NTN TECHNICAL REVIEW No.80(2012) [ 製品紹介 ] NTN リニアモジュールの紹介 NTN Linear Modules Series Ulrich GIMPEL* Michael WILLE* 小和田智之 ** 利見昌紀 ** Tomoyuki OWADA Masaki KAGAMI NTN リニアモジュールは, 多様化する自動化ニーズに対し, 豊富なバリエーションの中から最適な商品を選択 提供することにより, 欧州を中心にユーザの信頼を得てきた.NTN リニアモジュールの特長と応用例について紹介する. NTN linear modules are establishing credibility from customers as supplying best suited products. In this document, the feature and applications of NTN linear module series are introduced. 1. まえがき自動車, 機械部品, 半導体, フラットパネル, 食品, 医療などさまざまな分野で, 生産効率向上およびコスト低減のため, 設備の自動化と高速化が日々進められている. 本稿では搬送機構, 位置決めユニット, 昇降装置などに適用可能なNTNリニアモジュールの特長と応用例を紹介する. 2. NTNリニアモジュールの製品群表 1にNTNリニアモジュールの概要を, 表 2に寸法表を示す.1 小型タイプ,2パラレルタイプ,3 大型タイプ, および4テーブルタイプの4シリーズを用意した. タイミングベルト駆動により最大速度 10m/s までの高速移動や,3 大型タイプAXSシリーズでは最大 10mの長ストロークが可能である. 表 1 NTNリニアモジュールの概要 Outline of NTN linear modules 10.0 10.0 10.0 2.5 8.00 6.35 10.00 3.50 5.900 3.550 21.000 10.000 120120mm 240100mm 400300mm 45570mm **NTN-SNR ROULEMENTS Engineering Bielefeld ** 精機商品事業部プロダクトエンジニアリング部 -52-
NTN リニアモジュールの紹介 表 2 NTNリニアモジュール寸法表 Lineup of NTN linear modules AB mm 40 40 40 60 60 60 80 80 80 B 120 120120 A 110 110 50 160 160 66 B 240 240100 A 120 120120 200 200100 230 200160 B 280 280170 A 460 400300 155 155 30 225 225 40 B 325 325 50 A 455 455 70 図 1 AXC80Z AXC Series AXC80Z m 6.00 8.00 8.00 8.00 6.10 6.10 6.35 3.00 6.00 10.00 10.00 10.00 3.50 3.50 3.20 3.20 静的許容モーメントも大きく, 大型部材や重量物の搬送, 装置のコンパクト化に適している. また, モータカップリングを豊富に用意しており, 様々なモータとの組み合わせが可能である. NTNリニアモジュールは用途に適したシリーズやフレームサイズ, 直動ガイドや駆動方式を組み合わせることで, 求められる用途や荷重, 取り付け姿勢などの使用条件に対応する. 2. 1 小型タイプ AXCシリーズ AXC80Zの外観を図 1に示す. スリムで軽量なアルミフレームに単列の直動ガイドと駆動部を内蔵する. 高剛性タイプの直動ガイドの採用により, 一回り小さいサイズで他社品同等の負荷容量を確保しており, 装置の小型化が可能である. 直動ガイドは, 用途に合わせてボール循環型リニアガイド, もしくはシャフトと軸受で構成するローラガ 79mm 100mm イドの2 種類から選択する. また, 駆動方式は, 送りねじ駆動, タイミングベルト駆動, オメガ駆動の3 種類から選択する. なお, これらの詳細は3 章で解説する. 外部からフレーム内への異物侵入を防止する防塵シールを標準装備し, さらにグリース給脂やタイミングベルトの交換作業を容易にする工夫を施し, メンテナンス性を高めた. 本シリーズは単軸での使用以外にも,AXCシリーズ同士や他シリーズを組み合わせ, 多軸の複合システムを構築することが可能である. 2. 2 パラレルタイプ AXDLシリーズ AXDL110Sの外観を図 2に示す. 本シリーズは, 駆動部両側に2 本の直動ガイドを複列配置し, 大きな負荷容量と剛性を確保している. 特に, ピッチ, ヨー方向の剛性が高く, 偏荷重などの厳しい条件でも長期使用が可能である. AXCシリーズと同じ防塵性能とメンテナンス機能も備えている. 直動ガイドは, リニアガイド, もしくはローラガイドの2 種類から選択する. また, 駆動方式は送りねじ駆動, もしくはタイミングべルト駆動の 2 種類から選択する. サイズ, 負荷容量, 剛性, 精度面で最もバランスに優れたシリーズとして, ユーザから好評を得ている. 110mm 65mm 図 2 AXDL110S AXDL Series AXDL110S 2. 3 大型タイプ AXSシリーズ AXS280Zを横軸とする組み合わせ例を図 3に示す. 大型アルミフレームと高性能リニアガイドにより高剛性, 高負荷容量を実現した. 主に,100kgを超える重量物の水平搬送, ビームと呼ばれるガントリ構造の上軸, あるいは縦軸姿勢の重量物の昇降機構などに用いられる. 本シリーズには他社にない超大型サイズがあり, AXS460のフレームサイズは, 横 400mm 高さ -53-
NTN TECHNICAL REVIEW No.80(2012) 300mmである. 駆動方式はラック & ピニオン駆動, タイミングベルト駆動, オメガ駆動から選択し, 最大ストローク10m, 最大速度 10m/s, 最大搬送質量 1000kgまで対応可能である.(5. 2 工作機械への実用例参照 ) 3. 直動ガイド NTNリニアモジュールに組み込む直動ガイドは, 荷重, 速度, 精度などの使用条件および要求コストに応じ, リニアガイドとローラガイドの2 種類から選択できる. 250mm 330mm 3. 1 リニアガイド図 5に, ボール循環方式のリニアガイドの内部構造を示す. リニアモジュールは長期間の安定した稼動が求められるが, 図 6に示すグリースだまりを設けたボール保持器の採用により低発熱, 低騒音, 長寿命および長期メンテナンスフリーを実現した. 図 3 AXS280Z 組み合わせ例 Application of AXS280Z 2. 4 テーブルタイプ AXLTシリーズ図 4に示すAXLT155は, フレームに位置決めテーブルタイプのアルミ押し出し材料を使用する. 他社リニアモジュール製品は, 搬送用途に限定したものがほとんどであるが, 本シリーズは精密ボールねじと複列の高性能リニアガイドを組み合わせ, 高精度な位置決め装置としても利用可能である. また, ジャバラにより外部からフレーム内への異物侵入を防止するが, ステージ部側面にグリース給脂口を設けたので, ジャバラを外さずにメンテナンスができる. 図 5 リニアガイド Linear guide 155mm 60mm 図 6 グリースだまり付き保持器 Retainer with grease pocket 図 4 AXLT155 AXLT Series AXLT155 3. 2 ローラガイド図 7にローラガイドのAXCシリーズへの組み付け状態を透視図で示す. ローラガイドはAXDLシリーズでも選択可能である. 図 8に示すようにアルミフレーム内に内蔵する2 本の棒状案内シャフト間を外輪に溝を形成した転がり軸受が転走する簡単な構造ながら, 負荷容量が高く, 最大速度 10m/sまで使用可能である. -54-
NTN リニアモジュールの紹介 4. 2 タイミングベルト駆動 AXLTを除くAXC,AXDL,AXSシリーズで選択可能な, 高速搬送に適した駆動方式である. 図 9にタイミングベルト駆動を採用したAXCシリーズを示す. 長期間稼動しても伸びにくい高耐久タイミングベルトを採用し, モジュール組立調整の際にベルト張力を最適値に調整することで, 応答性能を高めた. 図 7 ローラガイド Roller guide 図 9 タイミングベルト駆動 Timing belt drive 図 8 ローラガイドの案内機構 Guiding system of roller guide 4. 駆動方式モジュールに組み合わせる駆動方式は,1ボールねじまたは台形ねじによる送りねじ駆動,2タイミングベルト駆動,3ラック& ピニオン駆動,4タイミングベルトを利用したオメガ駆動の計 4 種類がある. 4. 1 送りねじ駆動 AXSシリーズを除くAXC,AXDL,AXLTシリーズに適用可能であり, 荷重や速度, 用途に応じボールねじ, もしくは台形ねじが選択できる. ボールねじは, リード代表移動量誤差 52μm 以下 /300mmのJIS 精度等級 Ct7を標準仕様とし, さらに, 高精度の要求に対しては, 精密研削ボールねじも選択可能である. 台形ねじは, 主にコストを重視する簡易位置決め装置で使用される.300mmあたりのリード代表移動量誤差は100μm( サイズによっては200μm) とボールねじには劣るが, モジュール組み込み後の繰り返し位置決め精度は ±0.100mm 以下, 対応可能な最大速度は115mm/sであり, コストパフォーマンスが高い. 4. 3 オメガ駆動 AXC,AXSシリーズに適応可能なオメガ駆動とは, 図 10のようにタイミングベルト両端をフレーム側に固定し, ステージ ( キャリッジ ) 上に駆動プーリとモータ ( 図省略 ) を設けた駆動方式である. 駆動プーリにタイミングベルトを巻き付けた様子が, ギリシャ文字のΩ( オメガ ) に似ていることからオメガ駆動と呼ぶ. 例えば1 軸のモジュールに複数のオメガ駆動ステージを搭載し, それぞれ別々の動作をさせたり, あるいはステージを固定しフレームを移動させる場合に使用する. 図 10 オメガ駆動 OMEGA drive -55-
NTN TECHNICAL REVIEW No.80(2012) 4. 4 ラック & ピニオン駆動 AXSシリーズのみに対応する図 11に示すラック & ピニオン駆動は, 簡素かつ軽量な構造でありながら動力伝達能力が高いため, 最大 1000kgの搬送が可能で, 垂直方向の昇降駆動やガントリ構造のビーム軸として使用される. 軸には大型タイプのAXSシリーズを使用し昇降性能を高めている. このように, 各モジュールの特長を活かした構成が可能である. 5. 2 工作機械への実用例ワーク自動脱着ローダに, タイミングベルト駆動の AXSシリーズを使用した例を図 13に示す. 吊り下げられた100kgを超えるロボットを位置決め動作後, 短時間で正確にロボットがワークを脱着するには, ロボット動作や荷重移動に伴い生じるハンド先端の変位を要求精度以内に収めることが必要で, 高い剛性を持つAXSシリーズにより実現した. 図 11 ラック & ピニオン駆動 Rack-and-pinion drive NTN 5. NTN リニアモジュールの応用例 5. 1 組み合わせ例 NTNリニアモジュールを組み合わせ, ガントリ構成とした例を図 12に示す. 下 2 軸には小型タイプのAXCシリーズを使用し装置をコンパクト化している. 左右軸を同時に駆動するため, 連結シャフトでモータ回転を伝える機構を採用している. またビーム軸にはパラレルタイプAXDLシリーズを採用し,Z 軸駆動モジュールのオーバーハングによるモーメント荷重に対応する構成とし, さらにZ 図 13 ローダ使用例 Example of use for loader 5. 3 特殊用途道路舗装用作業車の乗務室の左右スライド部に採用された例を図 14に示す. リニアモジュールの豊富なバリエーションにより, たとえば, 植物ハウス内での農薬や水の自動散布装置, 植え付け作業設備, また, 建材 ( 大型壁面パネル ) 運搬用のガントリ型クレーンなど超大型用途から, 工業製品や食品 医療分野の小型用途まで様々な実績がある. 図 12 組み合わせ参考例 Combination reference example -56-
NTN リニアモジュールの紹介 6. まとめ NTNリニアモジュールは, 剛性と信頼性に優れた商品で, 特に欧州で豊富な実績がある. ユーザの新たな設備案件や開発課題に対して, NTNリニアモジュールによるコストパフォーマンスの高いソリューションを提案し, 設備の自動化に貢献したい. 図 14 作業車の適用例 Example of use for service vehicle 参考文献 Ulrich Gimpel, Michael Wille, NTN-SNR 高性能 高機能直動モジュール AXDL シリーズ, NTN TECHNICAL REVIEW No.78 (2010) 64-69 執筆者近影 Ulrich GIMPEL Michael WILLE 小和田智之 利見昌紀 NTN-SNR ROULEMENTS Engineering Bielefeld NTN-SNR ROULEMENTS Engineering Bielefeld 精機商品事業部プロダクトエンジニアリング部 精機商品事業部プロダクトエンジニアリング部 -57-