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様式 C-19 科学研究費助成事業 ( 科学研究費補助金 ) 研究成果報告書 機関番号 :32621 研究種目 : 基盤研究 (B) 研究期間 :2010~2012 課題番号 :22390412 研究課題名 ( 和文 ) 早期新生児における哺乳行動と吸啜圧の経時的変化 平成 25 年 6 月 13 日現在 研究課題名 ( 英文 )Changes in breastfeeding behavior in the first 5 days postpartum. 研究代表者土江田奈留美 (DOEDA NARUMI) 上智大学 総合人間科学部 助教研究者番号 :60334108 研究成果の概要 ( 和文 ): 早期新生児の吸啜圧の強さについては経日的変化は統計的に認められなかった また 哺乳行動アセスメントツールにて評価された 哺乳行動の経日的発達との関連も認めなかった しかし 圧波形パターンでは出生直後にはあまりみられない持続的陰圧が出生後 1 3 日目からみられるようになっていた つまり 吸啜圧を増大させて哺乳できるようになるのではなく 効果的な哺乳行動ができるようになるものと考えられる 研究成果の概要 ( 英文 ): We did not observe statistical chronological changes in sucking pressure. Immediately after birth, the newborn applied a strong negative sucking pressure, and sucking pressure did not increase at 5 days postpartum. As for pressure waveforms, we did not observe much hold pressure immediately after birth. However, hold pressure tended to be seen from 1, 2 onwards. In other words, it is necessary that newborn form hold pressure rather than increase sucking pressure for the development of breastfeeding behavior. 交付決定額 ( 金額単位 : 円 ) 直接経費 間接経費 合 計 2010 年度 4,300,000 円 1,290,000 円 5,590,000 円 2011 年度 2,100,000 円 630,000 円 2,730,000 円 2012 年度 1,400,000 円 420,000 円 1,820,000 円 総計 7,800,000 円 2,340,000 円 10,140,000 円 研究分野 : 医歯薬学科研費の分科 細目 : 看護学 基礎看護学キーワード : 母乳育児 哺乳行動 吸啜圧 早期新生児 アセスメントツール 1. 研究開始当初の背景近年 母乳育児の母児へのメリットが多くの研究により見直され WHO UNICEF では生後 6 ヶ月間での完全母乳育児を推奨している わが国でもその普及に取り組まれているが 完全母乳 育児率は 43% 前後と横ばいもしくは若干の減少傾向を認めている この背景には 母乳不足感による人工乳への移行がある 実際 母乳育児を始めても 母乳不足感のため人工乳を補足することで児の空腹が満たされ 母乳の飲み取りが

不十分になり その結果として母乳不足になってしまうという悪循環が起こると考えられている そもそも 乳汁分泌機能不全による母乳分泌不良は全体の 5% 未満と先行研究で指摘されていることから 95% 以上の母親たちは十分な母乳分泌が期待できる 実際 赤ちゃんにやさしい病院 と認定されている産科施設では 90% 以上の母児が完全母乳育児をしている それにも関わらず 母乳分泌不足と判断され人工乳の補足が指示されるのは 母乳育児支援に携わる医療者からの一貫性のない支援が関与していると指摘されている さらに この一貫性のない支援の背景には 母乳が十分に飲み取れ 授乳が適切に行われているかを判断する指標 たとえば児の吸着や吸啜が適切に行われているか また適度な哺乳量や生理的体重減少率などについて医療者間で見解にバラつきがあることが挙げられる その結果 授乳状況のアセスメントが不十分となり 有効であるとは言いがたい支援となることが母親たちを混乱させ 母乳育児を困難なものにしているのではないかと考えられる このことから 効果的な母乳育児支援を行うためには 支援者が的確に授乳状況をアセスメントできる指標が必要と考え 研究者は哺乳行動アセスメントツール ( 以下 BBA ツール ) を作成し 信頼性と妥当性の検証を行っている また 近年 児の哺乳行動の研究において 乳房から直接母乳を哺乳するためには 咀嚼筋の運動により生じる陰圧 つまり吸啜圧が重要であることがわかってきた そして 十分な吸啜圧により乳汁が飲み取られることで 乳汁産生のしくみも確立し 必要な乳汁量が維持されるようになると考えられる そこで 出生直後から生後 5 日までの母児の授乳を BBA ツールで評価しながら 新生児の吸啜圧を経日的に測定をし 早期新生児の哺乳行動の発達過程を知ると共に BBA ツールと吸啜圧が哺乳行動の発達のアセスメント指標とし て妥当であるかの検討をする 2. 研究の目的 (1) 早期新生児において授乳時の吸啜圧を経時的に測定し 哺乳行動の発達過程を知る (2) 吸啜圧測定とともに すでに研究者が開発した BBA ツールを用いて授乳を評価し これら 2 つは授乳のアセスメント指標として妥当性があるか否かを検討する 3. 研究の方法 (1) 研究対象産科施設に入院中の妊娠期 分娩期ともに正常な経過を経て 研究参加に同意をした健康な母児 29 名を対象とした (2) データ収集期間 2011 年 5 月から 2012 年 3 月 (3) データ収集方法 1 新生児の吸啜圧測定分娩直後 1 時間以内 生後 1 日目 生後 3 日目 生後 5 日目の 4 時点で吸啜圧測定を行った 吸啜圧測定には データ収録システム ML846 PowerLab4/26 および ML846 BP アンプ (ADin-struments 社製 ) を使用した また データは 2 次元画像解析ソフト LabChart Move/2D を用いて解析した これらの機器に 圧測定用のトランスデューサを接続し そこからディスポーザブルのシリコン製チューブ ( アトム社製栄養チューブ 4Fr, 内径 1.3mm 400mm) を接続し 母親の乳頭に沿わせるようにして乳房を吸啜中の児の口腔内に挿入して測定した ( 図 1) 機器は

ワゴンにセッティングをし 研究対象のベッドサイドもしくは個室を準備し できるだけリラックスした状態で授乳ができるように配慮した 4. 研究成果 (1) 研究対象の概要 (N=29) 時間 =h, 分 =min( 分娩歴初産婦 =15 名経産婦 =14 名 分娩所要時間 出生体重 ) 内 =range 平均 9h42min(2h45min-20h35min) 平均 3143.1g(2508g-3626g, SD=323.1) 在胎週数 38 週 2 日 (37 週 0 日 -41 週 1 日 ) 退院時栄養 完全母乳 =13 組, 混合栄養 =8 組 図 1 シリコン製チューブを挿入し 吸啜圧測定をして いるところ ( 対象者から許可を得て撮影および掲載した ) (2) 吸啜圧の経日的変化 1 回の授乳で測定した吸啜圧の圧波形は 中でも典型的な波形を取り上げ その波形について分析をした なお 吸啜開始から吸啜一旦休止までの時間を sucking continue time として 1 回の吸啜における最低点と最高点の幅を mini-max として 1 クールの sucking continue time の中でも最大の陰圧を minimum pressure とした( 図 2) 2BBA ツールによる授乳の評価 そのうち 1 クールの吸啜における 分娩直後から出生後 1 5 日目において 1 日 1 回で計 6 回の授乳時に BBA ツールを用いて授乳の評価を行った BBA ツールは研究者が開発した授乳行動アセスメントツールであり 授乳行動を構成する吸着 吸啜 嚥下に関する観察を 7 項目 4 段階で得点化するものである そして BBA ツールの評価とともに 1 回の母乳哺乳量測定 児の排泄や黄疸の有無 図 2 圧波形の説明 体重の変化などを観察した 3 倫理的配慮本研究は 聖母大学研究倫理委員会 ( 承認番号 24) にて承認を得て実施した また 研究参加にあたっては自由意志で参加して頂くこと いつの時点での拒否であっても不利 minimum pressure と mini-max の比較を行ったが それぞれの日齢で有意な差を認めなかった (p<0.05)( 図 3, 図 4) このことから 早期新生児の吸啜行動においては 圧の強さは経日的な変化はなかった 益が生じないこと また個人情報保護を厳守 することなどを文面で説明し 同意を得た後 に実施した

のと考えられる (4) 特徴的な圧波形のパターン経日的哺乳行動の発達と吸啜圧の変化には相関は認めなかった しかし 圧波形では経日的に特徴のあるパターンを認めた ( 図 5 図 6) 図 3 各日の minimum pressure 平均の比較 図 4 各日の mini-max 平均の比較 (3) 吸啜圧と BBA ツールと哺乳量の関連まず 1 回の授乳における最大哺乳量と BBA ツールの 4 日目の得点では r=0.5(p<0.05) で正の相関を認めた これは BBA ツールは乳汁の飲み取りに有効な哺乳行動を評価できていることを示している 一方 吸啜圧においては minimum pressure と最大哺乳量とは いずれの日齢においても相関を認めなかった また 経日での minimum pressure と BBA ツールでの相関は認められなかった つまり 吸啜圧の強さと哺乳量や哺乳行動の発達とは関連がなかった これについては 児の哺乳パターンには栄養吸啜と非栄養吸啜の 2 つのパターンがあり 乳汁分泌を呼び出すために強く 早い吸啜を行うことは周知のことである 出生直後の新生児においても 乳汁分泌が始まる前の分娩後 0 2 日頃から いわゆる非栄養吸啜のように 強い圧で吸啜をしているも 0 日目の吸啜圧では 1 回の吸啜で陰圧を形成するたびに 0mmHg の基線に戻ってしまうが 3 日目の吸啜では吸啜運動をするたびに陰圧が大きくなり 持続的に陰圧が形成されるようになっている このケースは BBA ツールでの得点も 3 日目から退院時まで 28 点と哺乳行動も発達しており 1 回の哺乳量も 30 40gであった このことから 哺乳行動の発達には吸啜圧の強さよりも 吸啜圧の圧波形のパターンの変化が関連しているものと推測された (5) 今後の展望本研究を行うにあたり データ収集においていくつかの課題が明確になった 一つには 圧測定用チューブを挿入した際の児の口腔内での位置が確認できなかったことから 今

後は圧測定中に児の口腔内を超音波撮影にて観察をしながら実施できるようにして 個々のデータの条件を統一して分析ができるようにしたい また 栄養吸啜と非栄養吸啜の 2 つのパターンによって吸啜圧が変化することから 射乳と吸啜圧も大きく関連している このことを踏まえて 吸啜圧測定と超音波撮影を併用し 乳汁分泌の状態と吸啜圧を同時に観察し より吸啜圧パターンについて分析を深めていきたい 5. 主な発表論文等 ( 研究代表者 研究分担者及び連携研究者には下線 ) 学会発表 ( 計 1 件 ) 1Narumi Doeda, Change in breastfeeding behavior during first 5 days postpartum, The 16 th International Society for Research in Human Milk and Lactation Conference, 30 th September 2012, Trieste, Italy. 図書 ( 計 1 件 ) 1 土江田奈留美 医学出版 分娩施設にいる間にできるようになりたい抱き方 含ませ方 2012 8 41 48 6. 研究組織 (1) 研究代表者土江田奈留美 (DOEDA NARUMI) 上智大学 総合人間科学部 助教研究者番号 :60334108 (2) 研究分担者水野克己 (MIZUNO KATSUMI) 昭和大学 医学部 准教授研究者番号 :80241032 西島希美 (NISIJIMA NOZOMI) 上智大学 総合人間科学部 助手研究者番号 :20601678