中学部国語科学習指導案 指導者教諭登田祥子 1 日時平成 29 年 12 月 1 日 ( 金曜日 ) 第 3 校時 10:55~11:45 2 学級中学部第 3 学年 1 組 ( 女子 5 名 ) 3 場所中学部第 3 学年 1 組教室 (216 教室 ) 4 単元名 情報を読み解く ~ 新聞記事を読み比べよう ~ ( 現代の国語 3 三省堂 ) 5 単元設定の理由 単元観本単元は, 主として中学校学習指導要領国語 ( 平成 20 年 ) 第 3 学年 C 読むこと の指導事項ウ 文章を読み比べるなどして, 構成や展開, 表現の仕方について評価すること の能力の育成をねらいとして設定した 主教材である 情報社会を生きる メディア リテラシー は, メディア リテラシーの必要性を論じた説明的文章である 筆者は, メディアが伝える情報は, 現実が再構成されたものであると指摘し, 情報社会に生きる私たちは, 建設的な批判力であるメディア リテラシーを身に付け, 私たち自身で情報社会をつくる必要性があると述べている この文章は, 生徒にとってなじみの薄い用語が多いものの, 文章も全体的な論旨がつかみやすい構成になっている また, メディア リテラシー については第 3 学年の社会科で既に学習した内容であり, ある程度は理解し, 知識として持っている さらに, ほとんどの生徒は日常生活において日々何らかのメディアに接しており, 生徒自身の実生活とのつながりもあることから, 関心を持って読むことができる教材であると考える 主教材に続く 新聞記事を読み比べよう は, メディアによる報道が 構成されたもの であることを実感することができる教材である 教科書で扱われている 2 つの記事は世界文化遺産に登録された富士山の山開きという同じ題材でありながら対照的な内容となっている 主教材における筆者の メディアが伝える情報は, 取捨選択の連続によって現実を再構成した恣意的なものである という主張がよく表れており, 対比からそれぞれの特徴をとらえることができる教材である 他教科で学習した メディア リテラシー の知識を具体的に理解する学習に適している また, 聴覚障害のある生徒にとって, 視覚メディアの代表格である新聞は, 地域や社会とつながりを持ち, 円滑な社会生活を送る上で貴重な情報源となる 実際の新聞記事に触れ, メディアの特性を実感する学習を通して, 新聞を読むことに対する関心と積極的に新聞を読もうとする態度を育むことができると考える 生徒観本学級は, 単一障害の女子生徒 5 名で編制されている 音韻意識があり, 音声を伴う手話を用いて, 活発な意見交換を行うことができる また,5 名のうち 4 名は FM 補聴器を装用しており, 音声による指示が比較的届きやすい状況にある また, 身近な事柄が論じられた説明的文章を読むことに苦手意識はなく, 段落分けや要旨をとらえる学習において, 語彙の面では難しさはあるが積極的に取り組むことができる これまでの 対比 から相違点をとらえる学習, 見出し から内容を予想する学習においても, 関心を持って取り組むことができていた 全国学力 学習状況調査 (H29) おいても, 文学的文章に比べ, 説明的文章は正答率が高い 一方で, 基礎 基本学力状況調査 (H28) では,2 つの詩の共通点から作者の考えをまとめるという設問において, 条件に合った記述ができた生徒はいなかった このことから, 文章の構成や展開, 表現の仕方や工夫について関心を持ち, 自分の考えを持つことはできるが, 複数の文章を読み比べ, それらの共通点や相違点についての気付きを評価し, 話したり書いたりして表現する力は不十分であると考える
また, 新聞記事を読んで要旨をつかみ, まとめることにも課題がある 実際の新聞記事の読解には, 抽象的な語彙や普段の生活で触れる機会がほとんどない語彙や新聞独特の言い回しの理解に加え, 既有知識や経験が必要とされるためである 全国学力 学習状況調査の生徒質問紙の回答を見ると, 新聞を読んでいるか では, 週 1~3 回 が 1 名, 月 1~3 回 が 2 名, 全く読まない が 2 名であった また, 地域や社会の問題や出来事に関心があるか という問いに対し, 3 名の生徒が 当てはまらない と回答している したがって, 生徒たちは新聞記事を題材とした学習に難しさを感じることが予想される 個人の実態については省略する
指導観本単元で付けたい力は, ことばによる伝達の特性について理解し, 留意すべき点を自覚することで, 効果的なコミュニケーションを形成する力である 本学級の生徒は, ことばによるコミュニケーションのさまざまな場面で ことばの理解の難しさ や ことばの伝わりにくさ を実感している 新聞の記事を読み比べることで, さまざまな文章の特徴や効果に気付き, 評価する学習を通じて, 自身の言語生活を豊かにすることを目指す 指導にあたっては, 単元全体と 1 単位時間の学習の流れにおいて,3 つの つ ( つかむ 見通す, 追究する, 使ってみる 振り返る ) を意識し, 生徒が見通しを持って主体的に課題に取り組めるよう工夫したい そのために, 生徒が単元の課題 学習の意義が理解できるように, 単元目標と毎時間のめあてを明確に示し, 振り返り評価シートで毎時間の学習をしっかり振り返らせる 振り返り評価シートに課題解決の過程と毎時間の気付きを記録する中で, それぞれの時間の学習が単元全体の課題解決につながっていると感じさせ, 学習意欲につなげたい また, 主教材で筆者が主張する メディア リテラシー の重要性については 社会科だけでなく, 技術 家庭科, 道徳の授業においても関連する学習をしている したがって, 今回の学習では, 既習事項に関連付けながら実際に用いられていることばや表現に着目した活動を展開していくことにする まず, 一次の つかむ 見通す では, 課題意識を持たせるために, 生徒にとってなじみのあるニュースを取り上げた記事を複数提示し, 比較させることで違いに気付かせ, なぜ違うのかを考えさせる また, 社会科の マスメディアと世論 を学習した際に比較した新聞の社説に触れ, どのような気付きがあったかを発表させる 既有の興味 関心と既習事項を引き出し, これから学習する単元は, 他教科での学習や実生活につながっている, 役に立つ と思わせることで, 生徒の主体的な学習を促したい 次に, 二次の 追究する では, まず, これまでの説明的文章の読み方を思い出させ, 情報社会を生きる 全体の構成を確認する 文章を読むことで, メディアの特性とメディア リテラシーの必要性について 知識を広げたり, 自分の考えを深めたりすること ができるように, 思考が整理できるワークシートを準備する また, それぞれの考えを交流する場を設定し, 考えがさらに深まるよう支援する そして, 次の新聞記事の読み比べによって, メディアが送り出す情報は送り手が情報を取捨選択して意図的に構成した情報であることを具体的に理解させた上で, どのような立場からどのような人々に向けて書かれているのか, 送り手にはどのような意図があるのか, それを効果的に伝えるためにどのような表現の工夫を用いているのかを考えさせたい まずは, 対比する 2 つの記事が 同じ出来事 を報道したものであるという前提を明確に押さえ, 読者として双方の記事から受けた印象や感想を交流する中で, 両者が異なる視点から再構成されたものであることに気付かせる 2 つの記事を読み進めていく上では, 語彙不足による難しさと知識 経験不足による難しさが考えられる そこで, 全体での内容の確認の際には語彙や表現の意と用法を丁寧に確認するとともに, ことばの二面性 ( プラス評価 マイナス評価 ) について考え, ことばに隠れている送り手の思いが理解できるよう導く また, 富士山の山開き や 登山 についての知識を共有する場を設け, それぞれの記事に書かれている内容が正しくとらえられるよう支援する さらに, ワークブックを用いて観点ごとに内容を整理させると同時に,2 つの記事から得られた情報を 1 つの絵にまとめて表現させることで, メディアが伝える情報は, 送り手の意図によって取捨選択されたほんの一面であるということを視覚的 映像的にも理解できるよう工夫したい そして, 三次の 使ってみる 振り返る で, 単元全体の課題となる言語活動として, 生徒自身が選んだ記事の読み比べ を行う 前時までの学習を活用しながら, 手順に従って比較し, それぞれの送り手の視点や伝えたいことの違い, 表現の工夫が読み取れるよう支援する 新聞に対する生徒の抵抗感の軽減と授業の効率化を考慮して, この活動で教材として用いる新聞記事は指導者が準備することにする 生徒にとって関心が持ちやすく, 前提となる知識がさほど要求されない出来事を提示することで, 生徒の新聞読解に対するハードルを下げるとともに, 生徒の意欲を引き出し, 読む 学習の楽しさを実感させたい この単元での学びや気付きが実際のコミュニケーションや次の 書くこと の単元につながるよう指導の工夫を図る 本時は,2 つの新聞記事を比較し, 文章や構成や表現の仕方について評価し, 自分の考えをまとめる学習である 意欲を高め, 主体的に発見し, 思考し, 選択する活動を促すために, 生徒に
とって身近な いいね! という評価方法を取り入れる 他者との積極的な交流の中で自分の考えを深められるよう, 自己と他者の いいね! シールを異なる色にし, 自他の意見を一覧できる形で示す 視覚優位型の本学級の生徒たちにとって, 状況の整理する上で有効な手立てであると考える 本時の活動では,1 つ 1 つのことばとじっくり向き合い, ことばを表面的にとらえて理解するのではなく, ことばや表現に 隠されたもの を追究し, そこから表現の工夫や効果の意義に気付き, 自らの表現も工夫をしようという意欲が高まるよう支援したい 6 単元の目標 ことばによる伝達の特性について理解し, 留意すべき点を自覚することで, 効果的なコミュニケーションを形成することができるようになる 7 単元の指導計画 ( 総時数 7 時間 ) 次学習内容 ( 配時 ) 一次 (1) つかむ 見通す 新聞記事の読み方を振り返り, 学習活動の見通しを持つ 情報社会を生きる を通読し, 語句の意味を確認する 評価規準 学習活動の見通しを持ち, 文章の内容に興味 関心を示している 文章の構成を理解し, おおまかな内容をとらえている 評価の観点関話書読言 二次 (4) 情報社会を生きる を読んで, メディア リテラシーの概念を理解する メディアの 利点 と 限界 を理解し, それぞれの点について, 具体例を挙げて自分 の考えを述べている メディア リテラシーについて理解し, メディアに対する筆者の考えをとらえている 追究する 世界遺産に登録された富士山の山開きについての 2 つの記事を読み比べる ( 本時 4/4) 2 つの記事の内容を正確にとらえ, 視点のの違いをとらえている 2 つの記事を読み比べ, 文章の構成や表現の仕方に見られる工夫を見付け, その効果を考え, 説明している 三次 (2) 振り返る 使ってみる 生徒自身が選んだ出来事の報道について, 2 つの記事を読み比べる 2 つの記事の内容を正確にとらえ, 様々な観点から読み比べている 読み比べることによって気付いたことを整理し, 自分の考えをまとめている
Α 8 本時の目標 2 つの記事を読み比べから, 文章の構成や表現の仕方に見られる工夫を見付け, その効果を考え, 説明することができる 9 本時の評価基準十分満足できる状況おおむね満足できる状況努力を要する生徒への手立て 2つの記事を読み比べ, 文章の構成や表現の仕方に見られる工夫を見付け, その効果を考え, 根拠を明確にして分かりやすく説明している 2つの記事を読み比べ, 文章の構成や表現の仕方に見られる工夫や効果を考え, 自分の考えを説明している それぞれの記事が 富士山の山開き をどのような観点で切り取っているかを確認させる ワークブックに整理したものをもとに, それぞれの記事に用いられている表現や, 構成の仕方の違いの理由を考えるよう促す 10 学習過程 ( 別頁 ) 11 準備物 ワークシート 教科書を拡大印刷したもの カラーシール ( 赤 青 ) 模造紙 12 座席配置 ( 基本は馬蹄形 ) 黒板 Α Ε Β С D 13 板書計画 まとめ 記事 B 記事 取り上げている事実 構成 文体 観点 見出し 写真 効果を説明できる めあて ら表現の工夫を見付け, その 2 つの新聞記事を読み比べか 新聞記事を読み比べよう
別項 (10 の学習過程 ) 学習活動 ( 時間配分 ) 指導上の留意点 評価規準と評価 つかむ 見通す 1 あいさつ (1 分 ) 聞こえの確認をする 日直に学習内容を発表させる 2 前時までの学習を振 2つの記事の内容を確認し, 同じ出来 り返る 事が異なる視点で切り取られていたこ (2 分 ) とを思い出させる 3 本時のめあてを知る 2つの記事の見出しを書いたカードを (5 分 ) 提示し, どちらの見出しの記事に興味を持つか問う 2 つの記事には, 他にどんな工夫が隠れている? 早速 ハイヒール登山客 てんてこ舞いの山開き 選んだ理由を発表させる 世山界開のき富盛士況バ ン例ザ年イの倍 ( 予想される生徒の意見 ) てんてこ舞い の理由が気になる (A) 登山 と ハイヒール の組み合わせがおかしい (B) 新聞 A は見出しから大体の内容が分かる (A) 富士山の山開き と書いたカードを提示し,2 つの記事の見出しと比較させて, 筆者の工夫があることに気付かせる 見出しの効果を再確認して, いいね! シールを貼る 2 つの新聞記事の読み比べから表現の工夫を見付け, その効果を説明できる 追究する 4 文章の構成や表現の A 新聞とB 新聞の記事をのせたワーク仕方に見られる工夫をシートを配付し, いいなと思う箇所に見付ける 印をし, いいね! シール( 赤 ) を貼るよう指示する 1 個人思考 (5 分 ) 内容の整理に用いた観点を確認する ( 見出し, 事実, 写真, 構成, 文体 ) 観点ごとに, 相違点からそれぞれのよさを考えるよう促す
( 予想される生徒の いいね! ) てんてこ舞い ハイヒール バンザイ 世界の富士 大わらわ 登山者の感想の部分 写真 文末表現 2 全体での交流 (10 分 ) ホワイトボードに貼った記事にも, 自分の いいね! の箇所にシールを貼らせ, 理由を言わせる 他の生徒の いいね! に共感したら, その箇所に いいね! シール ( 青 ) を貼るよう指示する 使ってみる 振り返る 5 文章の構成や表現の仕方に見られる工夫の効果を考える 1 全体思考 (5 分 ) 2 個人思考 (10 分 ) 6 自分が見付けた工夫と効果を発表する (10 分 ) 全員が いいね! を付けた箇所について, どのような効果があるかを考えさせる ホワイトボードの記事に, 生徒から出た意見を書き込む その他の工夫についても同様に, どのような効果があるか考えさせ, 例と同じようにワークシートに文章で記入するよう指示する 2 つの記事から見つけた工夫について, どのような効果があると考えたか発表させる ホワイトボードに生徒の意見を書き込んでいく 2 つの記事を読み比べ, 文章の構成や表現の仕方に見られる工夫を見付け, その効果を考え, 説明している 読むこと ( ワークシート ) 文章の構成や表現の仕方を工夫することで, 伝えたいことを効果的に伝えることができる ( 予想される生徒の気付き ) ことばの選び方や表現の仕方によって, 視点や与える印象を変えることができる ことばの選び方や表現の仕方を工夫すると, 伝えたいことを効果的に伝えることができる 7 次時の見通しを持つ 本時の気付きと自己評価を振り返り (1 分 ) 評価シートに書いてくることを宿題 8 あいさつをする とすることを伝える (1 分 ) 次時は, 自らが選んだ出来事の記事を読み比べることを伝え見通しを持たせる ゴシック体で書いてあるところは, 思考力を育てる指導 に関する事項である