全国学力 学習状況調査の調査結果の活用による指導改善に向けた説明会 小学校国語 平成 24 年 9 月 26 日 ( 水 ) 学力調査官 教育課程調査官樺山敏郎 全国学力 学習状況調査の目的 * 義務教育の機会均等とその水準の維持 向上の観点から, 全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握 分析し, 教育施策の成果と課題を検証し, その改善を図る * そのような取組を通じて, 教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立する * 学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てる 学力に関するデータを蓄積し, 課題に即した改善策を例示する ( エビデンスに基づいたPDCAサイクルの確立 ) 学習指導要領の趣旨や内容を問題の形にして全国の学校へ届ける ( 児童生徒に身に付けたい力 具体的なメッセージ )
お話をしたいこと 1 調査問題の基本的な枠組み 2 過去 4 年間 ( 平成 19 20 21 22 年度 ) の調査結果から見えてきた課題とその解決 平成 24 年度の調査結果に見る課題 3 全国学力 学習状況調査を活用した国語科授業改善のポイント 主として 知識 に関する問題 (A 冊子 ) 身に付けておかなければ後の学年等の学習内容に影響を及ぼす内容や, 実生活において不可欠であり常に活用できるようになっていることが望ましい知識 技能など 調査問題の基本的な枠組み 実生活に生きて働く学力 主として 活用 に関する問題 (B 冊子 ) 知識 技能等を実生活の様々な場面に活用する力や, 様々な課題解決のための構想を立て実践し評価 改善する力などにかかわる内容など 実生活 : 国語科学習に加え, 各教科等の学習や生活, 家庭生活や地域での生活を含む ( 日常生活 社会生活 ) 国語の側面から捉えると, 実生活とは 言語生活 本や文章に親しむ生活 ( 読書生活 ) 音声や文字で表現する生活 ( 表現生活 ) 活用できる知識 技能として安定しているか? 知識 技能が目的や相手, 場面や状況に応じて活用できているか?
1 調査問題の基本的な枠組み 2 過去 4 年間 ( 平成 19 20 21 22 年度 ) の調査結果から見えてきた課題とその解決 平成 24 年度の調査結果に見る課題 3 全国学力 学習状況調査を活用した国語科授業改善のポイント 小学校国語 成果と課題の捉え方 出題した問題数 (4 年間 ) 計 111 問 ( 国語 A 69 問国語 B 42 問 ) 成果 4 年間の全国学力 学習状況調査において, 同じような趣旨のもとに複数年度にわたって出題し, その正答率が概ね 80% を上回る内容 課題 4 年間の全国学力 学習状況調査において, 同じような趣旨のもとに複数年度にわたって出題し, その正答率が概ね 70% を下回る内容
平成 19 年度小国 B1 一話し合いを計画的に進める < 交流計画の司会 > 協議の在り方~合意形成を図るための枠組みの必要過去 4 年間 ( 平成 19 20 21 22 年度 ) の調査結果から見えてきた課題 課題 1 話すこと 聞くこと 司会の役割を果たしたり, 立場や根拠を明確にしたりして話し合うこと 課題 2 書くこと 調べて分かった事実に対する自分の考えを, 理由や根拠を明確にして書くこと 課題 3 読むこと 物語に登場する人物についての描写や心情, 人物の相互関係を捉えること 課題 4 読むこと 目的に応じて必要となる情報を取り出し, それらを関係付けて読むこと 課題 5 伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項 ( 言語事項 ) 複数の内容を含む文を分析的 統合的に理解すること 正答例 一度のたくさんの人で遊べること みんなでいっせいに遊べること たくさんの人で遊べること 正答率 63.1% 誤答例 一年生に人気がある 先に決めた条件 ぶらんこ, おにごっご 遊びの名前 司会者として発言された提案や意見を整理し, 要約しながら話合いを進めることが不十分である
過去 4 年間 ( 平成 19 20 21 22 年度 ) の調査結果から見えてきた課題 課題 1 話すこと 聞くこと 司会の役割を果たしたり, 立場や根拠を明確にしたりして話し合うこと 課題 2 書くこと 調べて分かった事実に対する自分の考えを, 理由や根拠を明確にして書くこと 課題 3 読むこと 物語に登場する人物についての描写や心情, 人物の相互関係を捉えること 課題 4 読むこと 目的に応じて必要となる情報を取り出し, それらを関係付けて読むこと 課題 5 伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項 ( 言語事項 ) 複数の内容を含む文を分析的 統合的に理解すること 平成 20 年度小国 B3 二情報を読み取って書く < 図書館だより > 分かったことや考えたことを明確に書く目的に応じて情報を読み取り
正答率 33.0% ( 無解答率 17.5%) 正答例 家や図書館で一日に読書を全くしない 6 年生は, 約 20% もいることが分かりました 読書時間を増やすためには, 家での読書の目標や計画を立てたり, 学校や図書館で調べ学習をしたりすればいいと考えます (97 字 ) 誤答例 グラフの数値を正しく読み取ることができず, 分かったことが不適切 考えたことの理由や根拠が不十分である 理由となる事実 ( 数値や事例 ) を正しく引用して書いていない 過去 4 年間 ( 平成 19 20 21 22 年度 ) の調査結果から見えてきた課題 課題 1 話すこと 聞くこと 司会の役割を果たしたり, 立場や根拠を明確にしたりして話し合うこと 課題 2 書くこと 調べて分かった事実に対する自分の考えを, 理由や根拠を明確にして書くこと 課題 3 読むこと 物語に登場する人物についての描写や心情, 人物の相互関係を捉えること 課題 4 読むこと 目的に応じて必要となる情報を取り出し, それらを関係付けて読むこと 課題 5 伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項 ( 言語事項 ) 複数の内容を含む文を分析的 統合的に理解すること
57.9% 付け)正答率 齋藤洋 たったひとりの伝説 による22 年度小国 A3 捉える平成 平成 19 年度小国 A5 文を構成するキャラクタライゼーション 正答例 ( ごんは,) ひとりぼっちの小ぎつねでした ( ごんは,) しだのいっぱいしげった森の中, あなをほってすんでいました 誤答例 そのまま書き写している 文末が不正確 人物像を把握するために叙述内容を分析的に捉えていない (人物の性格や特徴登場人物を関係付けて読む 正答率 65.3% 正答例 ( ア ) 母さん ( イ ) おじいちゃん ( ウ ) ぼく 誤答例 主人公である ぼく は捉えているが, 母さん と おじいちゃん との関係を的確に捉えていない 物語を読むときの基本ともなる主人公の心情や人物の相互関係を捉えていない 描写に着目しながら登場する人物の相互関係を
平成 24 年度小国 B3 雑誌を効果的に読む < 特集 マラソン > 目的に応じた読書生活を作るためにメディアを効果的に活用する過去 4 年間 ( 平成 19 20 21 22 年度 ) の調査結果から見えてきた課題 課題 1 話すこと 聞くこと 司会の役割を果たしたり, 立場や根拠を明確にしたりして話し合うこと 課題 2 書くこと 調べて分かった事実に対する自分の考えを, 理由や根拠を明確にして書くこと 課題 3 読むこと 物語に登場する人物についての描写や心情, 人物の相互関係を捉えること 課題 4 読むこと 目的に応じて必要となる情報を取り出し, それらを関係付けて読むこと 課題 5 伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項 ( 言語事項 ) 複数の内容を含む文を分析的 統合的に理解すること
正答率 38.1% ( 無解答率 16.9%) 正答例 野口みずき選手, 渋井陽子選手, 高橋尚子選手の三人が 2 時間 19 分台の記録をもち, 世界第 10 位までに入っているからです (57 字 ) 誤答例 一つの記事のみから取り出したり, まとめたりしている また, 事実を根拠として挙げずに自分の考えだけを書いている 目的や意図に応じて, 必要となる事実を読み取ったり, 複数の情報を関係付けたりすることができていない 過去 4 年間 ( 平成 19 20 21 22 年度 ) の調査結果から見えてきた課題 課題 1 話すこと 聞くこと 司会の役割を果たしたり, 立場や根拠を明確にしたりして話し合うこと 課題 2 書くこと 調べて分かった事実に対する自分の考えを, 理由や根拠を明確にして書くこと 課題 3 読むこと 物語に登場する人物についての描写や心情, 人物の相互関係を捉えること 課題 4 読むこと 目的に応じて必要となる情報を取り出し, それらを関係付けて読むこと 課題 5 伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項 ( 言語事項 ) 複数の内容を含む文を分析的 統合的に理解すること
文と文との意味60.6% のつながりを理解し 文の論理を考えて書く正答率 平成 21 年度小国 A8 一文を二文に分ける文の意味のつながりを考え 正答例 そうにしていた ( だから,) ぼくは, これま 誤答例 不安そうだった ( だから,) 教えてあげたい ることになった ( だから,) 新しく委員にな 文の意味, 文と文との意味のつながりが捉えられていない 15.0% 分ける正答率 接続語を使って内容を平成 22 年度小国 A4 文の論理を考えて書く 正答例 開会式の集合時こくにおくれないように 誤答例 開会式の集合時こくにおくれないようにする 集合時こくにおくれないように 開会式 という言葉なし 必要な言葉を押さえて, 論理的な一文にすることができない
平成 19 年度小国 B2 新聞記事を書く < 環境問題 > 記述式問題 環境問題について, 見聞や体験を基にして自分の考えを書く 正答率 75.4% 比較的自由度の高い記述には抵抗が少ない 正答例 ごみとしてすてるようなものをできるだけ減らすことが大切です 店に行っておにぎりを一個しか買わなくてもふくろに入れてくれますが, そのふくろは使わずに家からバッグをもっていくようにしたいものです 平成 24 年度小国 B2 立場や意図を明確にして話し合う < 中学校の部活動 > 記述式問題 資料を読み取り, 質問をしたい内容を発表する 正答率 52.9% ( 無解答 14.4%) グラフを数値を引用し, それを根拠にして自分が考えたことを書くことに課題がある 正答例 満足している の割合をみると, 中学 2 年生の 29% に対して, 中学 3 年生はそれよりも 15% も高くなっています そのことから, 中学 3 年生に どのような理由で高くなるのですか と質問をしたいです
平成 21 年度小国 B2 表をもとに話し合う < 家の中のそうじや整とん > 肯定的な立場から資料を読み取り, 自分の考えを書く 正答率 25.9% 一定の立場に立ち, かつ数値を引用し, それを根拠にして自分が考えたことを書くことに大きな課題がある 記述式問題 正答例 平成 17 年の ときどきしている は 48% もいて, 約半分です いつもしている の 14% も合わせると,62% もあります だから, よく取り組んでいると思います 1 調査問題の基本的な枠組み 2 過去 4 年間 ( 平成 19 20 21 22 年度 ) の調査結果から見えてきた課題とその解決 平成 24 年度の調査結果に見る課題 3 全国学力 学習状況調査を活用した国語科授業改善のポイント
今後の国語科学習指導の在り方を検討し合う 全国学力 学習状況調査に対する関心 改善への意欲は? < 平成 22 年度学校質問紙 > Q H21 年度調査問題を授業の中で活用しましたか? 全国小 61.1 % 中 52.0% 各問題がどんな力を求めているかをよく知り, その上で課題を把握 分析し, 改善へ 単元のねらい, 題材, テキストとの関連をさぐる ( 年間指導計画への反映 ) 研究会における視点や課題に加える 出題の趣旨は? 設問の工夫は? 単元との関連は? なぜ, こんな結果に? こんな力が足りない! 取り組むべき方向は? まずは, ここから! Q 今後の国語科学習指導の在り方を検討し合う 国語科における 言語活動の充実 に関する教師と児童の反応 ~ 平成 24 年度質問紙調査より 教師に対して 国語の指導として, 目的や相手に応じて話したり聞いたりする授業を行いましたか ( よく )( どちらかといえば ) 行った 85.7% Q 国語の指導として, 様々な文章を読む習慣を付ける授業を行いましたか ( よく )( どちらかといえば ) 行った 83.1 % 児童生徒は Q 国語の授業で目的に応じて資料を読み, 自分の考えを話したり, 書いたりしていますか ( どちらかといえば ) 当てはまる 61.3% 26
今後の国語科学習指導の在り方を検討し合う 約 2 割の児童へのかかわり 今後の国語科学習指導の在り方を検討し合う 3 割 ~4 割が感じている感想や説明の難しさ
今後の国語科学習指導の在り方を検討し合う 2 割 ~3 割は 読書 があまり好きではない 今後の国語科学習指導の在り方を検討し合う 国語の授業で学習したことは将来社会に出たときに役に立つと思いますか 国語の勉強は好きですか 国語の正答率が高い傾向 国語の勉強は好き 国語の授業で学習したことは将来役に立つと思う
今後の国語科学習指導の在り方を検討し合う 全国学力 学習状況調査に対する関心 改善への意欲は? 非連続型テキストは, 教科書でも取り上げているの? 前から 書く力がないこと は分かっているけど, どんなところでつまずいているの? この問題は, 小学校 ( 中学校 ) と指導内容とどうつながっているの? この問題は, 年生の 教材に似ているね! 国語や算数 数学だけでなく, 各教科等を通じて大事にすべきこともありそうだね! 全国学力 学習状況調査資料一覧 ( 文部科学省 国立教育政策研究所発行 ) 報告書 授業アイディア例 解説資料 取組事例集 何より問題そのものを先生方に解いていただき, 子供たちの思考や言語操作を実感していただきたい その後, 問題の趣旨や意図を捉えていただきたい そして, 結果を考察し, 課題を全職員で共有するとともに, これからの改善の方向付けを図っていただきたい ( 日々の小さな授業改善の積み上げを!)