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黒体放射 黒体 ( すべての周波数の電磁波を吸収し 再放射する仮想的物体 ) から出る放射 黒体輻射の例 : 溶鉱炉からの光 電波領域 可視光 八幡製鉄所 黒体輻射の研究は 19 世紀末に溶鉱炉の温度計測方法として発展 Bν のプロット (10 0 ~ 10 8 K) 黒体輻射関連の式 すべて温度で決まる 2

宇宙背景放射 宇宙は 3K の黒体放射で満たされている = 宇宙背景放射 ビッグバン宇宙に対する最も重要な観測的証拠のひとつ ( 宇宙が過去に高温高密であったことの証拠 ) COBE( 上 ) と WMAP( 下 ) が電波でみた宇宙 ( 中央は銀河面 ) 宇宙背景放射のスペクトル 宇宙背景放射とビッグバン宇宙 ( 続 ) 3

ビッグバン宇宙論の三大証拠 宇宙膨張 ( ハッブルの法則, 1929 年 ) 遠い銀河ほど大きな後退速度を持つ 元素合成 (1948 年 ) 宇宙における元素組成 ( 水素 ~75%, ヘリウム ~25%) は宇宙初期の高温状態から説明可能 宇宙背景放射 (1965 年 ) 宇宙が昔高温 高密度であったことの痕跡 宇宙背景放射 過去にスケール因子が現在より小さければその分温度が上昇 物質が電離するくらい温度が高い状態では 多数の電子によって光子が散乱されるため 宇宙が不透明に 宇宙全体が黒体放射で満たされる 宇宙の晴れ上がり ( 電子散乱が効かなくなる状態 ) は T~3000 K で起こる a ~ 1/1000 このときの黒体放射 ( 約 3000K) が赤方偏移によって 2.7K の宇宙背景放射として見える 4

宇宙背景放射の発見 宇宙背景放射の発見 (1965 年 ) ペンジャス ウィルソン 宇宙の温度は絶対温度 3 度 ( マイナス 270 度 ) COBE 衛星 COsmic Background Explorer 宇宙背景放射を精密計測する衛星 ( 米国 NASA) 1989 年に打ち上げ 周波数 30 ~ 90 GHz ほか分解能 ~7 度 宇宙背景放射が黒体輻射であることを高い精度で確認し 一方 その温度揺らぎを初めて発見した 5

宇宙背景放射のゆらぎの検出 構造形成の種となるゆらぎを発見 T/T ~ 10-5 2006 年度ノーベル賞 宇宙に構造 ( 銀河 星など ) が形成するために必要な種を発見 COBE がみた宇宙背景放射の揺らぎ 背景放射の揺らぎの意味 揺らぎの検出の意義現在の宇宙に存在する構造の種が確認された ビッグバン宇宙論の枠組みで 現在の宇宙の構造 ( 銀河 銀河団など ) を説明することが可能に 2 つの重要な問題 1) ゆらぎが小さすぎる通常の物質だけから宇宙ができているとすると重力で構造 ( 銀河 星 ) が成長するのに宇宙年齢以上かかる 通常の物質と異なる暗黒物質が必要 2) どの方向を見ても一様因果関係の無いはずの場所だが インフレーション? 6

COBE よりもさらに高分解能で揺らぎを観測する衛星 ( 米国 ) (2001 年打ち上げ ) WMAP 口径 1.5m 周波数 22 90 GHz Θ= λ/ D ~ 0.3 deg (@ 40GHz) (COBE は θ~ 7 deg) WMAP 衛星 COBE 全天マップの比較 COBE WMAP WMAP ゆらぎの角度相関の測定から宇宙の基本構造 ( 宇宙論パラメーター ) を決定 WMAP の成果 代表的なもの 宇宙の組成ダークマター 23% (Ω 0 ) ダークエネルギー 72% (λ 0 ) バリオン 5% (Ω b ) 宇宙年齢 137 億年など 背景放射の相関の角度スペクトル Spergel et al. (2003) : すでに 7000 回以上引用されているメガヒット論文! 宇宙の組成 7

ビッグバン宇宙論の三大証拠 宇宙膨張 ( ハッブルの法則, 1929 年 ) 遠い銀河ほど大きな後退速度を持つ 元素合成 (1948 年 ) 宇宙における元素組成 ( 水素 ~75%, ヘリウム ~25%) は宇宙初期の高温状態から説明可能 宇宙背景放射 (1965 年 ) 宇宙が昔高温 高密度であったことの痕跡 ハッブルの法則 近傍の銀河の距離 t と後退速度 v は比例する 銀河を光が出た時刻 t での a(t) 光子波長 λ スケール因子 a(t) 伝播時間と距離の関係 後退速度 光子波長 λ obs スケール因子 a(t 0 )=1 8

ハッブルの法則 II エドウィン ハッブル (1889~1953) が 1929 年に発見 速度 距離 最新の観測結果 最新の値 :H 0 = 72 km/s/mpc (+/-2) H 0 の逆数は宇宙年齢の目安 (1/H 0 ~ 135 億年 ) ビッグバン宇宙論の三大証拠 宇宙膨張 ( ハッブルの法則, 1929 年 ) 遠い銀河ほど大きな後退速度を持つ 元素合成 (1948 年 ) 宇宙における元素組成 ( 水素 ~75%, ヘリウム ~25%) は宇宙初期の高温状態から説明可能 宇宙背景放射 (1965 年 ) 宇宙が昔高温 高密度であったことの痕跡 9

宇宙初期の物質の進化 t < 10-4 sec クオーク グル オンプラズマ t ~ 10-4 sec 陽子 中性子生成 同数で平衡状態 t ~ 1 sec 弱い相互作用が効かなくなり 陽子 中性子数 が凍結 ( 計算によると約 7:1) t ~ 10 2 sec 元素合成 ビッグバン元素合成 I ヘリウムが25% の理由 t <1 sec 以下では陽子と中性子は平衡状態で同数 n p + e- + ν p + e- n + ν n + e+ p + ν 弱い相互作用が効かなくなると平衡がやぶれる その時の温度で陽子 中性子比が決まる 元素合成が行われる時刻 (t ~ 100 sec) での陽子 中性子は理論計算から約 7:1 n 中性子がすべてHeに取り込まれるとすると X_He = 4(N_n/2) / (N_p + N_n) = 0.25! p He 10

ビッグバン元素合成 II ヘリウムより重い元素の生成がほとんど進まない理由 質量数 5, 8 の安定な元素がない He + p, He + n, He + He などの反応が起こらない A=5 ν 核図表 陽子数 A=8 中性子数 星の中心での元素合成にくらべて密度が低く 3He 12 C などの 3 体反応はおきない 水素 75%, ヘリウム 25% ビッグバン宇宙まとめ 理論的に予想され 3 大証拠を含む多数の科学的証拠により実証された現代宇宙観の根幹である ( 常識的には信じられないかもしれないが ) アインシュタイン自身も最初は信じなかった ( 宇宙項の導入とその後の撤回 しかし 宇宙項は現在その存在が確実 ) 11

12 主系列星宇宙の階層構造 ログスケールで表示した宇宙の大きさ 10 0 10 3 10 6 10 9 10 12 10 15 10 18 10 21 10 24 10 27 単位 (m) 人間地球太陽太陽系太陽近傍の恒星銀河系 銀河銀河団宇宙の果て

主系列星 太陽のような普通の恒星を主系列星という 中心部で水素の核融合が起きて輝く 質量は太陽の ~0.1 倍から ~100 倍 ( それより軽い星は核融合を起こさない ) 星の色 ( 温度 ) と等級に良い相関がある ( 色ー等級関係 ) 恒星の例 ( オリオン座 ) 星には一生がある 星は人間と同じように生まれて死ぬ 星間ガスが重力収縮して星が誕生 核融合反応で恒星として輝く ( 主系列 ) 核融合の燃料が無くなると燃え尽きる 主系列星は可視光で最も明るく 電波天文学の対象として取り上げられることは少ない しかし 星の誕生と死は電波天文学でも重要な観測対象 13

色等級図 (HR 図 ) 星の色と明るさ ( 等級 ) の関係を表す Hertzsprung-Russell 図 (HR 図 ) とも呼ばれる この図上で 太陽のような星は 1 本の主系列にのる 主系列 : 明るい星ほど青い ( 明るい星ほど温度が高い ) 青い 主系列星 赤い 明るい暗い 太陽 : 恒星の代表格 太陽 : 極めて普通の恒星 太陽の光球温度 ~5800 度の黒体に近い λmax = 0.5 μm 可視光線 log (relative flux) 11 10 9 8 7 Spectrum of the Sun Bλ(T=5800 K) 6 SOHO が見た太陽 5 0.1 1 10 100 wavelength (micron) 太陽のスペクトル 14

地球の温度 太陽の光度 L sun = 4πR s2 σt s 4 地球が単位時間に受け取るエネルギー P e_in = L sun x(π R e2 ) / (4 π a 2 ) x (1-A) (a: 位置天文単位 A: 反射率 ) T=5800 K 地球が単位時間に放出するエネルギー P e_out = 4πR e2 σt e4 x (1 f) (f: 温室効果を表す係数 ) T~300 K 太陽と地球の温度 II 地球における入力と出力のつり合いから a = 1.5 x 10 8 km, R sun =7 x 10 5 km T sun = 5800 K A=f=0 の時 T e = 279 K (6 ) A=0.3, f=0 の時 T e = 255 K (-18 ) 黒体近似でも地球の温度をだいたい説明できる 実際の地球は A=0.3 なので f( 温室効果 ) がないと地球は凍る 温室効果ガスは必要 が 増えすぎてもバランスがくずれる 15

星のエネルギー 恒星のエネルギー源 太陽のような恒星は核融合を起こして輝く 主系列での核融合反応 4 H He 等 H H H H He 核融合を起こす燃料がなくなると星は燃え尽きて死を迎える したがって恒星中の水素が燃え尽きる時間が寿命 16

特殊相対論 以下の話の準備として 特殊相対論に関する話を少しだけ ( エネルギー関連 ) 質量 m, 速度 v の物体の運動量 エネルギーは 古典的な極限 ( v << c) では となり 運動量はニュートン力学に一致 エネルギーは第 2 項がニュートン力学の運動エネルギーに一致 特殊相対論 II 前頁のエネルギーの第 1 項は質量で決まるエネルギー 速度 v=0 とすればという 質量とエネルギーが等価であるという有名な関係式が得られる 一般の場合には より となる 特に 光子 (m=0) や相対論的物質 (mc 2 <<cp) の場合 となる ( 黒体輻射の圧力の計算でもこれを用いた ) 17

核融合のエネルギー 質量とエネルギーは等価 : E = mc 2 核融合で開放されるエネルギーは反応前後の質量差 ( m) による ( E = m c 2) 水素 1 Hの質量 1.0078 u ヘリウム 4 Heの質量 4.0026 u ヘリウム1 個と水素 4 個の差 m = 0.0286 u ( m/ 4u ~ 0.7 %, 静止質量の0.7% を解放 ) u はおよそ陽子 1 個の質量 (m H = 1.67 x 10-27 kg) に相当ヘリウム 1 個が生成されて解放されるエネルギー E = m c 2 = 4.3 x 10-12 J 太陽の光度 太陽の寿命 L sun = 3.8 x 10 26 W 太陽質量 M sun = 2.0 x 10 30 kg すべてが水素だとして核融合で取り出せるエネルギー総量 E = 0.007 M sun c 2 = 1.3 x 10 45 J すべての水素が燃えた場合の寿命 t = E / L sun = 1000 億年 実際には中心部の 10% 程度が燃焼可能なので 太陽の寿命は約 100 億年となる 18