Microsoft Word ECB利下げ.doc

Similar documents
untitled

untitled

3_2

○ユーロ

【16】ゼロからわかる「世界経済の動き」_1704.indd

FOMC 2018年のドットはわずかに上方修正

Microsoft Word - 15_2

経済学でわかる金融・証券市場の話③

1. 30 第 1 運用環境 各市場の動き ( 4 月 ~ 6 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは狭いレンジでの取引が続きました 海外金利の上昇により 国内金利が若干上昇する場面もありましたが 日銀による緩和的な金融政策の継続により 上昇幅は限定的となりました : 東証株価指数 (TOPIX)

米国の利上げ見送りと日本の長期化した金融緩和

中国:PMI が示唆する生産・輸出の底打ち時期

PowerPoint プレゼンテーション

3. 資産購入プログラムの円滑な実施に向けた選択肢が検討されることに上述の通りECBの景気 物価見通しがほぼ変わらない中 記者会見においてドラギ総裁は 実施期間の延長や購入規模の拡大などは議論していない ことを明かした 理事会の前には 9 月理事会で資産購入プログラムの実施期間が延長されると予想する

サマリー 1 市場の関心は米大統領選の行方に集まっています 世論調査においてドナルド トランプ氏の優勢が報じられると 市場の更なる丌確実性が懸念され リスク資産からの資金流出が記録されました 10 月の MSCI 世界株価指数はマイナス 2.01% MSCI 新興国株価指数は 0.18% と新興国が

経済情報:日銀短観(2011年6月)の結果について.doc

エコノミスト便り【欧州経済】ユーロ圏はどのように財政を再建したか

マクロ インサイト FRB FRB 長期金利 FRB bp 図表 1 FRB と市場の金利予測の乖離 FOMC 予測 vs 市場予測 年末 年末 2.0 市場が

「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入

平成14年1月20日

nichigingaiyo

当ページは 各種の信頼できると考えられる情報源から取得した情報に基づき アクサ生命保険株式会社が作成し提供するものです 情報の内容に関しては万全を期しておりますが その正確性 完全性については これを保証するものではありません 日本株式市場 運用環境 [ 2015 年 4 月 ~2016 年 3 月

1. 30 第 2 運用環境 各市場の動き ( 7 月 ~ 9 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは上昇しました 7 月末の日銀金融政策決定会合のなかで 長期金利の変動幅を経済 物価情勢などに応じて上下にある程度変動するものとしたことが 金利の上昇要因となりました 一方で 当分の間 極めて低い長

22101_PremierTouch_A011_H10B11_201906_2

企業活動のグローバル化に伴う外貨調達手段の多様化に係る課題

untitled

< E97708AC28BAB82C982C282A282C42E786C73>

PowerPoint プレゼンテーション

PowerPoint プレゼンテーション

低インフレ 乏しい利上げ観測労働市場に目を向けると 8 月の失業率は約 年ぶりの低水準となる5.3% に低下した 雇用者数も伸びており 一部では技術者不足の声も聞かれる RBAは今後数年 失業率は自然失業率とされる5.% を目指して低下が続くとの見方を示している ただ 賃金の上昇率は ~ 月期が前年

Microsoft PowerPoint - Pictet_Market_Flash_ (直近の下落).pptx

米国株 投資家心理が落ち着けば 上昇基調に回帰と想定 株式市場 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 長期金利の上昇を契機に急落米国株式市場は下落しました 月初に発表された1 月の雇用統計において 時間当たり賃金が市場予想を上回る伸び率となったことを受けて 長期金利が約 4 年ぶ

Microsoft Word - 49_2

Microsoft Word - 20_2

株式市場 米国株 トランプ氏の政策への期待感後退で調整も MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は上昇しました 11 月 8 日 ( 現地 ) に行われた大統領選挙でトランプ氏が当選し 減税やインフラ投資の拡大などの同氏の政策に注目が集まりました 債券市場では金利が上

Microsoft Word doc

2018 年は激動の年 年初来 トルコ株式指数はトルコリラベースで最大で約 24% 下落し トルコリラは日本円に対して最大で約 45% 下落しました トルコ株式 * の推移 ( トルコリラベース ) /12 18/03 18/06 18

2015 年 3 月 9 日 対外 対内証券投資の動向 (2015 年 2 月分 ) 投資信託委託会社等による対外証券投資が大幅増加 財務省の 対外及び対内証券売買契約等の状況 ( 指定報告機関ベース ) によると 2 月の対外証券投資は +2 兆 6,754 億円の取得超となり 前月の +2 兆

わが国の経済・物価情勢と金融政策

Currency201207

13_2

今回の金融政策報告書では 米国内の投資活動が弱いために輸出が想定ほど伸びていないとしながらも 金融業などサービス関連の好調さを示す分析や 商品価格下落がカナダ企業の投資活動を抑制する動きは底打ちしたとの指摘など カナダ景気に前向きな材料も散見されます 当面は 政策金利の据え置きを続けると見通します

為替相場展望2018年10月号

<4D F736F F F696E74202D E835A838B94C5817A837D815B B834A E738FEA816A2E >

中国 資金流出入の現状と当局による対応

< 豪州債券市場の市況および今後の見通し > 2016 年の豪州債券市場では 金利が低下しました 年初から 2 月にかけては 中国株をはじめ世界の株式市場が下落するなど市場のリスク回避姿勢が強まる中 金利低下が進みました 1 月末に日銀のマイナス金利導入発表を受け 欧州など他国でもさらなる金融緩和期

Microsoft PowerPoint - CSIS 【三井住友銀行】 FOMC後のスペシャルレポート(USHY).pptx

ECBも異次元緩和に突入

PowerPoint プレゼンテーション

平成24年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度(閣議了解)

[000]目次.indd


当面の金融政策運営について(貸出増加支援資金供給の延長等、12時29分公表)

エコノミスト便り

株式市場 米国株 国内外の政治動向に注目 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 好調な企業決算発表を受けて上昇米国株式市場は上昇しました 月前半までは2017 年 1-3 月期の決算発表内容が総じて好調であったことが株価を支えました 月半ばには コミー前 FBI( 連邦捜査局 )

( 平成 3 年 11 月 2 日 ) ユーロ / 円 ワイタ ーハ ント (25 日線 ) 3.% 7/ / ( 円 / ユーロ ) / / /15 7/13 8/1 9/7 1/5 11/

受益者の皆様へ 平成 28 年 2 月 15 日 弊社投資信託の基準価額の下落について 平素より弊社投資信託をご愛顧賜り 厚くお礼申しあげます さて 先週末 2 月 12 日 ( 金 ) 以下のファンドの基準価額が 前営業日の基準価額に対して 5% 以上下落しており その要因につきましてご報告いたし

スライド 1

現代資本主義論

Outlook201806

Microsoft Word - 57_1

マイナス金利付き量的 質 的金融緩和と日本経済 内閣府経済社会総合研究所主任研究員 京都大学経済学研究科特任准教授 敦賀貴之 この講演に含まれる内容や意見は講演者個人のものであり 内閣府の見解を表すものではありません

Economic Indicators_  定例経済指標レポート

日本経済の現状と見通し ( インフレーションを中心に ) 2017 年 2 月 17 日 関根敏隆日本銀行調査統計局

Microsoft Word - 3_4

ヘッジ付き米国債利回りが一時マイナスに-為替変動リスクのヘッジコスト上昇とその理由

人民元週間レポート 2017 年 6 月 16 日発行 みずほ銀行 ( 中国 ) 有限公司 中国為替資金部

年 7 月 21 日 団体年金事業部 ECB 理事会レビュー : 総裁の夏休みの宿題 ~ 秋にテーパリング決定へ ~ 当社のシンクタンク 株式会社第一生命経済研究所の田中主席エコノミストによる EC B 理事会レビュー : 総裁の夏休みの宿題 ~ 秋にテーパリング決定へ~

2018 年度第 3 四半期運用状況 ( 速報 ) 年金積立金は長期的な運用を行うものであり その運用状況も長期的に判断することが必要ですが 国民の皆様に対して適時適切な情報提供を行う観点から 作成 公表が義務付けられている事業年度ごとの業務概況書のほか 四半期ごとに運用状況の速報として公表を行うも

Microsoft PowerPoint - PictetMacroWatch_ pptx

為替:マーケット・フォーカス

株式市場 米国株 上値が重く神経質な展開 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は下落しました FOMC( 米国連邦公開市場委員会 ) における利上げの有無 大統領選挙の動向 ドイツの大手銀行の資本不足懸念などに一喜一憂する展開となりました 月半ばにかけて 利上げ観測や原油

株式市場 米国株 先行き不透明感強いがファンダメンタルズは良好 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は下落しました 堅調な経済指標の発表を受けて米国の年内利上げ観測が高まったことで 金利動向の影響を受けやすいディフェンシブセクターの一部が軟調に推移しました また 米

中国:なぜ経常収支は赤字に転落したのか

米失業率と非農業部門雇用者数変化 ( 月次 25 年 1 月 ~214 年 11 月 ) 非農業部門雇用者数変化 ( 千人 前月比 左軸 ) 失業率 (% 右軸) /1 6/9 8/5 1/1 11/

変額年金 ( 特別勘定 ) の現況をご覧になる方に 特にご確認いただきたい事項 投資リスクについて 変額年金保険の特別勘定の資産運用は 国内外の株式および公社債 国内外のその他の有価証券 貸付金 コールローンおよび預貯金等を主な運用対象としておりますので 株価の下落や金利の変動 為替の変動などにより

ファンダの鬼・柳澤 浩と小杉 篤諭の「ファンダメンタルズの学び方、活かし方セミナー!」

ニュースリリース 農業景況調査 : 景況 平成 3 1 年 3 月 1 8 日 株式会社日本政策金融公庫 平成 30 年農業景況 DI 天候不順響き大幅大幅低下 < 農業景況調査 ( 平成 31 年 1 月調査 )> 日本政策金融公庫 ( 略称 : 日本公庫 ) 農林水産事業は 融資先の担い手農業者

株式市場 米国株 新政権の政策期待による上昇も一服 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は上昇しました ISM( 全米供給管理協会 ) 指数など月初に発表された経済統計がおおむね良好であったことを受け 月前半の株式市場は堅調に推移しました 月半ば以降は 高値警戒感な

PowerPoint プレゼンテーション

RW ppt

為替:マーケット・フォーカス

1

Invesco Australian Bond Fund (Monthly)

経済見通し

<4D F736F F F696E74202D E835A838B94C5817A837D815B B834A E738FEA816A2E >

平成30年度第1四半期における運用状況等

利上げを躊躇させる英国家計債務の増大

はじめに日銀は 1 月 29 日に マイナス金利付き量的 質的金融緩和 の導入を決定し 金融緩和の拡大に踏み切った これまで 量的 質的金融緩和 という異例の大規模緩和を 3 年近く続けたにも関わらず 日銀が政策目標とする物価上昇率は足元でゼロ % 近傍に止まっている 原油価格の大幅下落という想定外

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft Word - 732_2

(2) 資産構成割合の推移 ( 給付確保事業 ) 1 資産配分実績の基本ポートフォリオからの乖離の推移 2 実践ポートフォリオと資産配分実績の推移 3. 運用受託機関 平成 29 年 3 月末現在 2

Microsoft PowerPoint - ï¼fiã••PAL镕年+第ï¼fiQ;ver5.pptx

Microsoft PowerPoint - 0.表紙.ppt

PowerPoint プレゼンテーション

PowerPoint プレゼンテーション

短期均衡(2) IS-LMモデル


マネーマーケットマンスリー 2018年3月

平成 21 年 9 月 5 日 角山智 投資環境レポート (2009 年 9 月 ) 1. 主な株価指数 8 月は 中国株が大幅に値下がりしました 反面 出遅れていた英国株が好調です 市場 日本株 日本新興市場 J-REIT 米国株 英国株 中国株 ( 指数 ) (TOPIX) (JASDAQ) (

チャート編 1 日経平均株価 ( 日経 225) TOPIX( 東証株価指数 ) 2,0 NY ダウ工業株 30 種平均株価 ( 米ドル ) ダウセレクト配当込み指数 3,000 28,000 26,000 24, ,000 26,000 2,0 20,000 1,0 24,000 1

Transcription:

平成 24 年 (212 年 )7 月 6 日 NO.212-15 ECB は政策金利を過去最低の.75% に引き下げ ~ 市場心理の維持には必要も 利下げ自体の効果は限定的 ~ 要旨 欧州中央銀行 (ECB) は 7 月 5 日に開催された理事会において 政策金利をそれぞれ 25bp 引き下げ リファイナンス金利は現行の 1.% から.75% とすることを決定した 利下げは昨年 12 月以来 7 ヵ月ぶりで.75% という水準は 28~9 年のグローバル金融危機時を含めて過去最低となる また 中銀預金金利は.% とし これも ECB の創設以来初めてとなる 今回の決定は政策金利の引き下げのみであり 一部で期待された長期の流動性資金供給オペや周縁国の国債購入の再開はなかった ECB のドラギ総裁は 利下げを決定した理由として 1 実体経済における下振れリスクが顕在化したこと 2インフレ圧力が抑制されていること 36 月末に開催されたユーロ圏首脳会合で各国政府による政策コミットメントが確認されたこと などを挙げた 市場では ドイツを含めて弱い経済指標が目立ったことや 先月末のユーロ圏首脳会合での合意 ECB メンバーからの利下げを示唆する発言などを受けて 急速に利下げ観測が高まっていた 利下げは市場のセンチメントを維持するためにはこのタイミングでの決定が必要であった リファイナンス金利を引き下げることで 民間銀行の資金調達コストは少なからず改善する 一方で 中銀預金金利を.% にすることは これまで民間銀行が中銀に預け入れていた資金が銀行貸出などに回ることを促す狙いがあるが 企業の資金需要が弱いため その効果はさほど期待できない ドラギ総裁は 今回の全ての決定が全会一致であったとし そこに決定の重みがあらわれているとした しかし 景気の下振れリスクは認識しており 今回は 25bp の利下げにとどめたものの 当面は各国の取り組みの進展を促しながら 温存した政策金利のさらなる引き下げや その他非伝統的金融政策の必要性を適時適切に判断していくものとみられる 1

1. 今回の ECB の決定とその背景欧州中央銀行 (ECB) は 7 月 5 日に開催された理事会において 政策金利をそれぞれ 25bp 引き下げ 主要政策金利であるリファイナンス金利は現行の 1.% から.75% とすることを決定した ( 第 1 図 ) 利下げは昨年 12 月以来 7 ヵ月ぶりで.75% という水準は 28~9 年のグローバル金融危機時を含めて過去最低となる また 中央銀行への翌日物預金金利は.% とし これも ECB の創設以来初めてとなる 今回の決定は政策金利の引き下げのみであり 一部で期待された長期の流動性資金供給オペや周縁国の国債購入の再開はなかった なお ECB は 6 月 22 日に 資金供給オペの担保として受け入れる資産担保証券 (ABS) の種類を拡大したほか 受け入れ可能な証券の格付けを従来の A マイナス から BBB マイナス まで引き下げるなど 担保基準を緩和する旨を発表している <ECB の決定事項 > 政策金利リファイナンス金利 1.%.75%(25bp 引き下げ 7 月 11 日から ) 限界貸出金利 ( 上限政策金利 ) 1.75% 1.5%(25bp 引き下げ 7 月 11 日から ) 中銀預金金利 ( 下限政策金利 ).25%.% (25bp 引き下げ 7 月 11 日から ) (%) 6. 第 1 図 : 主要金利 5. 4. 3. 限界貸出金利 政策金利 3 ヵ月物金利 (EURIBOR) 翌日物金利 (EONIA) 2. 1. 中銀預金金利. 5 6 7 8 9 1 11 12 ( 資料 )Bloombergより三菱東京 UFJ 銀行経済調査室作成 ( 年 ) ECB のドラギ総裁は 理事会後の記者会見において 利下げを決定した理由として 1 実体経済における下振れリスクが顕在化したこと 2インフレ圧力が抑制されていること 36 月末に開催されたユーロ圏首脳会合で各国政府による政策コミットメントが確認されたこと などを挙げた ドラギ総裁は 先月の理事会において 利下げを主張する委員が数人いたことを明らかにしたものの 市場機能が低下しているため 利下げによる影響は限られる と発言しており その時点では今回の利下げを想定する市場関係者は少数派であった しかし 先月半ば以降 ユーロ圏では牽引役のドイツを含めて企業の景況感の悪化が 2

2. 1.5 1..5. -.5-1. -1.5-2. -2.5 続いたほか ( 第 2 図 ) ユーロ圏の失業率が 11.1% とユーロ導入以来の最悪水準に上昇するなど 弱い経済指標が目立った 一方でドイツの 6 月の消費者物価上昇率 (CPI) が前年比 1.7% と ECB の目標とする 2% 未満になったことで ECB に利下げの余地があるとみられた ユーロ圏の 6 月の消費者物価上昇率 (HICP) は同 2.4% となり こちらも 2% 未満に徐々に近づいている ( 第 3 図 ) ECB 理事会のメンバーからは 7 月の理事会において利下げを検討する あるいは 1.% のリファイナンス金利は必ずしも下限ではない といった発言がでていた さらに 先月末のユーロ圏首脳会議において 銀行監督の統一 ESM( 欧州安定メカニズム ) から銀行への資本注入 スペインへの金融支援に合意するなど一定の成果がみられたことで 次は ECB の対応に注目と 市場の利下げ観測は急速に高まっていた 仮に ECB が従来の金融政策を維持していれば ユーロ圏首脳会合後に改善した市場心理が大幅に悪化する可能性が高く 利下げは市場のセンチメントを維持するためにはこのタイミングでの決定が必要であった 第 2 図 : ドイツの実質 GDP 成長率と PMI ( 前期比 %) ドイツ実質 GDP 成長率 ドイツ製造業 PMI( 右軸 ) 7 8 9 1 11 12 ( 資料 )Eurostat Bloomberg より三菱東京 UFJ 銀行経済調査室作成 (Index) 7 65 6 第 3 図 : ユーロ圏消費者物価指数 ( 前年比寄与度 %) 5. コア 4. 食料品 タバコエネルギー 3. コアインフレ率 HICP 総合 2. 小 1. 拡 55 大 5 45 縮 4 35 3 25 ( 年 ). -1. -2. ECB 目標 2% 未満 7 8 9 1 11 12 ( 年 ) ( 資料 )Eurostatより三菱東京 UFJ 銀行経済調査室作成 2. 利下げの効果リファイナンス金利を.75% に引き下げることで 民間銀行の資金調達コストは少なからず改善する ECB による昨年 12 月と今年 2 月の 3 年物長期資金供給オペで調達した資金の金利は その期間のリファイナンス金利の平均となっているため 今般の利下げにより民間銀行の負担はその分軽くなる 一方で 中銀預金金利を.% にすることは これまで中銀に預け入れていた資金が銀行貸出などに回ることを促す狙いがあるとみられるが ドラギ総裁自身が会見で指摘したように 実際に貸出に回るかどうかは企業の資金需要に基づく 4 月に発表された ECB の銀行貸出調査によると 企業の資金需要は設備投資向けを中心に大きく減少している 今年の第 2 四半期に向けた企業の資金需要見通しは 短期 長期ともにいずれも増加するとされていたが ( 第 4 図 ) 足元の民間向け銀行貸出は伸び悩みが続き 5 月分に関しては前年比.2% と 21 年 3 月ぶりのマイナスに転じた ( 第 5 図 ) 企業の資金需要が弱いため 中銀預 3

金金利を.% に引き下げても銀行貸出を促す効果はさほど期待できない 2-2 -4-6 4 3 2 1-1 -2-3 -4-5 第 4 図 : 企業の資金需要 ( 実績と見通し ) ( 増加した - 減少した %) 4 短期 長期 中小企業 大企業 実績 見通し 3 4 5 6 7 8 9 1 11 12 ( 資料 )ECB 銀行貸出調査より三菱東京 UFJ 銀行経済調査室作成 第 5 図 : ユーロ圏銀行貸出 ( 前年比 %) 25 イタリア 2 フランスユーロ圏 15 ドイツスペイン 1 5-5 7 8 9 1 11 12 ( 年 ) ( 資料 )ECBより三菱東京 UFJ 銀行経済調査室作成 3. 市場の反応 ECB の利下げ発表を受けて ユーロ対ドル相場は前日の 1 ユーロ=1.25 ドル前半から同 1.23 ドル後半まで急落した ( 第 6 図 ) 欧州株価は利下げの発表直後は上昇したものの 利下げ以外の決定がなかったことや ドラギ総裁から 景気の下振れリスクが残っている など悲観的な発言が続いたことで 利下げの効果は打ち消され反落した 周縁国の長期金利は 周縁国国債の購入再開などの示唆がなかったことから スペインの 1 年債金利で 6.4% から 6.8% イタリアで 5.8% から 6% 弱に上昇した ( 第 7 図 ) 1.5 1.45 1.4 1.35 1.3 1.25 1.2 1.15 1.1 1.5 1. 第 6 図 : ユーロ為替相場 ( ドル / ユーロ ) ( 円 / ユーロ ) 対ドル相場 ユーロ高 対円相場 ( 右目盛 ).95 95 11/1 11/4 11/7 11/1 12/1 12/4 12/7 ( 年 / 月 ) ( 資料 )Bloombergより三菱東京 UFJ 銀行経済調査室作成 15 145 14 135 13 125 12 115 11 15 1 8. 7.5 7. 6.5 6. 5.5 5. 4.5 4. 第 7 図 :1 年債利回りと ECB の国債購入額 (%) ECB 週次国債購入額 ( 右軸 ) イタリア (BBB+ ) スペイン (Baa3 ) 11/1 11/4 11/7 11/1 12/1 12/4 12/7 ( 年 / 月 ) ( 注 )( ) 内は格付け 大手 3 社の中で最も低いもの 矢印はネガティブ見通し ( 資料 )ECB Bloombergより三菱東京 UFJ 銀行経済調査室作成 25 2 15 1 5 4

4.ECB の今後のスタンスドラギ総裁は 今回の全ての決定が全会一致であったとし そこに決定の重みがあらわれているとした また 足元の世界経済は 28~29 年のグローバル金融危機時と同様とは全く考えていないとの認識を強調し その理由にユーロ圏の実質 GDP 成長率が当時とは異なり前期比 % 近辺で推移していることを挙げた ECB は 域内の総合的な景況感の改善や外需の安定などを主因に 引き続き年後半に緩やかながらも景気が改善すると見込んでいる 一方で ECB は景気の下振れリスクも強く認識している 欧州債務問題への対応は今後数年にわたり続いていく 先月末のユーロ圏首脳会合での合意も その具体化はこれからであり 進捗を確認する必要がある ECB は 今回は 25bp の利下げにとどめたものの 当面は各国の取り組みの進展を促しながら 温存した政策金利のさらなる引き下げ その他非伝統的金融政策の必要性を適時適切に判断していくものとみられる 以 上 (H24.7.6 大幸雅代 masayo_taiko@mufg.jp) 発行 : 株式会社三菱東京 UFJ 銀行経済調査室 1-8388 東京都千代田区丸の内 2-7-1 当資料は情報提供のみを目的として作成されたものであり 金融商品の売買や投資など何らかの行動を勧誘するものではありません ご利用に関しては すべてお客様御自身でご判断下さいますよう 宜しくお願い申し上げます 当資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが 当室はその正確性を保証するものではありません 内容は予告なしに変更することがありますので 予めご了承下さい また 当資料は著作物であり 著作権法により保護されております 全文または一部を転載する場合は出所を明記してください 5