写真 豊岡第一樋管地点 ( 久慈川側 ) 写真 豊岡第一樋管地点 ( 堤内地側 ) 写真 水路擁壁の転倒 写真 水路擁壁の転倒 b) 地点 1-2( 湛水防除事業豊岡排水場, 河口から約 1.0km, 右岸 ) 堤外側法面におけるごみ

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水工学委員会東日本大震災調査団報告書 埼玉大学大学院理工学研究科田中規夫, 八木澤順治, 飯村耕介 2.4 茨城県 2.4.1 久慈川 (1) 調査日 :2011 年 4 月 9 日 ( 土 ) (2) 参加者 : 田中規夫 八木澤順治 飯村耕介 ( 埼玉大学 ) (3) 調査地点 :4 月 9 日は右岸側のみ (4) 調査結果 : a) 地点 1-1( 久慈川河口, 河口から約 0.5km, 右岸 ) 写真 2.4.1-1 に久慈川側の樋管 ( 豊岡第一樋管 ) を, 写真 2.4.1-2 に樋管に接続する堤内地側の排水路の状況を示す 樋管から浸入した津波は堤内地に溢れたのち, 排水路に戻ったと考えられる 戻る際に護岸を洗掘し, また地震で壊れた擁壁を排水路側へ転倒させた ( すべったのではなくひっくり返っている ) 写真 2.4.1-3,4 は, 擁壁の転倒の様子 ( 堤内地側から久慈川方向に向かって撮ったもの ) である 1

写真 2.4.1-1 豊岡第一樋管地点 ( 久慈川側 ) 写真 2.4.1-2 豊岡第一樋管地点 ( 堤内地側 ) 写真 2.4.1-3 水路擁壁の転倒 写真 2.4.1-4 水路擁壁の転倒 b) 地点 1-2( 湛水防除事業豊岡排水場, 河口から約 1.0km, 右岸 ) 堤外側法面におけるごみ ( ペットボトルなど ) の堆積状況から津波遡上の痕跡を確認した この地点で, 高水敷から 2.3m 程度の高さであった ( 写真 2.4.1-5) この地点では, 堤防法尻付近にクラック ( 堤外地側 : 写真 2.4.1-6) が入っており, 地震でクラックが入った後, そのクラックの上を津波が遡上した 深刻な事態には至らなかったものの, 複合的な災害が起こりうることを示している 写真 2.4.1-7 は遡上した津波により傾いた樹木を示しており, この地点において, 依然強い流体力を維持していたことがわかる 写真 2.4.1-8,9 には, 豊岡第二樋管から浸入した津波により運ばれたごみの散乱状況を示す この地点でも, 水路擁壁のすべり破壊 ( 写真 2.4.1-10) が生じていた 第一樋管に比べて, 転倒ではなくすべりが多いのは, 堤内地からの戻り流れの影響が小さかったためと考えられる なお, この地点では, 地震後に停電したため, ゲートは手動で 2 時間半かけて落としたとのことである この樋管に限らず, 排水機場設備については地震時の停電対策が必要である 2

写真 2.4.1-5 川表法面にごみの痕跡 写真 2.4.1-6 川表法尻にクラック 写真 2.4.1-7 高水敷に傾いた樹木写真 2.4.1-8 豊岡第二樋管 ( 堤内地側 ) 写真 2.4.1-9 排水路に流入したごみ等 写真 2.4.1-10 擁壁のすべり破壊 c) 地点 1-3( 常磐線橋梁付近, 河口から約 2.0km, 右岸 ) 写真 2.4.1-11 に, 高水敷に津波により運ばれたごみの散乱状況を示す 3

写真 2.4.1-11 高水敷のごみの痕跡 (5) まとめ久慈川の堤防天端高は津波高より高かったため, 越流などの被害は生じていなかった 川沿いの被害は, 樋管部のゲートが地震による停電の影響で迅速に閉められなかったことに起因する 無停電電源装置などの整備が必要である また, 複合災害には至らなかったものの, 地震で堤防にクラックなどの被害が生じた後に, 津波が遡上する場合もあるため, 津波高が堤内地盤高を超える場合には, 海から離れている地域であっても津波遡上域沿川の流域住民の避難が必要である 2.4.2 那珂川 (1) 調査日 :2011 年 4 月 8 日 ( 金 ) (2) 参加者 : 田中規夫 八木澤順治 古里栄一 飯村耕介 ( 埼玉大学 ) (3) 調査地点 : 4

(4) 調査結果 : a) 地点 2-1( 那珂川河口付近, 河口から約 0.5km, 左岸 ) 写真 2.4.2-1 に, 河岸から距離 20m の建物の壁の破壊状況を示す ( 破壊されている壁は川側 ) この地点において, 破壊されている壁の高さはおよそ 1.2m であった 写真 2.4.2-1 建物の壁の破壊 b) 地点 2-2( 那珂湊マリーナ周辺, 河口から約 1.2km, 右岸 ) 那珂川と涸沼川の合流点付近では, 遡上した津波が堤内側に氾濫した 写真 2.4.2-2 に示すように, フェンスが堤内側 ( マリーナ側 ) に倒されていた この地点での水田での痕跡はおよそ 0.7m であった ( 写真 2.4.2-3: 奥に見えているのがマリーナ ) 写真 2.4.2-2 マリーナのフェンスの破壊 写真 2.4.2-3 マリーナ背後の水田での痕跡 c) 地点 2-3( 華蔵院周辺, 河口から約 1.5km, 左岸 ) 那珂川左岸のコンクリート堤防区間では液状化による被害が激しかった 特に, 護岸の破壊が激しかったのは山が近傍にある区間で, 被災箇所から湧水のあることが確認された ( 写真 2.4.2-4,5) 5

写真 2.4.2-4 護岸の破壊と湧水 写真 2.4.2-5 護岸の破壊と湧水 d) 地点 2-4( 東水戸道路上流側, 河口から約 2.0km, 左岸 ) この地点における津波の遡上痕跡を確認した ( 写真 2.4.2-6: 法面に残っている浮遊物 ( この場合は草 ) の水面から高さはおよそ 0.8m のところ ) また, 写真 2.4.2-7 に示すように, 那珂川側の樋管が変形していた ( 落江排水樋管 ) 写真 2.4.2-6 法面にトラップした草 写真 2.4.2-7 落江排水樋管の変形 e) 地点 2-5( ひたちなか下水浄化センター下流側 ( 関東島付近 ), 河口から約 2.5km, 左岸 ) 堤防の多くの箇所に, 長手方向に大きなクラック ( 写真 2.4.2-6) が入っていた また, 階段護岸の箇所では, 堤頂ぎりぎりのところまで津波が来たことが確認された ( 残存する堆積物 ( 草 ) より ) この地点で水面からの高さはおよそ 1.9m であった ( 写真 2.4.2-7) 6

写真 2.4.2-6 堤防上に非常に大きなクラック 写真 2.4.2-7 堤頂ぎりぎりに草のトラップ f) 地点 2-6( 新川樋門ゲート付近, 河口から約 5.0km, 右岸 ) 堤外側法面に大きなクラックが入っていた ( 写真 2.4.2-8) この下に埋設物があったと考えられ, 埋設物の箇所は被災を受けやすいことが確認された 樋門 ( 那珂川側 ) に津波によると考えられる堆積物が確認された ( 写真 2.4.2-9) この地点の樋門の水路( 新川側 ) で水路護岸に船が乗り上げていた ( 写真 2.4.2-10), またその近くに堆積物があり, その痕跡高さから判断すると津波は新川からは溢れてはいないと判断された 水路 ( 新川 ) 内では, 流木の乗り上げや, 桟橋の破壊が生じていた ( 写真 2.4.2-11) 写真 2.4.2-8 堤防法面 ( 那珂川側 ) にクラック写真 2.4.2-9 新川樋門 ( 那珂川側 ) 7

写真 2.4.2-10 船の乗り上げ ( 新川側 ) 写真 2.4.2-11 流木 ( 手前 ) と桟橋の破壊 g) 地点 2-7( 後田揚水機場 ( 新川 )) 新川における津波の遡上を確認した 写真 2.4.2-12 は, 樋門からおよそ 800m 上流で, 植物に泥の痕跡を確認した 写真 2.4.2-12 植物についた痕跡 (5) まとめ那珂川における津波の氾濫は河口付近, 合流点付近, 涸沼川 ( 特に蛇行部の外岸側で氾濫 氾濫水深はわずかなため, 写真は示していない ), と河川に合流する小水路 ( 那珂川に合流する新川や涸沼川に合流する水路 ) であった 樋管がある場合は, その管理方法に改善が望まれる 河川地形で氾濫する箇所は, 津波の遡上の向きが逆であるため, 通常の洪水の氾濫箇所と異なる 遡上における氾濫特性を抑える必要がある 2.4.3 利根川 (1) 調査日 :2011 年 3 月 23 日 ( 水 ) (2) 参加者 : 田中規夫 八木澤順治 飯村耕介 ( 埼玉大学 ) (3) 調査地点 : 8

(4) 調査結果 : a) 地点 3-1( 水産工学研究所付近, 河口から約 3.5km 利根川左岸) この付近では, 堤防上に堤防長手方向に連続したクラック ( 写真 2.4.3-1) がはいっており, また, 護岸の陥没 ( 写真 2.4.3-2) が見られた 写真 2.4.3-1 堤防の長手方向のクラック 写真 2.4.3-2 護岸の陥没 b) 地点 3-2( 高田川合流地点, 河口から約 6.5km 利根川右岸) 支川高田川では護岸のすべり破壊が生じその後に津波が遡上したと考えられる ( 写真 2.4.3-3) また, 堤防上には長手方向のクラックが入っていた ( 写真 2.4.3-4) 9

写真 2.4.3-3 護岸のすべり破壊 ( 高田川 ) 写真 2.4.3-4 堤防上のクラック ( 高田川 ) c) 地点 3-3( かもめ大橋下流側, 河口から約 8.0km, 利根川右岸 ) 擁壁裏側の洗掘と護岸の破壊から, 津波は高水敷に乗り上げ, 戻り流れの時に構造物周辺を激しく洗掘したと考えられる ( 写真 2.4.3-5,6) 写真 2.4.3-5 擁壁裏側の洗掘 写真 2.4.3-6 護岸の破壊と流失 d) 地点 3-4( 矢田部第二排水樋管, 河口から約 11.25km, 左岸 ) 利根川においては, 越流による被害はなかったものの, 久慈川と同様に樋管部からの氾濫, もしくは塩水の浸入があったと判断される 写真 2.4.3-7 は, 利根川側から見た矢田部第二排水樋管であり, 写真 2.4.3-8 はこの樋管からの堤外側 ( 水路沿いに樹木が繁茂 ) から堤内側に流失したと思われる流木である 10

写真 2.4.3-7 矢田部第二排水樋管 ( 利根川側 ) 写真 2.4.3-8 樋管を通過し堤外側から流入したと思われる流木 e) 地点 3-5( 矢田部第四排水樋管, 河口から約 12.0km, 利根川左岸 ) 写真 2.4.3-9 は, 利根川側から見た樋管とトラップしたごみの状況, 写真 2.4.3-10 は, 長手方向のクラック状況, 写真 2.4.3-11 は, 樋管上の堤防に入っていた堤防横断方向のクラック状況示す この地点においても津波は高水敷に乗り上げていたことを確認した 写真 2.4.3-9 矢田部第四排水樋管 ( 利根川側 ) 写真 2.4.3-10 堤防の長手方向のクラック 写真 2.4.3-11 樋管上の堤防における堤防横断方向のクラック 11

f) 地点 3-6( 桜井町公園付近, 河口から 13.0 約 km, 右岸 ) 写真 2.4.3-12,13 に高水敷上のクラックと陥没状況を示す なお, この地点においても津波は高水敷に乗り上げていたことを確認した 写真 2.4.3-12 堤防の長手方向のクラック 写真 2.4.3-13 護岸の陥没 g) 地点 3-7( 利根川河口堰, 河口から約 18.0km, 黒部川右岸 ) 写真 2.4.3-14,15 に, 堤防の堤外側法面と天端におけるクラックの状況を示す 写真 2.4.3-14 川表法面におけるクラック 写真 2.4.3-15 堤防の長手方向のクラック h) 地点 3-8( 利根川河口堰, 河口から約 18.0km, 常陸川左岸 ) 写真 2.4.3-16 から 2.4.3.19 に, 堤防におけるクラックや護岸の破壊状況を示す 12

写真 2.4.3-16 堤防の長手方向のクラック 写真 2.4.3-17 護岸の破壊 写真 2.4.3-18 護岸の破壊 写真 2.4.3-19 川表法面におけるクラック i) 地点 3-9( 利根川河口堰, 河口から約 18.5km, 利根川右岸, 黒部川左岸 ) 写真 2.4.3-20,21 に, 護岸の破壊状況を示す 写真 2.4.3-20 護岸の破壊 写真 2.4.3-21 護岸の破壊 j) 地点 3-10( 利根川河口堰, 河口から約 18.5km, 常陸川右岸, 利根川左岸 ) 写真 2.4.3-22 に, 護岸のクラック状況, 写真 2.4.3-23,24 に護岸の破壊状況を示す ここでは, 破 13

壊された一部津波により流失している また, 護岸の上に繁茂していた植生がマットを引き剥がすようにはがれており, この地点でも津波は高水敷上を走っていたことが確認された ( 写真 2.4.3-25) 写真 2.4.3-22 護岸のクラック 写真 2.4.3-23 護岸の破壊 写真 2.4.3-24 護岸の破壊と流失 写真 2.4.3-25 植生の流失 (5) まとめ利根川下流部の川幅は広いものの, 天端高さは高くない 遡上した津波の越流は確認されなかったが, 久慈川ほどの天端高さまでの余裕はない区間もあったと考えられる また, 津波を遡上させる能力をもった河川においては, 支川からの氾濫や堤内地への塩水進入を抑える対策が重要と考えられる ( 家屋被害というよりは, 塩害防止という視点で ) 2.5 千葉県 2.5.1 三川 (1) 調査日 :2011 年 3 月 22 日 ( 火 ) (2) 参加者 : 田中規夫 八木澤順治 飯村耕介 ( 埼玉大学 ) (3) 調査地点 : 14

(4) 調査結果 : a) 地点 1-1( 三川, 河口から約 100m) 河川が砂丘の開口部にあるため, 津波が集中したと考えられ, 擁壁の裏側が激しく洗掘されていた ( 写真 2.5.1-1) また, 写真 2.5.1-2 に示すように, 蛇行部では, 河川の擁壁を破壊するなど被害が特に大きかった 写真 2.5.1-1 擁壁裏側の洗掘 写真 2.5.1-2 擁壁の破壊 b) 地点 1-2( 三川, 河口から約 300m) 写真 2.5.1-3 に示すように, 護岸が破壊され, また背後のビニルハウスも破壊されていた 15

写真 2.5.1-3 護岸の破壊 (5) まとめ千葉県の当該地域周辺には, 高さ 2-5m の砂丘があり,2m の砂丘では砂丘を越えていたものの背後地における被害は小さく,4-5m クラスでは津波の進入を食い止めていた 津波が進入したのは海岸に近づくための道路と, 三川のような開口部であった 道路開口部は道路の向きや砂丘高さなどの面での対策が有効であると考えられるが, 河川開口部は対策が難しい 開口部で津波が直撃するラインや河川の蛇行で氾濫しやすい箇所については, ハザードマップで特に注意を喚起するとともに, 土地利用の規制 誘導も選択肢の1つとして考える必要があろう 16