~ 信託と課税を理解しよう ~ 司法書士 谷口毅 鳥取市西町五丁目 160 番地 2 つばさ司法書士事務所 TEL 0857-50-0918 FAX 050-3156-1017 dream@office-tsubasa.net 1
総論 2 種類の課税のされ方を理解しよう 1 受益者等課税信託通常の信託において適用 受益者が資産を保有するとみなす 2 法人課税信託受益者のない信託 受益証券発行信託等 受託者を法人とみなし 資産を保有すると考える 法人課税信託は極めて不利なので 受益者等課税信託になるように設計する 受益証券を発行しないこと 受益者が欠けないことが重要 2
総論信託において理解すべき 6 つの税金 グループ A 収益と損失に注目 1 所得税グループ B 資産の移動に注目 1 贈与税 2 相続税 3 譲渡所得税グループ C 不動産の所有権移転 登記に注目 1 不動産取得税 2 登録免許税 3 つのグループに分類すると 理解しやすい! ( 税法上の正しい分類ではありません ) 3
グループ A 所得税受益者等課税信託における所得税実務 1 信託設定時の義務 契約の日の属する月の翌月末日までに 信託に関する受益者別調書 信託に関する受益者別調書合計表 を税務署に提出 ( 自益信託の場合は不要 ) 2 信託期間中の義務 毎年 1 月 31 日までに 信託計算書を税務署に提出 3 受益者の変更があったときの義務上記 1 の資料を税務署に提出 4
グループ A 所得税信託期間中の所得税の申告 受益者が信託財産に属する収益 損失を有するとみなす 受託者の存在は無視 ( パススルー課税 ) 賃料等の収益が発生した場合 受益者が確定申告を行う 赤字が出ても損益通算不可 翌年度の黒字との通算もできないし 当該信託の信託財産以外の黒字とも通算できない 信託ごとに損益計算書を作成 事務量が増加する点がデメリット 5
グループ B 贈与税 相続税 譲渡所得税 資産の移転に注目して課税される税 税務上の基本的な考え方 1 受益権の価値は 信託財産の価値に等しい 2 受益権が移転することは 信託財産が移転するのと同じこと 6
グループB 贈与税 相続税 譲渡所得税信託の開始時 1 自益信託 A 委託者受益者 所有権移転 受益権 B 受託者 税務上 資産の移転はない A の財産が所有権から受益権に形を変えただけ 贈与税 相続税 譲渡所得税 全て非課税 7
グループB 贈与税 相続税 譲渡所得税信託の開始時 2 他益信託 A 委託者 所有権移転 B 受託者 受益権 C 受益者 AからCに資産が移転したものとみなす 1 贈与税無対価ならCに課税 2 相続税非課税 3 譲渡所得税対価ありならAに課税 8
グループB 贈与税 相続税 譲渡所得税信託の開始時 3 自己信託 A 委託者受託者 受益権 B 受益者 所有権の移転はないが B に資産が移転したものとみなす 1 贈与税無対価なら B に課税 2 相続税非課税 3 譲渡所得税対価ありなら A に課税 9
グループB 贈与税 相続税 譲渡所得税信託の開始時 4 遺言信託 A( 死亡 ) 委託者 所有権移転 B 受託者 受益権 C 受益者 相続により A から C に資産が移転したものとみなす 1 贈与税非課税 2 相続税 C に課税 3 譲渡所得税非課税 10
グループB 贈与税 相続税 譲渡所得税受益者変更時 1 受益権の贈与 売買等 A 旧受益者 受益権 B 新受益者 A から B に資産が移転したものとみなす 1 贈与税無対価なら B に課税 2 相続税非課税 3 譲渡所得税対価ありなら A に課税 11
グループB 贈与税 相続税 譲渡所得税受益者変更時 2 受益権の相続 A( 死亡 ) 旧受益者 受益権 B 新受益者 相続により A から B に資産が移転したものとみなす 1 贈与税非課税 2 相続税 B に課税 3 譲渡所得税非課税 12
グループ B 贈与税 相続税 譲渡所得税受託者変更時受託者の死亡 辞任 etc A 旧受託者 所有権移転 B 新受託者 所有権が移転しても 受益権は移転していない つまり 資産の移動はないものと考える 贈与税 相続税 譲渡所得税 全て非課税 13
グループ B 贈与税 相続税 譲渡所得税信託終了時 1 帰属権利者が受益者 A 清算受託者 残余財産の 所有権移転 B 受益者 帰属権利者 所有権は移転しているが B の有する受益権が残余財産の所有権に形を変えただけと考える 贈与税 相続税 譲渡所得税 全て非課税 14
グループ B 贈与税 相続税 譲渡所得税信託終了時 2 帰属権利者が受益者以外 A 清算受託者 残余財産の 所有権移転 B から C に資産の移転があったと考える C 帰属権利者 B 今までの受益者 1 贈与税無対価の場合 C に課税 2 相続税非課税 3 譲渡所得税対価ありの場合 B に課税 15
グループ B 贈与税 相続税 譲渡所得税信託終了時 3 受益者の死亡により終了 A 清算受託者 残余財産の 所有権移転 相続により B から C に資産の移転があったと考える 1 贈与税非課税 2 相続税 C に課税 3 譲渡所得税非課税 C 帰属権利者 B( 死亡 ) 今までの受益者 16
グループ C 不動産取得税 登録免許税 不動産取得税は 不動産の所有権移転に注目して課税される 登録免許税は 登記に注目して課税される どちらも 形式的な権利の移転の場合は非課税 17
グループC 不動産取得税 登録免許税信託開始時 1 自益信託 他益信託 A 委託者 形式的な 所有権移転 B 受託者 不動産取得税は非課税 形式的な所有権の移転に過ぎないと考える 登録免許税 1 所有権移転分非課税 ( 形式的な移転 ) 2 信託分 1000 分の 4( 土地は 1000 分の 3) 18
グループC 不動産取得税 登録免許税信託開始時 2 自己信託 A 委託者 信託財産への 権利の変更 A 受託者 不動産取得税は非課税 そもそも所有権の移転がない 登録免許税 1 権利の変更分不動産 1 個につき 1000 円 2 信託分 1000 分の 4( 土地は 1000 分の 3) 19
グループC 不動産取得税 登録免許税受託者変更時受託者の死亡 辞任 etc A 旧受託者 形式的な 所有権移転 B 新受託者 受託者の変更は 形式的な所有権移転に過ぎず 実質的に権利は移動していないと考える 不動産取得税 登録免許税 共に非課税 20
グループC 不動産取得税 登録免許税受益者変更時受益権の贈与 売買等 A 旧受益者 受益権 相続 売買 贈与 etc B 新受益者 不動産取得税は非課税 債権の移転であり 不動産の権利移転ではない登録免許税不動産 1 個につき 1000 円 信託目録の変更 受益者 の表示を書き換える 21
グループC 不動産取得税 登録免許税委託者変更時委託者の地位の移転等 A 旧委託者 委託者の地位 相続 委託者の地位の譲渡 etc B 新委託者 不動産取得税は非課税 不動産の権利移転ではない登録免許税不動産 1 個につき 1000 円 信託目録の変更 委託者 の表示を書き換える 22
グループ C 不動産取得税 登録免許税信託目録の記録事項の変更登記 委託者の変更受益者の変更委託者又は受益者の住所氏名変更信託の目的 信託財産の管理方法 信託の終了自由 その他の信託条項の変更登録免許税不動産 1 個につき 1000 円 23
グループ C 不動産取得税 登録免許税信託財産の運用時 1 信託財産である金銭で建物を建築した時所有権保存と信託の登記 不動産取得税受託者に課税登録免許税保存分 1000 分の 4 信託分 1000 分の 4 24
グループ C 不動産取得税 登録免許税信託財産の運用時 2 信託財産である金銭で不動産を購入した時所有権移転と信託の登記不動産取得税受託者に課税登録免許税移転分 1000 分の 20 土地は平成 29 年 3 月 31 日まで 1000 分の 15 信託分 1000 分の 4 土地は平成 29 年 3 月 31 日まで 1000 分の 3 25
グループ C 不動産取得税 登録免許税信託財産の運用時 3 信託財産である不動産を売却した場合所有権移転と信託の抹消の登記不動産取得税買主に課税登録免許税移転分 1000 分の 20 土地は平成 29 年 3 月 31 日まで 1000 分の 15 抹消分不動産 1 個につき 1000 円 26
グループ C 不動産取得税 登録免許税信託終了時 1 信託の開始から終了まで 委託者のみが引き続き元本受益者であり かつ帰属権利者であるとき 受託者 B 残余財産 委託者に復帰 帰属権利者 A 委託者であり 元本受益者 不動産取得税非課税 登録免許税 ( 移転分 ) 非課税 登録免許税 ( 抹消分 ) 不動産 1 個につき 1000 円 27
グループC 不動産取得税 登録免許税信託終了時 2 帰属権利者が元本受益者であり かつ委託者兼元本受益者から相続又は合併により受益権を取得した者であるとき 受託者 B 残余財産 委託者からの相続 合併と同視 帰属権利者 C 委託者兼元本受益者の相続人 不動産取得税非課税登録免許税 ( 移転分 ) 1000 分の 4 登録免許税 ( 抹消分 ) 不動産 1 個につき 1000 円 28
グループ C 不動産取得税 登録免許税信託終了時 3 委託者 ( 又は相続人 ) 以外に残余財産が帰属したり 元本受益権が移っていたりした場合 受託者 B 残余財産 実質的に権利が移転している 帰属権利者 C 不動産取得税課税登録免許税 ( 移転分 ) 1000 分の 20 登録免許税 ( 抹消分 ) 不動産 1 個につき 1000 円 29
グループ C 不動産取得税 登録免許税信託終了時 4 自己信託の終了により 信託財産が委託者兼受託者の固有財産に変更された場合 受託者 A 残余財産 所有権移転ではなく 権利の変更 帰属権利者 A 不動産取得税非課税登録免許税 ( 変更分 ) 不動産 1 個につき 1000 円登録免許税 ( 抹消分 ) 不動産 1 個につき 1000 円 30