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第 1 保証 1 経営者の範囲仮に, 中間試案第 17,6(1) に従い, 事業資金の貸付けについての個人保証は経営者によるものを除いて無効とするという考え方を採る場合に, 経営者の範囲をどのように考えるか 例えば, 次のような者による保証の効力について, どのように考えるか 法人の代表者 理事, 取締役, 執行役又はこれらに準ずる者 組合員, 無限責任社員 総社員又は総株主の議決権の過半数を有する者 主債務者の業務を実質的に支配している者 元経営者 親会社, 関連会社の経営者 経営者の配偶者その他の近親者 中間試案第 17,6(1) 個人保証の制限 次に掲げる保証契約は, 保証人が主たる債務者の [ いわゆる経営者 ] であるものを除き, 無効とするかどうかについて, 引き続き検討する ア主たる債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務 ( 貸金等債務 ) が含まれる根保証契約であって, 保証人が個人であるものイ債務者が事業者である貸金等債務を主たる債務とする保証契約であって, 保証人が個人であるもの ( 補足説明 ) 1 経営者によるもの以外の保証を無効とする根拠本文は, 個人保証の制限 ( 中間試案第 17,6(1)) においてその対象から除外される経営者 ( 中間試案における いわゆる経営者 ) の範囲について, 想定される幾つかの考え方の例を示して, 現時点における議論の整理を試みようとするものである この経営者の範囲について, これまでの部会の審議においては, 法人である主債務者における地位を基準として判断する考え方や, 法人である主債務者の意思決定についての支配力を基準とする考え方などが示されてきた どのような判断基準によって経営者の範囲を画定するかは, 経営者以外の者による保証を無効とする根拠, 経営者による保証については例外的に有効性を認める根拠に留意しながら検討する必要がある 個人による保証については, 物的担保の対象となる財産を持たない債務者の信用補完の手段として重要な役割を果たしている一方, 保証人はリスクに見合った対価を得ることなく実質的に無償で多額の債務を負担することになる点で, 契約内容が 1

過酷なものとなり得ること, 現実に履行を求められるリスクの大きさや履行を求められた場合の責任の重さを十分に理解しないまま安易に保証契約を締結する場合が多いこと, 責任の重さを理解したとしても個人的な情義から保証人になることを拒絶することができない場合があることなどが特徴として指摘されている これらの特殊性から, 個人の保証人が必ずしも想定していなかった多額の保証債務の履行を求められ, 生活の破綻に追い込まれる事例が生じているとの指摘がある 事業資金の借入れについて経営者以外の者による保証を無効とする考え方は, 保証について生じているこのような問題が, 経営者以外の者によるものについて特に重大であるという認識に基づくものであると考えられる すなわち, 特に事業資金の借入れにおいてはその性質上主債務の額が多額になりがちであり, 個人の保証人にとっては取り分け過酷な結果になりがちであること, 経営者以外の者は主債務者の経営状況や事業の収益性などについて十分な情報を有しておらず, 現実に債務の履行を求められるかどうかのリスクの判断が困難であることなどを指摘することができる 他方, 経営者保証については, 特に中小企業においては経営と家計が必ずしも分離していないこともあり, その場合には, 経営者自身による保証は, 無償で他人のために多額の債務を負担したとは言いにくいこと, 経営者は主債務者の財務状況や債務額について理解していることなどから, 第三者による保証とは利益状況を異にしている一方, 経営に対する規律付けなど副次的な機能をも有していることから有効性を認める必要性が高いとの指摘がある 以上のような考え方が, 経営者以外の者による保証の有効性を否定する正当化根拠として十分であるかどうかはなお検討が必要である 例えば, 一般に無償であるというだけで契約の効力が否定されるわけではないのではないか, 結論の過酷さについては比例原則などによって対応することができないか, 慎重なリスク計算がされず安易な契約締結がされることについては情報提供義務によって対応することができるし, 根保証であっても極度額が定められていれば予想を超える額の債務の履行を求められることにはならないのではないか等の問題点の指摘があり得るように思われる しかし, 経営者の範囲を検討するに当たっては, さしあたり, 保証について上記のような問題が指摘されており, 経営者とそれ以外の者について上記のような利益状況の差異があることを念頭に置いて検討を進めることが有益であると考えられる 2(1) 経営者 該当性についての具体的な基準ア保証人になろうとする者の主債務者における地位経営者による保証の有効性を認める場合に, それに法人の代表者が含まれることには異論が少ないと考えられる 次に, 代表権を有していない場合であっても, 理事, 取締役, 執行役又はこれらに準ずる者が経営者に含まれるとする考え方があり得る これらの者は主債務者の経営状況, 事業の収益性, 主債務の残額等について知り得る立場にあること, 経営者保証の必要性として指摘される経営の規律付けという根拠は, 代表権の有無にかかわらず, 経営に参画する立場にある理事, 取締役等にも妥 2

当することなどが, その理由として挙げられる 理事等に 準ずる者 としては, 法人の機関としてその意思決定や業務執行等を行う者が想定され, これに該当するものとして, 例えば, 持分会社の業務執行社員や, 法人でない社団又は財団の代表者又は管理人などが考えられる 以上のほか, 組合員, 無限責任社員は, 組合等の債務について無限責任を負うため, 組合等の債務について保証債務を負うことが不当であるとは言えない そこで, これらによる保証の有効性を認めるという考え方があり得るが, どのように考えるか イ保証人になろうとする者の主債務者に対する支配力また, 取締役や執行役などの地位に就いていなくても, 法人の事業や経営を支配し, 実質的にその法人を経営していると評価できる者がいる場合は, 経営状態等についての知識, 経営の規律付けという観点から, その者による保証の有効性を認めるという考え方があり得る 具体的には, 例えば, 総社員又は総株主の議決権の過半数を有する者が経営者に含まれるとする考え方である また, 議決権の過半数を有していなくても, 実質的に法人の事業や経営を支配していると言える場合もある そこで, 議決権の過半数を有する者に加え, 例えば, 主債務者の財務及び事業の方針の決定を支配している者 や, 主債務者に対し, 業務を執行する社員, 取締役, 執行役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者 が経営者に含まれるとする考え方もあり得る ウ主債務者が個人事業主である場合に保証人になることができる者の範囲上記ア及びイで取り上げたのはいずれも主債務者が会社その他の団体である場合であるが, 主債務者が個人事業を営む個人である場合に, 他の個人が保証人になることができるか, どのような範囲の個人が保証人になることができるかも問題になる 個人事業においても, 事業主以外の者であって当該事業に従事し, かつ, 重要な意思決定等に参画する立場にあるものがいる場合も考えられ, 主債務者が会社その他の団体である場合とのバランスを考えると, そのような者による保証の有効性を認めることは考えられる この点についてどのように考えるか (2) 経営者 の範囲を拡張すべき場合個人保証の制限が問題になる一つの場面として, かつて経営者であった者が引退して後継者が事業を引き継いでいる場合に, 後継者自身にはまだ十分な資力がないが, 引退した元経営者が主債務者に融資を受けさせるために保証をすることがあり, このような保証の効力を認めるべきであるとの指摘がある また, 主債務者の経営者に当たらないとしても, 親会社, 関連会社などの経営者による保証の有効性を認めるべき場合があり得るとも考えられる このような問題意識からは, 例えば, 保証契約の時点では経営者に該当しないがかつて経営者であった者や, 主債務者と一定の関係にある法人の経営者を主債務者の経営者とみなす等の考え方があり得る 他方, 前掲の 主債務者の財務及び事業の方針の決定を支配 3

している者 等の要件により, 法人である主債務者を実質的に支配している者による保証の有効性を認めるのであれば, 元経営者などについてもその規定に該当するかどうかに委ね, 特別な規定を設けないことも考えられる 経営者による保証の有効性を認める必要性として, 家計と経営が未分離である場合があることが指摘される場合があることからすると, 経営者の配偶者その他の近親者による保証を有効とすることも考えられる もっとも, 会社の事業と関わりのない近親者や, 事業に関わっているとしても関与の程度の低い近親者について, 経営の規律付け等の根拠が妥当するとは考えにくい 仮に近親者による保証の有効性を認めるとしても, 例えば, 生計を一にすることや, 当該事業に従事していることを要件とするなど, 限定を付する必要があるように思われる 3 派生する問題 (1) 保証契約締結時には経営者に該当したが, その後経営者に該当しないこととなった場合に, その保証契約の効力をどのように考えるかが問題になる 債権者はその保証の有効性を前提として貸付の可否や条件を判断したと考えられることからすると, 保証人が経営者に該当しないこととなったとしても, その保証契約の効力が失われるとするのは合理的でない したがって, 特定の主債務の保証においてその返済前に保証人が経営者に該当しないこととなった場合や, 合意された元本確定期日までに保証人が経営者に該当しないこととなった場合でも, 保証契約の効力は失われないこととすべきであると考えられる 他方, 元本確定期日までに保証人が経営者に該当しないこととなり, その後, 元本確定期日を変更することは, その後発生する主債務について新たに保証債務を負うことになることから, 許されないという考え方があり得るが, どのように考えるか (2) 経営者に該当するという外形 ( 例えば, 取締役の選任登記 ) があるが, 実際には経営者に該当しない者が保証契約を締結した場合に, そのことを知らなかった債権者を保護する必要がないか, 保護する場合にはどのように保護を図るかが問題になる その外形を作出することについて保証人に帰責性がない場合, 保証人が虚偽の外形の作出を承諾していた場合, 選任行為に瑕疵があったために取り消された場合などがあり得る 具体的な問題点として, 債権者の主観的要件としてどのような要件が必要であるとするか, 保証人の帰責性としてどのような要件が必要であるとするかなどが問題になる この点についてどのように考えるか (3) 事業資金の貸付けについての個人保証を経営者によるものに限定する場合には, 法人である保証人が保証債務を履行した場合の求償権についての個人保証の有効性についても, 同様に経営者によるものに限定することが考えられる 主債務についての保証人になりうる者を限定したとしても, 経営者以外の個人が求償権の保証人になり得るとすれば, 結果的に, 主債務について経営者以外の個人が責任を負うこととなり, 主債務について保証人となり得る者の範囲を限定した趣旨が没却されることになるからである 4

2 情報提供義務の対象仮に, 中間試案第 17,6(2) エに従い, 債権者は, 保証契約の締結に当たり, 保証人になろうとする者に対し, 主債務者の信用状況について情報提供義務を負うという考え方を採る場合に, 提供の対象となる具体的な情報の内容をどのように定めるべきか また, 情報提供義務については,1 保証人になろうとする者が主債務者から保証の委託を受けているかどうかによって対象となる情報の範囲に差を設けるものとするか,2 債権者が現実には知らず, 知ることができたにすぎない情報についても提供する義務が生ずるものとするか,3 保証人になろうとする者が自ら入手することを期待することができない情報のみを対象とするものとするか,4 義務違反の効果として取消しを認めるのが適当であるかなどの問題があるが, これらについてどのように考えるか 中間試案第 17,6(2) 契約締結時の説明義務, 情報提供義務 事業者である債権者が, 個人を保証人とする保証契約を締結しようとする場合には, 保証人に対し, 次のような事項を説明しなければならないものとし, 債権者がこれを怠ったときは, 保証人がその保証契約を取り消すことができるものとするかどうかについて, 引き続き検討する ア保証人は主たる債務者がその債務を履行しないときにその履行をする責任を負うこと イ連帯保証である場合には, 連帯保証人は催告の抗弁, 検索の抗弁及び分別の利益を有しないこと ウ主たる債務の内容 ( 元本の額, 利息 損害金の内容, 条件 期限の定め等 ) エ保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合には, 主たる債務者の [ 信用状況 ] ( 補足説明 ) 1 保証については, 主債務者に債務不履行が生じない限りその責任が顕在化しないこともあって, 保証人がその責任の内容を十分に理解しないまま安易に保証契約を締結する場合があるとの指摘がある 保証人になることのリスクを正確に判断するには, 保証人の責任に関する一般的な理解や主債務の内容についての理解も必要であるが, 保証人が現実に保証債務を履行しなければならないかどうかは, 主債務者がその債務を履行する能力を有するかどうかによるところが大きいことから, 主債務者の信用状況についての理解も必要になる 中間試案第 17,6(2) エの 信用状況 の具体的な内容は, それが現実に保証人が債務を履行しなければならないかどうかに影響を及ぼすという観点を踏まえて検討する必要がある 情報提供義務については, この義務の根拠をどのように考えるか, 主債務者ではなく債権者がその提供義務を負う根拠をどのように考えるかなどについて検討する必要があり, そもそもこのような規定を設けるかどうかについて考え方が分かれて 5

いるが, ここでは, 仮にその規定を設ける場合に, 債務者の信用状況に関する情報としてどのような情報が説明義務の対象になるか等について取り上げる 2 主債務者の信用状況の具体的な内容としては, 例えば, 主債務者の収入, 現在の資産, 主債務者がその主債務以外に負っている債務の有無, その額及び履行状況, 主債務が事業資金の借入である場合には当該事業の具体的な内容や現在の収益状況などが考えられる また, 主債務者の信用状況そのものではないが, 主債務についての他の担保の有無及びその内容も, 保証人が現実に履行を求められるかどうか, 更には実効的な求償権を取得し得るかどうかに影響する そこで, 保証契約の締結に当たり, これらの事項について債権者に説明義務を課すかどうかが検討課題となり得る 一方, 保証人が現実に保証債務の履行を求められることになるかどうかに影響する事項は取引によって様々であり, 説明義務の対象を具体的に列挙してそれに限定することは合理的でなく, 何らかの包括的な規定が必要になると考えられる 他方, 主債務者の信用状況に関する情報を些細なものも含めて全て提供させるのは現実的ではない そこで, 仮に保証人が現実に保証債務の履行を求められるかどうかに関わる事項についての説明義務を債権者に課すのであれば, 例えば, 主債務者の資産, 負債, 他の担保の有無及びその内容などを例示列挙した上で, 包括的な定めとして, その他の主債務者の履行能力を判断するために必要な情報であって重要なものを情報提供義務の対象とするなどの案を検討することも考えられる もっとも, これらの情報には, 主債務者の個人情報に該当するものも含まれており, 第三者である債権者にその提供を義務付けることが適当であるかどうかは議論が分かれ得る この点は, 特に, 保証人が主債務者の委託を受けて保証人になろうとしているか, 委託を受けないで保証人になろうとしているかによって, 利益状況が異なる 主債務者としては, 自ら委託したわけではない者に対して, 収入, 資力等の情報が開示されることを受忍する理由はないと考えられるから, 主債務者によって委託を受けていない者については, 信用状況についての情報提供義務の対象から除外すべきであると考えられるが, どのように考えるか 3 仮に主債務者の信用状況について債権者に情報提供義務を課すとしても, 債権者自身がその情報を知り得ない場合には情報を提供することは不可能であるから, このような場合には情報提供義務を課すことはできない 債権者側の要件としては, 債権者が現実には知らなかったが, 知ることができた情報を提供義務の対象にするかどうかが問題になる この点については, 債権者が業として金銭の貸付けを行っている場合には, 債権者は主債務者の履行能力の判断などについての情報収集能力に優れているから, 債権者が容易に収集することができる情報については, これを収集した上で保証人になろうとする者に提供することが信義則の要請に適合しているという考え方もあり得るが, 他方で, 債権者が保証人による信用の補完を考慮し, 主債務者の信用状況について多くの情報を有していない場合に, 保証人のために調査義務を負担するのは過度の負担を強いるものであるとも考えられる どのように考えるか 6

4 仮に, 主債務者の信用状況についての情報提供義務を債権者に課す場合に, その根拠をどのように考えるかにも関連するが, 債権者と保証人との間の情報の格差がその根拠であるとすると, その情報を保証人自身が容易に入手することができる場合には, 情報提供義務を認める必要はないと考えられる このような考え方に立てば, 情報提供義務が生ずるのは, 保証人になろうとする者が当該情報を入手することを期待することができない場合に限定すべきであるという考え方があり得るが, どのように考えるか 5 中間試案第 17,6(2) においては, 債権者がこの情報提供義務を履行しなかった場合の効果として, 保証人が保証契約を取り消すことができることが検討課題とされている 他方, 契約交渉過程における一般的な義務としての情報提供義務について取り上げる中間試案第 27,2においては, 従来の裁判例において信義則に基づく情報提供義務が当事者に課される場合でも契約の取消しを認めず損害賠償のみを認める例が多かったことなどを考慮し, 情報提供義務違反の効果を損害賠償義務としている 保証契約の締結に当たっての情報提供義務違反に取消しの効果を認めるのであれば, その根拠や, 錯誤, 詐欺等の他の制度とのバランスが問題になるが, この点についてどのように考えるか 3 裁判所による保証債務の減免, 比例原則中間試案第 17,6(4) においては, 保証人保護の方策として, 裁判所が保証に関する一切の事情を考慮して保証債務の減免することができるとすること ( 同ア ) と, 保証人の資力に照らして過大な保証の効力を制限すること ( 同イ ) が検討すべき課題としてあげられているが, これらの制度の正当化根拠, 要件, 効果などについて, どのように考えるか 中間試案第 17,6(4) その他の方策 保証人が個人である場合におけるその責任制限の方策として, 次のような制度を設けるかどうかについて, 引き続き検討する ア裁判所は, 主たる債務の内容, 保証契約の締結に至る経緯やその後の経過, 保証期間, 保証人の支払能力その他一切の事情を考慮して, 保証債務の額を減免することができるものとする イ保証契約を締結した当時における保証債務の内容がその当時における保証人の財産 収入に照らして過大であったときは, 債権者は, 保証債務の履行を請求する時点におけるその内容がその時点における保証人の財産 収入に照らして過大でないときを除き, 保証人に対し, 保証債務の [ 過大な部分の ] 履行を請求することができないものとする ( 補足説明 ) 1 中間試案第 17,6(4) においては, 保証人保護の方策として, 裁判所による保証 7

債務の減免 ( ア ) 及び保証人の資力に照らして過大な保証の禁止 ( イ いわゆる比例原則 ) が取り上げられている これらの考え方を採るとすれば, これらの制度の正当化根拠, 要件, 効果などについて更に検討する必要がある 2(1) 裁判所による保証債務の減免については, まず, このような制度を正当化する根拠が問題になると考えられる 契約を無効とするだけの瑕疵が契約締結過程や契約内容になく, 保証契約が有効に成立したにもかかわらず, これに基づく債務の額を減免することの根拠をどのように説明するかが問題になる また, 保証人が保証債務を含むその全ての債務を支払うことができない状態にある場合に, この規定によって保証債務のみが減免されることになれば, 保証に係る債権者の犠牲によって他の債権者が利益を得ることにもなりかねず, 債権者平等に反しないかも問題になる この点について, 裁判所による保証債務の減免は身元保証に関する法律第 5 条の規定を参考にしたものであるから, 同条と同様の根拠によって正当化されるという説明が考えられる しかし, 身元保証と通常の保証は次のような点で異なっていることからすると, 同条の趣旨が直ちに保証一般について妥当するかどうかには疑問がある すなわち, 身元保証においては, 身元保証人が負担するのは被用者が使用者に損害を与えた場合の賠償義務であり, そもそも発生するかどうかが不確定である上, その発生原因となる被用者の行為の内容は多様であることなどから, 身元保証契約の時点では, 身元保証人が責任を負うかどうか, どの程度の責任を負うかを予測することは困難である これに対し, 根保証ではない通常の保証においてはもとより, 根保証においても極度額の定めがある場合には, 主債務は現に存在しているか, 発生することがほぼ確実であり, 保証人が負担することとなる額も, 保証契約を締結する時点で予測することが可能である 身元保証に関する法律第 5 条の趣旨が必ずしも保証一般に妥当するものではないとすれば, 裁判所による保証債務の減免の制度を設ける根拠をどこに求めるかを検討する必要があるが, どのように考えるか (2) また, 保証債務の減免が正当化されるとしても, どのような要件の下で保証債務が減免されるか, 減免額をどのような基準で判断するかが問題になる 現時点では, 様々な事情を考慮するとされているものの, それらの事情を考慮した上でどのような要件の有無を判断し, 減免額をどのように決定するのかは, 明確には示されていないように思われ, この点について更に検討する必要があるが, どのように考えるか (3) 裁判所による保証債務の減免の制度を導入する場合には, どのような手続で減免を行うかも問題になる 保証債務履行請求訴訟において抗弁事由として機能することが想定されているが, 権利関係がどのようにして変動するのか, 要件とも関連して検討が必要である どのように考えるか 3(1) いわゆる比例原則は, 効果の面では, 裁判所による保証債務の減免の制度とも共通する面があるが, 契約締結時における契約内容の不当性 ( 及びそこから推認される意思決定過程の瑕疵 ) を根拠として, 保証契約の効力の全部又は一部を否 8

定しようとするものであると考えられる もっとも, 一般には, 債務者が単にその資力に比べて過大な債務を負うというだけで契約の効力が制限されることはなく, 保証についてのみ債務内容が過大であることを理由として契約の効力を制限するのであれば, 保証の特殊性に照らした説明が必要になる 保証の特殊性として, 例えば, 通常はリスクに見合った対価を取得せずに無償で一方的に債務を負担すること, 契約時点では債務が顕在化しておらず安易に契約を締結する傾向にあることなどを考慮することが考えられる しかし, 前者については, 一般に無償契約において債務者が多額の債務を負担するとしてもそのことのみでは契約の効力が制限されることにはならないこと, 後者については, 保証契約の締結過程を考慮せずに債務の過大さのみを理由として契約の効力を制限していることを説明するのが困難であることなどを指摘することができ, これらの説明が十分なものであるかどうかについては評価が分かれ得る (2) また, 例えば企業の経営者がその企業の事業資金の借入について保証を行う場合には, 保証人の資産や収入と債務額を単純に比較すれば, 保証債務の内容が過大であると言える場合が多い しかし, 経営者保証については経営の規律付けなどの観点から意義があるという指摘も強く, 多くの経営者保証の保証の効力が制限されることになると, 経営者保証の果たしている機能が減殺されることになって適当でないという考え方もあり得る 過大 をどのように判断するか, その判断基準を更に検討する必要があるように思われる (3) 保証債務が過大である場合の効果については, 中間試案においては 請求することができない とすることが検討課題とされている その趣旨については, 保証債務が無効となるという理解と, 保証債務は存続するが請求が阻止されるという理解とがあり得る この点は賠償額の予定が過大である場合 ( 第 10,10(2)) とも関連するが, 過大な賠償額の予定は一部無効であると考えられているようであり, これと同様であるとすれば, 保証債務が無効になると解することになろう 無効となる範囲については, 全部無効か, 過大な部分に限って一部無効とするかが検討事項とされている 一部無効とする考え方は, 当事者の意思を尊重する観点から, 無効となる範囲をできるだけ限定しようとするものであるのに対し, 全部無効とする考え方は, 債権者が過大であることを承知の上で多額の保証債務を負担させ, 過大とまで言えない限界までは保証契約の有効性を主張することができることの不当性を根拠とするものであると考えられる 仮に, 一部無効とする考え方を採る場合には, 契約時点においても履行請求時点においても保証債務は過大であるが, 契約時点から保証人の資産は増加した場合や, 逆に, 契約時点から更に保証人の資力が悪化した場合に, いずれを基準として請求可能な額を判断するかも問題になる (4) いわゆる比例原則を導入した場合には, 保証債務の全部又は過大な部分の履行を請求することができないこととなる結果, 倒産手続の開始原因を充足しないことになるという事態が生じ得る その結果, 倒産手続を通じて経済的更生を図る 9

という現行法上利用できる手段を利用することができないこととなるが, その当否についてどのように考えるか 第 2 弁済による代位民法第 501 条第 3 号から第 5 号までの規律を次のように改めるという考え方があるが, どのように考えるか 1 保証人の一人は, 保証債務の額に応じて, 他の保証人に対して債権者に代位するものとする 2 物上保証人の一人は, 各財産の価格 ( 財産の価格よりも被担保債権の額が低い者にあっては, 被担保債権の額 ) に応じて, 他の物上保証人に対して債権者に代位するものとする 3 保証人と物上保証人との間においては, 保証人については保証債務の額を基準とし, 物上保証人については財産の価格 ( 財産の価格よりも被担保債権の額が低い者にあっては, 被担保債権の額 ) を基準とし, これらの額の割合に応じて, 債権者に代位するものとする 4 上記 3 の適用に当たり, 保証人と物上保証人とを兼ねる者がある場合には, その者については, 保証債務の額と財産の価格 ( 財産の価格よりも被担保債権の額が低い場合にあっては, 被担保債権の額 ) のいずれか高い方の額を基準とするものとする 5 上記 2 から 4 までの適用に当たり, 物上保証人の財産に他の債権のための優先する担保が設定されている場合には, その財産の価格は, 当該優先する担保によって担保権者が弁済を受けるべき金額を控除した額とするものとする 6 物上保証人から担保目的物を譲り受けた者については, 物上保証人とみなすものとする 7 第三取得者間の代位割合の決定方法については, 上記 2 を準用するものとする 中間試案第 22,10(2) 法定代位者相互間の関係( 民法第 501 条関係 ) 民法第 501 条後段の規律を次のように改めるものとする ア民法第 501 条第 1 号及び第 6 号を削除するとともに, 保証人及び物上保証人は, 債務者から担保目的物を譲り受けた第三取得者に対して債権者に代位することができるものとする イ民法第 501 条第 2 号の規律を改め, 第三取得者は, 保証人及び物上保証人に対して債権者に代位しないものとする ウ民法第 501 条第 3 号の 各不動産の価格 を 各財産の価格 に改めるものとする エ保証人の一人は, その数に応じて, 他の保証人に対して債権者に代位するものとする 10

オ民法第 501 条第 5 号の規律に付け加え, 保証人と物上保証人とを兼ねる者がある場合には, 同号により代位の割合を定めるに当たっては, その者を一人の保証人として計算するものとする カ物上保証人から担保目的物を譲り受けた者については, 物上保証人とみなすものとする ( 注 ) 上記オについては, 規定を設けない ( 解釈に委ねる ) という考え方がある 参考 現行条文 ( 弁済による代位の効果 ) 民法第 501 条前二条の規定により債権者に代位した者は 自己の権利に基づいて求償をすることができる範囲内において 債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる この場合においては 次の各号の定めるところに従わなければならない 一保証人は あらかじめ先取特権 不動産質権又は抵当権の登記にその代位を付記しなければ その先取特権 不動産質権又は抵当権の目的である不動産の第三取得者に対して債権者に代位することができない 二第三取得者は 保証人に対して債権者に代位しない 三第三取得者の一人は 各不動産の価格に応じて 他の第三取得者に対して債権者に代位する 四物上保証人の一人は 各財産の価格に応じて 他の物上保証人に対して債権者に代位する 五保証人と物上保証人との間においては その数に応じて 債権者に代位する ただし 物上保証人が数人あるときは 保証人の負担部分を除いた残額について 各財産の価格に応じて 債権者に代位する 六前号の場合において その財産が不動産であるときは 第一号の規定を準用する ( 補足説明 ) 1 法定代位者相互の関係に関する現在の民法第 501 条第 3 号から第 5 号までの基準や, 保証人と物上保証人を兼ねる者 ( 二重資格者 ) の扱いに関する判例法理 ( 最判昭和 61 年 11 月 27 日民集 40 巻 7 号 1205 頁 ) については, 基準として簡明であるという長所がある一方で, ある債権の額の一部を保証又は物上保証した者とその債権の全額を保証又は物上保証した者との間で, その負担の差異が代位割合に反映されないという問題があるとの批判がある 例えば, 債権額の一部を物上保証する物上保証人と債権全額を物上保証する物上保証人との代位割合が, 被担保債権額の違いが考慮されることなく, 財産の価格のみによって決せられることを問題視するものである また, 民法第 501 条の規律は, 根保証や根抵当権の存在を意識したものとなっておらず, この点でも保証人や物上保証人の負担の違いが, 代位割合に反映されないこととなっているとの指摘がある ( 以上の詳細 11

については, 第 66 回会議において松岡久和委員から提出された 法定代位者相互間の関係 ( 民法第 501 条 ) に関する意見 参照 ) 本文は, 上記のような指摘を踏まえ, 現在の民法第 501 条第 3 号から第 5 号までの規律を改める場合の一つの具体的な考え方を提示して, このような改正の要否等をめぐる議論の整理を試みようとするものである 2(1) 保証人間の代位割合本文 1では, 複数の保証人間の代位割合について, 保証債務の額によって決する考え方を取り上げている 保証人間の代位割合について, 現在は規定が置かれていないが, 共同保証人間では, 原則として人数に応じて平等の割合で代位することができると考えられており, 中間試案では, このような理解を明文化する案が提示されている ( 中間試案第 22,10(2) エ参照 ) しかし, これによれば, 保証人が主債務の一部のみを保証する場合であっても, 主債務の全部を保証する場合との負担の違いが代位割合に反映されないという問題が指摘されているので, これを解消することを意図するものである もっとも, 保証債務の額を考慮する考え方に対しては, 遅延損害金を含めた金額の比較が必要となり得るため, 煩雑であるという批判があり得る なお, 本文 1は, 代位の割合を定めるものであり, 求償権の範囲について直接定めるものではない 現在は, 共同保証人が他の共同保証人に対して取得する求償権の範囲については, 原則として保証人の人数に応じて平等の割合で, 求償権を取得すると解されている しかし, この解釈によると, 例えば, 複数の保証人と物上保証人がいる場合に, 共同保証人間の求償権の範囲と代位の割合との間に齟齬が生ずることになるが, これが適切ではないとの指摘がある 1 このような考え方を踏まえると, 本文 1の考え方を採用するか否かにかかわらず, 求償権の範囲については, 代位割合と同じルールによって決することとして, 民法第 465 条を改めるという考え方があり得るようにも思われるが, どうか 以上のほか, 連帯債務者相互間や不可分債務者相互間の代位割合について規定を設けないにもかかわらず, 保証人相互間の代位割合についてのみ規定を設けることに疑問を呈する意見もある (2) 物上保証人相互間の代位割合本文 2では, 複数の物上保証人間の代位割合について, 財産の価格又は被担保債権額 1 例えば, 債務者 S が負担する 3000 万円の債務を保証人 A 及び B が債務全額について連帯保証をし, 物上保証人 C が債務全額について時価 3000 万円の甲不動産に第 1 順位の抵当権を設定した設例において, 保証人 A が保証債務を履行すると,B に対して,150 0 万円の求償権を取得するとともに, 債権者に代位して 1000 万円の保証債権を行使することができることになる しかし, 債務者 S が無資力である場合には,A が B に対して 1500 万円の求償権を行使することができるとすると,A と B との最終的な負担額に違いが生ずる可能性がある これは,A,B 及び C 間の負担の公平を考慮して定められる A の B に対する代位の範囲を超えて,A が B に対して 1500 万円の求償権を取得するという結論の当否が問題となっているように思われる 12

のいずれか低い方の額によって決する考え方を取り上げている 物上保証人間の代位割合について, 現在は, 財産の価格に応じて決することとされているが ( 民法第 501 条第 4 号 ), 財産の価格が被担保債権額を超えている物上保証人の間では, いずれの物上保証人も被担保債権全額について責任を負担することを覚悟していたと言える反面, この場合に, 財産の価格が大きい方がより多くの責任を負担することまで覚悟していたと言えるかどうかについては評価が分かれ得るところである このような場合には, 財産の価格ではなく被担保債権額が同額であることの方に着目して, 平等に責任を負担するという考え方にも合理性があるようにも思われる また, 価格が同じ財産に担保設定をした物上保証人相互間で, 債権の一部のみを担保する者と債権の全部を担保する者がいたとしても, 現行法の下では, その負担の違いが代位割合に反映されないという問題も指摘されている 本文 2は, これらの問題を解消することを意図するものである (3) 保証人と物上保証人間の代位割合本文 3では, 本文 1 及び2が採用されることを前提として, 保証人と物上保証人相互間の代位割合について,1 保証人については保証債務の額を基準とし,2 物上保証人については財産の価格又は被担保債権額のいずれか低い方の額を基準とした上で, これらの基準に応じて代位割合を決する考え方を取り上げている 保証人と物上保証人間の代位割合について, 現在は, 数に応じて, 債権者に代位することを原則とした上で, 数人の物上保証人の間では財産の価格に応ずることとされている ( 民法第 501 条第 5 号 ) 本文 1 及び2のように, 法定代位者ごとの具体的な負担の違いを代位割合に反映させようとする立場を採るのであれば, 保証人と物上保証人間の代位割合について, 共通の基準で決することが可能であるという考慮に基づくものである (4) 保証人兼物上保証人 ( 二重資格者 ) の扱い保証人兼物上保証人 ( 二重資格者 ) の扱いについて, 判例 ( 前掲最判昭和 61 年 11 月 27 日 ) は, 公平の理念を理由として, この者を一人として扱った上で, 全員の頭数に応じた平等の割合で代位の割合を決すべきであるという考え方を採っている もっとも, これに対しては, 二重資格者の相互間においても代位割合を頭数に応じて定めると, 二重資格者が設定している物上保証の負担の大きさが考慮されない点で適当ではないとする批判や, 事案によっては二重資格者の代位割合が保証人でない物上保証人よりも小さいという不当な帰結になり得るとの批判などがある そこで, 二重資格者を保証人と物上保証人の二人として扱うという考え方も示されているが, これに対しては, 二重の負担を負っているものと評価して代位割合を大きくするのは, 保証と物上保証で担保されている債権が同一である点を考慮しないものであって不当であるとの強い批判がある 本文 1から3までの考え方を前提としても二重資格者の扱いは引き続き問題となるが, これまでの判例法理及び学説はそのまま妥当しなくなるように思われる すなわち, 判例が公平の理念を理由として二重資格者を一人として扱ったのは, 民法第 501 条の規律内容を前提とすると, 二重資格者の負担を決するのに適当な基準がないためであると指摘されているが, 本文 1から3までのように, 保証人又は物上保証人の具体的な負担 13

を代位割合に反映させる考え方を採るのであれば, 二重資格者の負担を代位割合に反映させればよいので, 判例の理由付けが妥当しなくなるように思われるのである そこで, 本文 4では, 保証人としての保証債務の額と, 物上保証人としての財産の価格と被担保債権額のいずれか低い方の額とを比較し, そのいずれか高い方の額をもって, 二重資格者の代位割合を定める基準とする考え方を取り上げている 本文 3は, 保証人又は物上保証人の具体的な負担を代位割合に反映させているので, 二重資格者にあっては両者のいずれか高い方の額を基準とするのが適当であるとの考慮に基づくものである なお, 二重資格者を二人として扱う考え方については, 本文 1から3までの考え方の下でも, 上記の批判がそのまま妥当するので, 取り上げていない (5) 優先する担保が設定されている場合の負担部分の算定本文 2 及び3において, 物上保証人間の代位割合を財産の価格又は被担保債権額のいずれか低い額とするのは, 物上保証人相互の負担の違いを代位割合に正確に反映することを試みる趣旨であるが, そうであれば, 物上保証人が担保を設定した財産に, 他の債権のために優先する担保が設定されている場合には, その優先する担保によって担保権者が弁済を受けるべき額を控除した額を基準として代位割合を決するのが合理的であるとの考え方が主張されている 通常は, 優先する担保の被担保債権額を控除することになるが, 共同抵当が設定されていた場合には, 当該不動産への割付額が控除されることになる 本文 5は, この考え方を取り上げるものである もっとも, これに対しては, 順位上昇の原則が採用されていることとの関係で, 優先する担保の価値を控除する必要性はないのではないかとの批判があり得る (6) 物上保証人からの担保目的物の譲受人本文 6は, 中間試案と同様に, 物上保証人からの担保目的物の譲受人を物上保証人と同一に取り扱うこととするものである ( 中間試案第 22,10(2) カ参照 ) (7) 第三取得者間の代位割合本文 7は, 物上保証人間の代位割合について本文 2の考え方を採ることを前提に, 第三取得者間の代位割合について本文 2を準用する考え方を取り上げるものである 第三取得者相互の間の代位割合 ( 民法第 501 条第 3 号 ) は, 現行法の下でも, 基本的に物上保証人相互の間の代位割合と同様に取り扱われており ( 同条第 4 号参照 ), その関係を維持するものである 3 本文の別案本文の考え方は, 保証人又は物上保証人ごとの具体的な負担の違いを可能な限り代位割合に反映させようとするものであるが, 現行法との連続性を意識しつつ, 本文の考え方の一部のみを採用するという考え方もあり得る 例えば, 物上保証人間の代位割合 ( 本文 2) に関して, 現在は, 財産の価格が被担保債権額を超える場合においても, 財産の価格に応じて代位割合が決せられるが, 財産の価格の違いが物上保証人間の負担の違いを反映するものであり, 民法第 501 条第 5 号は公平であるという考え方にも合理性が認められるように思われる そこで, 物上保証人間の代位割合については, 基本的に現状を維持して各財産の価格に応じて代位割合を決することとしつつ, 本文 5の規律を付加的に採用することが考えられる この場合に 14

は, 保証人間の代位割合は保証債務の額に応じて決定することとしても ( 本文 1), 物上保証人間の代位割合では被担保債権額が考慮されず, これらの決定方法が異なることになるので, 本文 3 及び4の考え方を採ることはできない 以上のような考慮を踏まえれば, 本文 1 及び5のみを採用した上で, 保証人と物上保証人との間の代位割合に関して, 民法第 501 条第 5 号の規律を維持し, かつ, 二重資格者を保証人一人として扱うこととする ( 中間試案第 22,10(2) オ参照 ) という考え方があり得る ( 本文の別案 ) 4 具体的な設例における中間試案との比較本文の考え方と中間試案との違いを, 以下では具体的な設例を通じて検討する いずれも, 債務者 Sが負担する債務の全額が弁済されて代位が生じたという設例であり, それぞれの考え方による場合に, 法定代位をすることができる者 A,B 及びCの負担部分の相違について検討したものである (1) 設例 1 債務者 Sが負担する6000 万円の債務について, 保証人 Aが債務全額について連帯保証をし, 保証人 Bが4000 万円を限度として連帯保証をし, 物上保証人 Cが債務全額について時価 2000 万円の甲不動産に第 1 順位の抵当権を設定した A B C 本文 3000 万円 2000 万円 1000 万円本文の別案 2400 万円 1600 万円 2000 万円中間試案 2000 万円 2000 万円 2000 万円 (2) 設例 2 債務者 Sが負担する6000 万円の債務について, 保証人 Aが債務全額について連帯 保証をし, 物上保証人 Bが債務全額について時価 2000 万円の甲不動産に第 1 順位の 抵当権を設定し, 物上保証人 Cが債務全額について時価 6000 万円の乙不動産に第 2 順位の抵当権 ( 第 1 順位の抵当権は,Xを債権者,Cを債務者とする2000 万円の債 権を被担保債権とする ) を設定していた A B C 本文 3000 万円 1000 万円 2000 万円 本文の別案 2000 万円 約 1333 万円 約 2667 万円 中間試案 2000 万円 1000 万円 3000 万円 (3) 設例 3 債務者 Sの負担する6000 万円の債務について, 保証人 Aが債務全額について連帯保証をし, 物上保証人 Bが債務全額について時価 2000 万円の甲不動産に第 1 順位の抵当権を設定し, 保証人兼物上保証人 Cが2000 万円を限度として連帯保証をするとともに, 債務全額について時価 4000 万円の乙不動産に第 1 順位の抵当権を設定していた A B C 15

本文 3000 万円 1000 万円 2000 万円 本文の別案 2000 万円 2000 万円 2000 万円 中間試案 2000 万円 2000 万円 2000 万円 5 極度額を代位割合の決定基準とする考え方の当否本文の規律に加えて, 根保証又は根抵当権が設定されている場合には, 保証人又は物上保証人の代位割合の決定基準として, 極度額を考慮する考え方が提示されている これは, 例えば, 財産の価格よりも低い極度額を定めていた場合に, 財産の価格ではなく極度額を基準とした方が, その物上保証人の具体的な負担を代位割合に正確に反映することができるという問題意識に基づくものであると思われる しかし, この考え方に対しては, 以下のような問題点を指摘することができる 代位割合の算定基準時を弁済時と考える現在の解釈を前提とすると, 元本確定後の代位については,( 極度額で上限を画された ) 確定した元本の額に基づいて代位割合を決すればよく, 極度額を基準として代位割合を決する必要はない これに対して, 極度額を代位割合決定の基準とすべきとする考え方は, 元本確定前の根保証や根抵当権についても, 代位によって行使することができるという考え方を前提とするものと考えられる しかし, 根抵当権については, 民法第 398 条の7 第 1 項後段が, 元本確定前に弁済をした第三者は, その債権について根抵当権を代位行使することができないと定めていることとの関係が問題となる 他方, 根保証についても, 元本確定前の随伴性の有無について明文化を見送り, 解釈に委ねるという立場を採るのであれば, 代位の可否もまた解釈に委ねておくことになると考えられる この問題と関連する問題として, 元本確定前の根抵当権設定者がいる場合の法定代位者間の代位割合についての現行法の解釈は, 必ずしも明らかではないように思われる 例えば, 債務者 Sの債務について, 保証人 A 及びBと, 不動産に根抵当権を設定した物上保証人 Cがいる場合において, 根抵当権の元本確定前に保証人 Aが保証債務を履行したときにおけるA,B 及びCの代位割合をどのように考えるかという問題である この問題について, 上記の考え方は, この場合にAがCに代位することができないことを理由としてAとBの代位割合を2 分の1ずつと考えるのは, 保証人に過大な負担を強いるものであって妥当でないとして, 保証人は, 求償権を担保するために根抵当権の一部譲渡を受けることによって保護されるべきであるとした上で, この一部譲渡が実質的には代位であると評価することができるため, 保証人が一部譲渡を受けることができる範囲を画する基準として, 代位割合を決する必要があるとする しかし, 現行法の下でのこの解釈論に対しては, 異論があり得るように思われる そこで, 本文では, 根担保への元本確定前の代位を認めた上で極度額によって代位割合を決する考え方は取り上げず, 解釈に委ねることとしているが, この点についてどのように考えるか 16