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後縦靱帯骨化症 1. 概要脊椎椎体の後縁を連結する後縦靱帯が骨化し 脊髄 神経根を圧迫することで神経障害をきたす疾患 異所性骨化により運動制限をきたすこともある 頚椎に発生することが多く 次いで胸椎に発生し 腰椎発生例はまれである 一般に進行は緩やかであるが 外傷を契機に症状が急激に悪化することもある 2. 疫学国内の一般外来を受診する成人の頚椎側面単純レ線写真からの調査では 骨化が見つかる頻度は 1.5% から 5.1% 平均 3% と報告されている しかし レントゲン写真で骨化があっても必ずしも全員が症状を出すわけではなく 実際に症状が出現するのは一部である 病気が発症するのは中年以降 特に 50 歳前後で発症することが多く 頚椎では男女比では2:1と男性に多く 逆に胸椎では女性に多いことが知られている また 糖尿病の患者さんや肥満の患者さんに後縦靱帯骨化症の合併頻度が高いことが分かっている 3. 原因本疾患の原因はいまだ不明である 家族歴を有する症例があることから遺伝的発生要因が疑われ 疾患に関連する遺伝子の候補が見つかった いくつかの内分泌異常疾患において脊柱靱帯骨化が高頻度に認められるため 骨代謝やこれに影響するホルモンなどの異常の関与が指摘されているものの原因は不明である 4. 症状初発症状は項 頚部痛 上肢のしびれ 痛みで始まることが多い 進行すると下肢のしびれ 痛み 知覚鈍麻 筋力低下 上 下肢の腱反射異常 病的反射などが出現し 痙性麻痺を呈する 転倒などの軽微な外傷で 急に麻痺の発生や憎悪をきたすことがある 麻痺が高度になれば横断性脊髄麻痺となり 膀胱直腸障害も出現する 5. 合併症全身の他部位にも骨化が認められることがあり びまん性特発性骨格骨化症 (Diffuse Idiopathic Skeletal Hyperostosis;DISH) の部分症状と解釈する概念もある 黄色靭帯骨化症を合併することも稀でない 耐糖能異常を認めることがあり 糖尿病合併も頻度が高い 進行性に神経症状が増悪した場合 手術療法が選択性され 大半の患者に効果がある 術式は前方除圧 固定術もしくは後方除圧術や後方除圧固定術が施行される ( 研究分担者 ) 森幹士 吉田宗人 岩崎幹季 中嶋秀明 川口善治 山崎正志 中村雅也 遠藤直人 松本守雄 竹下克志 小宮節郎 今釜史郎 高畑雅彦 小澤浩司 土屋弘行 種市洋 山本謙吾 渡辺雅彦 藤林俊介 田中雅人 田口敏彦 松山幸弘 芳賀信彦 中島康晴 鬼頭浩史 吉井俊貴 波呂浩孝 國府田正

雄 石橋恭之 佐藤公昭 筑田博隆 海渡貴司

黄色靱帯骨化症 1. 概要脊椎椎弓間を連結する黄色靭帯が骨化増大し 脊髄が背側から圧迫され感覚障害や運動障害などの神経症状をきたす疾患 2. 疫学レントゲン写真からの調査では約 4.5% CT での検索ではさらに多くの発生率が報告されている しかし レントゲン写真で骨化があっても必ずしも全員が症状を出すわけではない 男女比では性差はほとんど認めず 年齢的には 20 歳以降に認めていますが 40 歳以上が一般的である また頚椎後縦靭帯骨化症の患者さんの 13% に胸椎黄色靱帯骨化症があるとの報告がある 3. 原因 脊柱靭帯骨化症の一表現系であるが 疾患関連遺伝子を含めて真の病因は不明である 4. 症状 胸腰移行部 ( 下位胸椎 ) に好発するため 脊髄または神経根圧迫による下肢の痛み しびれで始まることが 多い 進行すると深部腱反射異常 歩行障害 膀胱直腸障害がみられる 5. 合併症 後縦靱帯骨化症 びまん性特発性骨格骨化症 ( 骨増殖症 )(diffuse idiopathic skeletal hyperostosis; DISH) 進行性に神経症状が増悪した場合 手術療法が選択され大半の患者に効果がある

前縦靱帯骨化症 1. 概要脊椎椎体前方を連結する前縦靭帯が骨化増大し 頚椎の運動制限 時に食道や気管を圧迫し 嚥下困難や嗄声などの症状をきたす疾患 2. 疫学 高齢者に特に 60 歳以上の男性に多く認められる 50 歳以上の集団検診では 4.5% の報告がある 男女比 は 2~3:1 です 3. 原因 脊柱靭帯骨化症の一表現系と考えられているが 本疾患の原因はいまだ不明である 4. 症状 脊柱管外にある靱帯が骨化するため 脊髄 神経根の圧迫症状はない 頚椎の運動制限以外 大半は無症 状であるが 時に頚椎において骨化が巨大化すると食道や気管を圧迫し 嚥下障害や嗄声をきたす 5. 合併症全身の他部位にも骨化が認められることがあり びまん性特発性骨格骨化症 (Diffuse Idiopathic Skeletal Hyperostosis; DISH) の部分症状と解釈する概念もある 後縦靭帯骨化症や黄色靭帯骨化症を合併することも稀でない 骨化を認めても大部分の症例は無症状である 嚥下障害や嗄声などの症状が強い場合 手術療法 ( 骨化 部切除 ) を施行する

広範脊柱管狭窄症 1. 概要頚 胸 腰椎の広範囲にわたる脊柱管の狭窄によって 脊髄 馬尾または神経根が圧迫され 四肢 躯幹の痛み しびれ 感覚障害 筋力低下 歩行障害をきたす疾患 2. 疫学以前の調査では 年間で約 2,300 人と推計されている 男女比は 2:1 で男性に多く 中年以降特に 60 歳代に多い 2 カ所以上の狭窄部位は頚椎部と腰椎部の合併が 7 割を占めている 病気の原因として先天性のものもあるが 加齢とともに椎間板や椎間関節の変性が伴って狭窄を生じてくることが考えられている 3. 原因 先天性の広範囲脊柱管狭窄症には遺伝性が認められているが それ以外は加齢による退行変性の影響が 強い 4. 症状 脊髄 馬尾または神経根の圧迫による 四肢 躯幹の痛み しびれ 感覚障害 筋力低下 歩行障害 膀胱 直腸障害を認めることがある 複数の障害部位が存在するため 多彩な神経症状を呈することもある 5. 合併症 軟骨無形成症などの先天性疾患に伴い発症することもある 薬物療法 神経ブロック注射などの保存的治療が基本であるが 進行性に神経症状が増悪した場合 手術 療法が選択され 大半の患者に効果がある 術式は除圧術単独または除圧 + 固定術が施行される

進行性骨化性線維異形成症 1. 概要小児期から全身の骨格筋や筋膜 腱 靭帯などの線維性組織が進行性に骨化し このため四肢 体幹の可動性低下や変形を生じる疾患 足の母趾の変形 短縮を示すことが多い 2. 疫学有病率は 200 万人に1 人とされている 日本における患者さんの数は不明であるが 研究班の調査では全国の主たる病院でのべ 80 名以上の患者さんを診療した経験があり 重複を考慮しても 60 名以上の患者さんがいると考えられる 3. 原因本疾患は弧発例が多いが 家系例の検索から常染色体優性遺伝形式を取るとされている BMP type Ⅰ ( ビーエムピータイプ 1) の受容体である ACVR1 (Activin A Receptor, Type 1: アクチビンエーレセプタータイプ 1)( 別名 ALK2: Activin Receptor-like Kinase 2: アクチビンレセプターライクキナーゼ 2) の遺伝子変異が報告され 日本人の罹患者でもこの変異が確認されている 4. 症状全身の筋肉や腱 靭帯などが骨化するため 四肢の関節可動域が制限され 脊柱の変形などが進行する 骨化に先行して フレアアップと呼ばれる皮下組織の腫れを生じることがある 外傷や手術がフレアアップや異所性骨化のきっかけになることがある 出生時より足の母趾が短く変形していることがある 5. 合併症 開口制限 ( 口を十分に開くことができない ) 呼吸障害 ( 肺活量の低下など ) 根本的な治療法は現時点で開発されていない 外傷を避け フレアアップや異所性骨化を予防する 非ステ ロイド性消炎鎮痛剤 ステロイド ビスフォスフォネートと呼ばれる薬剤の使用などが試みられている