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目次 ( )

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(1) プロジェクトの背景 必要性等 インドネシアの政治 経済の中心であるジャカルタ首都圏の公共交通の旅客輸送能力を増強し 交通渋滞改善 物流の効率化 大気汚染の改善を通じて同国の居住環境及び投資環境の改善を図る目的で 我が国の政府開発援助 ( 円借款 ) により ジャカルタ特別州の都市高速鉄道 ( 以下 ジャカルタ MRT という) 南北線の建設が進められている ジャカルタ MRT 南北線事業は 南端駅のルバックブルスから北端駅のカンプンバンダンまでの約 23km を2 期に分けて整備するもので 現在 1 期の土木工事入札が進行中である 南端始発駅 ( ターミナル駅 ) であるルバックブルス駅は 同駅以南からのバス 乗用車 バイク利用者が MRT に乗り換えて都心へと移動する重要な乗り換え拠点駅 ( 南の玄関口 ) であり 同駅の交通結節点機能の良否がジャカルタ MRT 南北線事業の成否を握っている また ジャカルタ特別州政府は 公共交通指向型開発 (Transit Oriented Development:TOD) を MRT 事業とともに推進していくことを表明しており 同州都市計画の一部となる都市設計ガイドライン (Urban Design Guideline:UDGL) を整備し ルバックブルス駅を地域拠点駅 (Regional Urban Core) とする区分を行い 開発の誘導を行っている しかしながら 現在のルバックブルス駅周辺の計画は 同駅前面を車両基地施設が占有する設計となっており 乗り換えを促進するのに十分な交通結節施設はもとより 南部地域のコミュニティセンターとしての拠点機能が考慮されていない 車両基地建設予定地には 現在ジャカルタ特別州が運営する既存バスターミナルが存在し MRT 車両基地建設後に 本事業コンセプトと同様に車両基地上空利用にて既存バスターミナル機能を移設するべく PT.MRT Jakarta ( ジャカルタ特別州の州営企業である鉄道事業者 :MRTJ) は計画を開始しているが 具体的な計画は現在のところ策定されていない かかる背景から 本事業はルバックブルス駅前車両基地用地上空に交通結節施設および商業施設等の拠点機能を民間活力を利用して建設し 乗客の利便性向上 MRT 利用者数向上 鉄道事業者の安定経営 MRT を中心としたジャカルタ南部地域拠点の創出をねらいとする (2) プロジェクトの内容決定に関する基本方針 現状分析を勘案し 施設内容を以下の表の基本方針にて計画する 施設用途不動産施設 表 S-1 計画上の基本方針計画上の基本方針 ホテル オフィス 集合住宅の用途に供すると設定する ホテルについては ビジネス目的の宿泊客がメインターゲットとなり 仕様を4つ星ホテルに設定し 250 ユニットクラスの規模とする また 長期滞在に対応するため 120 ユニット規模のサービスアパートメントも併設する オフィスについては 南ジャカルタ ( 特に TB シマトパン通り (Jl.TB Simatupang) 沿い ) という立地での競争は厳しいが 床面積を広めに設定し 複合開発であることと併せて差別化することで 競争力を持たせる 住居ビル1のメインターゲットはアッパークラス ( 販売価格 1,500 万ルピア~2,500 万ルピア (13~22 万円 )/m 2 ) を購入する富裕層とする マンションの地下には4 層の駐車場を設置する

商業施設 駅前広場施設 建築施設 (3) プロジェクトの概要 住居ビル2は1と比較して ユニットを小さくし 投資目的の富裕層をターゲットとし ミドル-アッパークラス ( 販売価格 1,000 万ルピア~ 1,500 万ルピア (9~13 万円 )/m 2 ) の賃貸を考慮する 駐車場は駐車ビルに配置する 利用客動線を考慮し 多層階にわたる施設とはせず 複合ビルの低層階 5 層までの計画とする 周辺環境の競合条件を考慮し 毎日の生活に便利なデイリーユース & ファッションを手軽に実現できる場所 を実現するテナントを中心した用途とする 駅前広場施設に関しては 本事業の敷地外に分散させることは適切ではない為 将来需要 (2044 年 ) を見越して整備を検討する 一方 駐車場においては 2020 年における必要面積 (8,155m 2 ) 以上にて計画し 2020 年以後は需要バランスに対応して 敷地外の開発に適宜駐車施設を求めていく方針とする 一般車のバスターミナルへの進入は原則考慮しないものとする 既存バスターミナルに存在する長距離バスの滞泊スペースは確保せず 乗降スペースのみ設置することとする 建築規制については UDGL で設定された規制内での計画とし かつ市場分析の結果を考慮した総床面積として計画する 柱位置は車両基地での運営 維持管理に支障を来さない位置に設置する 配置計画は 利用者動線 集合住宅 1および2の居住環境 駐車設備の機能性 利便性を確保した配置計画 ( 表 3-27A 案 ) を採用する 1) 事業総額ルバックブルス駅前開発の概算工事費をの表 S-2 に示す 以下の概算工費には建設費および設計 施工監理費 ( 建設費の 5.5%) も含まれる ( 概算工事費単価については オフィスビル 960 万ルピア (8.2 万円 )/ 延床 m 2 マンション 800 万ルピア (6.9 万円 )/ 延床 m 2 駐車ビル 640 万ルピア (5.5 万円 )/ 延床 m 2 を用いた ( 本編表 5-1 参照 ) 表 S-2 事業の概要と事業費内訳 公共インフラ部分規模用途等概算工費 駐車場棟 駅前広場 ( バスターミナル ) 駅前広場 ( オープンスペース ) 地上 15 階 建築面積 3,000 m2 延床面積 45,000 m2 ハ ーク & ライト 用 施設利用者用 建築面積 10,400 m2 広域バス / 市内バス / ミニバス / 乗合タクシー / タクシー /TransJakarta(Corridor8) 29 億円 10 億円 建築面積 1,440 m2公共空間 ( アトリウム ) 2 億円 歩行者デッキ建築面積 2,150 m2 1 億円 その他 ( 入出場ランプ等 ) 商業インフラ部分 複合ビル 1 地上 23 階建築面積延床面積 1,590 m2 34,428 m2 公共インフラ合計 (a) 2F-6F: 商業施設 1 憶円 43 億円 30 億円

複合ビル 2 住居ビル 1 住居ビル 2 地上 24 階建築面積延床面積地上 19 階建築面積延床面積地上 18 階建築面積延床面積 2,470 m2 56,040 m2 1,510 m2 29,100 m2 2,400 m2 43,780 m2 2F-6F: 商業施設 商業インフラ合計 (b) 49 億円 27 億円 33 億円 140 億円 施設合計 (a)+(b) 183 億円 ( 内 1 層目デッキ部分コスト ) (25 億円 ) 図 S-1 配置計画図

図 S-2 事業外観図 2) 予備的な財務 経済分析の結果概要支払金利前税引前利益 (Earnings before Interests and Taxes:EBIT) ベースでの財務的内部収益率 (Financial Internal Rate of Return:FIRR) の計算と感度分析は 34 年のコンセッション期間 (30 年の運営期間 ) およびインフレ率 5% を仮定している また プロジェクト会社から土地の所有者 ( 州営公社 (Badan Usaha Milik Daerah:BUMD) を想定 ) への BOT フィーは商業部分の土地の使用料として支払われ 公共部分の土地に対しては支払われない ベースケースシナリオにおいて プロジェクト会社の FIRR は 20% となった これは 収入が存在しない公共部分のコストを含んでの計算である 公共部分を含まない 商業ビルのみの FIRR は 24% 住宅ビルのみの FIRR は 23% である 3) 環境社会的側面の検討特筆すべき環境社会配慮項目としては通常想定される大気 騒音 振動等が予見され 所定の環境影響評価プロセスを今後進捗させる必要がある 一方で プロジェクト実施に伴う MRT 本体事業を含めた環境改善効果の方が大きく ゼロオプションの場合 バスターミナルからジャカルタ MRT 南北線へ公共交通同士の接続性が低下することから 公共交通利用者へサービスが低下してモーダルシフト率 ( 大量輸送への転換率 ) も下がり 交通渋滞による騒音 振動や大気汚染の軽減が期待できない なお 用地取得は MRT 本体事業にて終了済みであり 新たな用地取得 住民移転は発生しない

(4) 実施スケジュール 前述した MRT 本体事業 (CP101) とのシンクロナイゼーションを加味して定されるプロジェクト全体実施工程を次図に示す 図 S-3 プロジェクト全体工程 年 2012 2013 2014 2015 2016 2017 月 N D JFMAMJ JASONDJFMAMJ JASONDJFMAMJ JASOND CP 101 1. 設計 2. 準備工 3. 地盤改良工 4. 入出庫線構築工 5 盛土工 (Aエリア) 盛土工 (Bエリア) 盛土工 (Cエリア) 6. 擁壁工 7. 排水構造物工 8. 埋設別移設工 9. 道床工 10. 仕上げ工およびその他工事 METI 調査車両基地全般模式図 Project 準備 デッキ建設 (1 層目 ) 投資家入札プロセス高層棟建設 ( 設計 + 施工 ) Entrance for Construction A エリア Zone BZone エリア Cエリア Zone 10.9 28.5 49.0 Depot Area 注釈 1) 実際の工程は CP101 施工業者による詳細調査を行った後の工程計画との調整が必要となる 2018 (1000 m2) (5) 実施に関するフィージビリティ ベースケースでの運営会社の FIRR は 21%~24% であった 運営会社の稼働率およびテナントフィーへの感度は高い 一方 プロジェクト会社 (Special Purpose company: SPC) の感度はなく 需要リスクを運営会社がとっていることを裏付けている また プロジェクト会社の方が バランスシートが重いのに応じてマージンの懐が広いことも感度を下げている一因である 計算によると 開業後 3 年目以降から 20% 以上の利益率が EBIT ベースで見込める可能性のある事業となっている 暫定的に Equity IRR を計算してみると 24% であった これは 投資家の一般的なハードルレート ( インドネシアでは一般的には 20%) より高い したがって この財務分析結果からは 本プロジェクトが財務採算性は良好であり フィージビリティがあると結論付けられる (6) 我が国企業の技術面等での優位性 (1) 技術面にかかる優位性本事業に採用可能性のある我が国企業の優位性のある各技術について 次に列記する

運営に対応する技術投資家も含めた SPC により 一定期間の運営を行うことが考慮されているため 運営費を抑える技術の活用も考慮される 具体的には IC カードおよびその関連設備 太陽光発電 BEMS(Building & Energy Management System) の導入が期待される 建設制約条件に対応する技術本事業は車両基地上空ということもあり 制約条件をクリアする可能性のある個所については インドネシアでは通常使用されていない 鉄骨造 鉄骨鉄筋コンクリート造 プレキャストプレストレストコンクリート (PcaPC) 工法 立体駐車場の技術の採用可能性が想定される (2) 運営面にかかる優位性ジャカルタ MRT の成功の為には 駅前空間の集客力 資産価値の恒常的な維持向上を可能とする企業の参加が望ましい 古くから鉄道を基盤として都市開発を行ってきている本邦デベロッパーは 駅前施設の沿線のブランドイメージの構築 駅周辺再開発の多くの実績を有しており 本事業の事業主であるジャカルタ特別州および州営公社 (PT. Propertindo, MRTJ) にもその必要性を理解されやすい (7) 案件実現までの具体的スケジュール及び実現を阻むリスク 本事業を実現させるためには 2013 年初頭から始まる プロジェクト準備 期間中に 以下に述べる課題点に対してジャカルタ特別州と民側が協同して 課題解決を行い 具体化へ取り組む必要がある 主に官側主導にて実行すべき事項 1 ( 案件の計画決定 ): 本 METI 調査を踏まえ 本事業 特に 1 層目デッキ建設の可否をジャカルタ特別州内にて計画決定する 2 ( 予算措置 ):1 層目デッキ建設の予算措置の目途を付ける必要がある 現段階では 2013 2014 年度のジャカルタ特別州政府予算 (APBD) または 現行 MRT 南北線円借款事業の予算修正 再配分等の措置にて確保する方法が考慮される 3 ( 官側事業実施主体 (SPC 構成員 ) の決定 ):SPC を構成する官側事業実施主体の決定を行う必要がある 現段階では MRTJ ならびに Propertindo が候補である 4 ( 運用権 (HPL) 手続き準備 ):1 層目デッキ建設の際に 州営公社 (Badan Usaha Milik Daerah:BUMD) への運用権 (HPL) 設定が必要との意見があるため この点を正確に整理する必要があり 必要である場合 2013 年後半までには HPL 設定を行う必要がある 5 (1 層目デッキ建設に関する施工業者活用方針の決定 ):1 層目デッキ建設は 2013 年後半には開始する必要がある それまでに 1 層目デッキ建設業者を入札で調達するか MRT 本体事業 (CP101 業者 ) のスコープに追加工事として実施する方法が考慮される 6 (1 層目デッキ建設部分基本設計の完了 ): 本調査にて策定した概略計画に沿って 基本設計を完了させ 業者発注準備を進める必要がある

主に官民共同にて実行すべき事項 7 ( 詳細事業スキームの提案 立案 ): 本調査で策定した事業スキームをベースに SPC による事業運営形態の設計が必要である その中で BOT フィーの価格の有無または設定するのであれば価格の設定方針 建設 運営 維持管理の実施体制を最終決定する必要がある 8 ( パートナー投資企業の選定方針の決定 ): 事業スキームの立案を受けて SPC の過半の出資を行い BUMD のパートナーとなる民間企業 ( 複数社 ) の選定方針を決定する これに対しては 日本企業が関心を持っている意思表示を継続的に行い 本邦企業の駅前開発ノウハウ等の必要性を説いた上で SPC 構成員となる BUMD とのパートナリングを行う 9 ( 資金調達への対応 ): 少なくとも公共インフラ部分については 海外投融資の活用を考慮し 国際協力機構も含めた資金調達にかかる協議を実行に移す (8) 調査対象国内での事業実施地点が分かる地図 次頁参照

図 S-4 プロジェクト位置図