1 (1) 疲 気 の不足による慢性疲労に四君子湯一時的 疲 例 運動会 後 徹夜 翌日 栄養 補給 睡眠 取 回復 寝 疲 取 栄養補給 胃腸 弱 食欲 続 集中力 欠 微熱 出 夏 猛暑 影響 秋 夏 疲 引 気味 症状 出 根本的 対策 必要 体 根深 染 付 疲労倦怠感 解消 漢方薬 有効 西洋医学 疲 対処法 肉体疲労時 栄養補給 剤 内服薬 点滴 主流 一方 漢方 一人 体質 疲 処方 使 分 疲 根本的 治療 目指 慢性的 長引 疲労倦怠感 車 不調 例 説明 車 走 悪 原因 考 単純 不足 劣化 潤滑油 質 低下 対策 補給 疲 対 剤 点滴 栄養補給 近 対 潤滑油 交換 点検 部品 交換 清掃 漢方薬 当 剤 投与 栄養補給 何度繰 返 体質 強化 考 一時的 疲 取 場合 西洋薬 漢方薬 上手 使 分 例 剤 飲 一時的 元気 剤 毎日 飲 習慣 疲 病院 点滴 打 人 漢方薬 効果 発揮 喜
全身の症状 疾患 1 疲れ 症例 1 仕事が忙しくて疲れがたまっており 気力が出 ません 残業続きで睡眠が足りず 昼間から眠気 との戦いです 休みの日に一日中寝て過ごしても 疲れは抜けきらず 月曜日の朝から 既に疲れて いるような状態が続いています こう訴えて来局したのは 32 歳の男性 痩せ気味で 声が小さく 見るからに弱々しい印象であった 食欲がなく 時に胃が痛む 便が 軟らかい ため息ばかり出る などの症状もあった 舌をみると かなり 1 白っぽい色をしていた この男性は 気虚 ききょ という証 しょう に当たる 証とは 一 人ひとりの病状や体質のことである 漢方 特に中医学では まず患 者の証を判断し それに従って漢方処方を決めていくため 証を正確 に判断することが 極めて重要となる 気虚の 気 は 元気 や やる気 の 気 で 人の生理機能を つかさどる生命エネルギーに相当する 20 ページ参照 気が足りな い 気の流れが悪い などの言い方をする この男性はまさに 気が 足りない状態になっている 気虚とは 気が虚 きょ した状態 つまり 気の不足により 臓腑 の機能が低下したり 免疫力が衰えたりしている状態を指す 気虚に なると この男性のように 疲れやすい 元気がない 気力不足 食 欲減退などの症状が表れる そのほかに 汗をかきやすい 階段など ですぐ息切れをする といった症状もよくみられる こうした場合によく使われるのが 人参 にんじん を配合した漢方 薬である 人参は 補気つまり気を補う力が強い生薬で 代表的な 処方は四君子湯 しくんしとう である 消化吸収を促進して 気 を 補う さらに おなかが冷えて痛む 吐き気がする などの症状も伴う 場合は 胃腸を温める作用もある人参湯 にんじんとう などを使う この男性には四君子湯を飲んでもらった 2 週間飲んだ時点ではま だ効き目を感じなかったようだが 4 週間目には おなかの調子が良く なってきた 食欲も出てきた とのことで しばらく服用を続けることになっ た 半年ほど服用した頃には気力が充実し 残業が続いても疲れを 持ち越すことなく仕事ができるようになった 1 中医学において 舌の状 態をみること 舌診 で得 る情報は 体の状態や証 を判断する上で非常に重 要である 1
補気する力が強い生薬には 人参のほかに黄耆 おうぎ がある 黄耆は内臓だけでなく体表付近の気も補うので 汗をかきやすい 手 足がだるい といった症状の疲れに有効である 代表処方は補中益 気湯 ほちゅうえっきとう である 気の巡りが悪い疲れや夏ばてへの漢方処方 症例 1 では 気の不足による疲れ について解説した 気は 血 液やリンパ液のように全身を巡っていると考えられており 気の量は十 分でも 気の流れが悪くなることで疲れを感じやすくなる このような場合 どのような症状を訴え どのような生薬が適しているか 実際に症例を みてみよう 症例 2 このところ 疲れやすくて困っています 友人と 楽しく食事をしたり 趣味の手芸をしているときに は疲れを全く感じないのですが 仕事でパソコン に向かっているときや 通勤で混んだ電車に揺ら れているときなどに ああ 自分は疲れているん だな と実感します そういうときは憂鬱感があり ため息がよく出ます 気力も出ません 最近は い らいらしやすいとも感じます 症例 2 は 32 歳女性 さっきまで元気に明るく振る舞っていたかと思う と 急に疲れがどっときて やる気も集中力も低下するようなタイプの疲 労である 同時に 疲れからの立ち直りも早いという特徴がある この人の場合 疲れを感じない元気なときもあれば 疲れて気力が 2 肝 出ないときもある これは 気 の量が不足しているのではなく 気の 肝臓ではなく 体の諸機能 流れ に問題があるといえる こうした証を 肝鬱気滞 かんうつきた を調節し 情緒を安定させ い という 気の量が不足して いつも疲れている 気虚 とは別の証 血 けつ を貯蔵して循環 させる機能を意味する 肝 は五行の 木 に当たり 樹木のように柔軟に体内 に広がって諸機能の調節 等を行う となる 2 肝鬱の 肝 かん は 五臓の 1 つである 肝臓ではなく 情緒 や自律神経系をつかさどる機能を意味する その肝の機能が鬱滞し ているのが肝鬱気滞であり 情緒の変動が体調に大きく影響したり
全身の症状 疾患 1 疲れ 自律神経系が失調しやすかったりする 肝鬱気滞の場合 気の量に不足はなくても 気の流れが悪いので 生命エネルギーが体全体に行き渡らない 車のエンジンに例えると 潤滑油の質が劣化して車軸や歯車の動きが悪くなり せっかくの駆動 力が 車の滑らかな走行に反映されていない状態を指す ストレス 性の疲労倦怠感ともいえる 肝鬱気滞証の人には この女性のような疲れの症状以外に おな かが張りやすい 便秘と下痢を繰り返す すっきり排便しない 便が細 い などの消化器系の症状や 頻尿 不眠 月経痛 月経不順など の症状が表れることも多い この場合は 気の流れを調えることにより 諸症状を改善していく 代表的な処方は四逆散 しぎゃくさん である さらに この女性のよう にいらいらしやすいなど熱っぽい症状があるときは加味逍遙散 かみ しょうようさん などを使う この女性も加味逍遙散を 3 カ月ほど服用し 不安定な体調が安定した 症例 3 夏ばてになりました 汗をだらだらかいていま す 体がほてり 喉が渇いて水を大量に飲みます めまいや動悸もします この 29 歳の女性は 胃腸の調子も良くなく 下痢気味であった 病 院で点滴を打ってもらい楽になったが 暑い日が続いて また同じよう な症状が出ていた 夏ばてと一般的な疲れとの違いは 夏ばては一般的な疲れに加え て 夏の暑さの体への負担が大きく さらに多量の発汗による脱水症 状があることである 水には熱を冷ます働きがあるが 多量の汗をかく ことにより 熱を冷やす働きが弱まる その結果 ただでさえ負担になっ ている夏の暑さの影響を さらに受けてしまうことになる かといって水の みを補給すると 電解質バランスを崩し かえって体調を悪化させるこ ともある 漢方では 体に必要な液体のことを 血液なども含め 総じて陰液 3 いんえき という これが不足すると 陰虚 いんきょ という証になる この女性の夏ばても 陰虚の症状とみられる 3 陰液 人体の基本的な構成成分 気 血 けつ 津液 し んえき 精 せい のうち の 血 津液 精を指す 1
4 滋陰 じいん 陰液を補うこと 陰虚に対しては 陰液を補う漢方薬で治療する 滋陰 効果の高 4) い漢方薬が有効であり 代表的なものに六味地黄丸 ろくみじおうが ん がある ただし この女性のような夏ばての場合は 陰液だけでな く 気 も不足しているため 陰液と同時に気も補う処方がより望ましい 清暑益気湯 せいしょえっきとう が代表的な処方である この女性に も清暑益気湯を服用してもらったところ 効果はてきめんであった 腎陽虚 じ 疲労倦怠感の証には 以上の 3 つの症例のほかに んようきょ の証もよくみられる 疲労倦怠感というよりは 過労の状態 である 長期にわたって疲労感が続き 健康診断などで異常はなく とも めまいや耳鳴り 腰痛 下半身や手足の冷え さらに年齢のわりに脱 毛が進んでいる場合などは この証である可能性が高い この場合 は八味地黄丸 はちみじおうがん などの処方を使う 疲れた 疲れが取れない と相談に来る人に対して どのように 疲れているのかを詳しく具体的に聴くことにより その人の証を絞り込む ことができる 証を的確に判断して処方を選ぶことができれば 患者の 慢性的な疲労倦怠感の解消につながるだろう