TPP 農林水産物市場アクセス交渉の結果 1 米 : (1) 米及び米粉等の国家貿易品目 1 現行の国家貿易制度を維持するとともに 枠外税率 ( 米の場合 341 円 /kg) を維持 2 米国 豪州に SBS 方式の国別枠を設定 米国 :5 万 t( 当初 3 年維持 ) 7 万 t(13 年目以

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農林水産品の合意の概要 品目 合意の概要 米 除外 ( 米国枠は設けない )( 注 1) 小麦 TPP と同内容でマークアップ ( 政府が輸入する際に徴収している差益 ) を 45% 削減 ( 現行の国家貿易制度 枠外税率 (55 円 /kg) を維持 ) TPP と同内容の米国枠 (2019 年度

(2) 大 麦 1 現 行 の 国 家 貿 易 制 度 を 維 持 するとともに 枠 外 税 率 (39 円 /kg)を 維 持 2 TPP 枠 を 新 設 (2.5 万 t( 当 初 ) 6.5 万 t(9 年 目 以 降 ) SBS 方 式 ) 3 既 存 のWTO 枠 内 のマークアップを9

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TPP11 協定 (CPTPP) の概要目次 協定の発効要件 税率差 : 国別譲許における税率適用国決定ルール 国別セーフガード その他 国別関税割当 牛肉の適用税率 ( 日豪 EPA 税率との比較 ) 輸入後のTPP 特恵税率の要求 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定 Comp

農林水産物市場アクセス分野農産物関連米の合意内容 1 小麦の合意内容 2 大麦の合意内容 3 麦芽の合意内容 4 砂糖の合意内容 5 でん粉の合意内容 6 牛肉の合意内容 7 豚肉の合意内容 9 牛肉 豚肉関連分野の合意内容 11 脱脂粉乳 バターの合意内容 14 ホエイの合意内容 15 チーズの合

農林水産物市場アクセス分野 農産物関連米 1 麦 2 麦芽 3 砂糖 4 でん粉 5 脱脂粉乳 バター 6 ホエイ 7 チーズ 8 乳製品分野 9 豚肉 11 牛肉 13 牛肉 豚肉関連分野 15 鶏卵 / 鶏肉 / 軽種馬 / 天然はちみつ 17 競走馬 18 飼料分野 19 豆類 こんにゃく 茶

EPA に関する各種試算 試算 1 EPA のマクロ経済効果分析 (3 ページ ) 内閣官房を中心に関係省庁と調整したシナリオに基づき 川崎研一氏 ( 内閣府経済社会総合研究所客員主任研究官 ) が分析 WTO はじめ広く関係機関が活用している一般均衡モデル (GTAP モデル ) を使用 EPA

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- 目次 - 1. 品目ごとの農林水産物の影響 < 農産物 > 小麦 大麦 砂糖 でん粉 小豆 いんげん 落花生 オレンジ りんご パインアップル トマト加工品 茶 こんにゃくいも < 畜産物 > 牛肉 豚肉 牛乳乳製品 鶏肉 鶏卵

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農林水産省試算の方法 ( 手順 ) (1) 試算対象品目の選定関税率 10% 以上 国内生産額 10 億円以上 ( 米 麦など 19 品目 ) (2) 国産品の分類内外価格差 品質格差の観点から 輸入品と競合する国産品と競合しない国産品に二分 (3) 試算の方法 1 競合する国産品は 輸入品に置き換

第 26 章. 透明性及び腐敗行為の防止 35 第 27 章. 運用及び制度に関する規定 35 第 28 章. 紛争解決 36 第 29 章. 例外 36 第 30 章. 最終規定

別冊 HAL だより TPP 協定の概要と対策 堀越孝良 平成 28 年 6 月 一般財団法人北海道農業企業化研究所

サービスパンフレットについて

TPP協定をめぐる国会論議

農林水産物の生産額への影響について ( 試算 ) 1. 試算方法 (1) 試算対象品目関税率 10% 以上かつ国内生産額 10 億円以上の品目である以下の19 品目の農産物 14 品目の林水産物とした 農産物 (19 品目 ): 米 小麦 大麦 砂糖 でん粉 牛肉 豚肉 牛乳乳製品 小豆 いんげん

目次 1 EPA/FTA とは 1 2 EPA( 経済連携協定 ) の現状 2~4 3 世界における EPA/FTA をめぐる状況 5 4 TPP について 6~9 5 日 EU EPA について 10~12 6 交渉中の各 EPA 等について 13~24 7 交渉中断中の各 EPA 等について 2

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71 平成 27 年度の SBS 米の輸入入札状況 ( 単位 : 実トン ) 全体 丸米 砕米 入札回数輸入予定数量応札数量落札数量輸入予定数量応札数量落札数量輸入予定数量応札数量落札数量 第 1 回 (27 年 9 月 16 日 ) 4, ,000 2, ,000 2

交渉結果については 現行の糖価調整制度を維持する一方で 加糖調製品について発効初年度約 6.2 万トン 11 年目で約 9.6 万トンの関税割当枠を設けることとなりました 糖価調整制度を現行通り維持したことから 国内で生産されるサトウキビ てん菜への影響は特段見込みがたい一方で 加糖調製品についての

TBT( 貿易の技術的障害 ) 貿易救済 ( セーフガード措置等 ) 政府調達 も高いレベルの措置を導入 維持できるとされている ) 個別品目の輸入解禁や輸入条件の変更について, 従来よりTPP 交渉参加国より要請されてきた案件が, 交渉参加のための条件とされ, あるいはTPP 協定に付随する約束を

農林水産物の生産額への影響について ( 試算 ) 1. 試算方法 (1) 試算対象品目関税率 10% 以上かつ国内生産額 10 億円以上の品目 ( 但し 除外を獲得した品目を除く ) である以下の18 品目の農産物 10 品目の林水産物とした 農産物 (18 品目 ): 小麦 大麦 砂糖 でん粉 牛

1. 経済効果分析について 2015 年 10 月 5 日に大筋合意した環太平洋パートナーシップ (TPP) 協定が発効した場合に 我が国のマクロ経済に与える経済効果を分析 2013 年の政府統一試算と同様 一般的な経済モデルである GTAP( 最新版 ) を使用 2013 年当時は 関税撤廃 (

決算説明会

関税率の種類について 関税とは 輸入品に課せられる税 のことで 我が国の関税には国定税率 ( 基本税率 暫定税率 特恵税率 ) 及び協定税率 (WTO 協定税率 EPA 税率 ) がある 関税の種類 国定税率 基本税率 暫定税率 特恵税率 事情に変更がない限り長期間適用される税率 ( 関税定率法 )

< 目次 > 概要 1 1. 香港 2. 台湾 3. 韓国 4. 中国 5. シンガポール 6. マレーシア 7. ブルネイ 8. インドネシア 9. タイ 10. ベトナム ミャンマー 12. フィリピン 13. インド 14. 中

Vol

平成 21 年 4 月 10 日 平成 21 年 10 月 1 日訂正国際部国際政策課 農林水産物輸出入概況 2008 年 ( 平成 20 年 ) 確定値 本資料は財務省が発表している 貿易統計 を基に 我が国の農林水産物輸出入状況を取りまとめたものであり 本年 3 月 24 日に公表した統計表 (

お願いいたします 新旧対照表 砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律に基づく指定糖 異性化糖等及び指定でん粉等の輸入通関における取扱いについて 及び売戻し承諾書は 独立行政法人農畜産業振興機構 ( 以下 機構 という ) 本部が発給することとなるので 念のため申し添えます 記 記 ( 証明を必要とする

農林水産分野のTPP関連法案

別紙 1 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案による主な改正内容 TPP 整備法の現状 整備対象となる11 本の法律のうち GI 法の改正 : 施行済他 10 本の法律の改正 : 未施行 ( 施行期日は環太平洋パートナーシップ協定 (TPP12 協

インド 12 3 エビ イカ オーストラリア 13 3 マグロ エビ フィリピン 14 1 マグロ カツオ エビ アイスランド 15 1 その他の魚 ハリバット 魚卵 スペイン 16 1 マグロ タコ マルタ 17 1 モロッコ 18 1 タコ イカ モーリタニア 19 1 タコ ニュージーランド

ピックストピックス 2 日 EU EPA 交渉の妥結と対策 日 EU 経済連携協定 ( 日 EU EPA 1 ) が 平成 29(2017) 年 12 月に交渉妥結し 我が 国の農林水産業の再生産が引き続き可能となる国境措置を確保しました 新たな国際環境の下でも 意欲ある農林漁業者が安心して経営に取

四六八4一の品目の関税の基準税率及び当該一の品目の引下げのそれぞれの段階における暫定的な関税率を決定するための区分については 次編第B節の欧州連合の表及び第三編第D節の日本国の表において当該一の品目ごとに明示する 5この附属書の規定の適用上 基準税率 とは 次編及び第三編に別段の定めがある場合を除く

1. 沖縄県における牛肉の輸出動向 2015 年は 輸出額が過去最高 数量 金額 2015 年は数量が 18,424 KG( 前年比 97.0%) 金額が 87 百万円 ( 同 111.8%) となり 輸出額が過去最高を記録しました 沖縄県の輸出額シェアは 1.1% となっています 国別金額シェア

各国の牛肉輸出量について 我が国は 主要な牛肉輸出国の輸出先国として 米国の第 1 位 豪州の第 2 位 カナダの第 4 位 ( いずれも 2014 年 ) その他 (27%) 韓国 (14%) 米国豪州カナダその他 (5%) 香港 (17%) 日本 (25%) メキシコ (17%) その他 (26

総合的な TPP 等関連政策大綱 新輸出大国国内産業の競争力強化農政新時代 < 輸出促進によるグローバル展開推進 > 1 丁寧な情報提供及び相談体制の整備 TPP 等の普及 啓発 中堅 中小企業等のための相談体制の整備 2 新たな市場開拓 グローバル バリューチェーン構築支援 中堅 中小企業等の新市

目 次 Ⅰ TPP 大 筋 合 意 の 概 要 1 Ⅱ 品 目 毎 の 農 林 水 産 物 への 影 響 7 Ⅲ 総 合 的 なTPP 関 連 政 策 大 綱 16 1 攻 めの 農 林 水 産 業 への 転 換 18 2 経 営 安 定 安 定 供 給 への 備 え 30

アジア近隣 5 カ国における牛乳乳製品の輸入動向 資料 5-2 各国とも輸入額全体に占める脱脂粉乳及び全脂粉乳の割合が高い 高付加価値商品の販売が見込めるチーズ 育児用粉乳等についても各国で一定の割合を輸入 中国の輸入市場は規模が大きく 最近伸びているが割合の小さい LL 牛乳 (2.6%) 市場で

品目別の現状と克服すべき課題 食料 農業 農村基本計画 ( 平成 22 年 3 月閣議決定 ) をもとに整理

目次 1. コメ 1 2. 野菜 果実 2 3. 茶 3 4. 薬用植物 4 5. 牛乳 乳製品 5 6. 食肉 6 7. 水産物 7 8. 加工食品 8

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米 〇米は 国民の主要食糧の一つであり 国内における米の安定的な生産とその継続を確保するため WTO 協定で約束したミニマム アクセスを超える数量について 高い二次税率によりその輸入 ( 枠外輸入 ) を抑制するとともに ミニマム アクセス米 ( 枠内輸入 ) については 国家貿易を通じて国が輸入差

日 EU EPA の主なメリット :EU 市場の開拓 平成 29 年 8 月外務省経済局 EU の関税の撤廃や規制の撤廃 緩和により, 様々な国産品の輸出拡大,EU の市場開拓が期待されます 工業製品 品目数 輸出額 (EU 向け約 5.8 兆円 ) で,100% の関税撤廃を達成し,EUへの輸出の

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1 我が国の農産物輸入等の動向 (1) 概観 ( 海外依存を高めた我が国の食料供給 ) 我が国の農産物輸入は 2000 年を100として 1960 年の15.7から2015 年には165.3まで 金額ベースで10.5 倍と大幅に増加している 多様な食生活が実現される中 需要が拡大した畜産物や油脂類の

2. 食料自給率の推移 食料自給率の推移 我が国の食料自給率 ( 総合食料自給率 ) は 長期的に低下傾向で推移してきましたが 近年は横ばい傾向で推移しています (%) (H5 ) 43 7

ドーハ ラウンド交渉とは 農業 鉱工業 サービスの自由化のみならず 貿易円滑化 アンチダンピング等のルールの策定 強化も含んだ 包括的な貿易交渉 2001 年にカタールのドーハで交渉が開始されたことから ドーハ ラウンドという 貿易を通じた途上国の開発が最重要課題の一つ 主な交渉分野 ( 下線は農林

The Sanwa Bank Limited

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Microsoft Word - Ⅱ(輸入調整課・特産製品課・砂糖原料課)

( スギ ) 丸太中心の輸出から 付加価値の高い製品輸出への転換を推進 ~ 我が国の加工技術を活かした木材製品のブランド化の推進 ~ 現状 課題 輸出量が最も多い樹種であるが その大部分は中国向けの低価格 低質な丸太輸出 付加価値の高い製品中心の輸出に転換していくためには 実需者向け PR の強化に

輸入バイオマス燃料の状況 2019 年 10 月 株式会社 FT カーボン 目 次 1. 概要 PKS PKS の輸入動向 年の PKS の輸入動向 PKS の輸入単価 木質ペレット

内容 貿易自由化の背景 農産物貿易の特徴 TPP 大筋合意の概要 日本農業の特徴と対応

1 食に関する志向 健康志向が調査開始以来最高 特に7 歳代の上昇顕著 消費者の健康志向は46.3% で 食に対する健康意識の高まりを示す結果となった 前回調査で反転上昇した食費を節約する経済性志向は 依然厳しい雇用環境等を背景に 今回調査でも39.3% と前回調査並みの高い水準となった 年代別にみ


東アジア経済統合と農業問題

及び必要性 低税率を適用して需要者に安価な輸入品の供給を確保する一方 一定数量を超えた輸入分については高税率を適用することにより 国内の皮革産業及び革靴産業の保護を目的としている 2 政策目的達成時期我が国皮革産業及び革靴産業が構造改善を行い アジア諸国からの低価格品及び欧州からの高価格品と対抗しう

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一九二〇 経過的セーフガード措置 とは 第六 三条(経過的セーフガード措置の実施)2に定める措置をいう 第六 二条世界向けのセーフガード1この協定のいかなる規定も 千九百九十四年のガット第十九条の規定及びセーフガード協定に基づく締約国の権利及び義務に影響を及ぼすものではない 23に規定する場合を除く

平成 30 砂糖年度における砂糖及び異性化糖の需給見通し 表 -1: 砂糖の需給見通し期間平成 29 砂糖年度項目 ( 実績見込み ) ( 単位 : 千トン ) 平成 30 砂糖年度 10 月 -12 月 1 月 -3 月 4 月 -6 月 7 月 -9 月 合計 消 分蜜糖 1,

農産物関税を撤廃した場合の必要財政支出額(試算)

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国際農業 食料レター 年月 ( 182) 全国農業協同組合中央会 今月の話題 TPP 交渉における乳製品をめぐる状況 国際農業 食料レターのバックナンバーは 下記 インターネットホームページをご覧ください < 国際農業 食料レター に関する問い合わせ先:JA 全中農政部 WTO EP

農林水産物 食品の輸出額の国 地域別内訳 主な輸出先国 地域は 香港 米国 台湾 中国 韓国で 約 7 割を占める 原発事故に伴う輸入規制により 中国及び韓国は震災前 (2010 年 ) の水準に戻らなかった 他方 アセアン地域は 輸出額が急増 (2013 年 : 速報値 ) ( 億円 ) カッコ内

1 アンチ ダンピング措置の新規調査開始件数の推移 AD 調査開始件数は 1 貿易自由化が進展した時と 2 景気後退の時に増加する傾向がある 世界金融危機時に増加した後しばらく下降傾向であったが 近年は再び増加傾向 世界的には 2 日に 1 件以上の割合で調査が開始されている

であって 関税定率法 ( 明治 43 年法律第 54 号 ) 別表第 号の 2の (2) に掲げる物品のうち 関税割当制度に関する政令別表第 号の項で定める数量以内のもの以外のもので チョコレートの原料として使用するもの ) 2 割当数量 4,800トン 3 通関期

利用者のために 本調査の目的本調査は 財務省 貿易統計 から 加工食品に分類される製品についての月別輸入数量 輸出数量指数及び輸入金額 輸出金額を収集し 品目別に集計した後 輸入数量指数 輸出数量指数および輸入価格 輸出価格を算出することによって 加工食品の輸出入動向を明らかにするものである 加工食

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NO.3( 平成 29 年 11 月 17 日発行 ) Ⅰ 農業改革等をめぐる情勢 1. 国会の動き 10 月 22 日に執り行われた第 48 回衆議院議員総選挙では 自民党が 284 議席を確保し 単独で絶対安定多数 (261 議席 ) を上回った 公明党は 29 議席を確保し 自公で衆議院議員総

第 3 章九州の産業別貿易動向 1. 自動車 自動車の部分品 2016 年の九州の自動車輸出額は 1 兆 3,346 億円 ( 前年比 15.6% 増 ) と 3 年連続の増加となった 輸出先は 米国が最も多く 次いで中国 アラブ首長国連邦等となっている 2016 年の九州の自動車生産台数は 135

ニュースリリース

国際農業 食料レター 年月 ( 194) 全国農業協同組合中央会 今月の話題 NAFTA 再交渉から見えるトランプ政権の通商戦略 国際農業 食料レターのバックナンバーは 下記 インターネットホームページをご覧ください < 国際農業 食料レター に関する問い合わせ先:JA 全中国際企画

web サイトを利用する方法に移行することとしているところです これに伴い 指定糖 輸入異性化糖について1 回の輸入につき複数の機構売買を要する場合に別葉で承諾書を発行していたものを1 枚の承諾書で発行できるよう 砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律に基づく指定糖 異性化糖等及び指定でん粉等の輸入通

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中酪情報_表紙01月号01

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農業経営基盤強化準備金制度の適用を受けるための手続き 農業経営基盤強化準備金制度の適用を受けるためには 対象となる金額についての 農林水産大臣の証明書が必要です この証明 申告手続については お気軽に農政局等にお問い合わせ下さい 農業者 ( 認定農業者等 ) 申請はお早めに! 農林水産大臣 ( 農政

今後の EPA 戦略について 国境措置のあり方について 平成 19 年 4 月 11 日農林水産省

目次 1. はじめに 2. 原産地基準 3. 原産地証明制度 4. 税関での手続き 本パンフレットは 税関での適正な手続きを行っていただくために 原産地規則についての基礎的な理解を深めていただくことを目的として作成したものです 理解しやすさの観点から 法令の用語と異なる用語を使用した部分 全てのEP

第 3 章九州の産業別貿易動向 1. 自動車 自動車の部分品 2017 年の九州の自動車輸出額は 1 兆 7,006 億円 ( 前年比 27.4% 増 ) で前年より増加し 4 年連続の増加となった 輸出先は 米国が最も多く 次いで中国 アラブ首長国連邦等であった 2017 年の九州の自動車生産台数

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1 海外原料の酒が増える? TPP に参加することで農産物の関税が撤廃された場合 日本の酒類 特に清酒は原料となる米の調達先の変化という形で直接的な影響が考えられます 図表 1に示したとおり米 大麦 小麦などには高率の関税がかかっています ビールや麦焼酎で使う大麦や麦芽は 関税割当制度や SBS 制

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2 割当数量全乳換算数量 24,000トン 3 通関期限平成 32 年 3 月 31 日第 2 関税割当申請書受付の担当課農林水産省食料産業局食品製造課第 3 関税割当証明書交付の担当課農林水産省大臣官房国際部国際経済課第 4 関税割当申請書の提出期間及び提出時間 1 提出期間 (1) 平成 31

牛乳および乳製品摂取量

国内の皮革産業及び革靴産業は中小 小規模事業者が大部分を占めていることから業界の構造改善及び競争力強化を実施し アジア諸国をはじめとする海外から大量に輸入される製品と対抗しうる日本製品の優位性が備わるまで 本制度を維持する必要がある 3 改正の必要性ア. あるべき姿と現状のギャップ国内の皮革産業及び

1 基本情報 日本からの農林水産物輸出 64 億円 (2015 年 ) 国 地域別順位 17 位 1. 基礎データ 人口 :257 百万人 ( 人口増加率 1.3%) 面積 : 約 189 万km2 ( 日本の約 5 倍 ) 宗教 : イスラム教 ヒンドゥー教 キリスト教ほか 名目 GDP:8,88

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TPP 大筋合意の概要 ( 林産物 ) 1. 林産物の合意内容について TPP が 全ての品目の関税撤廃 を原則とする中で 衆 参農林水産委員会の国会決議を踏まえ 交渉を行った 1 合板 製材輸入額が多い国 ( カナダ マレーシア ) や 輸入額の伸びが著しい国に対して 16 年目までの長期の関税撤廃期間と 輸入量が急増した場合に関税を TPP 協定の発効前の水準に戻すセーフガードを確保 ( 非農産品である林産物へのセーフガードの設定は初めて ) 例 : マレーシアの合板とカナダの製材の場合 現行税率 4.8~10.0% 初年度に関税を 50% 削減 その後は税率を維持 16 年目に撤廃 セーフガードは 16 年目以降も維持 2 合板 製材の代替 競合品 (OSB) 1 と同様 輸入額の多い国 ( カナダ ) に対し 16 年目までの長期の関税撤廃期間とセーフガードを確保 3 環境分野違法伐採木材に関し 各国における行政措置の強化や各国間の協力に関する規律を規定 2. 当面の動きについて今週中速やかに 党の TPP 対策委員会等で結果報告 その後 政府の国内対策本部が設置される見込み ( 以上 )

TPP 農林水産物市場アクセス交渉の結果 1 米 : (1) 米及び米粉等の国家貿易品目 1 現行の国家貿易制度を維持するとともに 枠外税率 ( 米の場合 341 円 /kg) を維持 2 米国 豪州に SBS 方式の国別枠を設定 米国 :5 万 t( 当初 3 年維持 ) 7 万 t(13 年目以降 ) 豪州 :0.6 万 t( 当初 3 年維持 ) 0.84 万 t(13 年目以降 ) 国内の需要動向に即した輸入や実需者との実質的な直接取引を促進するため 我が 国は 既存の WTO 枠のミニマムアクセスの運用について見直しを行うこととし 既存 の一般輸入の一部について 中粒種 加工用に限定した SBS 方式 (6 万トン ) へ変更す る予定 (2) 米の調製品 加工品等 ( 民間貿易品目 ) 一定の輸入がある米粉調製品等は関税を 5~25% の削減とし 輸入量が少ない又は関税率が低い品目等は関税を削減 撤廃 2 麦 : (1) 小麦 1 現行の国家貿易制度を維持するとともに 枠外税率 (55 円 /kg) を維持 2 米国 豪州 カナダに国別枠を新設 ( 計 19.2 万 t( 当初 ) 25.3 万 t (7 年目以降 ) SBS 方式 ) 3 既存のWTO 枠内のマークアップ ( 政府が輸入する際に徴収している差益 ) を9 年目までに 45% 削減し 新設する国別枠内のマークアップも同じ水準に設定 国別枠内に限り 主要 5 銘柄以外の小麦を輸入する場合にはマークアップを9 年目までに 50% 削減した水準に設定 4 小麦製品については 小麦粉調製品等にTPP 枠又は国別枠を新設 (4.5 万 t( 当初 ) 6 万 t(6 年目以降 )) し 国家貿易制度で運用している小麦製品は 引き続き全て国家貿易制度で運用 また マカロニ スパゲティは 関税を9 年目までに 60% 削減 - 1 -

(2) 大麦 1 現行の国家貿易制度を維持するとともに 枠外税率 (39 円 /kg) を維持 2 TPP 枠を新設 (2.5 万 t( 当初 ) 6.5 万 t(9 年目以降 ) SBS 方式 ) 3 既存の WTO 枠内のマークアップを 9 年目までに 45% 削減し 新設す る TPP 枠内のマークアップも同じ水準に設定 4 麦芽については 現行の関税割当数量の範囲内において 米国 豪州 カナダの国別枠を設定 ( 計 18.9 万 t( 当初 ) 20.1 万 t( 11 年目以降 )) 3 甘味資源作物 : (1) 砂糖 1 粗糖 精製糖等については 現行の糖価調整制度を維持した上で 以下 を措置 ア高糖度 ( 糖度 98.5 度以上 99.3 度未満 ) の精製用原料糖に限り 関税 を無税とし 調整金を少額削減 イ新商品開発用の試験輸入に限定して 既存の枠組みを活用した無税 無調整金での輸入 ( 粗糖 精製糖で 500 トン ) を認める 2 加糖調製品については 品目ごとに TPP 枠を設定 ( 計 6.2 万 t( 当初 ) (2) でん粉 9.6 万 t( 品目ごとに 6~11 年目以降 )) 現行の糖価調整制度を維持した上で 以下を措置 1 現行の関税割当数量の範囲内で TPP 枠を設定 (7.5 千 t) 2 TPP 参加国からの現行輸入量が少量のでん粉等 ( コーンスターチ ばれいし ょでん粉等 ) については 国別枠を設定 ( 計 2.7 千 t( 当初 ) 3.6 千 t ( 品目ごとに 6~11 年目以降 )) 4 牛肉 : (1) 関税撤廃を回避し セーフガード付きで関税を削減 38.5%( 現行 ) 27.5%( 当初 ) 20%(10 年目 ) 9%(16 年目以降 ) (2) セーフガード : 1 発動数量 ( 年間 ):59 万 t( 当初 ) 69.6 万 t(10 年目 ) 73.8 万 t(16 年目 ) ( 関税が 20% を切る 11 年目以降 5 年間は四半期毎の発動数量も設定 ) - 2 -

2 セーフガード税率 :38.5%( 当初 ) 30%(4 年目 ) 20%(11 年目 ) 18%(15 年目 ) 16 年目以降のセーフガード税率は 毎年 1% ずつ削減 ( セーフガードが発動されれば次の年は削減されない ) 4 年間発動がなければ廃止 家畜疾病により輸入が 3 年以上実質的に停止された場合には 実質的解禁の時点から最長 5 年間不適用 ( 当該条項により 米国 カナダには最長 2018 年 1 月末月まで不適用 ) 5 豚肉 : (1) 差額関税制度を維持するとともに 分岐点価格 (524 円 /kg) を維持 (2) 従量税は関税撤廃を回避 従価税 ( 現行 4.3%): 2.2%( 当初 ) 0%(10 年目以降 ) 従量税 ( 現行 482 円 /kg): 125 円 /kg( 当初 ) 50 円 /kg(10 年目以降 ) (3) セーフガード : 輸入急増に対し 従量税を 100-70 円 /kg に 従価税を 4.0-2.2% に それぞれ戻すセーフガードを措置 (11 年目まで ) 6 乳製品 : (1) 脱脂粉乳 バター 1 現行の国家貿易制度を維持するとともに 枠外税率 ( 脱脂粉乳 21.3% +396 円 /kg 等 バター 29.8%+985 円 /kg 等 ) を維持 2 TPP 枠を設定 ( 生乳換算 ) 脱脂粉乳 2 万 659t( 当初 ) 2 万 4102t(6 年目以降 ) ( 製品 3,188t 3,719t に相当 ) バター 3 万 9341t( 当初 ) 4 万 5898t(6 年目以降 ) ( 製品 3,188t 3,719t に相当 ) 合計 6 万 t( 当初 ) 7 万 t(6 年目以降 ) (2) ホエイ脱脂粉乳と競合する可能性が高いものについて 21 年目までの長期の関税撤廃期間の設定とセーフガードの措置 (3) チーズ 1 モッツァレラ カマンベールなどについては 現行関税を維持 2 チェダー ゴーダ クリームチーズ等については 16 年目までの長期の関税撤廃期間を設定 3 プロセスチーズについては少量の国別枠 シュレッドチーズ原料用フレッシュチーズについては国産使用条件付き無税枠を設定 - 3 -

7 5 品目以外の農産物 : (1) 小豆及びいんげん豆については 枠内関税を撤廃するものの 枠外税率を維持 こんにゃく及びパイナップル缶詰については 枠外税率を 15% 削減 いずれも関税割当制度を維持 (2) このほか 鶏肉 鶏卵 オレンジジュース りんご等一部の品目について 11 年目まで又はそれを超える関税撤廃期間を設定 (3) また 競走馬 オレンジについて セーフガードを措置 8 林産物 : (1) 輸入額又は近年の輸入額の伸びが大きいもの ( マレーシア NZ カナダ チリ及びベトナムからの合板並びにカナダからの製材 ) については 16 年目までの長期の関税撤廃期間の設定とセーフガードの措置 (2) なお 違法に伐採された木材の貿易に対する規律についても合意 9 水産物 : (1) あじ さばについては 12~16 年目までの長期の関税撤廃期間を 主要なまぐろ類 主要なさけ ます類 ぶり するめいか等については 11 年目までの関税撤廃期間を それぞれ設定 (2) 海藻類 ( のり こんぶ等 ) については 関税を 15% 削減 (3) なお 現行の我が国の漁業補助金は 禁止補助金に該当せず 政策決定権を維持 10 各国の対日関税 : 我が国農林水産物 食品の輸出拡大の重点品目の全て ( 牛肉 米 水産物 茶等 ) で関税撤廃を獲得 具体的には 以下の措置を獲得 1 米国向けの牛肉については 15 年目に関税が撤廃されるまでの間 現行の米国向け輸出実績の 20~40 倍 (3,000t( 当初 ) 6,250t( 最終年 )) に相当する数量の無税枠 2 米国向けの米については 5 年目に関税撤廃 3 また 近年 輸出の伸びが著しいベトナム向けの水産物については ブリ サバ サンマなど全ての生鮮魚 冷凍魚について 即時の関税撤廃 - 4 -

林産物 合板及び製材は 輸入額の多い国又は輸入額の伸びが著しい国に対し 16 年目までの長期の関税撤廃期間とセーフガードを国別に設定 非農産品である林産物にセーフガードを設定するのは 世界でも前例のない措置 合板 製材の代替 競合品であるOSB( オリエンテッドストランドボード ) もセーフガード付きで16 年目までの段階的撤廃 薄く切削した長方形の木片を並べた層を 互いに繊維方向が直交するように重ねて高温圧縮した板製品 1. 合板 ( 例 : マレーシア ) 関税率 (%) 6~10 セーフガード引き上げ税率 (50% 削減 ) 3~5 関税率 *1 輸入量が一定量に達した場合 自動的に発効前の関税率に引き上げ (15 年間横ばい ) ( 関税撤廃 ) 0 発効時 2. 製材 (SPF)( 例 : カナダ ) 関税率 (%) 4.8 16 年目 セーフガード引き上げ税率 (50% 削減 ) 2.4 関税率 輸入量が一定量に達した場合 自動的に発効前の関税率に引き上げ (15 年間横ばい ) *2 0 発効時 16 年目 ( 関税撤廃 ) ( 注 ) 上記 1 2ともマレーシア及びカナダの主要品目については 関税撤廃後もセーフガードを維持可 *1: マレーシアの熱帯産木材の合板の場合 発効時 1,044 千 m 3 毎年 20.9 千 m 3 増 16 年目以降毎年 31.3 千 m 3 増 *2: カナダのSPF 製材の場合 発効時 1,573 千 m 3 毎年 31.5 千 m 3 増 16 年目以降毎年 31.5 千 m 3 増 14