるだけ, 育苗管理はプールに水を張るだけ, 換気も灌水の心配もいらない マット形成, 揃いがよく, 茎が太くて葉幅も広く, 病気の出ない, 根張り抜群の健苗を育成 写真はすべて依田賢吾撮影

Ⅰ 基本方針と重点推進事項 1 基本方針本県が消費者や実需者から選ばれる米産地となるよう 生産者 農業団体 行政が 課題や対応方向 目標を共有化し 販売を起点とした米づくりに取り組むための指針である 秋田米生産 販売戦略 を策定した 農地のほとんどを水田が占める本県においては 主食用米を中心に 加工

精米時に胚盤が残りやすく栽培特性が優れる良食味水稲品種「きんのめぐみ」の育成

Ⅱ 今後の管理について 1 水管理について (1) 気象変動に対応した水管理 幼穂形成期に入ったら間断かん水 出穂期から開花期にかけては湛水管理 その後は間断 かん水が水管理の基本になりますが 気象変動に対応した水管理を心がけましょう 1 減数分裂期の低温 減数分裂期 ( 葉耳間長 ±0cm 出穂期

排水対策の実施例 暗渠がある場合排水がよいほ場 排水が悪いほ場 周囲明渠 弾丸暗渠 心土破砕は 2 ~5m おきに行う 周囲明渠は深さ 30 cmを確保する 周囲明渠は排水口に確実に接続する 弾丸暗渠本暗渠 暗渠がない場合排水がよいほ場 排水がよく 長辺が長いほ場 100m 以 ほ場内排水溝は4 ~

画面遷移

広瀬貴士他 : きねふりもち の育成経過と特性 Ⅲ 特性の概要 1 形態的及び生態的特性育成地 ( 当所中津川支所 ) における きねふりもち の早晩性は ココノエモチ より出穂期及び成熟期が 1 日から 2 日程度早い 早の早 である ( 第 1 表 第 2 表 ) ふ先色は ココノエモチ ほど鮮

第5回 農地・農村部会 資料 /8

調査および解析には 2010 年から 2014 年に, 福井県下全域 で設けられた試験圃および農試場内産のサンプルを用いた. 品種はコシヒカリが中心で総数 225 点であり, あきさかり 41 点であった ( 第 1 表 ). 現地試験の内容は各地の状況に応じて担当普及指導員と農 家が相談の上決めた

分娩後の発情回帰と血液生化学値との関係(第2報)

資料 2 農業データ連携基盤の構築について 農業データ連携基盤 (WAGRI) WAGRI とは 農業データプラットフォームが 様々なデータやサービスを連環させる 輪 となり 様々なコミュニティのさらなる調和を促す 和 となることで 農業分野にイノベーションを引き起こすことへの期待から生まれた造語

米とワラの多収を目指して2013.indd

2015 岩船米農作業カレンダー 今年の稲作計画を立ててみましょう 今年の経営目標 ( 前年の実績を踏まえ 収量 品質 売上の目標などを書き込みましょう ) 水稲作付計画 ( 新規需要米等も含む ) 品種名作付面積 ( アール ) 目標単収 (kg/10a) 栽培方法留意事項等 参考 平成 26 年

50年後の生育環境でイネを栽培「高CO2 濃度の影響評価」(長谷川利拡)

Microsoft Word - ⑦内容C【完成版】生物育成に関する技術.doc

果樹の生育概況

失敗しない堆肥の使い方と施用効果

4 奨励品種決定調査 (1) 奨励品種決定調査の種類ア基本調査供試される品種につき 県内での普及に適するか否かについて 栽培試験その他の方法によりその特性の概略を明らかにする イ現地調査県内の自然的経済的条件を勘案して区分した地域 ( 以下 奨励品種適応地域 という ) ごとに 栽培試験を行うことに

東北日本海側において播種期、栽植密度および1株本数がダイズの生育収量に与える影響

p r: 定格エネルギー消費量 [kw] p x: 試験機器の最大エネルギー消費量 [kw] ε p: 試験機器の最大エネルギー消費量と定格エネルギー消費量の差 [%] 試験機器の最大エネルギー消費量試験機器の最大エネルギー消費量 p x[kw] は 適用範囲の品目ごとに規定された条件において エネ

スプレーストック採花時期 採花物調査の結果を表 2 に示した スプレーストックは主軸だけでなく 主軸の下部から発生する側枝も採花できるため 主軸と側枝を分けて調査を行った 主軸と側枝では 側枝の方が先に採花が始まった 側枝について 1 区は春彼岸前に採花が終了した 3 区 4 区は春彼岸の期間中に採

Ⅰ 収穫量及び作柄概況 - 7 -

石川県水田フル活用ビジョン 1 地域の作物作付の現状 地域が抱える課題 水稲作付面積については 昭和 60 年の 37,700ha から 平成 25 年では 26,900ha と作付 面積で約 10,000ha 作付率で約 30% と大きく減少したものの 本県の耕地面積に占める水稲作 付面積の割合は

Microsoft Word - 3.加藤 和直

( 2 ) 平成 24 年 4 月 1 日茨城県穀物改良第 243 号 2. 早生で大粒 良質な水稲新品種 ひたち 34 号 の特性と栽培のポイント 本県の水稲品種は コシヒカリ を主とする中生品種の作付けが大半を占めており 収穫作業等の集中が問題となっています このため 作業分散を図る上で コシヒ

日本作物学会紀事 第77巻 第1号

目 的 大豆は他作物と比較して カドミウムを吸収しやすい作物であることから 米のカドミウム濃度が相対的に高いと判断される地域では 大豆のカドミウム濃度も高くなることが予想されます 現在 大豆中のカドミウムに関する食品衛生法の規格基準は設定されていませんが 食品を経由したカドミウムの摂取量を可能な限り

JA越後さんとうにおける   高品質米生産の取り組み

< F2D F D322D AC98D7390AB94EC>

研究成果報告書

元高虫防第 139 号令和元年 7 月 4 日 各関係機関長様 高知県病害虫防除所長 病害虫発生予察情報について 令和元年度病害虫発生予察 6 月月報及び令和元年度予報 4 号 (7 月 ) を送付します 令和元年度病害虫発生予察 6 月月報 Ⅰ. 気象概況半旬 (6 月 ) 平均気温最高気温最低気

付図・表

輸出のターゲット市場の拡大 深掘りをするとともに 輸出用米生産に関する制度の運用を改正 現状 課題 日本食レストランを中心とした需要に留まっている中 輸出先国 地域の多様なニーズに合わせた商品の多様化 生産コストの削減による価格競争力の強化を通じ 輸出ターゲット市場の拡大 深掘りを図ることが課題 潜

(\225\\\216\206color.xdw)

<4D F736F F D C8B9E945F91E58EAE90B682B282DD94EC97BF89BB2E646F63>

AI IoTを活用したスマート農業の加速化 人手不足への対応や生産性の向上を進めるためには ICTを活用したスマート農業の推進が重要 今後人工知能やIoT等の先進技術により 生産現場のみならずサプライチェーン全体にイノ ベーションを起こし 生産性向上や新たな価値創出を推進 1

作物研究所研究報告.indb

10 ( 参考 ) 望まれる麦の品質 (1) 麦の種類と利用方法 麦種種類加工タンパク質含有量用途 強力小麦強力粉 12% 以上食パン 菓子パン 小麦 デュラム小麦 ( マカロニ小麦 ) セモリナ マカロニスパゲッティ 準強力小麦準強力粉 11~12% 中華めん 普通小麦 薄力小麦 中力粉 10~1

1 課題 目標 山陽小野田市のうち 山陽地区においては 5 つの集落営農法人が設立されている 小麦については新たに栽培開始する法人と作付面積を拡大させる法人があり これらの経営体質強化や収量向上等のため 既存資源の活用のシステム化を図る 山陽地区 水稲 大豆 小麦 野菜 農業生産法人 A 新規 農業

<8E7B97708EC090D150312D F4390B32E786C73>

はだか麦の早播栽培における播種量と基肥窒素量が生育と収量 品質に与える影響 質を調査した. また木村ら (2004), 下田ら (2006) は, 早播きでは千粒重が小さくなり粒も硬くなるなどの品質低下の実態を確認しているが, その原因究明には至っていない. そこで今回は品質低下要因についても併せて

めに必要な情報を提供するとともに 2 関係者一体となった契約栽培等の需要と直結した生産を推進していく また 生産者の収益性向上につながる地域の気候風土を活かした特色ある野菜等園芸作物への作付を促進し 産地づくりを進めていくため 生産者への作付誘導のインセンティブとなる産地交付金を戦略的に活用していく

1. 地 域 概 況 1 岐 地 阜 域 県 海 概 津 況 市 は 県 最 南 端 に 位 置 し 木 曽 長 良 岐 阜 県 海 津 市 は 県 最 南 端 に 位 置 し 木 曽 揖 斐 三 大 河 川 が 合 流 する 地 域 で 東 部 に 愛 知 県 西 長 良 揖 斐 三 大 河 川

ウ WCS 用稲本市は県内最大の酪農地帯であるため 需要に応じた生産確保に努め 多収品種の推進 病害虫防除や雑草管理など適切な圃場管理を行う また についても実施する エ加工用米実需者の要望に対応できるよう 産地交付金を活用して複数年契約を進めることにより安 定的な供給を目指し 担い手の作付維持 (

北海道の米づくり 2011年版

1 作物名     2 作付圃場 3 実施年度   4 担当

米に関するマンスリーレポート 新潟県版 2018 年 12 月 今月の特集 1 米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針 の見直しについて 農林水産省は 11 月 28 日に 米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針 ( 以下 国の基本指針 ) の変更を行い 平成 31/32 年の主食用米等需要量を

表 1. 夏作用ロールベールサイレージ対応草種の選定ポイント草種選定要素草種 1) 発芽時の平均気温モアコンディショナー耐湿性 1) 再生利用 1)2) 短期間栽培 スーダングラス 15 以上 要 スーダン型ソルガム 15 以上 要 アワ類 15 以上 不要 ヒエ類 15 以上 要 ローズグラス 1

1. 取組の背景射水市大門地域は 10a 区画の未整備な湿田が多く 営農上の大きな障害となっていた 昭和 62 年に下条地区で県内初の大区画圃場整備が実施されたのを皮切りに 順次圃場整備が進んでいる 大区画圃場整備事業が現在の 経営体育成基盤整備事業 になってからは 農地集積に加えて法人化等の担い手

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft Word - 00表紙

胚乳細胞中のタンパク質顆粒 I(PB-I) に改変型 Cry j 1タンパク質 及びCry j 2タンパク質を蓄積させたものです 2 スギ花粉ペプチド含有米( キタアケ ) スギ花粉が有する主要アレルゲンタンパク質 2 種 (Cry j 1 Cry j 2) の7 種類の主要 T 細胞エピトープを連

(Microsoft Word - \220\\\220\277\227l\216\256\213L\215\332\227\341.doc)

Transcription:

High - yielding and palatable rice cultivar YAMADAWARA 業務 加工利用向け水稲品種 やまだわら 多収栽培マニュアル

目次 1. やまだわら の特性 _ 1 収量特性 1 2 品質 炊飯米特性 2 3 用途別適性 3 2. 生育の特徴 4 3. 収量 品質の目標 5 4. 各地域での主な作付スケジュール 6 5. 栽植密度 7 6. 肥培管理 1 施肥量 施肥時期 8 2 生育診断 9 7. 収穫適期 10 8. 注意事項 11 やまだわら 栽培こよみ ( 温暖地西部 ) 12 お問い合わせ 13 やまだわら とは? 精玄米重 720kg /10a 以上も可能な多収性と日本晴並の食味を両立しており 中食 外食産業や冷凍食品産業での利用が期待される水稲品種です 登録年 :2 011 年 育成 : 農研機構作物研究所 ( 現次世代作物開発研究センター ) 組合わせ : 泉 348( 極多収 )/ 関東 192 号 ( 多収 良食味 ) 栽培適地 : 関東 北陸以西 ( 温暖地 ~ 暖地 )

1 やまだわら の特性 1 収量特性 一般主食用品種と比べて 穂数は少ないですが 一穂籾数が多く 720kg/10a 以上の多収も期待できます 整粒割合は 一般主食用品種と比べ やや劣ります 粒厚は やや薄めです 図 表とも 値は 2014~2016 年の平均値 試験地 : 広島県福山 ( 西日本農研 ) 移植時期 :6 月上旬 出穂期は やまだわら :8 月 16 日 日本晴 :8 月 17 日 ヒノヒカリ :8 月 22 日 肥料 : 窒素 12~15kg/10a リン酸 9kg/10a カリ 12kg/10a 精玄米 :1.8mm の篩選による 精玄米重と千粒重は水分 15% 換算値 登熟歩合 : 全籾数に対する精玄米の割合 整粒割合および粒厚は サタケ穀粒判別器 RGQI10B で測定 1

やまだわら の特性 2 品質 炊飯米特性 炊飯米は 良質一般主食用米の品質と同様で 光沢があって外観が良く 粘りが強い 業務用米として重要な 炊増え性 が大きい 白米の特徴 炊飯米の特徴 緑色の範囲は コシヒカリ 等の良質一般主食用米の品質範囲 ( 平均値を 1.0 とした場合 ) ガス式炊飯器による炊飯米 ( 白飯 ) の評価 硬さ 粘り 弾力性はテンシプレッサーで 外観は炊飯食味計で測定 老化性は 24 時間の保蔵試験での物性 外観の変化率から算出 炊増え性 : 炊飯後の米飯の重量 炊飯前の精米の重量 生産地 : 広島県福山 (2016 年 ) 2

やまだわら の特性 3 用途別適性 やまだわら の炊飯米は 粒離れが良く 酢飯やおにぎりに特に適しています お弁当のご飯 ( 冷白飯 ) などにも適性があります テンシプレッサーによる物性測定結果 ( 株式会社アイホ 炊飯総合研究所で実施 ) グラフ中の黄色の範囲は アイホ 炊飯総合研究所による最良値を示す 酢飯は 加水率 90% 業務用 IH 炊飯器で炊飯した米飯での結果 おにぎりと白飯は 加水率 100% 業務用丸釜炊飯器で炊飯した米飯での結果 生産地 : 広島県福山 (2016 年 ) 3

2 生育の特徴 葉色は一般主食用品種 ( ヒノヒカリ 等 ) と比べて淡い 茎数の増加は ヒノヒカリ と同じくらいですが 無効分げつが多く 穂数は少なめになります 試験地 : 広島県福山 ( 西日本農研 ) 2016 年試験実施 移植時期 :6 月上旬 肥料 : 窒素 12kg/10a リン酸 9kg/10a カリ 12kg/10a 葉色は葉緑素計 ( コニカミノルタ SPAD502) を使用して 出穂前の調査では主茎の展開第 2 葉の葉身中央部 出穂期の調査では止葉の葉身中央部を測定 葉色板と葉緑素計の値の換算 幼穂形成期の やまだわら では 葉色板 ( 単葉 ) の値と葉緑素計の値 (SPAD 値 ) の間に直線関係が認められ 数値の対応は下記のようになります 葉色板 :3.0 SPAD 値 :33 葉色板 :4.0 SPAD 値 :37 4

3 収量 品質の目標 精玄米重 720kg/10a 玄米整粒割合 60% 以上を目指しましょう 収量 品質関連形質の目安は下記のようになります タンパク質は水分 15% 換算値 5

4 各地域での主な作付スケジュール 栽培適地は 北陸 関東以西 ( 温暖地 ~ 暖地 ) 出穂期は 日本晴 と同じ 中生の早 成熟期は 日本晴 よりも約 10 日遅い 中生の晩 作期と収量 外観品質の関係 ( 関東 ) 移植が遅すぎると 収量 外観品質ともに低くなる傾向 ( 西日本 ) 移植が遅いほど 収量は低く 外観品質は高くなる傾向 関東 ( つくば ) における移植時期別の精玄米重および整粒割合 (2015 年 ) 西日本 ( 福山 ) における移植時期別の精玄米重および整粒割合 (2015 2016 年の平均値 ) 6

5 栽植密度 過度の疎植は 減収や玄米の小粒化につながる可能性があります 収量 品質の安定化のため 栽植密度は50 株 / 坪 (15 株 /m 2 ) 以上にして下さい 収量 品質の密度反応 疎植による精玄米重 千粒重への影響は 2015 年は小さかったものの 2016 年は大きく 73 株 / 坪に比べて 37 株 / 坪では 精玄米重が 50kg/10a 千粒重が1g 減少しました 整粒割合に関しては 両年とも疎植によってわずかに上昇する傾向がみられました 精玄米 :1.8mm の篩選による 精玄米重 千粒重は水分 15% 換算値 整粒割合は サタケ穀粒判別器 RGQI10B で測定 試験地 : 広島県福山 ( 西日本農研 ) 移植時期 :6 月上旬 肥料 : 窒素 12kg/10a リン酸 9kg/10a カリ 12kg/10a 7

6 肥培管理 1 施肥量 施肥時期 多収実現のため 窒素施肥量は多めの12kg/10a 程度を施用して下さい 穂肥の時期は早めの 出穂 25~20 日前 (2 回 出穂 25 15 日前 に分けても可 ) 緩効性肥料の配合例 窒素施肥量は 合計で 12kg/10a ( 地力に応じて増減 ) 地力に応じて 増減して下さい 速効性 :100 日型 :140 日型 = 1.5:1.5:1 やまだわら での籾数と収量の関係 窒素施肥量を増やすと籾数は直線的に増加しますが 籾数が多くなりすぎても 収量は頭打ちになる上 外観品質が悪化します 籾数を適正水準 (4.0~4.4 万粒 /m 2 ) に保つことが重要! 8

肥培管理 2 生育診断 幼穂形成期 ( 出穂約 25 日前 ) の草丈 茎数 葉色 (SPAD 値 ) を用いた栄養指標値で生育を診断し 穂肥量を計算します 栄養指標値 = 草丈 (cm) 茎数 ( 本 /m 2 ) SPAD 値 10 5 栄養指標値に対応する穂肥窒素量 ( 青色の範囲 ) を目安に 地力なども踏まえて穂肥量を決定して下さい ( 速効性肥料分施体系の場合 ) 緩効性肥料施用体系では 追肥を1kg/10a ほど少なめにして下さい SPAD 値 : 葉緑素計 ( コニカミノルタ製 SPAD502) を用い 主茎の展開第 2 葉の葉身中央部を測定 9

7 収穫適期 登熟期間は 一般主食用品種よりも 10 日ほど長い 刈り遅れると整粒割合が低下するため 出穂後積算気温 1200~1300 での収穫が望ましい 出穂後日数と整粒割合 整粒割合は収穫が遅くなるほど低下し 整粒割合 60% が確保できる収穫時期は 出穂後積算気温 1) で1200 ~1300 になります 積算気温 1200 に達する出穂後日数は 平年の広島県福山では 8/5 出穂で46 日 8/15 出穂で50 日 8/25 日出穂で 55 日 黄化籾率 2) では75 ~80% が目安になりますが やまだわら は下位 2 次枝梗籾の緑色が残りやすいため 穂の黄化程度では判断がやや難しく 積算気温による判断のほうが簡便です 1 ) 積算気温 : 出穂期から当日までの毎日の平均気温を足し合わせたもの 2 ) 黄化籾率 : 黄化籾数 全籾数 ( 不稔籾含む ) 積算気温 1220 での穂の黄化程度 ( 黄化籾率 78%) 10

8 注意事項 1 病害虫 縞葉枯病に罹病性です 登熟期間が長く 病害虫 ( トビイロウンカ 紋枯病など ) の被害を受けやすいので 防除を励行して下さい 縞葉枯病 トビイロウンカによる坪枯れ 2 その他の注意事項 穂発芽性が やや易 ですので 刈り遅れに注意して下さい ベンゾビシクロン メソトリオン テフリルトリオンを含む除草剤により薬害が生じます ベンゾビシクロン含有除草剤を施用した やまだわら ( 左 ) と コシヒカリ ( 右 ) 穂発芽 11

12

お問い合わせ 農研機構ホームページ http://www.naro.affrc.go.jp/ 研究全般について https://www.naro.affrc.go.jp/inquiry/index.html 種子の入手先 http://www.naro.affrc.go.jp/patent/breed/seeds_list/index.html キーワード検索で やまだわら と入力し 検索 本マニュアルについて国立研究開発法人農業 食品産業技術総合研究機構西日本農業研究センター企画部産学連携室 721-8514 広島県福山市西深津町 6-12-1 Tel. 084-923-5385 本マニュアルは 地域の農業普及者 生産者 米の流通 加工業者の皆様を主な対象として 業務 加工利用向け水稲品種 やまだわら の生産と利用に役立つことを目指し 農林水産省委託プロジェクト 広域 大規模生産に対応する業務 加工用作物品種の開発 の 実需者等のニーズに応じた超多収良食味及び超多収加工用水稲品種等の開発 ( 平成 26~ 30 年度 ) で得られた成果を中心に 既存の研究成果 知見等も合わせてとりまとめたものです なお 地域の土壌や気象条件などにより 収量や品質は変動しますので 実際の栽培にあたっては 本マニュアルの内容を地域に合った形に調整して下さい 掲載データは 各種講習会等でご自由にお使い下さい その際 出典として 業務 加工利用向け水稲品種 やまだわら 多収栽培マニュアル を明記していただくようお願いいたします 研究担当者 国立研究開発法人農業 食品産業技術総合研究機構西日本農業研究センター小林英和 長田健二次世代作物開発研究センター荒井裕見子 鈴木啓太郎 小林伸哉 荻原均九州沖縄農業研究センター田村克徳 竹内善信 13

業務 加工利用向け水稲品種 やまだわら 多収栽培マニュアル 2 018 年 1 月発行 国立研究開発法人農業 食品産業技術総合研究機構西日本農業研究センター 721-8514 広島県福山市西深津町 6 丁目 12-1