NM2008特集佐藤氏本文.indd

Similar documents
看護部 : 教育理念 目標 目的 理念 看護部理念に基づき組織の中での自分の位置づけを明らかにし 主体的によりよい看護実践ができる看護職員を育成する 目標 看護職員の個々の学習ニーズを尊重し 専門職業人として成長 発達を支援するための教育環境を提供する 目的 1 看護専門職として 質の高いケアを提供

Ⅰ. クリニカルラダー ( 看護師の実践能力段階的システム ) について クリニカルラダーは 看護の質の向上 を目的に 臨床ナース一人ひとりが臨床における看護実践能力を高められるよう支援していくシステムであり 看護実践能力は 基礎教育で学習して知識 技術をもとに 実際に臨床で経験する中で知識を積み重

平成21年度看護部教育研修(案)

<4D F736F F D20906C8AD489C88A778CA48B8689C881408BB38A77979D944F82C6906C8DDE88E790AC96DA95572E646F6378>

平成18年度標準調査票

一般看護師領域 キャリアレベル ミドル (Ⅲ) 退院支援看護師育成プログラム ~ 希望を地域へつなぐ ~

~この方法で政策形成能力のレベルアップが図れます~

1. はじめに 本格的な地方分権の時代を迎え 市民に最も身近な地方自治体は 市民ニーズに応じた政策を自ら意志決定し それを自己責任の下に実行することがこれまで以上に求められており 地方自治体の果たすべき役割や地方自治体に寄せられる期待は ますます大きくなっています このような市民からの期待に応えるた


チェック式自己評価組織マネジメント分析シート カテゴリー 1 リーダーシップと意思決定 サブカテゴリー 1 事業所が目指していることの実現に向けて一丸となっている 事業所が目指していること ( 理念 ビジョン 基本方針など ) を明示している 事業所が目指していること ( 理念 基本方針

働き方の現状と今後の課題

<4D F736F F D A8D CA48F43834B C E FCD817A E

研修シリーズ

スライド 1

[ 指針 ] 1. 組織体および組織体集団におけるガバナンス プロセスの改善に向けた評価組織体の機関設計については 株式会社にあっては株主総会の専決事項であり 業務運営組織の決定は 取締役会等の専決事項である また 組織体集団をどのように形成するかも親会社の取締役会等の専決事項である したがって こ

事業者名称 ( 事業者番号 ): 地域密着型特別養護老人ホームきいと ( ) 提供サービス名 : 地域密着型介護老人福祉施設 TEL 評価年月日 :H30 年 3 月 7 日 評価結果整理表 共通項目 Ⅰ 福祉サービスの基本方針と組織 1 理念 基本方針

スライド 1

<4D F736F F F696E74202D C E9197BF A90EA96E58AC58CEC8E E88AC58CEC8E F0977B90AC82B782E98AF991B682CC89DB92F682C682CC8AD68C5782C982C282A282C42E >

1. ファーストレベル 教育目的 1. 看護専門職として必要な管理に関する基本的知識 技術 態度を習得する 2. 看護を提供するための組織化並びにその運営の責任の一端を担うために必要な知識 技術 態度を習得する 3. 組織的看護サービス提供上の諸問題を客観的に分析する能力を高める カリキュラム 総時

Ⅲ コース等で区分した雇用管理を行うに当たって留意すべき事項 ( 指針 3) コース別雇用管理 とは?? 雇用する労働者について 労働者の職種 資格等に基づき複数のコースを設定し コースごとに異なる配置 昇進 教育訓練等の雇用管理を行うシステムをいいます ( 例 ) 総合職や一般職等のコースを設定し

Ⅰ. 第 3 期がん対策推進基本計画 について 第 11 回都道府県がん診療連携拠点病院連絡協議会では 第 3 期がん対策推進基本計画 に記載されたがん診療連携拠点病院に新たに求められる機能について 都道府県レベルでの取り組み状況を共有し 今後のがん診療連携拠点病院の活動について議論していくことを予

平成 27 年度長崎県雇用管理改善促進事業 介護事業所のキャリアパス制度導入ガイド ~ 働きがいのある職場づくりを目指して ~ 介護のプロを目指して 頑張るぞ! 5 等級 4 等級 3 等級 2 等級 1 等級 長崎県福祉保健部長寿社会課 公益財団法人介護労働安定センター長崎支部

Microsoft Word - 医療学科AP(0613修正マスタ).docx

管理職等育成プログラム(完成版8月28日)

2 2

2013 年度 統合実習 [ 表紙 2] 提出記録用紙 5 実習計画表 6 問題リスト 7 看護過程展開用紙 8 ( アセスメント用紙 1) 9 ( アセスメント用紙 2) 学生証番号 : KF 学生氏名 : 実習期間 : 月 日 ~ 月 日 実習施設名 : 担当教員名 : 指導者名 : 看護学科

4 研修について考慮する事項 1. 研修の対象者 a. 職種横断的な研修か 限定した職種への研修か b. 部署 部門を横断する研修か 部署及び部門別か c. 職種別の研修か 2. 研修内容とプログラム a. 研修の企画においては 対象者や研修内容に応じて開催時刻を考慮する b. 全員への周知が必要な

MR通信H22年1月号

実習指導に携わる病棟看護師の思い ‐ クリニカルラダーのレベル別にみた語りの分析 ‐

1994 年以降に散見され 12 ) ている Cook は 看護師のクリニカル リーダーを クリニカルケアの提供に直接的に参加し 他者に影響を及ぼすことでケアを改善し続ける看護師 13 ) と定義しており 本研究における看護師リーダーと同等の役割であると考えられる American Associat

平成18年度標準調査票


資料 4-2 リカレント教育 厚生労働省人材開発統括官若年者 キャリア形成支援担当参事官室 1

- 調査結果の概要 - 1. 改正高年齢者雇用安定法への対応について a. 定年を迎えた人材の雇用確保措置として 再雇用制度 導入企業は9 割超 定年を迎えた人材の雇用確保措置としては 再雇用制度 と回答した企業が90.3% となっています それに対し 勤務延長制度 と回答した企業は2.0% となっ

当院人工透析室における看護必要度調査 佐藤幸子 木村房子 大館市立総合病院人工透析室 The Evaluation of the Grade of Nursing Requirement in Hemodialysis Patients in Odate Municipal Hospital < 諸

研修プログラム関係 Q_ 副分野の研修は 30 時間程度となっています これは 30 時間を超える必要があるという意味でし ょうか A_ 時間は目安です 各プログラムで十分な研修効果が上がることを前提に 研修を計画してください Q_ 研修プログラムの実施状況について 協会への報告が求められるのでしょ

平成17年度認定看護管理者制度セカンドレベル教育課程開催要項

職場環境 回答者数 654 人員構成タイプ % タイプ % タイプ % タイプ % タイプ % % 質問 1_ 採用 回答 /654 中途採用 % 新卒採用 % タ

自己点検・評価表

今回の改正によってこの規定が廃止され 労使協定の基準を設けることで対象者を選別することができなくなり 希望者全員を再雇用しなければならなくなりました ただし 今回の改正には 一定の期間の経過措置が設けられております つまり 平成 25 年 4 月 1 日以降であっても直ちに希望者全員を 歳まで再雇用

目標管理の実際

平成23年9月29日WG後修正

.....J (Page 1)

TSRマネジメントレポート2014表紙

平成18年度標準調査票

Microsoft Word - 4㕕H30 �践蕖㕕管璃蕖㕕㇫ㅪ�ㅥㅩㅀ.docx

1

表. 認定看護師認定更新者活動状況調査分野別調査対象及び回収状況 配布数 回収数更新 回目更新 回目更新回数不明計 回収率 (%) 救急看護 8 0. 皮膚 排泄ケア 集中ケア 8. 緩和ケア.0 がん化学療法看護. がん性疼痛看護 感染管理.9 糖尿病看護 0.0 不妊症看

目次 1. 会社概要 2. の人材育成施策 2.1 IT スキル標準 (ITSS) の活用 2.2 社内コミュニケーションの活性化 2.3 要員スキルマップの維持運用 2.4 その他の人材育成施策 3. 今後の取り組み 2

過去 3 年の間に請求した介護給付費について にチェックをしてください 下線は 平成 30 年度改正 (4) 当該計画で定めた指定介護予防通所リハビリテーションの実施期間中に指定介護予防通所リハビリテーションの提供を終了した日前 1 月以内にリハビリテーション会議を開催し リハビリテーションの目標の

<4D F736F F F696E74202D2088A295948D DC58F4994C E956C8FBC814091E F193FB82AA82F18E7396AF8CF68A4A8D758DC0>

第 2 章職階および等級 ( 職 階 ) 第 7 条 職階は 職務遂行に要求される能力の範囲と程度に基づき 一般職 監督職 管理職およ ( 等級 ) 第 8 条等級は 各々の職階における職務遂行能力の成熟度の差に応じ 次の9 等級に区分するものとする 2. 前項の職階および等級の職能資格基準は 別表

社会的責任に関する円卓会議の役割と協働プロジェクト 1. 役割 本円卓会議の役割は 安全 安心で持続可能な経済社会を実現するために 多様な担い手が様々な課題を 協働の力 で解決するための協働戦略を策定し その実現に向けて行動することにあります この役割を果たすために 現在 以下の担い手の代表等が参加

01 【北海道】

人材育成 に関するご意見 1) 独立行政法人情報通信研究機構富永構成員 1 ページ 2) KDDI 株式会社嶋谷構成員 8 ページ 資料 7-2-1

従業員に占める女性の割合 7 割弱の企業が 40% 未満 と回答 一方 60% 以上 と回答した企業も 1 割以上 ある 66.8% 19.1% 14.1% 40% 未満 40~60% 未満 60% 以上 女性管理職比率 7 割の企業が 5% 未満 と回答 一方 30% 以上 と回答した企業も 1

スライド 1

2018年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果

スライド 0

Slide 1

ける臨床実習指導者と病棟看護師の役割分担を明確にして協力体制を整えることで 病棟 全体で学生指導に携わるという実習環境を整えることができると考え 実践計画を立案す ることとした II. 計画内容 1. 目的臨床実習指導における臨床実習指導者と病棟看護師の役割分担を明確にし 臨床実習指導体制を整える

テクニカルスキル カテゴリーとスキル・行動特性および到達目標と研修項目

<8D B C2E786C73>

基本方針1 小・中学校で、子どもたちの学力を最大限に伸ばします

CROCO について

Ⅲ 目指すべき姿 特別支援教育推進の基本方針を受けて 小中学校 高等学校 特別支援学校などそれぞれの場面で 具体的な取組において目指すべき姿のイメージを示します 1 小中学校普通学級 1 小中学校普通学級の目指すべき姿 支援体制 多様な学びの場 特別支援教室の有効活用 1チームによる支援校内委員会を

PowerPoint プレゼンテーション

均衡待遇・正社員化推進奨励金 支給申請の手引き

13 Ⅱ-1-(2)-2 経営の改善や業務の実行性を高める取組に指導力を発揮している Ⅱ-2 福祉人材の確保 育成 Ⅱ-2-(1) 福祉人材の確保 育成計画 人事管理の体制が整備されている 14 Ⅱ-2-(1)-1 必要な福祉人材の確保 定着等に関する具体的な計画が確立し 取組が実施されている 15

Microsoft PowerPoint - 第3章手続き編(2013年3月15日更新2) .pptx

リハビリテーションマネジメント加算 計画の進捗状況を定期的に評価し 必要に応じ見直しを実施 ( 初回評価は約 2 週間以内 その後は約 3 月毎に実施 ) 介護支援専門員を通じ その他サービス事業者に 利用者の日常生活の留意点や介護の工夫等の情報を伝達 利用者の興味 関心 身体の状況 家屋の状況 家

<838A815B835F815B834A838A834C C42E786C73>

第 1 部 施策編 4

ソーシャルセクター組織実態調査 2017 特定非営利活動法人新公益連盟 2017 年 12 月 6 日 Copyright 2017 Japan Association of New Public All Rights Reserved,

の手支援策の紹介事例の紹介1 ページに記載した法改正の趣旨や内容を十分に理解した上で 以下の手順で制度導入を進めましょう STEP 1 STEP 1 STEP 2 STEP 3 STEP 4 有期社員の就労実態を調べる社内の仕事を整理し 社員区分ごとに任せる仕事を考える適用する労働条件を検討し 就業

jobcard.indd

ただし 対象となることを希望されないご連絡が 2016 年 5 月 31 日以降にな った場合には 研究に使用される可能性があることをご了承ください 研究期間 研究を行う期間は医学部長承認日より 2019 年 3 月 31 日までです 研究に用いる試料 情報の項目群馬大学医学部附属病院産科婦人科で行

ライフプランニング学科ライフデザインコース 学科 専攻名ミッション ( 教育目標 ) 到達目標到達目標に対応する授業科目 年 年 3 年授業科目春春春春組織のミッション到達目標 ( 綱 ) 到達目標 ( 細 ) 科目区分 科目区分 科目区分 3 家庭を経営する専門的知識と能力を身につけている に関す

県医労.indd

Bulletin of Toyohashi Sozo University 2017, No. 21, 臨床実習指導で実習指導者が倫理的ジレンマと捉えた課題と対処 植村由美子 * 1 大島弓子 * 2 抄録 キーワード : clinical instruct

第3節 重点的な取り組み

2019 年度 コース履修の手引 教職コース 司書教諭コース 学芸員コース

4. icd 取組みの効果及び今後予定する効果内容 4.1. 効果のあった項目効果内容 お客様への価値提供に向けた人財在庫見える化 事業 ( 業種 ) 別戦略の高度化 経営の PDCA と連動した人財育成 経営戦略に必要な役割を定義し 人財在庫を見える化することで 経営の意思である お客様への価値提

どのような便益があり得るか? より重要な ( ハイリスクの ) プロセス及びそれらのアウトプットに焦点が当たる 相互に依存するプロセスについての理解 定義及び統合が改善される プロセス及びマネジメントシステム全体の計画策定 実施 確認及び改善の体系的なマネジメント 資源の有効利用及び説明責任の強化

看護学生実習指導者講習会 9:30~12:40 13:30~16:40 日付内容 看護教育課程 ( 概要 ) 3 日 ( 月 ) 看護論 看護論 4 日 ( 火 ) 看護教育課程 ( 基礎 ) 5 日 ( 水 ) 教育原理 看護教育課程 ( 小児 ) 10 日 ( 月 ) 看護教育課程 ( 成人 )

セカンドレベル 9:30~12:40 13:30~16:40 日付 内容 4 日 ( 金 ) 特別講演三谷宏治 ( 重要思考 - 決める力と伝える力 -) ( 金沢工業大学虎ノ門大学院 / 主任教授 ) 5 日 ( 土 ) 18 日 ( 金 ) 19 日 ( 土 ) 看護サービスにおける経済性工藤潤

( 参考様式 1) ( 新 ) 事業計画書 1 事業名 : 2 補助事業者名 : 3 事業実施主体名 : Ⅰ 事業計画 1 事業計画期間 : 年 月 ~ 年 月 記載要領 事業計画期間とは 補助事業の開始から事業計画で掲げる目標を達成するまでに要する期間とし その期限は事業実施年 度の翌年度から 3

7 8 O KAYAKU spirit I O K T C % E C O M T O K T T M T I O O T C C C O I T O O M O O

JICA 事業評価ガイドライン ( 第 2 版 ) 独立行政法人国際協力機構 評価部 2014 年 5 月 1

<4D F736F F F696E74202D A B837D836C CA48F435F >

H30年度 シンポジウム宮城・基調講演(藤波先生)

看護師のクリニカルラダー ニ ズをとらえる力 ケアする力 協働する力 意思決定を支える力 レベル Ⅰ 定義 : 基本的な看護手順に従い必要に応じ助言を得て看護を実践する 到達目標 ; 助言を得てケアの受け手や状況 ( 場 ) のニーズをとらえる 行動目標 情報収集 1 助言を受けながら情報収集の基本

PowerPoint プレゼンテーション

居宅介護支援事業者向け説明会

1

8. 教科目のねらいと単元 教科目 ( 時間 ) ねらい 単元 保健医療福祉政策論 (30) 保健医療福祉組織論 (30) 経営管理論 (60) 看護経営者論 (45) 1. 保健医療福祉の政策動向を理解し それらが看護管理上に与える影響を考え行動できる 2. 看護現場の状況を分析 データ化し 職能

資料 2 年目看護師教育に関する文献検討 A Literature Review of Continuing Education Programs for Second Graduated Nurses 西 千秋 Chiaki Nishi キーワード : 卒後 2 年目, 看護師,

Microsoft PowerPoint 六路 (2)配布資料.ppt

介護保険制度改正の全体図 2 総合事業のあり方の検討における基本的な考え方本市における総合事業のあり方を検討するに当たりましては 現在 予防給付として介護保険サービスを受けている対象者の状況や 本市におけるボランティア NPO 等の社会資源の状況などを踏まえるとともに 以下の事項に留意しながら検討を

< CA48F438E968BC688EA E786C73>

Transcription:

キャリア開発ラダーと連動したマネジメントラダーの作成と育成 支援体制の構築 ~ コンフリクトをビジョンに変換し, 生き生きと活躍する看護管理者へ 当院における看護管理者育成の概要 医療の高度化, 複雑化, 多様化に加え, 医療財源の逼迫という環境の変化を受け, 看護管理者には看護サービスの質の向上や病院経営, 運営への参画, 労働安全衛生活動の推進といった高い管理能力が求められている 当院では, 団塊世代の退職以降も看護管理者の定年退職などにより, 看護師長, 副看護師長の年齢構成が若年化している そのため, 看護師長, 副看護師長の管理経験の格差から, 役割遂行能力, 問題解決能力に差が生じている また, 看護管理実践における患者 家族との関係や上司 部下との関係, 他職種 他部門との交渉におけるコンフリクトに疲弊している現状がある 看護部における看護管理者育成は, 日本看護協会の 認定看護管理者教育課程 の受講が主体となっており, 院内での体系的な教育は実施していない そこで, 看護管理者の育成 支援体制を再考し, 看護管理者がビジョンを持ち看護管理実践に取り組めるよう, 新たな育成 支援体制の構築に取り組んだ ファーストレベル, セカンドレベル研修修了後のフォロー体制の構築 当院の看護職員は 894 人 (2018 年 8 月 広島大学病院看護部副看護部長 / 認定看護管理者佐藤陽子 広島大学医学部附属看護学校卒業後,1988 年広島大学病院入職 広島大学病院, 筑波大学附属病院での勤務を経て,2013 年より現職 広島大学大学院社会科学研究科博士課程後期満期退学, 修士 ( マネジメント ) 時点 ) で, そのうち看護管理者は看護部長 1 人, 副看護部長 5 人, 主任看護師長 2 人, 看護師長 31 人, 副看護師長 87 人である 認定看護管理者は8 人, ファーストレベル修了者 77 人, セカンドレベル修了者 43 人であり, 副看護師長の93% がファーストレベルを修了し, 看護師長の97% がセカンドレベルを修了している 研修修了直後は, 研修で学んだ知識を臨床に応用すべく, 意欲的に実践課題に取り組んでいるが, 時間の経過と共に日常業務に追われ, モチベーションを維持することが困難な状況があった そのため, 修了生が実践課題を継続して追求できるよう, 活動時間の確保や成果報告の機会の提供, 活動成果の共有など, 組織的に活動を支援できる体制を構築することが課題であった そこで, 活動支援の一環として, 副看護師長を対象に院内研修として問題解決演習を企画し, 所属する看護単位における自分の実践課題について, 演習形式で意見交換 情報共有し, 年度末に成果を発表する場を設けることとした 看護師長研修としては, コンフリクトマネジメントやメンタルヘルス, 診療報酬や財務数字の基礎知識などの看護単位の運営に必要な知識に加え,2016 年度より看護管理者のコンピテンシー モデルに関する研修 ( 年 4 回 ) を開催 ( 翌年度からは副看護師長へも拡大 ) 11

し,2018 年度も継続している 副看護師長対象の問題解決演習は, 副看護師長間での意見交換 情報共有の機会となったこと, 看護師長の支援を得ながら実践課題に取り組めたことから, アンケート結果では参加者の95% から満足度 活用度において肯定的な評価を得ることができた 特に 自分の課題への取り組みや業務改善, スタッフ指導に生かせる など, 他の副看護師長の取り組みからの学びも大きかったことがうかがえた また, コンピテンシー研修は, 個々の看護師長 副看護師長の実践事例から, その中で発揮されているコンピテンシーについてグループワークで評価を行い, コンピテンシーの定義や水準の理解を深めている 他の看護師長 副看護師長の取り組みや自分の取り組みについてさまざまな角度から意見交換 情報共有ができる機会となって おり, 看護管理実践や人材育成, 特に看護師長においては, 副看護師長の育成や活動支援に積極的に取り組むきっかけとなっていた 当院は, 目標管理を導入していることから, 副看護師長や看護師長の個人面談の際に研修での取り組みについても情報共有ができ, 目標達成に向けた支援につながることを期待している キャリア開発ラダーと連動したマネジメントラダーの作成と運用 当院のキャリアパス ( 図 1) では, 看護管理者コースを選択する者は, キャリア開発ラダーレベルⅣから 認定看護管理者教育課程 の受講申請ができることになっている そのため, レベルⅣ Ⅴ 認定者から申請できるマネジメントラダーの作成に取り組んだ 2014 年度より, ラダーの段階 12

と領域 ( 枠組み ), 到達目標および領域ごとの項目の検討などを開始した 検討に当たり, 広島大学職員能力要件に基づく看護師能力要件, 他院で運用されているマネジメントラダーやコンピテンシー評価などを参考に評価項目を整理した マネジメントラダーの領域は, 当院の看護管理者に必要とされる中核的な看護管理業務内容と, その業務を遂行する上で必要な能力 ( コンピテンシー ) を明文化し, 最終的に 組織運営管理 看護の質管理 人間関係 キャリア開発 の4 領域に決定した ラダーの段階については, マネジメントラダーレベルⅠ Ⅱを副看護師長, レベルⅢ Ⅳを看護師長, レベルⅤを副看護部長, レベルⅥを看護部長とし, それぞれの到達目標を設定した ( 表 1) 2015 年度は, その内容の精緻化と運用方法について検討し,2016 年度より運用を開始した 申請から認定までの手続きは表 2のとおりである 2016 年度は対象者の93%(116 人 ) が申請し, 現在までの認定状況は図 2のとおりである キャリア開発ラダー Ⅴ 認定者が少ないのは,2016 年 5 月の看護師のクリニカルラダー ( 日本看護協会版 ) 1) の公表を受け, 従来運用していたクリニカルラダー (Ⅳ 段階 ) を2017 年度よりキャリア開発ラダー (Ⅴ 段階 ) に改定して運用を開始したためである 新たに設けたレベルⅤは新規申請としたことと, マネジメントラダー申請者はキャリア開発ラダー申請の対象から除外したことから, このような結果となっている マネジメントラダー申請用評価表 ( 資料 1) には, 領域ごとに関連するコンピテンシーを記載しており, 評価の際は4 領域ごとに設定している行動目標を4 段階評価 ( 自己評価 他者評価 ) するようにしている しかし, 評価表だけでは客観的評価が難しいため, 面接評価の際にコンピテンシー評価シートを用いて, 自分の実践事例を紹介しながら, 自己評価の根拠を述べ, 第 1 評価, 第 2 評価と複数人が評価することで客観性を保つようにしている 看護師長のコンピテンシー評価 当院では, 職員のモチベーションの向上, 組織の活性化などを図ることを目的に, 年 2 回 (9 月 2 月 ), 人事考課を実施している その際, 評価に使用しているシートは広島大学職員能力要件評価シート ( 能力 成長シート ) であり,1 新人 レベルⅠ 評価シート,2レベルⅡ Ⅲ 評価シート,3レベルⅣ Ⅴ 評価シート,4 副看護師長評価シート,5 看護師長以上用評価シートの5 種類を使用していた しかし, マネジメントラダーの作成に当たり, 副看護師長以上の看護管理者にはコンピテンシーの評価を導入することを検討していたため, マネジメントラダーと並行して, 能力 成長シートの内容を再構築することとなった コンピテンシーの検討に当たり, 広島大学 2) 職員能力要件に加え, 虎の門病院看護部や東京大学医学部附属病院看護部と東京大 3) 学医科学研究所附属病院看護部が開発した看護管理者のコンピテンシー モデル, スペンサーらのコンピテンシー ディクショナリー 4) などを参考にした そして最終的に, スペンサーらの6クラスター 20コンピテンシーを用いることとした 各コンピテンシーについて, 定義と5 段階の評価水準を明文化し, 看護管理者としてどの水準にあるか, 評価者と被評価者が 13

14

15

共通理解を持つことができ, 客観的な評価ができるようにした また, 従来の能力 成長シートに準じて, 副看護師長を対象とした能力要件と看護師長 主任看護師長 副看護部長 看護部長を対象とした能力要件の2 種類のコンピテンシー モデルを作成した 評価基準は, 従来は4 段階評価であったが,5 段階評価に変更し, 各職位に求められる基準を分かりやすくすると共に, 人事考課シートとして活用するため, 各コンピテンシーの評価を点数で表示し, 上半期 下半期の評定に利用できるようにした ( 資料 2) 評価方法は, マネジメントラダーと同様に, 自己評価, 一次評価, 二次評価を行うが, 評価するコンピテンシーを発揮できた ( 発揮できなかった ) 事例を述べ, その実践がどの評価水準に当たるかを確認しながら行っている 評価を通して, 被評価者自身がどのような行動 思考ができれば評価水準が上がるのかイメージできるようになり, 次期に向けたビジョンにつながることを期待している 16

17

18

19

このコンピテンシー評価は, マネジメントラダーと同様に2016 年度から運用を開始している マネジメントラダー評価は, 申請年に評価を行うため毎年行うことはないが, コンピテンシー評価は毎年実施することから, マネジメントラダーの4 領域の実践に関する評価を併せて行えるため, 次の申請に向けた動機づけにつながると考える 今後の課題 看護管理者の育成 支援体制の構築に向け, 認定看護管理者教育課程修了後も継続して自分の実践課題に取り組めるよう, フォロー体制の一環として行った院内研修の実施, 能力指標であるマネジメントラダーの作成, コンピテンシー評価の導入について, その経緯および現時点での効果を述べた 看護管理者として成果を上げるためには, 何をすべきか を考えると同時に, どのようにするか を考え, 行動することが重要となる しかし, 実践において避けることができないのがコンフリクトである 研修を通して他の看護管理者の実践から得た学びは, 問題を認識し, 積極的に解決へ向けた行動を取るためのヒントと なり, 新たな取り組みへのきっかけになっていると考える 今後は, 看護管理者が直面した課題のみならず, 中長期的な視点で管理ビジョンを描き, 意欲的に実践できるよう支援することが課題である 具体的には, 対象者の学習ニーズ, 組織の教育ニーズを踏まえ, 知識の提供ばかりでなく, 行動力 発信力につながるよう看護管理者間で組織マネジメントの課題について議論する機会を設けるなど, さまざまな形態での看護管理者育成の場を提供することが必要と考える これらについて継続して取り組み, 評価しながら, コンフリクトをビジョンに変換し, 生き生きと活躍する看護管理者の育成に向けた体制を構築していきたい 20