こんなとき, どうする? オーダーから考える 頭痛 めまい編 北海道大学病院石坂欣也 MR セミナー in 函館 2010. 11. 06
こんな経験ありませんか? オーダー : 頭痛の精査 患者 : 1 ヶ月頭痛が続いて 強い吐き気もあります 技師 : とりあえず全脳 T2, T1, FLAIRを撮ってみるかとくに目立った所見はないけど 依頼医 : 何かあった?
シーケンスの追加? 撮像パラメータ? どの部位に注目? どんな疾患がある? MRI の役割って何?
頭痛の分類 - 国際頭痛分類第 2 版 (ICHD-H) Ⅰ. 一次性頭痛 1. 片頭痛 2. 緊張型頭痛 3. 群発頭痛と他の三叉神経 自律神経性頭痛 4. その他の一次性頭痛 Ⅱ. 二次性頭痛 5. 頭頚部外傷に起因する頭痛 6. 頭蓋内および頚部血管障害に起因する頭痛 7. 非血管性頭蓋内疾患に起因する頭痛 8. 原因物質および離脱に起因する頭痛 9. 感染症に起因する頭痛 10. 恒常性障害に起因する頭痛 11. 頭蓋骨 頚部 眼 耳 鼻 副鼻腔 歯 口または他の顔面 頭蓋組織に起因する頭痛または顔面痛 12. 精神障害に起因する頭痛 Ⅲ. 頭部神経痛 中枢性顔面痛 その他 13. 頭部神経痛 中枢性顔面痛 14. その他の分類されない頭痛
今回のテーマ MRI 撮像に関する頭痛とめまいの最低限 必要な知識を身に付けよう! MRI に期待される情報を自信を持って 提供できる!
頭痛 1 頭痛の原因と関連部位を知ろう! 2 オーダーから考える撮像のポイント!
頭痛とは 頭痛とは脳頭蓋部に感じる痛みであって 顔面頭蓋部の疼痛は顔面痛として区別される 両者の境界は鼻根から眼窩上縁を通って外耳道に達する線である しかし後頭下部や眼窩部の痛みも頭痛に入れられる 頭皮は表面痛であり 深部痛 内臓痛としての頭痛には入れない
頭痛分類 頭痛 症候性頭痛 画像診断でわかる 機能性頭痛 画像診断でわからない 10% 90% 命にかかわる疾患 くも膜下出血 脳腫瘍 慢性硬膜下血腫 etc 片頭痛 緊張型頭痛 群発頭痛 うつ病 0.1% 全体の頭痛の 0.01%
頭痛の原因 頭痛は頭蓋内外の痛覚受容体を有する組織の圧迫 伸展 収縮 損傷および炎症によって生ずる 痛覚受容体の存在部位 硬膜 脳神経 血管 の一部に存在する
硬膜 硬膜 架橋静脈 上矢状静脈洞 硬膜 頭蓋底部 特に前頭蓋底部が痛覚に鋭敏で硬膜に囲まれた 静脈洞や流入静脈にも痛覚がある
血管 頚動脈 椎骨脳底動脈 Willis 輪 さらに脳動脈および 椎骨動脈 脳底動脈の分枝近位部 硬膜動脈
脳神経 三叉神経 舌咽神経 迷走神経 上位頚髄神経 三叉神経 三叉神経 眼神経 三叉神経 舌咽神経 迷走神経 舌咽神経 上顎神経 迷走神経 下顎神経
頭痛 1 頭痛の原因と関連部位を知ろう! 2 オーダーから考える撮像のポイント! Ⅰ) いつから? Ⅱ) どこが?
いつから?
Ⅰ) いつから? 頭痛 急性 慢性 くも膜下出血 脳出血 脳静脈洞閉塞症 動脈解離 髄膜炎 脳炎 慢性硬膜下血腫 脳腫瘍 脳膿瘍 側頭動脈炎 低髄液圧症候群 動静脈奇形 もやもや病 三叉神経痛 片頭痛 緊張型頭痛 群発頭痛 うつ病
症例 1 69 歳男性 ハンマーで殴られたような急性の強い後頚部痛 くも膜下出血 FLAIR
症例 2 38 才女性 くも膜下出血 (minor leakage 疑い ) CT T2* SWI 札幌医科大学病院 症例
オーダーから考えるポイントその 1 急性頭痛は重篤な症候性疾患 の可能性が高い! くも膜下出血を疑う場合は FLAIR と T2* は必須
どこが?
症例 2 44 歳男性 左頭頂部から左後頚部にかけての急性頭痛 椎骨動脈解離 頭痛と疾患の位置関係は関連している可能性が高い T1 強調画像 TOF MRA 元画像 TOF MRA Sag reformat
症例 3 53 歳男性 頭部全体にわたる急性頭痛 脳腫瘍による頭蓋内圧亢進症 T2 強調画像 T1 強調画像 FLAIR
頭痛と腫瘍の位置関係 1 頭蓋内圧亢進を示すような腫瘍の場合 病変と頭痛部位は ほぼ一致しない 2 頭蓋内圧亢進を示さない場合は約 2/3 で 頭痛は脳腫瘍部位 またはその近傍に みられる
症例 4 56 歳男性 頭部全体にわたる急性頭痛 頭蓋内圧亢進症 Diffusion T2 強調画像 T1 強調画像
症例 4 56 歳男性 頭部全体にわたる急性頭痛 頭蓋内圧亢進症 静脈洞血栓症 Diffusion T2 強調画像 T1 強調画像 MRV
静脈洞血栓症 症状の程度は頭痛のみを訴えるものから 脳ヘルニアを来たし死にいたる可能性もあり 頭痛の原因 脳静脈洞閉塞に基づく頭蓋内血液 髄液の循環障害による脳浮腫 頭蓋内圧亢進症
オーダーから考えるポイントその 2 急性頭痛 特定の場所 不特定 全体 痛みの場所に病変のある可能性が高い 頭蓋内圧亢進症の可能性を考える 片側で後頭部痛は椎骨動脈解離を疑い MRA を追加! 静脈洞血栓症を見逃さないあやしければ MRV を追加!
特別編 1 特徴的な頭痛
症例 5 30 歳女性 起立時に憎悪傾向の急性頭痛 低髄液圧症候群 T1 強調画像 FLAIR
低髄液圧症候群とは 脳脊髄液が減少した状態 特徴 起立時の頭痛 頭痛の原因 1 髄液量の低下により立位にて脳が下垂し 脳神経 が牽引される 2 髄液量の低下に伴い静脈が拡張し神経を刺激
低髄液圧症候群の特徴的所見 小脳扁桃下垂 脳下垂体腫大 び慢性の硬膜肥厚 脳静脈拡張 脳室の狭小化 T1 強調画像 合併症 硬膜下血腫 (10.0 ~ 16.7%) 硬膜下水腫 (50.0 ~ 69.0%) 脳の下方偏位に伴う架橋静脈の過伸展により破綻し 出血し易くなる FLAIR 矢状断 冠状断が有用!
特別編 2 良性の急性頭痛
症例 6 53 歳男性 右眼窩の奥側を主体とした頭痛副鼻腔炎 T2 強調画像 T1 強調画像
副鼻腔炎による頭痛の特徴 前頭部や眼窩の周囲に強い痛みを伴う 風邪 横断像で所見 冠状断追加で OK? Fs T2 cor
頭痛のまとめ 1 1. 痛みを感じるのは 硬膜 血管 神経 2. 急性 > 慢性で重症度 緊急性が高い 3. 頭蓋内圧亢進症状が無い場合 痛みの部位と病変の位置は関連性が高い
頭痛のまとめ 2 ハンマーで殴られたような FLAIR T2* が必須! 片側の後頭部痛 椎骨動脈領域を含む範囲で薄いスライス MRAで評価 頭蓋内圧亢進症 静脈洞血栓症を疑う 起立時の憎悪 矢状断 冠状断を追加!
めまい Ⅰ) まわる? Ⅱ) まわらない? 1 めまいの原因と関連部位を知ろう! 2 オーダーから考える撮像のポイント!
めまいとは 自分の身体と周囲の物体との空間的な 関係を異常に感ずること
めまいの分類 めまい 回転性 浮動性動揺性眼前暗黒感 失神 非回転性 まわるかまわらないかで区別しよう!
回転性めまい 症状 自分の周囲の物が回って見え 壁や家具 天井が一方から反対方向に動いて見えるもの めまいの原因 病変による 1 半規管膨大部 2 耳石器 ( 卵形嚢 球形嚢 ) の刺激
回転性めまいの原因 半規管膨大部 耳石器 ( 卵形嚢 球形嚢 ) 卵形嚢 半規管膨大部 球形嚢 1 三半規管の三つの輪がそれぞれ x,y,z 軸の面の回転感覚を担当 2 耳石器は 2 つのラグビーボール状のものが水平の位置と垂直の位置の 移動間隔を担当している
回転性めまいの原因 半規管膨大部 耳石器 ( 卵形嚢 球形嚢 ) 三半規管 卵形嚢 半規管膨大部 卵形嚢 球形嚢 球形嚢 1 三半規管の三つの輪がそれぞれ x,y,z 軸の面の回転感覚を担当 2 耳石器は 2 つのラグビーボール状のものが水平の位置と垂直の位置の 移動間隔を担当している
症状 非回転性めまい 実際には体は安定しているのに 自分では体がふらついているように感じたり 何となく揺れているように思える 周囲の物が回転したり 動いて見えることはない めまいの原因 前庭神経核周囲の障害による 1 視覚と前庭感覚との不一致 ( 上位脳幹 小脳 ) 2 自己固有感覚を含む感覚系と前庭系との統合不全 ( 下位脳幹 頚髄 小脳 )
非回転性めまいの原因部位 中枢性前庭系 脳幹 前庭神経 小脳 前庭神経核
めまいと疾患部位の関係 めまい 回転性 非回転性 末梢性疾患 中枢性疾患 の可能性が高い!
症例 7 47 歳女性 回転性めまい 3D-CISS tra 1mm T2 強調画像 4mm 3D-CISS paracor Reformat 1mm
症例 8 63 歳男性 回転性めまい 中耳炎 T2 強調画像 T1 強調画像 FLAIR
オーダーから考えるポイントその 3 回転性めまいは末梢性病変を疑う 回転性めまい 突発性難聴 内耳炎 中耳炎 小脳橋角部腫瘍 メニエール病 脳血管障害 良性発作性頭位性めまい症 etc
オーダーから考えるポイントその 3 回転性めまいは末梢性病変を疑う 回転性めまい 難聴あり 難聴なし 急性 進行性 反復性 急性 慢性 突発性難聴 中耳炎 小脳橋角部腫瘍 メニエール病 脳血管障害 ( 内耳への血流障害 ) 良性発作性頭位めまい症 3D-TrueFISP 系シーケンスの追加が有用! DWI MRA 3D-TrueFISP 系の追加
症例 9 63 歳女性 非回転性めまい 脳幹部腫瘍 T2 強調画像 FLAIR FLAIR sag
症例 10 70 歳女性 非回転性めまい 急性期脳梗塞 DWI ADC map FLAIR MRA
オーダーから考えるポイントその 4 非回転性めまいは小脳 脳幹病変を疑う 非回転性めまい 急性 慢性 脳血管障害 ( 椎骨脳底動脈領域 ) 脊髄小脳変性症 パーキンソン病 多発性硬化症 脳幹 小脳腫瘍 薬物 DWI MRA を追加! 他断面の追加撮像が評価し易い事もあり!
めまいのまとめ 1. 回転性めまいは末梢性疾患を疑い 難聴も重要な情報である 2. 非回転性めまいは脳幹 小脳病変を疑う 3. 急性の場合は DWI MRA の追加を考慮 注意 : めまいは例外が多い領域である
総まとめ オーダーから考える 症状を知ること ~ 頭痛 ~ いつから? どこが? ~ めまい ~ まわる? まわらない? MRI でわかる器質的疾患をみつける! 命にかかわる疾患を絶対に見逃さない!