Economic Indicators   定例経済指標レポート

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統計から見た三重県のスポーツ施設と県民のスポーツ行動

住宅着工戸数の見通し(2017・18年度)

図表 1 消費税率引上げに伴う住宅着工の影響 ( 平成 9 年 ) 1995( 平成 7) 年度 1996( 平成 8) 年度 1997( 平成 9) 年度 (4 月 1 日に消費税 (5%) 導入 ) 1998( 平成 10) 年度 住宅着工戸数 前年からの増減 1,485 万戸 - 1,630

住宅着工戸数の見通し(2018・19年度)| 第一生命経済研究所 | 小池理人

タイトル

みずほインサイト 日本経済 2013 年 8 月 27 日 消費増税時の住宅購入補助の効果年収別にみた負担変化の試算 経済調査部エコノミスト 大和香織 住宅ローン減税拡充と すまい給付金 の効果により 消費税率 8%

住宅着工戸数の見通し(2018・19年度) | 第一生命経済研究所

Economic Trends    マクロ経済分析レポート

住宅取得支援政策とその効果

Microsoft Word - ke1106.doc

不動産経済 表紙OL

新設住宅着工戸数 ( 全国 ) 23 年 月の新設住宅着工戸数は 67,273 戸 前年同月比 5.8% と 2 か月連続マイナスとなったがマイナス幅は縮小 1,000 ( 戸 ) 新設住宅着工戸数の月別推移 ( 全国 ) 0,000 90,000 80,000 住宅エコホ イント着工期限 (末 )

2 / 6 不安が生じたため 景気は腰折れをしてしまった 確かに 97 年度は消費増税以外の負担増もあったため 消費増税の影響だけで景気が腰折れしたとは判断できない しかし 前回 2014 年の消費税率 3% の引き上げは それだけで8 兆円以上の負担増になり 家計にも相当大きな負担がのしかかった

不動産経済 表紙OL

税幅を 1% ずつ小刻みに引き上げるべきであるといった意見も浮上しており 予定通り引上げが実施されるかは 不透明な状況です Q 消費税増税で住宅取得時の税負担は どのくらい増加しますか A そもそも住宅購入にかかる消費税は 土地にはかからず新築物件なら建物部分のみです 仮に図表 1の モデル のよう

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1. 国土交通省土地 建設産業局関係の施策 不動産流通に関する予算要求が拡大 ここ数年 国の住宅 不動産政策において 不動産流通に関する施策が大幅に拡大している 8 月に公表された国土交通省の 2019 年度予算概算要求概要によると 土地 建設産業局における施策は大きく 4 項目あるが 全体の予算額

【別添3】道内住宅ローン市場動向調査結果(概要版)[1]

各年の住宅ローン控除額の算出 所得税から控除しきれない額は住民税からも控除 当該年分の住宅ローン控除額から当該年分の所得税額 ( 住宅ローン控除の適用がないものとした場合の所得税額 ) を控除した際に 残額がある場合については 翌年度分の個人住民税において 当該残額に相当する額が 以下の控除限度額の

2. 消費税率引き上げが個人消費に与える影響 (1)1997 年度の消費増税時のレビュー ~ 大きかった駆け込み需要の影響消費税は 89 年 4 月に税率 3% で導入され 97 年 4 月に 5% に引き上げられた 89 年度の導入時は従来の物品税廃止によって自動車など耐久財の多くが実質減税となっ

Economic Trends    マクロ経済分析レポート

建設経済モデルによる建設投資の見通し

参考 平成 27 年 11 月 政府税制調査会 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理 において示された個人所得課税についての考え方 4 平成 28 年 11 月 14 日 政府税制調査会から 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告 が公表され 前記 1 の 配偶

3. 研究の概要等 1 章では 第 1 節で相続税法の歴史的経緯について 特に贈与の位置づけの変遷を中心に概観し 明治 38 年に創設された相続税法での贈与に対する扱いはどうであったのか また 昭和 22 年のシャベル勧告により贈与税が導入され 昭和 25 年のシャウプ勧告で廃止 その後 昭和 28

野村資本市場研究所|顕著に現れた相続税制改正の影響-課税対象者は8割増、課税割合は過去最高の8%へ-(PDF)

29 歳以下 3~39 歳 4~49 歳 5~59 歳 6~69 歳 7 歳以上 2 万円未満 2 万円以 22 年度 23 年度 24 年度 25 年度 26 年度 27 年度 28 年度 29 年度 21 年度 211 年度 212 年度 213 年度 214 年度 215 年度 216 年度

Economic Trends    マクロ経済分析レポート

別紙2

Microsoft Word 日本語版.docx

2. 改正の趣旨 背景の等控除は 給与所得控除とは異なり収入が増加しても控除額に上限はなく 年金以外の所得がいくら高くても年金のみで暮らす者と同じ額の控除が受けられるなど 高所得の年金所得者にとって手厚い仕組みとなっている また に係る税制について諸外国は 基本的に 拠出段階 給付段階のいずれかで課

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2019年度税制改正大綱のポイント|第一生命経済研究所|星野卓也

報道関係者各位 2019 年 2 月 1 日野村不動産アーバンネット株式会社 リリースカテゴリー 都市型コンパクトタウン 都市再生 地方創生グローバルへの取組み不動産テック 働き方改革健康 介護ニーズ社会課題定期報告 レポート 不動産情報サイト ノムコム 住宅購入に関する意識調査 ( 第 16 回

Microsoft PowerPoint (確定)【住宅事業者様向け】平成29年度市場動向調査

の各種税制優遇を受けやすくする見直しが行われ 入居までに耐震基準に適合するという証明があれば 1 住宅ローン減税 2 住宅取得資金に関する贈与税の非課税措置 3 中古住宅に関する不動産取得税の特例措置の適用が可能となる 耐震基準に適合しない中古住宅を取得し 耐震改修工事を実施した後に入居するような場

消費税増税等の家計への影響試算(2018年10月版)

2018年度税制改正大綱ポイント整理

中期経営計画の見直しについて 2015 年 5 月

平成 31 年度 税制改正の概要 平成 30 年 12 月 復興庁

1. 自社の業況判断 DI 6 四半期ぶりに大幅下落 1 全体の動向 ( 図 1-1) 現在 (14 年 4-6 月期 ) の業況判断 DI( かなり良い やや良い と回答した企業の割合から かなり悪い やや悪い と回答した企業の割合を引いた値 ) は前回 ( 月期 ) の +19 から 28 ポイ

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft Word - 第53号 相続税、贈与税に関する税制改正大綱の内容

建設経済モデルによる建設投資の見通し

Microsoft Word - 49_2

報道関係者各位 2019 年 3 月 1 日 アットホーム株式会社 トレンド調査 住宅購入検討者に聞く 消費税増税前の住宅購入意向 調査 消費税が 8% のうちに住宅を購入したい 51.9% 消費税増税後の住宅価格変わらない 43.5% 上がる 32.5% すまい給付金 を知っている 35.8% 不

目次 1. 調査の概要 調査の目的 調査対象 対象地域 調査方法 回収状況 結果の概要 住み替え 建て替え リフォームに関する事項 住み替えに関する意思決定 リフォーム

30歳代の住宅ローンが急増したのはなぜか

個人消費の回復を後押しする政策以外の要因~所得の減少に歯止め、節約志向も一段落

2. 改正の趣旨 背景給与所得控除額の変遷 1 昭和 49 年産業構造が転換し会社員が急速に増加 ( 働き方が変化 ) する中 (1) 実際の勤務関連経費が給与所得控除を上回っても 当時は特定支出控除 ( 昭和 63 年導入 ) がなく 会社員は実際の勤務関連経費がいくら高くても実額控除できなかった

税・社会保障等を通じた受益と負担について

【補論】戸建注文住宅と消費税の影響度に関する考察

消費税増税等の家計への影響試算(2017年10月版)<訂正版>

目 次 調査結果について 1 1. 調査実施の概要 3 2. 回答者の属性 3 (1) 主な事業地域 3 (2) 主な事業内容 3 3. 回答内容 4 (1) 地価動向の集計 4 1 岐阜県全域の集計 4 2 地域毎の集計 5 (2) 不動産取引 ( 取引件数 ) の動向 8 1 岐阜県全域の集計

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平成19年度税制改正.xls

月初の消費点検(3/4)~消費税増税の判断を控えて~

このジニ係数は 所得等の格差を示すときに用いられる指標であり 所得等が完全に平等に分配されている場合に比べて どれだけ分配が偏っているかを数値で示す ジニ係数は 0~1の値をとり 0 に近づくほど格差が小さく 1に近づくほど格差が大きいことを表す したがって 年間収入のジニ係数が上昇しているというこ

証券市場から見た消費税引上げを巡る論点

金融政策決定会合における主な意見

住宅建築・購入者アンケート実施報告

生活衛生関係営業の景気動向等調査 平成17年7~9月期

PowerPoint プレゼンテーション

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建設経済モデルによる建設投資の見通し

当面の金融政策運営について(貸出増加支援資金供給の延長等、12時29分公表)

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経済・物価情勢の展望(2017年7月)

税制改正を踏まえた生前贈与方法の検討<訂正版>

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Microsoft Word 寄付アンケート記者報告.docx

木造住宅の価格(理論値)と建築数

2. 省エネ改修工事 耐震改修工事をした場合の所得税額の特別控除に係る工事範囲の拡充 (1) 改正の趣旨 背景 新築の長期優良住宅の認定基準制度に加え 平成 28 年 2 月 増改築による長期優良住宅の認定基準が制定された 長期優良住宅であると認定されることで 税制上様々な優遇措置を受けることができ

経済・物価情勢の展望(2018年1月)

目次 はじめに 住宅ローン減税の背景と概要... 2 (1) 足元の住宅市場の状況... 2 (2) 住宅ローン減税制度の概要 住宅ローン減税の効果... 6 (1) 家計の住宅取得能力に与える影響... 6 (2) 住宅投資への効果... 8 (3) 消費への効果.

所得控除 基礎控除 配偶者控除などの下記の表に記載されたものをいいます それぞれ一定の要件を満たしている場合は 課税所得金額を計算する際に それぞれの控除が受けられます 個人の県民税 個人の市町村民税 12

Microsoft Word - N_ 子供手当て.doc

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SERIまんすりー2月号 今月のみどころ

目次 1 調査概要 P2~P4 2 平成 29 年度の販売見込みについて ( 住宅事業者 ) P5~P6 3 平成 29 年度の住宅の買い時感について ( 一般消費者 ) P7 4 住宅で重視するポイントは?( 住宅事業者 一般消費者 ) P8~P9 5 建物の性能で重視する事項は?( 住宅事業者

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スライド 1

1 ( ) 4.1% 4.4% 4.% 1 ( ) 1.2%( ) 1.6% 3.8% 1( ) 5.6% 4, % 8 6.5% % 2 4.3% 47.8% 18.8% % 13 2, % 2.2% 13.% 218 ( ).

個人市民税 控除・税率等の変遷【市民税課】

PowerPoint プレゼンテーション

貸家着工にバブルの懸念?-住宅投資関数で説明できない好調さ

調査のポイント 1 調査の概要住宅事業者 一般消費者及びファイナンシャルプランナーに対し 今後の住宅市場に関する事項についてアンケート調査を実施し その結果を取りまとめた資料です 2 調査結果の主なポイント 平成 30 年度の住宅取得環境 住宅事業者の平成 30 年度 ( 平成 30 年 4 月 ~

図表 2 住宅ローン減税の拡充 消費税率が 5% の場合 消費税率が 8% または 10% の 場合 適用期間 ~2014 年 3 月 2014 年 4 月 ~2017 年末 最大控除額 (10 年間合計 ) 200 万円 (20 万円 10 年間 ) 400 万円 (40 万円 10 年間 ) 控

土地建物等の譲渡損失は 同じ年の他の土地建物等の譲渡益から差し引くことができます 差し引き後に残った譲渡益については 下記の < 計算式 2> の計算を行います なお 譲渡益から引ききれずに残ってしまった譲渡損失は 原則として 土地建物等の譲渡所得以外のその年の所得から差し引くこと ( 損益通算 )

2025年の住宅市場 ~新設住宅着工戸数、60万戸台の時代に~

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 2, 15, 1. 金 16, 額 12, 12, 9, 営業利益率 経常利益率 当期純利益率 , 6, 4. 4, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 1 社 ( 単位 : 億円 ) 215 年度 216 年度前年度差前年度

年金生活者の実質可処分所得はどう変わってきたか

Microsoft PowerPoint _公表資料2015

相続対策としての土地有効活用

Transcription:

Economic Trends マクロ経済分析レポート ~ 年度住宅着工戸数の見通し発表日 : 年 月 日 ( 金 ) ~ 年度の着工は駆け込み需要が押し上げ ~ ( 要旨 ) 第一生命経済研究所経済調査部担当エコノミスト星野卓也 TEL:--6 年 - 月期の住宅着工戸数は前期比 +.8% の 9.8 月も 86. と底堅く推移した 住宅エコポイント終了に伴い 月に着工が急増したといった特殊要因もあるが それを除いても足元 の住宅着工は堅調な推移が続いていると判断できる 足元の着工を下支えているものには 住宅ローン金利の低位安定 資金調達環境の改善など 良好な取 得環境に加え 被災地での着工増加が挙げられる 消費税率の引き上げを見据えた駆け込み需要に関し ても 徐々に顕在化している可能性がある 消費税率引き上げ前の駆け込み需要の発生が予想される中 政府は住宅ローン減税の延長 拡充を駆け 込み需要とその反動減の平準化策として打ち出した しかし 本制度は 居住用 の住宅を対象として おり 貸家の駆け込みを緩和する効果は薄い さらにこの制度では消費税率引き上げによる負担額の増 加が 追加の減税額を上回るケースも少なくない こうした背景から 本制度による駆け込み需要の平 準化効果は限られる可能性が高い 年度半ばにかけて 駆け込み需要は本格化するだろう 以上を踏まえ 先行きの住宅着工戸数は 年度 89. 年度 9. 年度 8.6 を予測する 年度には駆け込み需要の反動減に 消費税率引き上げによる実質可処分所得の減少が 加わる 年度の着工は低迷する可能性が高いだろう 好調続く住宅着工 年 - 月期の住宅着工戸数は 年率換算済季節調整値で 9.8 ( 前期比 +.8%) となった 月も 86. と底堅い推移となっている 住宅エコポイント制度終了に伴い 月に着工が急増した影響から - 月期の着工は上振れているが それを除いても堅調な推移である 本稿では 足元の着工を取り巻く環境を整理したうえで 月に打ち出された住宅ローン減税の延長 拡充の影響を考察し 今後の住宅着工戸数の推移を展望する 資料. 住宅着工戸数の推移 ( 年率換算済季節調整値 ) 着工戸数計 ( 左軸 ) 持家 貸家 分譲 9 9 8 8 7 7 6 6 9 ( 出所 ) 国土交通省 住宅着工統計

着工の押し上げ要因 足元の着工を下支えているものとして 低金利など良好な取得環境 被災地での着工増加 消費税 率引き上げ前の駆け込み需要 の 点があると考えられる () 良好な取得環境一つ目に 住宅ローン金利が低水準に留まっていることが挙げられる 国内景気の回復期待が高まる中だが 日銀の金融緩和期待などを背景に長期金利は低位安定が続いている また 金融機関の貸出態度も 9 年以降は改善傾向が続いている 足元ではこうした住宅取得コストの低減 資金調達環境の改善が 着工の下支え要因となっている 資料. 各種金利の推移資料. 金融機関の貸出態度 DI (%). 住宅ローン基準金利新発 年債利回り長期プライムレート 緩い.. - - 厳しい. - - - - 建設 不動産. 7 8 9-8 9 ( 出所 ) 住宅金融支援機構 日本銀行 ( 出所 ) 日本銀行 短観 () 東北 県の着工増加被災地の東北 県の住宅着工戸数は増加傾向にある 復興の進捗を背景に 震災前のトレンドを上回る推移が続き 水準も緩やかに高まっている なお 先行きの復興に係る着工は 息の長いものとなる可能性が高いとみている 建築分野における人手不足もあり 今後東北地方での住宅建設が急加速することは想定しづらいためである 復興庁公表の事業計画においても 災害公営住宅の建設は 年以降も続く計画となっており 東北 県の着工は長期に亘って高い水準で推移するものと考えられる 資料. 東北 県の住宅着工戸数 ( 年率換算済季節調整値 ) ( ) 6.. 東北 県合計 岩手 宮城 福島..... 6 7 8 9 6 7 8 9 6 7 8 9 6 7 8 9 9 ( 出所 ) 国土交通省 住宅着工統計 季節調整値は当社作成 資料. 東北 県の復興に係る着工の進捗 9 8 7 6 ( ) 岩手 + 宮城の復興計画戸数 (9 ) 復興による着工戸数 ( 累計 ) 8 9 6 7 8 9 宮城 + 岩手 + 福島の住宅着工戸数について 年 月 ~ 年 月までのトレンド線を推計 トレンドからの乖離分を復興による住宅着工戸数と定義 ( 出所 ) 国土交通省 新設住宅着工戸数 より作成

- - - -9-8 -7-6 - - - - - 6 7 8 9 () 消費税率引き上げ前の駆け込み需要消費税率引き上げを前に 住宅に駆け込み需要が生じていることも 着工の押し上げ要因となっている可能性がある 各種調査からは 消費税率の引き上げを意識してのモデルルーム訪問 受注が増加しているとの指摘がみられるようになってきている 住宅関連の景況感が他に比べて強めの推移をみせていることも こうした動きを反映しているものとみられる 資料 6. 景況感 DI( 現状 ) の推移 6...... 住宅合計 資料 7. 消費税率引き上げ前の駆け込み需要に関するコメント アパート 店舗 一般建築は 引き続き堅調に推移している 戸建住宅も消費税増税による駆け込み需要が少し出てきている 賃貸併用住宅の引き合いも出てきており 政府の税制面からの対策効果が少し出始めている ( 北関東 = 住宅販売会社 ) 一時的な動きかもしれないが 政権交代に伴う株価の上昇など 市場全体が上向きになっており 消費税増税前の駆け込み需要も若干みられる ( 近畿 = 住宅販売会社 ) 消費税の増税前の駆け込み需要と思われる動きがあり モデルルームの集客状況は好調である ( 近畿 = 住宅販売会社 ) 新政権に代わって日経平均株価の上昇や円安に振れるなど 経済の一部では改善の兆しが見受けられるが 実態の経済としては厳しい状況である そういったなかで 消費税増税前の住宅ローンの相談がかなり見受けられる ( 九州 = 金融業 ). 8 9 ( 出所 ) 内閣府 景気ウォッチャー調査 ( 出所 ) 内閣府 景気ウォッチャー調査 ( 年 月 ) 住宅ローン減税の拡充による駆け込み需要の平準化効果は小さい先行きの住宅着工については 消費税率引き上げを控えての駆け込み需要の本格化が見込まれる 前回消費税率引き上げ時 (997 年 月 ) には 消費税率引き上げの~ 四半期前をピークに駆け込み需要が発生している 今回も 税率引き上げ前の~ 四半期前 ( 年 7-9 月期 - 月期 ) にかけて 駆け込み需要が本格化する可能性が高い また 駆け込み需要の反動減と 消費税率引き上げによる家計の実質可処分所得減少を背景に 年度の着工は大きく落ち込むことが予想される 資料 8. 消費税率引き上げ前後の住宅着工戸数 ( 年率換算済季節調整値 ) 8 6 8 6 8 997 年消費税引き上げ ( 左 ) 年消費税引き上げ ( 右 ) 6 ( 出所 ) 国土交通省 住宅着工戸数 ( 消費税引上からの経過四半期数 ) こうした中 駆け込み需要およびその反動減を平準化するため 本年 月に公表された平成 年度税制改正大綱において 住宅ローン減税の延長 拡充が示された しかし結論から述べると このローン減税拡充による駆け込み緩和効果は小さいと考えている 住宅ローン控除の対象が 居住用 住宅の取得者であり 貸家取得の負担を和らげる効果は薄いと考えられること 平均的な世帯が持家 分譲住宅を取得する際には 消費税負担の増加額がローン減税制度の拡充による追加減税額を上回る場合が少なくないと考えられることが その理由である 以下では に関しての説明を行う

負担額 ( 万円 ) () 住宅ローン減税制度の概要 住宅ローン減税制度は 毎年住宅ローン残高の % を所得税と住民税の一部から 年間税額控除できる制 度である 当初は 年をもって終了が予定されていたが 先般発表された平成 年度税制改正大綱にて 延長 拡充が明記された これによれば 最大控除額の引き上げ 住民税からの控除枠拡大の大きく つの施策が示されている 資料 9. 住宅ローン減税の控除率 最大控除額 居住年 控除率 年間最高控除額 一般住宅 認定長期優良住宅 合計最高控除額 ( 年間の累計 ) 一般住宅 認定長期優良住宅 平成 年 % 万円 万円 万円 万円 年 % 万円 万円 万円 万円 6 年 % 万円 万円 万円 万円 7 年 % 万円 万円 万円 万円 8 年 % 万円 万円 万円 万円 9 年 % 万円 万円 万円 万円 ( 出所 ) 財務省資料等から作成 () 駆け込み平準化効果は? このローン減税制度の変更によって 家計の住宅取得にかかるコストはどう変化するのかを以下で検証していく 一定の仮定のもと 住宅ローン減税制度拡充による追加減税額 ( 一般住宅 年間累積 ) と 消費税率引き上げによる追加負担額を住宅価格ごとに試算したものが資料 だ 試算によれば 一般住宅の場合は約, 万円を超える住宅を購入する際 消費税率引き上げ後の方が負担額が少ない (= 増税後に買ったほうが得 ) という結果が得られる さらに 年時点で既に年間 万円の控除枠が設けられている認定優良住宅の場合 同条件を仮定すると 約 6, 万円を超える住宅の場合 増税後に買った方が負担が少なくて済む計算になる 資料. 消費税率引き上げ前後の負担額試算 ( 一般住宅 ) 資料. 取得住宅の平均価格 ( フラット 利用者 ) 土地付注文住宅 ( 単位 : 万円 ) 建売住宅 - - - - 年以降の追加ローン減税額追加の消費税負担額 年以降の追加負担額 ( 年対比 ) 6 住宅価格 ( 万円 ) 返済期間 年 建物価格 : 土地価格 =6: 頭金は住宅価格の 割 元金均等返済を仮定 また 所得税や住民税不足によって減税額が不十分になる事態は想定せずに試算を行っている 全国 66.8.6 首都圏 96.. 近畿圏 78.7 67. 東海圏 876.8 88.7 その他地域 7. 6.6 ( 出所 ) 各種資料より第一生命経済研究所作成 ( 出所 ) 住宅金融支援機構 平成 年度フラット 利用調査 だが 住宅金融支援機構が公表しているフラット 利用者調査 ( 年 ) によれば 土地付注文 建売 ともに購入住宅の全国平均価格は, 万円台だ ( 資料 ) そのため 消費税率引き上げ後の方が負担が小

さくなるような高額物件を購入する世帯は少なく 駆け込み需要を平準化する効果は小さいと考えられる なお今回のローン減税では 低所得者層が充分な減税措置を受けられない 点を是正するため 住民税からの控除枠が拡大される ( 資料 ) 加えて政府は この措置を行っても所得税 + 住民税の控除枠が減税額に達しない場合 不足分を現金給付等の措置で補填する方針である これにより 低所得の世帯は資料 の試算よりも 年以降の追加減税額が大きくなる場合が生じる しかし 住宅取得者は中 高所得者が多くを占めており こうした低所得者が住宅取得者に占める割合は小さい ( 資料 ) この点を踏まえても 本制度による駆け込み需要の平準化効果は小さなものに留まると考えられる 資料. 住民税からの控除枠資料. 住宅取得時の世帯年収分布 (%) 現行制度 ( 年 ) 所得税の課税所得 % ( 最大 97, 円 ) 注文住宅 万未満, 8. 万 ~6 万,. 8 万 ~ 万, 無回答, 7. 6 万 ~8 万, 9.. 万円 ~,. 消費税増税後 ( 年 ) 所得税の課税所得 7% ( 最大 6, 円 ) 分譲住宅 万未満, 7. 万 ~6 万, 6. 6 万 ~8 万,. 8 万 ~ 万, 無回答, 9..9 万円 ~, 8. ( 出所 ) 各種資料より第一生命経済研究所作成 ( 出所 ) 国土交通省 平成 年度住宅市場動向調査 これらを踏まえると 住宅ローン減税拡充による駆け込み需要の平準化効果は小さいと考えられ 年度の着工には消費税率引き上げ前の駆け込み需要の発生が見込まれる 本予測では 駆け込み需要によって 年度の着工が.9 押し上げられると想定した ( 従来は 7. と想定 ) 年度の着工は駆け込みによって大きく増加する半面 年度にはその反動減が着工の押し下げ要因となろう 年度 89. 年度 9. 年度 8.6 を予測以上を踏まえ 先行きの住宅着工戸数を 年度 89. 年度 9. 年度 8.6 と予測する 年度の着工は 消費税率引き上げ前の駆け込み需要を主因に 年連続の増加となる見込みだ また 経過措置により 年 9 月までの契約に引き上げ前税率が適用されることから 駆け込み需要は前回引き上げ時と同様に 年度半ばにピークを迎えるだろう 年度は 駆け込み需要の反動減に加え 消費税率の引き上げを背景とした家計の実質可処分所得減少も着工の押し下げ要因となる 年度の着工は低迷する可能性が高いだろう 本措置は 減税 であるため 所得税と住民税の控除枠の合計が 住宅ローン減税額 (= 住宅ローン残高の %) に達しない場合 減税額 は所得税と住民税の控除枠の合計までとなる そのため 所得税と住民税の支払額が少ない低所得者層は 中 高所得者に比べてローン減税 の恩恵を充分に受けられないことがある 6 歳未満の子どもがいるサラリーマン世帯 ( 基礎控除 給与所得控除 配偶者控除 社会保険料控除が適用となる世帯 ) を基に試算すると 年収がおよそ 万円台以下の場合に資料 よりも追加の減税額が大きくなる場合がある 詳細は 弊社レポート Economic Trends ~ 年度住宅着工戸数の見通し ~ 年度 89. 年度 96.8 と 年連続の増加を予 想 ~ ( 年 9 月 日公表 ) をご参照ください

資料. 住宅着工戸数の見通し 9 9 8 8 7 7 6 6 全着工戸数持家 ( 右 ) 貸家 ( 右 ) 分譲 ( 右 ) ( 出所 ) 国土交通省 年 - 月期以降の見通しは第一生命経済研究所作成 ( 単位 : %) 新設住宅着工戸数 持家 貸家 分譲 季年率 季年率 季年率 季年率 前期比 前年比 前期比 前年比 前期比 前年比 前期比 前年比 8. -.9..8 -.. 9.. -8.. -..9 8. -.. 9. -.9 -.8 9.. -.9. 6.. 88. 7.8 7.9.......9 6. 6.7 79.9-9.7 -. 9. -9.6-7. 6. -. -8.8. -.. 86. 7.8.7.. -..7 7..9.9.7 7.9 87.6.7 6......9...9.6 87.6. -... -..9 -..... 9.8.8...9.. 7.9 7... 8. 9. -..6. -.9.. -6.7..7.9 7. 9..6 7... 8.8.7 8.. 6.9.7.6 98....8.8..8 6..8 7.. 8. 9.6 -.7..9 -.6.7.9 -..9 6. -.. 89.8-6. -..9-8.8 -.7. -7..9. -. -. 8. -6. -. 9.6 -. -.9 9.8-7.7 -.7. -. -8.8 8. -. -8.6 8.6 -. -7.8 7.8-6.7 -.. -. -. 78. -. -8. 7.9 -. -7.7 6.8 -.6 -.. -.9 -. 8.. -.9 8..7-9. 7.. -.8.. -7. 8..7. -. 9. -.7.9.7 89. 6....... 9..9... 6.9 6.. 8.6 -.7 8.6 -. 7.9-8..6 -. ( 出所 ) 国土交通省 年 - 月期以降の見通し ( 網掛け部分 ) は第一生命経済研究所作成 6