地震本部情報の保険業界での活用例(東京海上日動火災保険/東京海上日動リスクコンサルティング)

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1. 1 地震保険制度の導入に向けた議論は 1878 年にドイツ人のマイエット教授が国営での地震保険制度創設を提唱したところから開始されたが 当時は自由主義的な思想や制度が取り入れられた時期だったこともあり 同制度は否決された そして 1890 年に公布された旧商法に 民間の保険会社が取り扱う火災保

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Transcription:

資料 3 総 4 (3) 地震本部情報の保険業界での活用例 東京海上日動火災保険企業商品業務部 東京海上日動リスクコンサルティング企業財産本部 2018 年 10 月 2 日

目次 1. 東京海上日動火災での活用例 2. 保険業界全体での活用例 3. 東京海上日動リスクコンサルティングでの活用例 4. 地震本部への要望 1

1. 東京海上日動での活用例 1 地震リスク評価 当社は家計 / 企業向けの地震保険を販売している 政府再保険制度のある家計地震と異なり 企業地震では巨大地震による支払保険金が資本を上回ると倒産する可能性もあることから 地震リスク評価が不可欠 リスク評価にあたっては 地震リスクモデル を開発し 何 % の確率でどの程度の保険金支払が発生するか を評価している 地震リスクモデルの概要は下図のとおり 地震本部の断層 海溝別の発生確率 想定マグニチュード等をベースとした仮想地震を発生させ 地震動予測 建物被害予測を行い保険金支払の確率分布を予測している 4 建物被害評価モデル 建物被害予測 硬い地盤 柔らかい地盤 3 地盤増幅評価モデル 工学的基盤 ( せん断波速度 Vs= 約 400-600m/s) 地震動予測 2 強震動評価モデル 震源断層 1 震源モデル 想定地震の設定 : 地震本部が作成した 確率論的地震動予測地図 の震源モデル ( 発生確率 想定 M 等 ) の諸元を準用 2

補足 ) リスク量の評価手法 地震リスクモデルにより 発生確率別の損失額を評価 その上で ERM(Enterprise Risk Management) の観点から リスク量のコントロール ( 引受量のコントロールや再保険による削減等 ) や資本準備を行う 東京海上グループでは リスクを 2000 年に 1 回の頻度で発生するリスクが顕在化した場合の損害額 と定めている このリスク量を実質純資産と比較することで 資本の十分性を確認している 発生確率 99.95%VaR 2000 年に 1 回のリスクが顕在化した場合の損失額 損失額 0.05% の発生確率 期待値 リスク量 (2000 年に 1 回の損失が期待値を超える額 ) 3

補足 )ERM(Enterprise Risk Management) とは 1 東京海上グループにおける リスクベース経営 は 企業活動のあらゆる側面において リスク 資本 収益 の関係を常に意識して経営を行い 財務の健全性を維持しながら企業価値の持続的な拡大を目指すこと 資本リスクが顕在化した時の備え リスク会社として覚悟すべき最大損失額 収益各決算期の収益 東京海上グループでは グループ全体の財務の健全性や業務継続性に大きな影響を及ぼすリスクを 重要なリスク として特定しており 国内巨大地震をその 1 つとして位置づけている 重要なリスク (2018 年度 ) 1. 国内外の経済危機 金融 資本市場の混乱 2. 日本国債に係るリスク 3. 国内巨大風水災 4. 国内巨大地震 ( 含む富士山噴火 ) 5. 海外巨大自然災害 6. サイバーリスク 7. 革新的新技術による産業構造の転換 8. コンダクトリスク 9. 海外規制への抵触 10. テロ 暴動 11. パンデミック 4

補足 )ERM(Enterprise Risk Management) とは 2 ERM は 従来型のリスク管理のような 倒産防止 を主目的とした守りのリスクマネジメントではなく 適切なリスクテイクによる企業価値の最大化を目指す 従来型のリスク管理 倒産防止等を目的として リスク回避 リスク低減を目指す ERM 定性 定量の両面から把握したリスク情報を有効に活かし 企業価値の最大化を目指す 守りのリスクマネジメント 攻めのリスクマネジメント 結果管理 プロセス管理 危険防止 不祥事防止 リスク リターン管理 5

1. 東京海上日動での活用例 2 お客様用説明資料 地震保険の保険料改定を説明するお客様用のちらしへ 全国地震動予測地図 ( 確率論的地震動予測地図 ) の情報を記載 確率論的地震動予測地図を 客観的かつ信頼度の高い情報として活用 6

2. 保険業界全体での活用例 1 家計地震保険制度 日本の家計地震保険の保険料は 損害保険料率算出機構 ( 以下 機構 ) が算出し その保険料を全保険会社が使用している ( 全社同じ保険料 ) 算出にあたっては 機構が作成した地震リスク評価モデルが活用されているが そのベースは 確率論的地震動予測地図 である ( 機構 HP より抜粋 ) 地震保険の料率算出にあたっては 地震調査研究推進本部が公表している確率論的地震動予測地図の作成に用いられた客観的で高精度の地震発生データ ( 震源モデル ) を利用し 被害予測シミュレーションにより将来の支払保険金を予測し 保険料率を算出しています 損害保険料率算出機構 HP: 機構の地震リスク評価モデル より引用 URL: https://www.giroj.or.jp/databank/pdf/model_earthquake.pdf#view=fitv 7

2. 保険業界全体での活用例 2 モデルベンダー 保険会社以外にも 自然災害リスクモデルを作成する専門の会社 ( モデルベンダー ) が存在しており RMS 社や AIR Worldwide 社がリーディングカンパニー モデルベンダーは世界中の自然災害リスクを評価するモデルを開発している このベンダーモデルにおいても 日本国内の地震リスク評価にあたっては 確率論的地震動予測地図のデータを活用している 加えて 再保険会社はベンダーのリスクモデルを使用しており 再保険料率の計算においては ベンダーモデルが使用されることが一般的である 8

3. 東京海上日動リスクコンサルティングでの活用例 東京海上日動リスクコンサルティング (TRC) は 火災保険などの顧客企業の施設 ( 事務所 工場等 ) の調査を行っている 年間約 500 件の調査を実施し 地震に関する情報を 企業に届け 対策の必要性を説明 調査の観点火災 爆発リスク自然災害リスク ( 地震 風災 水災等 ) 地震リスクに関する情報の提供においては 地震本部が HP などで公開する情報を利用している 地震環境 ( 対象敷地周辺の震源 ): 長期評価より 地震動の発生確率 : 確率論的地震動予測地図より 地震による予想最大損失 ( 地震 PML:Probable Maximum Loss) : 確率論的地震動予測地図を用いて弊社が開発した地震リスク評価モデルより 地震災害時の事業継続マネジメント支援業務 (BCP:Business Continuity Plan の策定など ) においても上記と同様の情報を用いて ビジネスインパクト分析を実施している ビジネスインパクト分析 (BIA:Business Impact Analysis) 地震環境の調査および地震シナリオの選定各種ハザード評価被害シナリオ評価 ( 直接被害 間接被害 ) 財務インパクト分析 9

4. 地震本部への要望 : (1) 情報公開 情報公開内容について 現在どのようなレポートが計画中で どのような議論がされているか把握できない 議事録など 状況が分かるものを適宜 公開して頂きたい 情報公開手段について 地震本部の情報公開手段は以下の通り 地震本部ホームページプレスリリース ( 報道機関を通じての情報開示 ) 公開情報のレベル分け地震本部 HP は 技術情報などの難しい用語が多い 一般向けではなくほぼ研究者 有識者向けと理解している 一般向けのコンテンツ ( 素材集 キッズページ ) はいくつかあるものの まだ整理途上の認識 研究者 一般 自治体など 情報利用者のレベル ニーズに応じた提供が期待される 公開情報に関する説明会実施 長期評価 強震動評価 津波評価など各種のレポートについて 評価レポートの内容の理解促進のために技術的な解説を行う説明会の実施を期待する 双方向のコミュニケーション 地震本部との定常的な双方向コミュニケーションの場を期待する 官学 の連携にプラスして 産 の連携 サポーター制度 10

参考 : 地震本部の構成 産業界の防災対策 地震調査研究推進本部 HP: 地震調査研究推進本部の構成 URL: https://www.jishin.go.jp/about/introduction/#2 11

4. 地震本部への要望 : (2) 技術的視点 各種レポートの不確実性の明確化 各種レポートの不明点の明記 不確実性に関する説明 各種データ ( 地震観測データ等 ) の有効活用が期待できるデータ利用プラットホームの構築 地震に関する各種データはそれぞれの機関が公開しており一元化されていない 利用者 ( 研究者 ) は 各機関のデータを収集して 整理する手間をかける必要がある 現在 ビッグデータ分析 AI などデータ分析技術が 飛躍的に進んでおり データサイエンティストが使いやすい環境整備が必要 新たな分析技術の適用新たな分野の研究者の地震 防災研究への参入促進 地震動観測データの有効活用 K-NET,KiK-net 等の地震動観測記録を利用した技術革新新たな地震動予測手法の開発地震動データプラットホームの構築 防災 減災推進のための更なる 学 の連携強化 地震学だけでなく 工学 社会学 経済学等より社会に近い分野での研究との連携強化 ( 更なる連携強化 ) 社会への影響項目の丁寧な把握エネルギー ( 電気 ガス 水道等 ) 経済活動 ( サプライチェーン被害等 ) など波及的な多様な被害に関する研究 12

K-NET/KiK-net: これまでの観測記録 K-NET/KiK-net 観測地震の震源分布 観測期間 1996/5/11~2018/6/29 (22.1yrs:8084days) 観測地震数 15,511 観測記録数 744,426 内訳 K-NET 382,733 KiK-net 361,693 延べ観測点数 ( 移設非考慮 ) 1,742 平均観測地震数 :1.9 個 / 日平均観測記録数 :48 箇所 / 地震 13

活用事例 : 概要 1. 東京海上日動火災での活用例東京海上のリスクベース経営では リスク 資本 収益 を適切に管理している 地震リスク は経営上の重大なリスクとして認識しており 地震本部が公開する 確率論的地震動予測地図 の情報等に基づいて 自社にてリスク評価モデルを開発し 定量的なリスク評価を実施している 地震保険改定のチラシに地震本部が公開する情報を活用し 顧客の理解促進に努めている 2. 保険業界全体での活用例家計地震保険の保険料算出には 確率論的地震動予測地図 の情報が用いられている 世界的な自然災害リスク評価モデルベンダー (RMS 社 AIR Worldwide 社など ) も 確率論的地震動予測地図の情報を利用してモデルを開発している 再保険者は このようなモデルを利用して 再保険料を設定している 3. 東京海上日動リスクコンサルティングでの活用例 顧客企業に対して 地震リスクに関する情報として 長期評価 全国地震動予測地図などの各種レポー トを整理して 提供している 14

地震本部への要望 : 概要 4.(1) 情報提供の視点多様な手段による情報提供を期待する 情報利用者のレベル ニーズに応じた情報提供双方向のコミュニケーションを期待する 産業界 ( 企業など ) の防災対策への直接的な展開を期待する 4.(2) 技術的視点各種レポートの不確実性の表現の強化これまでの地震 地震動観測データの活用を推進する仕組み作り防災 減災推進のための更なる 学 の連携強化 15