第5章 体液

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1. 期外収縮 正常なリズムより早いタイミングで心収縮が起きる場合を期外収縮と呼び期外収縮の発生場所によって 心房性期外収縮と心室性期外収縮があります 期外収縮は最も発生頻度の高い不整脈で わずかな期外収縮は多くの健康な人でも発生します また 年齢とともに発生頻度が高くなり 小学生でもみられる事もあ

概要 214 心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症 215 ファロー四徴症 216 両大血管右室起始症 1. 概要ファロー四徴症類縁疾患とは ファロー四徴症に類似の血行動態をとる疾患群であり ファロー四徴症 心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖 両大血管右室起始症が含まれる 心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症は ファ

1 正常洞調律 ;NSR(Normal Sinus Rhythm) 最初は正常洞調律です P 波があり R-R 間隔が正常で心拍数は 60~100 回 / 分 モニター心電図ではわかりにくいのですが P-Q 時間は 0.2 秒以内 QRS 群は 0.1 秒以内 ST 部分は基線に戻っています 2 S

188-189

循環器 Cardiology 年月日時限担当者担当科講義主題 平成 23 年 6 月 6 日 ( 月 ) 2 限目 (10:40 12:10) 平成 23 年 6 月 17 日 ( 金 ) 2 限目 (10:40 12:10) 平成 23 年 6 月 20 日 ( 月 ) 2 限目 (10:40 1

Microsoft Word - 44-第4編頭紙.doc

第6章 循環器系

01 表紙

心不全とは?(Fig.3) 心機能低下に起因する循環不全 と定義され 心臓が全身の組織における代謝の必要量に応じて 血液を十分駆出できない状態です 発症の仕方により 急性心不全 (acute heart failure:ahf) と慢性心不全 (chronic heart failure:chf)

エントリーが発生 真腔と偽腔に解離 図 2 急性大動脈解離 ( 動脈の壁が急にはがれる ) Stanford Classification Type A Type B 図 3 スタンフォード分類 (A 型,B 型 ) (Kouchoukos et al:n Engl J Med 1997) 液が血管

恒久型ペースメーカー椊え込み術

胸痛の鑑別診断持続時間である程度の鑑別ができる 数秒から1 分期外収縮筋 骨格系の痛み 心因性 30 分以内 狭心症食道痙攣 逆流性食道炎 30 分以上 急性心筋梗塞 解離性大動脈瘤 肺塞栓症 急性心膜炎自然気胸 胸膜炎胃 十二指腸潰瘍 胆嚢炎 胆石症帯状疱疹 急性心筋梗塞の心電図変化 R P T

障害程度等級表 心臓機能障害 1 級 心臓の機能の障害により 自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの 2 級 - 3 級 心臓の機能の障害により 家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの 4 級 心臓の機能の障害により 社会での日常生活活動が著しく制限されるもの

スライド 1

Microsoft Word - 1 糖尿病とは.doc

直接還流するように血行動態を修正する手術 ) を施行する ただ 順調なフォンタン循環であっても通常の慢性うっ血性心不全状態であるため いつかは破綻していくこととなる フォンタン型手術は根治的手術ではない また フォンタン型手術適応外となった群には 効果的な薬物治療はなく ACE 阻害薬 利尿薬の効果

心臓弁膜症とはどんな病気 心臓にある弁の異常による病気の総称です 心臓には4つの部屋があり 各部屋の間には血液が 一方向に流れるよう片開きの扉の働きをする弁 逆流防止弁 があります 弁膜の異常は狭窄と逆 流 閉鎖不全 の2つがあります 狭窄は扉の開きが悪くなり 心臓の次の部屋や動脈に血液が送 り出さ

心房細動1章[ ].indd

心臓血管外科カリキュラム Ⅰ. 目的と特徴心臓血管外科は心臓 大血管及び末梢血管など循環器系疾患の外科的治療を行う診療科です 循環器は全身の酸素 栄養供給に欠くべからざるシステムであり 生体の恒常性維持において 非常に重要な役割をはたしています その異常は生命にとって致命的な状態となり 様々な疾患

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d 運動負荷心電図でSTの低下が0.1mV 以上の所見があるもの ( イ ) 臨床所見で部分的心臓浮腫があり かつ 家庭内での普通の日常生活活動若しくは社会での極めて温和な日常生活活動には支障がないが それ以上の活動は著しく制限されるもの又は頻回に頻脈発作を繰り返し 日常生活若しくは社会生活に妨げと

受給者番号 ( ) 患者氏名 ( ) 告示番号 72 慢性心疾患 ( ) 年度小児慢性特定疾病医療意 書 新規申請用 経過 ( 申請時 ) 直近の状況を記載 2/2 薬物療法 強心薬 :[ なし あり ] 利尿薬 :[ なし あり ] 抗不整脈薬 :[ なし あり ] 抗血小板薬 :[ なし あり

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死亡率(人口10 万対1950 '55 '60 '65 '70 '75 '80 '85 '90 ' 心血管系疾患 ( 動脈硬化による ) とがんが死亡の大 部分を占める 脳血管疾患 悪性新生物 結核 心疾患 )肺炎 50 不慮の事故自殺 0 肝疾患昭和

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8. 胸部 X 線写真 (4 月 11 日 ) 心臓 大血管陰影 ( 右第 1 2 弓 左第 1 4 弓 ) X 線像 : 拡大 の意義 左房拡大所見 心臓の血行力学的回転 心胸郭比の求め方と正常値 心不全における X 線写真の肺野所見 ( 血流の再分布 間質性肺水腫 肺胞性肺水腫 ) 9. 心臓超


平成 30 年度循環ブロック講義重要ポイント 1. 循環器疾患の症候学 (2 月 1 日 ) 狭心症の問診のポイント (Nitroglycerin SAVES angina.) 不整脈の問診のポイント 心不全の重症度を表す NYHA の重症度分類 起座呼吸 発作性夜間呼吸困難 中心性チアノーゼと末梢

Microsoft Word - H28度循環ブロック講義の重要ポイント WEB配信用.docx

心臓血管外科・診療内容

Clinical Training 2007

2019/7/9 市民公開講座 2019 健やかな高齢社会を生きるために心臓を守ろう ~ 心不全を知るコトから始めよう ~ 藤枝市立総合病院循環器内科渡辺明規 2019 年 7 月 7 日藤枝市民会館 1

自動車運送事業者における 心臓疾患大血管疾患 対策ガイドライン 概要版 本ガイドラインのポイント 実践 業者が実施スクリーニング検査事医療機関が実施事業者が実施知識 健康起因事故の原因となる心臓疾患 大血管疾患 疾患の原因と予防 ( 参考 ) 関係法令について 心臓疾患 大血管疾患の早期発見と発症予

ただ太っているだけではメタボリックシンドロームとは呼びません 脂肪細胞はアディポネクチンなどの善玉因子と TNF-αや IL-6 などという悪玉因子を分泌します 内臓肥満になる と 内臓の脂肪細胞から悪玉因子がたくさんでてきてしまい インスリン抵抗性につながり高血糖をもたらします さらに脂質異常症

Microsoft Word - 循環ブロック講義の重要ポイント docx

カテーテルアブレーション治療のご説明

Microsoft Word - ●P1 上位の概要

Fig.2 死因死亡数 ( 人 ) 全死因 悪 性 新 生 物 (1) 心 疾 患 (2) 肺 炎 (3) 脳 血 管 疾 患

心臓血管外科手術説明書 国立病院機構東京医療センター心臓血管外科 様

1 ししつ脂質 いじょうしょう へ 高脂血症から 脂質脂質異常症 医療法人将優会クリニックうしたに 理事長 院長牛谷義秀 脂質異常症とは 血液中に含まれる LDL( 悪玉 ) コレステロールと中性脂肪中性脂肪のどちらか一方 あるいは両方が過剰の状態 または HDL( 善玉 ) コレステロールが少ない

臨床所見 ( 申請時 ) 直近の状況を記載症状告示番号 72 慢性心疾患 ( ) 年度小児慢性特定疾病医療意 書 継続申請用 病名 1 洞不全症候群 受給者番号受診日年月日 受付種別 継続 転出実施主体名 転入 ( ) ふりがな 氏名 (Alphabet) ( 変更があった場合 ) ふりがな以前の登

血圧を決める要素 血圧は 心臓から出る血液の量と血管の硬さによって決まります 血圧 心臓から出る = 血液の量 ( 心拍出量 ) 血管の硬さ ( 末梢血管抵抗 )

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臨床調査個人票 新規 更新 189 無脾症候群 行政記載欄 受給者番号判定結果 認定 不認定 基本情報 姓 ( かな ) 名 ( かな ) 姓 ( 漢字 ) 名 ( 漢字 ) 郵便番号 住所 生年月日西暦年月日 * 以降 数字は右詰めで 記入 性別 1. 男 2. 女 出生市区町村 出生時氏名 (

虎ノ門医学セミナー

循環器6) 冠動脈バイパス術 A C 141 循環器 知識 技術 技能 症例 11. 循環器疾患の生化学的診断 ( 新しいバイオマーカーを含む ) A B 135 Ⅳ. 治療 危険因子矯正法 ( 生活習慣変容 ) 135 1) 減塩 A A 136 2) 減量 A A 136 3) 禁

超音波セミナー「症例から学ぶ」 ~こんな技術・知識が役立った!!検査から報告書作成まで~ 心臓領域

Microsoft PowerPoint - 2.医療費プロファイル 平成25年度(長野県・・

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PowerPoint プレゼンテーション

心臓静脈動脈体循環 心臓の働き 肺循環 心臓は 全身に血液を送り出すポンプの働きをしています 生命維持に必要な酸素や栄養素などを含む血液を 拍動によって肺や全身へめぐらせます 肺循環心臓と肺のあいだをめぐる血液循環です 肺で酸素を取り入れ 二酸化炭素を放出します 体循環心臓と全身のあいだをめぐる血液

スライド 1

自動車運送事業者における 心臓疾患大血管疾患 対策ガイドライン 令和元年 7 月 5 日 国土交通省自動車局 事業用自動車健康起因事故対策協議会

基幹施設認定申請書

心電図読解入門

図表 1 1,000 万円以上高額レセプト上位 100 位 ( 平成 28 年度 ) 注 : 主傷病名欄の ( ) は調剤レセプト ( 単位 : 円 ) 順位月額医療費 主傷病名 順位月額医療費 主傷病名 順位月額医療費 主傷病名 順位月額医療費 主傷病名 1 106,941,690 フォンウィルブ

大学教職員の心臓検診の現状 * 和井内由充子 大学保健管理センターの主要業務のひとつに 健康診断とそれに基づく健康管理がある 突然 死にもつながる心疾患の早期発見と管理は重要 である 大学生の心疾患管理に関しては以前報 告 1-6) した 大学のもうひとつの主要構成員で ある教職員の管理の現状を今回

058 肥大型心筋症

CCU で扱っている疾患としては 心筋梗塞を含む冠動脈疾患 重症心不全 致死性不整脈 大動脈疾患 肺血栓塞栓症 劇症型心筋炎など あらゆる循環器救急疾患に 24 時間対応できる体制を整えており 内訳としては ( 図 2) に示すように心筋梗塞を含む冠動脈疾患 急性大動脈解離を含む血管疾患 心不全など

心疾患患による死亡亡数等 平成 28 年において 全国国で約 20 万人が心疾疾患を原因として死亡しており 死死亡数全体の 15.2% を占占め 死亡順順位の第 2 位であります このうち本県の死亡死亡数は 1,324 人となっています 本県県の死亡率 ( 人口 10 万対 ) は 概概ね全国より高

更生相談・判定依頼のガイド

老衰 2% 日本における主な死因 : 動脈硬化性疾患は 25% その他 33% 悪性新生物 ( ガン ) 26% 自殺 3% 不慮の事故 3% 肺炎 8% 脳血管疾患 ( 脳卒中など ) 11% 脳心血管系疾患 25% 心疾患 ( 心筋梗塞など ) 14% 厚生労働省 平成 15 年度人口動態統計

肥満者の多くが複数の危険因子を持っている 肥満のみ約 20% いずれか 1 疾患有病約 47% 肥満のみ 糖尿病 いずれか 2 疾患有病約 28% 3 疾患すべて有病約 5% 高脂血症 高血圧症 厚生労働省保健指導における学習教材集 (H14 糖尿病実態調査の再集計 ) より

h29c04

適応病名とレセプト病名とのリンクDB

標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

循環器系疾患 特発性拡張型心筋症 1. 概要拡張型心筋症は 心筋収縮と左室内腔の拡張を特徴とする疾患群であり 高血圧 弁膜性 虚血性 ( 冠動脈性 ) 心疾患など原因の明らかな疾患を除外する必要がある 2. 疫学 1998 年に施行された厚生省の特発性心筋症調査研究班による全国調査では 拡張型心筋症

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心電図がキライな理由 胸部誘導の肋間がわかりにくい 電極の付け間違いをしていないか不安 結果を聞かれるのがイヤ 患者が女性だと ちょっと 難解な用語ばかり AF? AFL? VT? VF? PSVT? SPVC? PVC? VPC? APC? あぁぁー??? 2

り ( 狭窄といいます ) 血管が急にけいれんして狭くなったり( 攣縮 ) 血の塊( 血栓 ) が出来て詰まってしまうことがあります 冠動脈が狭く十分に心臓の筋肉に血液が供給されない状態で 胸が締め付けられるような感覚 痛みなどを伴った場合 狭心症とよび 循環器専門施設で冠動脈の状態をカテーテルで調

1 疾患別医療費札幌市国保の総医療費に占める入院医療費では 悪性新生物が 21.2% 循環器疾患が 18.6% となっており 循環器疾患では 虚血性心疾患が 4.5% 脳梗塞が 2.8% を占めています 外来医療費では 糖尿病が 7.8% 高血圧症が 6.6% 脂質異常症が 4.3% となっています

疾患に関する参考資料

循環器疾患の理学療法評価 心不全

心房細動の機序と疫学を知が, そもそもなぜ心房細動が出るようになるかの機序はさらに知見が不足している. 心房細動の発症頻度は明らかに年齢依存性を呈している上, 多くの研究で心房線維化との関連が示唆されている 2,3). 高率に心房細動を自然発症する実験モデル, 特に人間の lone AF に相当する

狭心症と心筋梗塞 何を調べているの? どのように調べるの? 心臓の検査虚血チェック きょけつ の きょうさく狭窄のチェック 監修 : 明石嘉浩先生聖マリアンナ医科大学循環器内科

図表 1 1,000 万円以上高額レセプト ( 平成 27 年度 ) 注 : 主傷病名欄の ( ) は調剤レセプト ( 単位 : 円 ) 順位月額医療費主傷病名順位月額医療費主傷病名順位月額医療費主傷病名順位月額医療費主傷病名 1 42,530,080 血友病 A 31 23,383,470 特発性

Microsoft Word 総動脈幹遺残症.docx

TAVIを受ける 患者さんへ

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5. 死亡 (1) 死因順位の推移 ( 人口 10 万対 ) 順位年次 佐世保市長崎県全国 死因率死因率死因率 24 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 位 26 悪性新生物 350

第 3 節心筋梗塞等の心血管疾患 , % % % %

運動療法の効果 運 動療 法は 心 臓手 術を受けるに至った 冠 動脈 疾 患の危険因子を減らす2次予防だけでなく 手術を受けたことによるいろいろな問題点を改善します 1 運動能力 体力が向上します 心臓手術後の運動療法は運動能力を改善させます 弁膜症の場合 弁置換術によって心機能は正常化しま すが

心臓カテーテル検査についての説明文

平成10年度高額レセプト上位の概要

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埼玉医科大学電子シラバス

2 慢性心不全の症状は 慢性心不全では交感神経が活発になったままとなりますので 脈が速く 不整脈が出やすくな ります この症状が 動悸 です また 呼吸が浅く速いこと 肺での酸素の交換が悪くなって いるので呼吸が荒くなることも特徴で この症状が 息切れ です さらに 手足の筋肉や血管 いひろうかん

2 1 心臓リハビリテーションプラン 従来の心疾患治療 心疾患発症 治癒 主治療 追加治療 心臓手術 薬物療法 カテーテル治療 オプション治療 リハビリテーション 高齢者 治療に伴い麻痺が生じた症例 社会復帰目的 ベッドコントロール目的 早期退院 これからの心疾患治療 心疾患発症 症状改善 予後改善

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を示しています これを 2:1 房室ブロックと言います 設問 3 正解 :1 ブルガダ型心電図正解率 96% この心電図の所見は 心拍数 56/ 分 P-P 間隔 R-R 間隔一定の洞調律 電気軸正常です 異常 Q 波は認めません ST 部分をみると特に V1 V2 誘導で正常では基線上にあるべき

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暫定心臓血管外科専門医認定申請書

P002~013 第1部第1章.indd

認定看護師教育基準カリキュラム

1 ムを知ることは, 治療介入時の注意点を知る上で重要である. つまり, 臓器の組織還流を維持するために腎での水と Na 保持作用は重要な代償機構である. 利尿薬投与によって体液量を減少させれば, 浮腫は減少するが, 同時に組織還流も減少するため, その程度によっては臓器障害をきたしうることをよく理

心電図判読講座  ~第一回 肥大・拡大~

Transcription:

循環器 -0 循環器の疾患 疾病の成り立ち ( 病理学 ) 循環障害 pp26-49 循環器疾患 pp93-101 成人看護 [1] 循環器疾患患者の看護 pp124-220 主な疾患とその治療 pp138-180 1. 心不全 2. ショック 3. 不整脈 4. 心臓弁膜症 5. 虚血性心疾患 6. 心膜炎と心筋炎 7. 心筋症 8. 高血圧症 9. 動脈硬化症とメタボリック シンドローム 10. 肺塞栓症 肺高血圧 肺性心 11. 大動脈疾患 12. 先天性心疾患 13. 感染性心内膜炎

1. 心不全 p138 循環器 -1 様々な心疾患によって心機能が低下し 全身が必要とする血液を拍出できなくなった状態を心不全という うっ血性心不全心不全では心拍出量の減少を補うために循環血液量が増加し 肺静脈や中心静脈に血液が貯留する ( うっ血 ) その結果 肺静脈圧や中心静脈圧が上昇し 呼吸困難 起坐呼吸 全身の浮腫 ( むくみ ) などを生じる つまり うっ血という代償を払って心拍出量を維持しようとする これをうっ血性心不全という 通常心不全といえば うっ血性心不全を指す場合が多い ( 註 : 中心静脈 = 上 下大静脈 ) 心原性ショック心不全の一型として心原性ショックがある 心原性ショックとは 心機能の悪化によって心拍出量が極度に減少し 血圧が低下して脳や腎臓などの重要臓器の血流が維持できなくなった状態で 極めて予後が悪い 心不全になっても心拍出量が維持できていればショックにはならない うっ血性心不全と心原性ショックの違いうっ血性心不全では 心拍出量低下を補うための肺静脈 中心静脈圧の上昇 ( うっ血 ) が主な症状となる 一方 心原性ショックでは 心拍出量の低下を代償できず 血圧の低下が主な症状となる うっ血性心不全と心原性ショックが合併する場合もある 左心不全と右心不全うっ血性心不全を左心不全と右心不全に分類する 左心系 ( 主に左心室 ) に障害があり 肺静脈圧 ( 左房圧 ) の上昇をきたすのが左心不全である 一方右心不全は 右心房 右心室の障害で起こる場合 肺疾患に続発する場合 左心不全に続発する場合の3 通りがある 右心不全では中心静脈 (= 上 下大静脈 ) の圧が上昇する 心不全の症状と所見 心拍出量の減少と交感神経の緊張 易疲労感 息切れ 動悸 ( 頻脈 ) 顔色不良 末梢性チアノーゼ 肺静脈圧 ( 左房圧 ) の上昇 ( 左心不全 ) 息切れ 呼吸困難 起座呼吸 肺うっ血 肺水腫 中心静脈圧 ( 右房圧 ) の上昇 ( 右心不全 ) 全身のむくみ 静脈怒張 腹水 心不全の原因と誘因 心機能低下をもたらす心臓病はすべて心不全の原因になりうる ( 心筋梗塞 心筋症 心臓弁膜症 不整脈 etc) これらの基礎心疾患に 過労 感染 塩分の過剰 貧血などの誘因が加わって心不全を発症することが多い

心不全の検査循環器 -2 胸写 心拡大 肺うっ血 肺水腫 胸水心エコー 心臓の動きの低下 心室 心房の拡大 弁の異常などスワンガンツ カテーテル 肺静脈圧 中心静脈圧 心拍出量を調べる ( 心不全のフォレスター分類 ) 心不全の治療 安静 塩分制限 酸素投与 薬剤 : 利尿剤 レニン アンジオテンシン系阻害薬 (ACE-i ARB) βブロッカー 血管拡張薬 強心薬 ( ジギタリス カテコラミン ) 心不全の治療の目的は 急性心不全と慢性心不全で異なる 急性期には うっ血をとることと 低下した心拍出量を増加させることが治療の中心となり 安定した慢性期には 心臓の負荷を減らして心臓を保護することが重要となる そのために上記の薬物を使い分けるが 強心薬は主に急性期に使い レニン アンジオテンシン系阻害薬や βブロッカーは主に慢性期に用いる 利尿薬は急性期にも慢性期にも使用する 2. ショック p144 ショックとは 血圧が低下し 脳 腎臓など重要臓器の血流が保てなくなった状態である 原因として 心拍出量の極度の低下と 末梢血管の異常拡張 + 透過性亢進とがある 心拍出量低下の原因としては 心筋梗塞などによる心機能の低下( 心原性ショック ) と 出血などによる循環血液量の減少 ( 循環血液量減少性ショック ) などがある 末梢血管の異常拡張は アナフィラキシー ( アレルギーの一種 ) エンドトキシン ( 細菌の内毒素 ) などで起こる ( 血液分布異常性ショック ) ショックの中心症状は 血圧低下( 収縮期血圧 90mmHg) であり これに頻脈 呼吸促迫 尿量減少 意識障害などが加わる 通常ショックでは皮膚が冷たく蒼白になり 冷汗 チアノーゼを認めるが 末梢血管拡張によるショックでは皮膚は温かい ショックの分類 ( 疾病の成り立ち p42 も参照すること ) 心原性ショック 急性心筋梗塞 心筋炎 重症不整脈 循環血液量減少性ショック (= 低容量性ショック ) 出血 脱水 熱傷 血液分布異常性ショックエンドトキシン ショック (= 細菌性ショック ) 敗血症アナフィラキシー ショック (=アレルギー性ショック) 食物 薬剤 蜂毒( 虫刺症 ) のアレルギー神経原性ショック 脊髄損傷 心外閉塞 拘束性ショック 肺塞栓 心タンポナーデ

3. 不整脈 p147 循環器 -3 不整脈とは 脈の乱れ 洞性頻脈以外の頻脈 ( 心拍数 100) 徐脈 ( 心拍数 <50) 不整脈の症状 所見と合併症症状 所見 動悸 ふらふら 胸痛 胸部圧迫感 脈の結滞 乱れ 頻脈 徐脈 失神合併症 心不全 ショック 突然死 ( 最重要 ) 脳塞栓症( 心房細動の場合 ) アダムス ストークス発作 ( 症候群 ) 不整脈が原因で 失神 めまいなどの脳虚血症状を起こすこと VT VFなどの頻脈性不整脈でも 洞不全 房室ブロックなどの徐脈性不整脈でも起こる 不整脈の原因 a. 心臓に原因不整脈を主症状とする心臓病 WPW 症候群 QT 延長症候群 ブルガダ症候群 etc 他のすべての心臓病も不整脈の原因になりうる 心筋梗塞 心筋症 心臓弁膜症 心不全 etc b. 心臓外に原因精神的ストレス 貧血 甲状腺機能亢進症 電解質異常 ( 低 K 血症 高 K 血症 ) 薬剤 etc 不整脈の検査 12 誘導心電図 24 時間心電図 ( ホルター心電図 ) 負荷心電図電気生理学的検査 不整脈の治療 治療の目的 1. 突然死の予防 2. 不整脈に伴う血行動態異常 ( 血圧低下 心不全など ) の改善 3. 不整脈に伴う不快な症状の改善 4. 脳塞栓症の予防 ( 心房細動の場合 ) 治療の方法頻脈性不整脈に対して 抗不整脈薬 カテーテル アブレーション ( 焼灼術 ) 徐脈性不整脈に対して ペースメーカー心室細動 持続性心室頻拍に対して 除細動器 AED( 自動体外式除細動器 ) ICD( 植え込み型除細動器 )

不整脈各論 ( 致死的な不整脈) p149 表 1-5 改変循環器 -4 A 頻脈性不整脈 p148 A-1 上室性 心房期外収縮 APC 心房頻拍 AT 心房粗動 AFL 心房細動 AF( 発作性 慢性 ) 発作性上室性頻拍 PSVT(WPW 症候群など ) A-2 心室性心室期外収縮 VPC 心室頻拍 VT( 非持続性 持続性 )* 心室細動 VF *VPC の3 連発以上を VT という 持続時間が30 秒未満のものを非持続性 VT 30 秒以上のものを持続性 VT という B 徐脈性不整脈 p155 B-1 洞不全症候群 Sick sinus syndrome I 型 洞徐脈 II 型 洞停止 洞房ブロック III 型 徐脈頻脈症候群 B-2 房室ブロック AV block 1 度房室ブロック 2 度房室ブロック ( ウェンケバッハ型 モービッツ 2 型 ) 3 度房室ブロック (= 完全房室ブロック ) (C 心停止 Cardiac arrest) 心静止 asystole 心電図は平坦となり 心臓が電気的に活動していない 心室細動 VF 心筋が不規則に収縮して統一した収縮運動がなく 血液の拍出がない 無脈性電気活動 pulseless electrical activity (PEA) 心電図上 電気活動はあるが血液の拍出がないもの 無脈性心室頻拍 pulseless VT 心室頻拍の中でも血液の拍出がないもの 上記のうち AED( 電気ショック ) の適応となるのは VF と pulseless VT である

期外収縮の鑑別循環器 -5 APC VPC 心房期外収縮 心室期外収縮 発生部位 心房 心室 先行 P 波 あり なし QRS 幅 正常 広い 生命予後 良い 大体良いが悪いこともある APC VPC 1 VPC 2 VPC 3 頻拍症の鑑別 PSVT AFL AF VT VF 発作性上室性頻拍 心房粗動 心房細動 心室頻拍 心室細動 発生部位 心房 心室 心房 心房 心室 心室 リズムの規則性 規則的 規則的 不規則 概ね規則的 不規則 QRS 幅 正常 正常 正常 広い 広い 生命予後 大体良い 大体良い 大体良い 不良 極めて不良 その他の特徴 鋸歯状波 細動波 突然死 備考 WPW など 脳塞栓 電気ショック 電気ショック

PSVT 1 PSVT 2 循環器 -6 AFL 1 (4:1 伝導 ) AFL 2 (2:1 伝導 ) AF VT 特殊な VT VF

徐脈性不整脈の鑑別 : 洞不全症候群 (SSS) と房室ブロック (AV block) 循環器 -7 徐脈性不整脈の分類 ( 再掲 ) 1 洞不全症候群 Sick sinus syndrome I 型 洞徐脈 II 型 洞停止 洞房ブロック III 型 徐脈頻脈症候群 (I 型や II 型に 発作性心房細動が合併したもの ) 2 房室ブロック AV block 1 度房室ブロック 2 度房室ブロック ( ウェンケバッハ型 モービッツ 2 型 ) 3 度房室ブロック (= 完全房室ブロック ) SSS AV block ブロック部位 洞結節 房室結節 P 波 P 波が遅い or 出ない P 波は正常 P と QRS の関係 正常 P に続く QRS が遅れる or 出ない 失神 ある ある 突然死 ない ある ペースメーカー 失神あれば適応 モービッツ 2 型 ~3 度房室ブロックで適応 その他 心房細動を伴うことあり 3 度房室ブロックでは P 波に無関係に QRS がでる SSS( 洞停止 ) AV block(3 度房室ブロック )

4. 心臓弁膜症 p161 pp175-177 循環器 -8 心臓の弁が変性 変形すると 狭窄 (Stenosis) や閉鎖不全 (= 逆流 Regurgitation) を起こす これを心臓弁膜症という 狭窄と逆流が同じ弁に合併することもある 狭窄と逆流は 大動脈弁 (A 弁 ) 僧帽弁(M 弁 ) 肺動脈弁(P 弁 ) 三尖弁(T 弁 ) の 4 つの弁それぞれに起こりうる これらを組み合わせて AS( 大動脈弁狭窄症 ) MR( 僧帽弁閉鎖不全症 ) のように略する 狭窄と逆流が合併することもしばしばあり ASR( 大動脈弁狭窄兼閉鎖不全症 ) のように表記する 臨床的に重要なのはAS,AR,MS,MRである 弁膜症が進行すると 心不全で死亡する 突然死も起こりうる 軽症の弁膜症では薬物治療よって心不全をコントロールするが ある程度重症化すれば手術が必要となる 手術には弁形成術と人工弁置換術があり 人工弁には機械弁と生体弁がある (p176 参照 ) 人工弁では 感染性心内膜炎予防のため 歯科治療などの前に抗菌薬を投与する とくに機械弁を植え込んだ場合は ワーファリン内服による抗凝固療法が一生必要である 大動脈弁 (A) 僧帽弁 (M) 肺動脈弁 (P) 三尖弁 (T) 狭窄 (S) 逆流 (R)

5. 虚血性心疾患 p162 循環器 -9 虚血性心臓病 = 冠動脈疾患 = 狭心症 + 心筋梗塞日本人の死因の2 番目は心疾患 人口 10 万人あたり年間約 120 人が心疾患で死亡 この 1/3~1/4 が心筋梗塞である 冠動脈の動脈硬化 ( 粥状硬化 ) によって 狭窄や閉塞が起こる 冠動脈の狭窄 心筋虚血 = 狭心症冠動脈の閉塞 心筋壊死 = 心筋梗塞狭心症 心筋梗塞の治療には 薬物以外に 冠動脈インターベンション (PCI) 冠動脈バイパス術(CABG) p175 がある (1) 狭心症 p163 狭心症の原因の大部分は冠動脈の動脈硬化 ( 粥状硬化 ) による血管の狭窄である 狭心症の一部は冠動脈のスパズム ( れん縮 ) を原因としており これを冠れん縮性狭心症 (VSA) または異型狭心症という わが国では狭心症の1 割強が VSA といわれている 狭心症は通常労作時に起こる これを労作性狭心症という 一方 VSA は 明け方や安静時に起こることが多い 狭心症の症状は持続数分 ( 長くても30 分以内 ) の胸痛 ( 胸部圧迫感 しめつけ感 胸苦しさ ) である 狭心症の発作は 通常ニトログリセリンの舌下によって軽快する 心電図上の特徴は発作時のST 低下だが 非発作時の心電図では異常がないことが多い そのため 運動などの負荷を行って心電図変化を誘発させることがある 確定診断は 冠動脈造影や冠動脈 CT による冠動脈狭窄またはスパズムの確認である 狭心症の治療の目的は 第 1に心筋梗塞の予防 第 2に胸痛発作の予防である (2) 心筋梗塞 p165 心筋梗塞の原因は 冠動脈の粥状硬化巣 (=プラーク) の破綻と血栓形成による閉塞である 狭心症は心筋梗塞の前段階と考えてよいが 安定狭心症から心筋梗塞を発症する場合と 不安定狭心症から心筋梗塞に移行する場合と 狭心症がなく突然心筋梗塞になる場合とがある 発症して 1 ヶ月以内を急性心筋梗塞 それ以降を陳旧性心筋梗塞という 心筋梗塞の症状は 通常 30 分以上続く 強い胸痛である 心電図上の特徴は T 波の増高 ST 上昇 Q 波の出現 T 波の陰転だが とくに Q 波が重要 心筋梗塞の急性期は絶対安静とし 酸素を吸入させ 胸痛に対して塩酸モルヒネを投与する 急性心筋梗塞の治療でもっとも重要なのは 発症後なるべく早期 (6 時間以内 ) に 閉塞した冠動脈を再開通させることである このため血栓溶解療法やバルーン ステントを用いたPCIを行う 心筋梗塞の死亡の原因は不整脈 ( 心室細動など ) 心破裂 心不全などである 死亡率は5~20% で 早期に再開通するほど救命率が高い

循環器 -10

6. 心膜炎 慢性収縮性心膜炎 心筋炎 p167 循環器 -11 心膜炎には心外膜炎と ( 感染性 ) 心内膜炎とがある 通常心膜炎といえば心外膜炎を指す 感染性心内膜炎については後述する 心外膜炎とは ウイルス感染 結核菌感染 心筋梗塞 癌の転移などによって起こる心外膜の炎症である 心外膜炎の症状は呼吸や体位で変化する胸痛 発熱など 心外膜炎に伴って急速に心嚢水 ( しんのうすい ) が貯留すると 心臓の拡張が障害される これを心タンポナーデといい ショックに至ることもある この場合 心嚢穿刺 ( しんのうせんし ) が必要である 心外膜炎の後遺症として 心外膜が癒着し 心臓の拡張が障害されるのが ( 慢性 ) 収縮性心外膜炎である 心筋炎とは 主にウイルス感染によって起こる心筋の炎症である 心筋炎では心筋が動かなくなり 心不全やショックに至ることがある 7. 心筋症 p168 心筋症には おもに肥大型心筋症 (HCM) と拡張型心筋症 (DCM) とがある 肥大型心筋症は著明な左室壁の肥大 拡張型心筋症は著明な左室の拡大と壁運動低下を特徴とする 肥大型心筋症の一部は遺伝によるが 原因不明な場合が多い 肥大型心筋症は 無症状で予後良好のものから 心不全 突然死を起こすものまで多彩である 肥大型心筋症の一部は拡張型心筋症に移行する 拡張型心筋症の多くも原因不明だが 肥大型心筋症から移行するもの 心筋炎から移行するものがある 拡張型心筋症の多くは重症の心不全や重症不整脈を起こし 予後不良である 心臓移植の適応になることも多い

8. 高血圧症 p170 解剖生理のプリントの血圧の項 ( 循 -13~16) も復習すること循環器 -12 高血圧は本態性高血圧 (90%) と 2 次性高血圧 (10%) に分けられる 生活習慣と関係が深いのは前者である 本態性高血圧は 塩分の過剰摂取や遺伝 肥満 運動不足 飲酒などさまざまな要因が複合して起こり 原因を単一に特定できないものである 2 次性高血圧は 腎臓病や血圧を上げるホルモンを産生する腫瘍など 特定の原因から起こるものである <2 次性高血圧の分類 >p171 腎性高血圧 腎実質性 腎血管性内分泌性高血圧 甲状腺機能亢進症 原発性アルドステロン症 クッシング症候群 褐色細胞腫その他 大動脈縮窄など 血圧が上がるほど動脈硬化が進む 脳卒中 ( 脳梗塞と脳出血 ) 虚血性心臓病 腎硬化症などを起こす 血圧が上がるほど心肥大 ( 左室肥大 ) が進む (= 高血圧性心臓病 ) 心不全の原因となる 高血圧の基準は 収縮期 140mmHg 以上または拡張期 90mmHg 以上である ( 至適血圧は 120/80mmHg 未満 ) 家庭血圧による高血圧の基準は 収縮期 135mmHg 以上または拡張期 85mmHg 以上である 収縮期血圧の方が拡張期血圧より重要である 血圧を下げるために 食塩制限 (1 日 6g 以下 ) 運動 肥満の是正 飲酒制限などの生活習慣の改善を行う 高血圧以外の動脈硬化の危険因子として 脂質異常症 喫煙 糖尿病などがあり 高血圧患者では血圧管理と同時にこれらの危険因子も管理する必要がある 代表的降圧薬に カルシウム拮抗薬 レニン アンジオテンシン系阻害薬 利尿薬などがある

9. 動脈硬化症とメタボリック シンドローム循環器 -13 動脈硬化は 脳卒中 ( 脳梗塞と脳出血 ) 狭心症 心筋梗塞 腎硬化症 腎不全 閉塞性動脈硬化症(ASO) など 多くの循環器疾患の原因である 動脈硬化には 粥状硬化 ( じゅくじょうこうか アテローム硬化 ) 細動脈硬化 中膜硬化がある 粥状硬化(1mm 以上の血管 ) 狭心症 心筋梗塞 脳梗塞( アテローム血栓性脳梗塞 ) 細動脈硬化(1mm 未満の血管 ) 脳梗塞( ラクナ脳梗塞 ) 脳出血 腎硬化症 中膜硬化は 臨床的にあまり重要でない通常動脈硬化といえば 粥状硬化を指す場合が多い (= 狭義の動脈硬化 ) 粥状硬化では 血管内膜にできた粥腫 ( じゅくしゅ プラーク ) によって血管が狭窄し また粥腫が破綻すると血栓が形成されて血管が閉塞する 動脈硬化の危険因子 ( 原因 ) は 脂質異常症 高血圧 喫煙 糖尿病 加齢 性別 ( 男性 ) などである 高脂血症 ( 脂質異常症 ) 血清脂質の中では LDL( 悪玉 ) コレステロール HDL( 善玉 ) コレステロール TG( 中性脂肪 ) が重要 LDL コレステロールが高いほど動脈硬化が進む HDL コレステロールが低いほど動脈硬化が進む 中性脂肪が高いほど 動脈硬化が進む とくに中性脂肪値は食後に大きく上昇する 血清脂質の正常値 LDL( 悪玉 ) コレステロール : 140mg/dL 未満 HDL( 善玉 ) コレステロール : 40mg/dL 以上 TG( 中性脂肪 ) : 150mg/dL 未満 ( ただし空腹時 ) メタボリック シンドローム ( メタボリック症候群 ) 過食と運動不足によって内臓脂肪が増える 内臓脂肪の増加によって血圧 血糖 中性脂肪 HDL が起こる これをメタボリック症候群という メタボリック シンドロームは LDL コレステロールとは別系統の動脈硬化の危険因子群である メタボリック シンドロームの診断基準は ウエスト周囲径 : 男性 85cm 以上女性 90cm 以上 ( 内臓脂肪面積 100 平方 cm 以上に相当 ) に加えて下記の3つのうち2つ血清脂質異常 : TG( 中性脂肪 ) 150mg/dL 以上 or HDL 40mg/dL 未満血圧高値 : 130/85mmHg 以上 ( 最高 130 以上 or 最低 85 以上 ) 高血糖 : 空腹時血糖 110mg/dL 以上

10. 肺 ( 血栓 ) 塞栓症 肺高血圧 肺性心 p172, 疾病の成り立ち p89-90 循環器 -14 下肢の静脈の血液のうっ滞により血栓が形成され ( 深部静脈血栓症 ) これが肺動脈につまることがある これを肺 ( 血栓 ) 塞栓症といい 突然の胸痛 呼吸不全から右心不全 ショックに至ることがある 肺動脈の血圧が持続的に上昇した状態を肺高血圧という 肺気腫などの肺疾患や 肺塞栓症によるもの 心臓弁膜症などの左心不全に続発したもの (2 次性肺高血圧 ) と 原因不明のもの ( 原発性肺高血圧 ) がある 肺高血圧が重症化すると右心室が肥大 拡大して右心不全を生じる ( 肺性心 ) 11. 大動脈疾患 p177 ( 真性 ) 大動脈瘤大動脈瘤は破裂するまで無症状のことが多いが 破裂すると予後不良胸部大動脈瘤では 反回神経を圧迫し嗄声を生じることがある動脈瘤の破裂を防ぐためには 血管内圧を低く保つ必要がある胸部大動脈瘤は直径 6cm 腹部大動脈瘤は直径 5cm 以上で 手術の適応 解離性大動脈瘤 ( 大動脈解離 ) Stanford A 型 解離が上行大動脈を含むもの 予後が悪いので手術の適応あり Satnford B 型 解離が上行大動脈を含まないもの 予後は比較的良好なので保存的に治療する A 型解離では 心タンポナーデ ( 上行大動脈から浸み出した血液により心臓が圧迫される ) 大動脈弁閉鎖不全( 大動脈基部の拡大による ) 急性心筋梗塞( 大動脈基部の解離により冠動脈が閉塞する ) などを生じることが多い 緊急手術を行わない場合 48 時間で死亡率 50% に達する

12. 先天性心疾患 p178 循環器 -15 先天性心疾患 = 心奇形 新生児の約 1% VSD,PS,ASD,ToF の順に多い 分類 : 1 左右短絡型( 肺血流量増加型 ) VSD,ASD,PDA 2 右左短絡型( チアノーゼ型 ) ToF, アイゼンメンジャー症候群 3 弁 流出路 大血管の狭窄または弁の逆流 PS 4 これらの合併 (1)ASD( 心房中隔欠損症 ) 心房レベルで左右短絡 ( 肺血流量増加型 ) (2)VSD( 心室中隔欠損症 ) 心室レベルで左右短絡 ( 肺血流量増加型 ) (3)PDA( 動脈管開存症 ) 大動脈 - 肺動脈レベルで左右短絡 ( 肺血流量増加型 ) (4)ToF( ファロー四徴症 ) 肺動脈狭窄 (PS)+ 心室中隔欠損 (VSD) + 右室肥大 + 大動脈騎乗 心室レベルで右左短絡 ( チアノーゼ型 ) (5) アイゼンメンジャー症候群肺高血圧による右左短絡 ( チアノーゼ型 ) 左右短絡 ( 肺血流量増加型 ) の ASD VSD PDA でも 重症化すると肺高血圧となり 最終的には右左短絡となってチアノーゼを生ずる

循環器 -16 (6) その他 :PS( 肺動脈狭窄症 ) AS( 大動脈狭窄症 ) CoA( 大動脈縮窄症 ) TGA( 大血管転位症 ) ECD( 心内膜床欠損症 ) TAPVR PAPVR( 肺静脈還流異常 )etc 肺 / 体血流比 (Qp/Qs) について 感染性心内膜炎の予防について p225 高リスク チアノーゼ型 ( 重症化しやすい ) 大部分の先天性心疾患低リスク ASD 13. 感染性心内膜炎 p215 感染性心内膜炎とは 心臓の弁や心内膜に 連鎖球菌やブドウ球菌などが感染して細菌の塊 ( 疣腫 ゆうしゅ ) を形成し 敗血症を引き起こすものである 血管の塞栓や弁の破壊による弁膜症を合併し 予後が悪い 弁膜症や先天性心疾患に伴う異常血流 人工弁置換術による異物があると起こりやすい 上記の基礎心疾患があるときに 歯科治療や手術などで菌血症が起こると発症する 基礎心疾患があるときは 感染性心内膜炎の予防のため 歯科治療や手術などの前に抗菌薬の投与が必要