センサガスクロ Sensor Gas Chromatograph 硫化物測定器 ODSA-P2 Technical Information エフアイエス株式会社
目次 ODSA-P2 1.SGC センサガスクロについて 1)SGC の測定原理 2)SGC の特徴 3) 硫化水素定量方法 4) データ解析方法 p.3 2. 硫化水素測定器 ODSA - P 2の基本性能 1) 測定精度 2) 再現性 3) 硫化水素以外のガスの影響 p.6 3. 精度よい測定のために 1) 電源投入後の初期安定化時間 2) キャリアガス流量 3) 周囲温度 4) 周囲雰囲気 5) 長期間使用しなかった場合 p.8-2 -
1.SGC センサガスクロについて ODSA-P2 1) 測定原理 硫化水素測定器 ODSA-P2 は 半導体ガスセンサを検出器に用いたガスクロマトグラフ方式の測定器です クロマトグラフィーにより多くのガスの混合物から硫化水素を分離し 硫化水素に高感度な半導体ガスセンサによって検出 定量します 試料ガス カラム 半導体ガスセンサ PC 測定結果 保持時間 図 1 SGC の測定原理 2)SGC の特徴 硫化水素を 5~1000 ppb の濃度域で高感度に定量することができます メチルメルカプタン 硫化ジメチルなど 硫化水素以外の硫化物の測定も可能です ( オプション設定 ) シリンジで試料ガスを注入すると自動的に測定を開始し 4 分で測定を完了します 連続自動注入装置付き仕様もあります ( オプション ) 測定終了後約 1 分で次の測定が可能になります キャリアガスに大気を使用しているため 高圧ガスボンベは不要です 大気中の微量なガス成分が問題となる場合にはボンベガスキャリア仕様も可能です 硫化水素以外のガスの影響を受けません 小型 軽量で 持ち運び可能です 図 2 SGC の基本構成 - 3 -
ODSA-P2 3) 硫化水素定量方法 図 3 に硫化水素 10 ppb から 1000 ppb の標準ガスを測定した場合のクロマトグラムを示します 図 4 は 図 3 のクロマトグラムのピーク高さ ( 信号強度 ) と硫化水素濃度の関係です 半導体ガスセンサの特性上 濃度の対数と信号強度の対数が比例関係を示します この関係式を用いて ガスの濃度を算出します 300 1000 信号強度 (mv) 250 200 150 100 硫化水素 1000 ppb 300 ppb 100 ppb 10 ppb 信号強度 (mv) 100 10 y = 0.91268 * x^(0.83411) R= 0.99955 硫化水素 50 0-50 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 保持時間 ( 秒 ) 図 3 硫化水素標準ガスクロマトグラフ 図 4 硫化水素濃度と信号強度の関係 4) データ解析方法 測定結果の解析には専用のデータ解析ソフト SGC Analyzing Software を使用しています 一般的なガスクロでは 各ピークのピーク面積を用いて定量を行いますが SGC ではピーク高さを用いて定量を行っています ピーク高さで濃度を算出することにより 保持時間の近い干渉ガスの影響及びノイズの影響を小さくしています 測定精度 再現性は面積計算の場合と同等です 測定したクロマトグラムのベースラインを補正することにより ピーク高さを正確に測定します ベースラインが多少傾いていても測定精度に問題はありません 硫化水素ピークの前に水素など このカラムで分離できないガスのピークが出ます これらのガスが試料中に多く含まれる場合 硫化水素のピークがこれらのガスと重複する場合があります このような場合には予め指定した干渉ガスに対して 図 5 のように波形分離を行い 濃度精度に干渉ガスの影響がでないようにすることができます 信号強度 (mv) 1 1 10 100 1000 ガス濃度 (ppb) 1 2 3 保持時間 (( 秒分 )) 図 5 混合ガスクロマトグラムと分離波形 - 4 -
ODSA-P2 半導体ガスセンサ SGC では検知器として弊社で開発した半導体ガスセンサ SB シリーズを使用しています 半導体ガスセンサは酸化錫などの金属酸化物半導体を感ガス材料とし その表面にガスが吸着した場合に電気抵抗が変化することを利用してガスを検出します SB シリーズガスセンサは 非常に小型で消費電力が小さく また高感度 高速応答というガスクロの検出器に適した特徴を持っています 特にガスに対する感度は通常のガスクロの検出器と比べて格段に高く 半導体ガスセンサを検出器に用いることにより 少ない試料での高感度測定が可能になりました SGC 用語集 ガスクロマトグラフ カラム 検出器 混合ガスを各成分ごとに分離することができるカラムに測定試料である混合ガスを導入し キャリアガスによって混合ガスを移動させることによって混合ガスを各ガスごとに分離する技術をガスクロマトグラフィーと言い ガスクロマトグラフィーを行う装置をガスクロマトグラフと言う また 測定の結果得られたチャートをクロマトグラムと言う ガス種によって吸着性能に差がある材料 ( 充填剤 ) を充填した管のこと 検知したいガスによって充填剤の種類を選択し 適切なカラム温度に加熱する必要がある カラムによって分離された成分ガスを検知して 電気信号に変換する装置 SGC は検出器として半導体ガスセンサを使用している キャリアガス カラムを通って試料を分離し溶出させるために常時カラムに流し続ける気体のこと 通常のガスクロでは 水素 ヘリウム 窒素などが使用されるが SGC は検出器の半導体ガスセンサに酸素が必須であるために空気を使用している ベースライン クロマトグラム上で試料成分ガスがなく キャリアガスのみが検出器を通過している部分 ピーク ピーク高さ クロマトグラム上で試料中のガス成分が検出されている時に検出器が示す山形の出力波形をピーク ピークの頂点からベースラインまで降ろした垂線の長さをピーク高さと言う 保持時間 各成分ごとに 試料注入からピーク頂点を示すまでの時間 保持時間は成分ごとに異なり これによってガス種を同定する Vs(= センサ出力 ) 信号強度 高感度半導体ガスセンサの電気伝導度変化を電圧信号に変換したもの 測定開始時の Vs を Vs(0) とした時に Vs(0)-Vs で表わされる電圧値のこと - 5 -
2. 硫化水素測定器 ODSA-P2 の基本性能 ODSA-P2 1) 測定精度 濃度校正直後に校正したガス濃度で測定した場合の濃度精度は ガス濃度に対して ±15% です 図 6 は校正直後に各濃度 3 回ずつ測定した場合のガス濃度と測定結果濃度の関係を示しています ガス濃度 ±15% 以内の精度を示しています 1000 測定結果 (ppb) 100 +15 % -15 % 10 10 100 1000 ガス濃度 (ppb) 図 6 測定ガス濃度と測定結果の関係 2) 再現性 図 7 は濃度校正後に硫化水素 50ppb の標準ガスをマニュアル注入方式で 5 回連続測定した結果です 良好な再現性を示しています 図 8 は濃度校正後に硫化水素 250ppb の標準ガスを測定ガス自動注入機構 ( オプション機能 ) を使用して 測定間隔 1 分で 100 回連続測定した結果です 100 回の測定の平均値は 249ppb 3 σ は 7ppb となり 3σ はガス濃度の約 3% でした 測定の精度 再現性とも良好であることがわかります 80 硫化水素 50ppb 測定 300 硫化水素 250ppb 測定 ガス濃度 +15% 70 280 測定結果 (ppb) 60 50 40 ガス濃度 +15% ガス濃度 -15% 測定結果 (ppb) 260 240 平均値 +3σ 平均値 -3σ 30 220 20 0 1 2 3 4 5 6 測定回数 ( 回目 ) 200 ガス濃度 -15% 0 20 40 60 80 100 測定回数 ( 回目 ) 図 7 マニュアル測定再現性 図 8 自動連続測定再現性 - 6 -
ODSA-P2 3) 硫化水素以外のガスの影響 ODSA - P 2 は硫化水素以外のいくつかのガスにも感応します 表 1 に各種ガスの保持時間を示します また 感度の目安として 表中に記載した濃度で測定した場合の各ガスに対するピーク高さを 硫化水素 0.5ppm(500ppb) のピーク高さを 100 とした場合の比率で示しました 保持時間 信号強度は測定器ごとに若干差がありますので 以下の数値はあくまで目安としてお考えください 硫化水素のピーク位置に近いガスが存在すると 測定精度に影響することがあります また 保持時間の大きいガスは その試料の測定中ではなく 次回以降の測定のベースラインの安定性に影響することがあります 表 1 各種ガスの保持時間と信号強度 ガス 化学式 測定濃度 (ppm) 保持時間 (sec.) 信号強度 備考 水素 H 2 20 18 114 過酸化水素 H 2 O 2 濃度不明 18-69 ヒ ーク下向き メタン CH 4 100 19 74 エタン C 2 H 6 20 19 132 エチレン C 2 H 4 20 19 209 フ ロハ ン C 3 H 8 5 20 424 イソフ タン C 4 H 10 10 20 594 酸素 ( ない場合 ) O2 酸素 0% 20 131 1 一酸化炭素 CO 100 21 100 二酸化窒素 NO 2 0.2 21-108 ヒ ーク下向き フ ロヒ レン C 3 H 6 0.2 21 214 二酸化炭素 CO 2 100% 23 130 ヘ ンタン C 5 H 12 0.1 24 45 ヘキサン C 6 H 14 0.5 31 216 硫化水素 H 2 S 0.5 33 100 ヘフ タン C 7 H 16 0.5 41 73 イソフ レン CH 2 C(CH 3 )CHCH 2 0.5 61 278 オクタン C 8 H 18 0.5 61 60 二硫化炭素 CS 2 200 63 123 メチルメルカフ タン CH 3 SH 0.5 83 69 ノナン C 9 H 20 0.5 102 35 硫化シ メチル (CH 3 ) 2 S 0.5 147 62 テ カン C 10 H 22 0.5 181 49 アセトアルテ ヒト CH 3 CHO 10 199 60 ホルムアルテ ヒト HCHO 1000 214 44 テ セン C 10 H 20 0.5 305 40 ウンテ カン C 11 H 24 0.5 366 35 メタノール CH 3 OH 0.05 498 0 酢酸 CH 3 COOH 不明 536 46 アセトン CH 3 OCH 3 0.1 628 190 エタノール C 2 H 5 OH 10 665 48 アンモニア NH3 100 - ヒ ークなし 1: キャリアガスには大気中と同等の 21% 程度の酸素が含まれているため 半導体ガスセンサは試料ガスに感応していないときには常に 21% 程度の酸素中での出力を示しています 測定試料中の酸素濃度が キャリアガス中の酸素濃度である 21% と大きく異なる場合には その差に相当するピークがあられれます 測定試料中酸素濃度がキャリアガス中酸素濃度よりも高い場合には出力が減少する方向 低い場合には出力が増加する方向のピークとなります 表 1 には酸素 0%( 窒素 100%) の場合の出力を示しました - 7 -
3. 精度よい測定のために ODSA-P2 1) 電源投入後の初期安定化時間 電源投入直後 カラム温度およびセンサ出力が安定して READY ランプが点灯するまでに 10 ~30 分必要です READY ランプが点灯していれば問題なく測定できますが より精度よく測定するために できれば測定開始の 1 時間以上前に電源をいれてください 2) キャリアガス流量 保持時間はキャリアガス流量に大きく依存します 保持時間が大きくずれますと測定精度が落ちたり ピークを検出することができなくなることもあります PC 画面のキャリアガス流量が初期設定値 ±3 cc よりずれた場合には 流量調整を行ってください 初期設定値は添付または CD-ROM 内の初期設定値一覧表でご確認ください 3) 周囲温度 エアコンの作動などにより急激に室温が変化しますとベースラインの変動が起こります できるだけ温度変化が小さい環境でお使いください ベースラインが大きく変動しますと WAIT 状態になります READY 状態になるのを待って測定を行ってください 4) 周囲雰囲気 キャリアガスに大気を使用しているため 周囲雰囲気中に多量のガスが存在すると硫化水素の測定精度が低下します ガスが存在すると考えられる場所での測定はできるだけ避けてください スプレー等の一過性ガスの影響はほとんどありません SGC は雰囲気の汚染を感知した場合には WAIT 状態になり 測定可能になったら READY 状態になります 5) 長期間使用しなかった場合 長期間使用しなかった場合 再度ご使用される当初 若干低めの測定結果を示すことがあります 2 週間以上ご使用されなかった場合には できれば前日に数時間以上電源を入れていただきますと より精度よく測定できます - 8 -
ODSATI_V2_110604 エフアイエス株式会社 664-0891 兵庫県伊丹市北園 3-36-3 tel 072-780-1800 fax 072-785-0073 http://www.fisinc.co.jp - 9 -