平成 28 年度 3 回大阪府 大阪市経済動向報告会 平成 27 年度政策立案支援調査 ( 資料 No.152) 海外で経営現地化に取組む中小企業 大阪府商工労働部大阪産業経済リサーチセンター主任研究員越村惣次郎 2016 年 10 月 28 日
グローバリゼーションと国内市場 1
1950 1952 1954 1956 1958 1960 1962 1964 1966 1968 1970 1972 1974 1976 1978 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 国内市場のグローバル化 輸出額 輸入額ともに上昇傾向 一方で 人口減少 少子高齢化 国内産業の空洞化 などから 国内市場は縮小傾向 (10 億円 ) 100,000 図 1 輸出額と輸入額の推移 90,000 80,000 70,000 60,000 輸出 輸入 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 0 出典 : 財務省 貿易統計 より作成 2
企業規模で対応が大きく異なる 中小企業でも海外子会社を持つ企業数は増加傾向 規模別の海外子会社保有割合は規模間に大きな差 図 2 海外子会社を保有する企業数の推移 表 1 従業者規模別の海外子会社保有割合 (2014) 10000 8000 8226 7995 8772 6000 6260 6088 4000 2000 0 1996 2001 2006 2009 2014 出典 : 総務省 平成 8 年事業所 企業統計調査 平成 13 年事業所 企業統計調査 平成 18 年事業所 企業統計調査 及び 平成 21 年経済センサス - 基礎調査 平成 26 年経済センサス - 基礎調査 から作成 出典 : 総務省 平成 26 年経済センサス - 基礎調査 から作成 3
海外子会社を持つ中小企業の現状 ( 企業の海外進出と国内への影響 ) 4
中小企業の海外事業シェアは北米 欧州よりもアジアに集中 大企業は アジア + 北米 欧州 中小企業は アジアに集中 ( 製造業 :8 割 非製造業 :6 割 ) 図 3 地域別の事業規模 ( 企業規模別 業種別 ) 製造業 非製造業 大企業中小企業大企業中小企業北米 7% 4% 11% 18% 11 31% 欧州 25 4% 32% % % アジア 45% 17% その他 81% 40% 10% 60 % 4% アジアの内訳 アジアの内訳 47% 25% 27% 1% 27% 57% 16% 0% 中国アジア NIEs ASEAN5 その他アジア 出典 : 経済産業省 海外事業活動基本調査 2014 年版より作成 アジア NIEs: シンガポール 韓国 台湾 香港 ASEAN5: インドネシア タイ マレーシア ベトナム フィリピン 5
子会社の業績は良好だが 厳しい競争環境も垣間見れる 中小企業の海外子会社の 3 社に 2 社が 設立後 3 年で黒字化 中小企業の海外子会社の過去 3 年の経営状況では 7 割が売上高が増加しているが 経常利益は減少が過半数 1 2 3 4 5 図 4 海外子会社設立後の黒字率推移 ( 注 ) 27.7% 27.5% 43.1% 35.3% 66.2% 51.0% 70.8% 70.6% 66.2% 72.5% 中小企業 (n=65) 大企業 (n=51) 出典 : 経済産業省 海外事業活動基本調査 1999~2014 年版より作成 図 5 海外子会社の経営状況の変化 ( 過去 3 年間 ) 売上高 (n=82) 経常利益 (n=77) 46.8% 70.7% 1.3% 4.9% 51.9% 24.4% 増加変化なし減少 出典 : 大阪府商工労働部 中小企業における海外子会社の経営状況に関する調査 ( 注 ) 海外事業活動基本調査のデータから 海外子会社をはじめて持った企業のみを抽出しパネルデータを作成し 分析した 6
子会社保有後 国内本社の経営が向上 大企業は 2~3 目以降 すべての項目が上昇している 中小企業では 従業者数 売上高が減少するも 5 目以降は売上高 一人当たり売上高が上昇 海外直接投資が国内空洞化に繋がるとは言い切れない 図 6 設立後の変化 従業者数 売上高 1 人当たり売上高 150% 140% 130% 中小企業 (n=92) 大企業 (n=60) 120% 110% 中小企業 (n=67) 大企業 (n=44) 130% 120% 中小企業 (n=64) 大企業 (n=42) 120% 110% 110% 100% 100% 100% 90% 1 2 3 4 5 6 90% 1 2 3 4 5 6 90% 1 2 3 4 5 6 出典 : 経済産業省 海外事業活動基本調査 1999~2014 年版より作成 7
海外子会社保有後の本社の変化 ( アンケート結果 ) 対外的な評価 信頼 売上高などはプラス 国内仕入 調達 資金繰りはマイナスはマイナス 0% 20% 40% 60% 80% 100% 売上高 (n=101) 44.6 41.6 13.9 従業員数 (n=102) 24.5 60.8 14.7 国内企業からの仕入 調達額 (n=101) 17.8 53.5 28.7 海外企業への販売額 (n=97) 46.4 44.3 9.3 資金繰り (n=102) 10.8 73.5 15.7 社内の士気 意欲 (n=98) 29.6 66.3 4.1 取引先層の変化など (n=97) 対外的な評価 信頼 52.6 45.4 2.1 増加 ( 上昇 ) 変わらない減少 ( 低下 ) 出典 : 大阪府商工労働部 中小企業における海外子会社の経営状況に関する調査 8
事例 海外子会社の国内本社への影響 木型製造業 海外進出した得意先との取引継続のためベトナムに進出 現地では同社のように日本の品質水準を持つ企業が少ないため 日本国内では取引のない大手企業の現地子会社から新規受注を獲得 その取引がきっかけとなり 日本で本社同士の取引にもつながった 化学工業 進出先の現地市場で需要が拡大 生産能力拡大のため設備投資が必要であるが 現地では政治不安や人件費高騰などのリスクがある 結果 現地での再投資は控え 割高となるが日本の本社工場で対応している 9
進出企業における経営現地化の取組み ( 需要獲得目的の 経営現地化 ) 10
海外子会社経営における 現地化問題 現地化とは 現地人材の経営者層への登用や現地ニーズに対応した商品 事業のカスタマイズなど 現地に根ざした経営に転換すること 現地化問題は大企業でも未だに課題 経営資源に劣る中小企業にとっても大きな課題 11
現地化に積極的なほど業績が良好 日本人派遣者割合 現地販売率 など現地化に関する各指標は アジアにおいては概ね黒字企業で高い値 表 2 現地化指標と業績との関係 日本人派遣者割合や現地販売率など現地化の取組みに関する各指標について 現地子会社の経営状況における黒字 赤字の各企業群で平均値を集計し 比較分析した 12
需要獲得を目指す現地法人は現地化に積極的 中小企業の現地法人を進出目的別に集計し比較 現地需要獲得を目指す 需要待企業 生産 調達 情報収集などの その他企業 需要待企業は現地化に積極的 1 経営 人の現地化 マネジメント層 管理層への現地人材の登用 2 事業の現地化 現地企業 市場を対象とした販売 マーケティング 13
1 需要待企業の経営 人の現地化 本社から現地法人への権限委譲に積極的 図 7 権限委譲 14
1 需要待企業の経営 人の現地化 マネジメント層への現地人材登用に積極的 図 8 現地人材の経営者への登用 15
1 需要待企業の経営 人の現地化 権限委譲 現地人材登用と同時に日本人との相互理解にも積極的 16 50.0% 40.0% 65.0% 40.0% 30.0% 25.0% 55.0% 45.0% 45.0% 40.0% 21.3% 21.3% 39.3% 41.0% 24.6% 16.4% 27.9% 19.7% 37.7% 31.1% 0.0% 20.0% 40.0% 60.0% 80.0% 1 海外子会社への権限委譲 2 経営者層へのローカル人材の登用 3 管理者層へのローカル人材の登用 4 ローカル人材の定着率向上 5 人事評価制度の整備による給与 待遇の適正化 6 福利厚生制度の充実 7 日本親会社の経営者とローカル人材との相互理解 8 駐在日本人社員とローカル人材の相互理解 9 日本親会社の社員とローカル人材との相互理解 10 日本親会社の企業風土や方針の浸透需要待企業その他企業図 9 今後の具体的な取組み ( 経営 人材面 )
1 経営 人の現地化 に関する事例 化学工業 日本よりも競争の激しい現地市場で生き残るには 現地での適切な情報収集と迅速な意思決定が必要 そのため日本で採用した現地国籍人材を経営者に登用し ほぼすべての権限を委譲 木型製造業 日本本社と同様の福利厚生制度 ( 社員旅行 宴会など ) を導入 日本人とローカル人のコミュニケーション機会が増え 相互理解が進んだ 結果 離職率 利益率が改善 菓子製造小売業 経営トップ 1 人を除き マネジメントは全て現地人マネージャー 但し 食品業では品質管理に失敗は許されないため 必ず最終チェックは日本人 今後 完全現地化を予定しているが 日本人によるチェック体制だけは外せない 17
地場企業 現地日系企業 地場企業 現地日系企業 2 需要待企業の事業の現地化 販売 仕入ともに現地日系企業だけでなく地場企業との取引も増加 図 10 現地での販売先の変化 需要待企業 65.0% 25.0% 10.0% その他企業 45.9% 39.3% 14.8% 需要待企業 61.1% 27.8% 11.1% その他企業 44.4% 48.1% 7.4% 図 7 現地での仕入先の変化 需要待企業 53.3% 26.7% 20.0% その他企業 33.9% 53.6% 12.5% 需要待企業 55.0% 45.0% 0.0% その他企業 45.3% 43.8% 10.9% 増加変わらない減少 18
2 需要待企業の事業の現地化 ターゲットを現地市場 ( 地場企業 現地消費者 ) にシフト 19 38.1% 47.6% 28.6% 33.3% 19.0% 33.3% 4.8% 42.9% 14.3% 19.0% 36.1% 37.5% 20.8% 34.7% 22.2% 22.2% 8.3% 48.6% 11.1% 12.5% 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 1 現地市場 ( 近隣国含む ) の特性 消費者ニーズ等の把握 2 ローカル企業または現地消費者への販売拡大 3 商製品 サービスの現地仕様化や現地オリジナルの開発 4 仕入 調達先の確保 発掘 5 現地での資金調達 6 現地での事業提携先の確保 発掘 7 現地での調査 コンサルティング先の確保 発掘 8 品質の維持 向上 9 現地政府との良好な関係 10 ストライキや周辺住民とのトラブル発生時の対応策需要待企業その他企業図 11 今後の具体的取組み ( 事業面 )
プラスチック製品製造業 2 事業の現地化 に関する事例 生産目的で進出したが 現地地場企業の技術が向上し 販売対象となってきたため販売を開始 但し 日本仕様では過剰品質となるため 材料や設計をローカライズ ( 仕様変更 ) して提供 そのため現地大学の博士号取得者を研究員として採用 菓子製造販売業 日本では普及品であるが 現地では高所得者向けの高級品として販売 そのため家賃の高い一等地に出店し 内装や家具にも多額の投資を実行 ペット関連小売業 現地に先進国水準のサービスを提供する事業者がいなかったため 日本人や欧米人の駐在員世帯を対象に事業を開始 しかし駐在員は本国に帰るため現地人顧客の確保は必須 ターゲットは現地人富裕層であるが 先進国駐在員に顧客が多いことが品質保証に 20
中小企業の海外需要獲得に向けた提言 1. 将来 現地の経営を委ねられる人材の確保 育成 2. 現地と日本の相互理解 ( 日本本社のグローバル化 ) 3. 現地市場におけるターゲットやポジショニングの見極め 21
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