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Transcription:

資料 1 ips 細胞における造腫瘍性リスク評価に関して 国立がん研究センターがんゲノミクス研究分野柴田龍弘 2013.7.16. 第 7 回細胞組織加工製品専門部会 @ 医薬品医療機器総合機構

課題 ips 細胞治療による悪性腫瘍発生のリスクを genetic な点から評価し 現時点のベストサイエンスの知識の中で リスクを最小限にするには? 1. ips 細胞作製 維持の過程で発生する de novo somatic changes の評価 2. ips 細胞を樹立するソースにおける pre-existing variants risk の評価 3. ips 細胞における genetic instability( ゲノム不安定性 ) の評価

課題 ips 細胞治療による悪性腫瘍発生のリスクを genetic な点から評価し 現時点のベストサイエンスの知識の中で リスクを最小限にするには? 1. ips 細胞作製 維持の過程で発生する de novo somatic changes の評価 2. ips 細胞を樹立するソースにおける pre-existing variants risk の評価 3. ips 細胞における genetic instability( ゲノム不安定性 ) の評価

ips 細胞作製 維持の過程で発生する de novo somatic changes の評価 1. がんの発生における遺伝子異常の意義 1-1. がんはゲノムの病気であるが その発生過程には複数の遺伝子蓄積が必要である 1-2. ただし 必要な遺伝子変異の数と種類 ( とおそらくある程度の順番 ) は 臓器によって異なる

がんに関連する遺伝子異常の分類 最近よく使用されるのが ドライバー変異 と パッセンジャー変異 という概念 A driver mutation is causally implicated in oncogenesis. It has conferred growth advantage on the cancer cell and has been positively selected in the microenvironment of the tissue in which the cancer arises. A driver mutation need not be required for maintenance of the final cancer (although it often is) but it must have been selected at some point along the lineage of cancer development. A passenger mutation has not been selected, has not conferred clonal growth advantage and has therefore not contributed to cancer development. Passenger mutations are found within cancer genomes because somatic mutations without functional consequences often occur during cell division. (Stratton MR et al) ドライバー変異とは がんの発生 ( クローナルな増殖優位性 ) に寄与し 正に選択されているもの

がんに関連する遺伝子異常の分類 ドライバー変異 と パッセンジャー変異 がんゲノム解読によって たくさんの変異が同定されることから こうした概念による分類が必要になってきた ただしドライバー変異とは 概念的に非常に広い範囲の遺伝子を含むため 今回の評価の基準とするにはあいまい過ぎると考える

やや古い別な分類 : Gate keeper gene と Care taker gene 発がんリスクの高い家系 ( がん多発家系 ) の原因遺伝子 (Cancer susceptibility gene) の発見からできた概念 Gatekeeper: 細胞の増殖 生存や分化を制御する遺伝子であり その異常によって変異を蓄積する細胞が増える ( 細胞増殖促進 細胞死抑制 未分化状態の維持など : 腺腫のような前癌病変の原因ともなる ): 具体例 : APC, BRAF Caretaker: ゲノム安定性に寄与する遺伝子 その異常によって ゲノム不安定性が増し 遺伝子変異の蓄積が加速される 具体例 :BRCA1, MLH1 Gate keeper Caretaker

ips 細胞造腫瘍性における de novo somatic changes の評価に関する考え Somatic mutation/germline variation について 評価すべき遺伝子について リスクに応じて Tier 1, Tier 2 と分類し それぞれのグループの遺伝子を検索するのがよいと考えます Tier 1: 発がんリスクが高いことが判明している遺伝子 (gate keeper/care taker など家族性がんの原因遺伝子 ): 各段階で必ず変異の有無を確認する Tier 2: 統計的にも確実ながん遺伝子 がん抑制遺伝子 ( 臓器横断的がんゲノム解析において 各臓器がんのトップ 10 20 に入るもの :Myc, KRAS, EGFR など ) 最初のクローン選別の段階で必ず確認する その後のステップにおいても可能な限り検討する Tier 3: データベース上で確認されるがん関連遺伝子のうち Tier1/2 を除外したもの (long tail 部分 ) 現時点では対象としない 今後重要性が確立したものは Tier2 に格上げする

ips 細胞造腫瘍性における de novo somatic changes の評価に関する考え Somatic mutation/germline variation 評価すべき遺伝子について リスクに応じて Tier 1, Tier 2 と分類し それぞれのグループの遺伝子を検索するのがよいと考えます どのくらい徹底して調べるべきか?

多様性の問題 多段階発がんとは ゲノム異常蓄積とそれによる適者生存過程であり 腫瘍内には多様な異常を持つクローンが共存している Invasion & metastasis がんの多様性 がんの進化の促進因子 Therapy (chemo, radiation, etc) 1. Intra-tumoral competition (to survive my genome) 2. Environmental stresses Hypoxia, inflammation/immune system, therapy etc relapse

おそらく ips 細胞作製 樹立の過程で 必ず培養条件による選択圧があり それに適合したメジャークローンと適合しないマイナークローンが共存していると推測される どこまでマイナーなクローンにおける変異を重視すべきかを決定するのは困難であるが 可能な限り低頻度な (1~5%) 変異まで検出し 評価するのが望ましい Culture establishment

ips 細胞造腫瘍性における de novo somatic changes の評価に関する考え Somatic mutation/germline variation 評価すべき遺伝子について リスクに応じて Tier 1, Tier 2 と分類し それぞれのグループの遺伝子を検索するのがよいと考えます 樹立クローン内の多様性を考えると Tier1/2 遺伝子については Ultra deep sequencing によりマイナーな population における変異まで検索しておく必要がある どのような方法で?

ips 細胞造腫瘍性における de novo somatic changes の評価に関する考え Somatic mutation/germline variation 評価すべき遺伝子について リスクに応じて Tier 1, Tier 2 と分類し それぞれのグループの遺伝子を検索するのがよいと考えます 樹立クローン内の多様性を考えると Tier1/2 遺伝子については Ultra deep sequencing によりマイナーな population における変異まで検索しておく必要がある 今回の検索にマッチしたカスタム遺伝子パネルについて Ultra deep sequencing を行う シークエンスの読み取り深度については シュミレーション並びに実際のサンプルを用いて ある程度の基準を決めていく必要がある ( まずは x10,000 程度から検討 1% の存在と仮定すると 10,000 のうち変異を含むものが平均 100 リード見られる ) Structural changes については?

Detection of somatic rearrangement by paired-end 全ゲノム解読による染色体構造異常の検索 sequencing 50~150bp Paired-end sequencing 200~500bp Deletion Inversion Reference genome Tumor genome Reference genome Tumor genome Tandem duplication Reference genome Tumor genome Translocation Reference genome Tumor genome

全ゲノム解読で同定した肝臓がん (1 例 ) における染色体構造異常 Histogram: Copy number Green: Gain Black: Neutral Red: Loss Link: Validated rearrangement Red: deletion Green: inversion Blue: tandem duplication Purple: translocation

Xq25 領域の逆位によって形成された BCORL1-ELF4 融合遺伝子の同定 BCORL1: 転写を負に抑制する分子 ELF4: DNA に結合して 転写を正に促進する分子 BCOL1-ELF4: 野生型 BCORL1 の転写抑制能が阻害されている

ips 細胞造腫瘍性における de novo somatic changes の評価に関する考え ( まとめ ) Somatic mutation/germline variation 評価すべき遺伝子について リスクに応じて Tier 1, Tier 2 と分類し それぞれのグループの遺伝子を検索するのがよいと考えます 樹立クローン内の多様性を考えると Tier1/2 遺伝子については Ultra deep sequencing によりかなりマイナーな population における変異まで検索しておく必要がある 実際の方法としては 今回の検索にマッチしたカスタム遺伝子パネルについて Ultra deep sequencing を行う シークエンスの読み取り深度については シュミレーション並びに実際のサンプルを用いて ある程度の基準を決めていく必要がある Structural changes (somatic and germline) 染色体構造異常についても除外しておく必要があると考える 微細な構造異常については karyotyping による検出は困難であることから low depth whole genome sequencing (x10 程度 ) が望ましい

シークエンス技術の現状と展望 ( より速く より長く より安く ) 第 2 世代型 ( 大量解読用 : 解読塩基長は 100~250bp) Hiseq 2000 600Gb/10 日 信頼性高い シークエンス時間が長い Ion Proton 10~100Gb/7 時間 臨床導入用小型高速シークエンサー ( 解読塩基長は 100~250bp) Miseq ~6Gb/27 時間 シークエンス時間早い Indel のエラー率が高い PE 技術が未熟 Ion Torrent PGM 1Gb/2.4 時間 第 3 世代型 ( 高速で長い : 解読塩基長は 3kb~ 数 10kb) PacBio RS Oxford Nanopore ( リリース未定 ) 解読長 3-20kb 0.8Gb/90 分 解読長 10-40kb >100Gb/ 日 リード長は長いがエラー率が高い Short read との hybrid が現実的 DNA メチル化などの修飾を直接感知できる

課題 ips 細胞治療による悪性腫瘍発生のリスクを genetic な点から評価し 現時点のベストサイエンスの知識の中で リスクを最小限にするには? 1. ips 細胞作製 維持の過程で発生する de novo somatic changes の評価 2. ips 細胞を樹立するソースにおける pre-existing variants risk の評価 3. ips 細胞における genetic instability( ゲノム不安定性 ) の評価

様々ながんにおける変異率 Coding 領域に 10 個の non-synonymous mutation があった場合 synonymous mutation を加えると大体 20~30 個程度 genome 全体では 20~30X100=3000 個 1Mb 当たり 1 個程度と推測できる ( エクソン領域 : ゲノム全体の 1% ヒトゲノム =3Gb=3000Mb nonsynonymous/synonymous ratio=1~2 として ) 正確な評価のためには全ゲノム解読が望ましいが 傾向をつかむための代用としてエクソン領域のデータを使用することも可能