裁判員制度 国民の意識と課題 ~ 裁判員制度に関する世論調査 から ~ 世論調査部 ( 社会調査 ) 酒井芳文 はじめに 一般の人が刑事裁判に参加する 裁判員制 度 がいよいよ 2009 年 5 月 21 日にスタートする 時間がかかる わかりにくい 近寄りがたい これまで日本の裁判には様々な批判があっ た 筆者も現場で取材をしていたころ, 裁判取 材はなかなか馴染めず, 苦労した思い出もある 裁判員制度は, ふつうの人の感覚や常識を裁 判に反映させることで, 国民に司法への理解と信頼を深めてもらおうと導入された 戦後最大の司法改革 ともいわれている NHKは, 制度開始半年前にあたる2008 年 11 月, 制度に対する国民の意識を探ろうと, 裁判員制度に関する世論調査 を行った 結果の一部は,2008 年 12 月 6 日に放送された 日本の これから でも紹介された 制度開始まであと 2 か月となり, 調査当時と状況が変わっている部分もあるが, 今回の報告では, あらためて調査結果を検証することで, 裁判員制度の課題を考えてみたい 裁判員制度に関する世論調査 概要調査時期 : 20 08 年 11 月 14 日 ~ 16 日調査相手 : 電話法 (RDD 追跡法 ) 調査対象 : 全国 20 歳以上の男女 2,723 人調査回答数 ( 率 ): 1,653 人 (60.7%) 1 裁判員制度では 調査結果の分析報告に入る前に, 裁判員制度とはどのようなものか整理しておこう 制度の趣旨は はじめに で述べたとおりで, ここでは具体的な手順などを整理したい 1) まず, あらかじめ無作為にリストアップされた全国で30 万人近い中から, 事件ごとに裁判員になる 候補者 が裁判所に集められる 裁判所に来て初めて, どのような事件を担当するのかが伝えられる 事情がある人を除き, 残った中から 6 人の裁判員が抽せんで選ばれる その 6 人の裁判員は 3 人の裁判官とともに刑を判断することになる 法廷とは別の部屋で, 裁判員は裁判官と対等な立場で意見をかわし, 議論を尽くしたうえで 有罪か無罪か, そして有罪の場合はその 刑の重さ を多数決で決める 裁判員が審理をするのは殺人や放火といった重大事件で, 死刑を言い渡すこともありうる 裁判は 3 日から 5 日の間, 集中的に開かれる もちろん, 法律の知識がなくてもまったく問題はなく, わからないことは裁判官が説明してくれるので, 裁判員は自分なりの意見をいえばよい 概要は以上だが, この制度がうまく機能するかどうかは, 国民にその趣旨や内容が理解され 24 MARCH 2009
るかどうかにかかっている また, 国民が裁判員として参加しやすいような環境づくりも欠かせない では, 調査結果を詳しくみていこう この質問は4 段階で尋ねたが, どちらかといえば を含める形で 必要 か 必要ない かで 2 段階にまとめると, では 必要 が 4 2 %, 必要ない が 5 0 % と, 必要ない が 2 調査結果から (1) 男性や若い年代ほど 積極的 まず, いまの日本に裁判員制度が必要かどうかを尋ねた質問をみる 図 1は, 男女, 年代, そして裁判に参加したり傍聴したりしたことがあるかどうか (= 裁判経験の有無 ) によって, 回答がどのように違うかをまとめたものである 必要 よりも多くなった 2) この結果からは, 裁判員制度が国民の支持を得ているとは必ずしもいえまい 実際に制度が始まればまた評価も変わるだろうが, 関係者にとっては少し残念な結果であろう さて, 男女別にみると, 必要 だと答えたのは男性で 46%, 女性で39% であった 男性のほうが女性よりも 必要 と答えた回答者が多かった 一方, 年代別にみると,20 代,30 図 1 制度の必要性 図 2 参加の意向度 代, 60 代と, 年代が上がるにつれて 必要 が減って 必要ない が増えた 3) また, 裁判経験の有無で比べると, 経験がある 層では 必要 が 4 8 %, 必要ない が 4 6 % と, 誤差の範囲内 とはいえわずかに 必要 が上回ったが, 経験がない 層では 必要 が 4 2 % に対して 必要ない が 5 1% と逆転した 図 2は, 裁判員として裁判に参加したいかどうかを尋ねた質問で, 同じように層別の回答状況をまとめたものである 前述の制度の必要性を尋ねた質問と同じく, この質問も 4 段階で尋ねた さて, 参加したい 参加 MARCH 2009 25
したくない と 2 段階にまとめたところ, では 参加したい が 3 3%, 参加したくない が 6 5% となった その差は 必要 と 必要ない の差よ りも大きくなった さらに層別にみていくと, 必要性と同じく男 性や若い年代ほど 参加したい が多かった 裁判経験の有無で比べても, 経験がある 層のほうが 参加したい が多かった では, 参加したくない 理由はなにか 参加の意向度を尋ねた質問で 参加したくない, すなわち できれば参加したくない か 絶対に参加したくない と答えた 1, 0 6 8 人に対して, その理由を4つの中から1つ選んでもらった その結果が図 3である 最も多かったのは 正しい判断ができるか自信がないから (55%) であった そして 人を裁く責任を負担に感じるから (26%), 仕事や家事などで忙しいから (11%), 裁判に興味がないから (4%) と続いた 日常の忙しさよりも, 人を裁くこと に抵抗を感じている回答者が多かった 提示した 4つ以外に理由がある場合には その他 として自由回答で答えてもらったが, その他 では高齢を理由にあげた回答者が多かった 4) 中には有罪判決を 図 3 参加したくない理由 (100% =1,068 人 ) 受けた被告が服役後, 裁判員を探し出して報復することをおそれているという答えもあった また, 魚はさばけても人は裁けない との答えは象徴的であった 裁判員制度に対する 態度 を推し量る質問は, これまでに述べた制度の必要性, 参加の意向度のほかに制度の認知度 (= 制度を知っているかどうか ) がある この質問も 4 段階で認知の程度を尋ねており, 知っている 知らない の 2 段階にまとめたところ, 知っている が 4 3 %, 知らない が 5 6 % となった この節の最後に, これら 3 つの質問で 必要 参加したい 知っている と答えた, つまり 3 つの質問いずれにも積極的な回答をした, いわば制度に 積極的 な回答者と, 逆に 消極的 な回答者 (= 必要ない 参加したくない 知らない と答えた ) を比べてみよう 図 4は, 男女, 年代, そして裁判経験の有無でわけた場合, 裁判員制度に 積極的 な回答者と 消極的 な回答者がどれだけいたかを整理したものである なお,1,653 人中 積極的 な回答者は 227 人 (14%), 消極的 な回答者は422 人 (26%), どちらでもない回答者が 1, 0 0 4 人 ( 6 1%) であった まず, 男性は女性に比べて 積極的 な回答者が多かった 別の見方をすれば, 男性では 積極的 消極的 が拮抗したが, 女性では 消極的 な回答者が 積極的 な回答者に比べて多かった 次に, 年代別でみた場合, 積極的 な回答者の割合は年代が上がるにつれて減った 20 代ではわずかに 積極的 が 消極的 を上回ったが,20 代は 81 人しかサンプルがないうえに, 積極的 消極的 の差は有意な差ではない ここは参考として数値をみてほしい 26 MARCH 2009
図 4 積極的か消極的か さらに裁判経験の有無で比べると, 経験がある 層では 積極的 が 消極的 を上回り, 逆に 経験がない 層では 消極的 が 積極的 を上回った これらの結果をまとめると, 男性や若い年代ほど裁判員制度に 積極的 また裁判経験がある層も 積極的 だといえよう 刑は避けては通れない問題である 5) 図 5は, 死刑制度への賛否を尋ねた質問の回答状況をまとめたものである この質問は, 死刑について 賛成 反対 どちらともいえない の中から選んでもらった では 賛成 が 47 %, 反対 が 11%, そして どちらともいえない が 36% だった 賛 成 は, 反対 や どちらともいえない よりも (2) 垣間みえる 厳罰化 を望む傾向次に, 死刑をめぐる質問をみていく 前章でも述べたが, 死刑制度がある日本では裁判員が死刑を言い渡すかどうかの判断を迫られることがありうる 裁判員制度を考えるうえで, 死 多かった 男女別にみると, 男性は女性よりも 賛成 が多かった 一方, 年代別では,60 代で 賛成 が 5 5% と特に高くなった 次に, 死刑を求刑された場合にどういう態度をとると思うかを尋ねた質問をみる ( 図 6) この質 図 5 死刑への賛否 問は, 死刑に値すると思えば, 死刑を言い渡せる ( 以下 言い渡せる ), 死刑に値すると思っても, 死刑は言い渡せない ( 以下 思っても言い渡せない ), どんな理由があれ, 死刑は言い渡せない ( 以下 言い渡せない ) の3 択で尋ねた では 言い渡せる が 45%, 思っても言い渡 MARCH 2009 27
図 6 死刑を言い渡せるか 図 5と6 を見比べると, 各層で死刑に 賛成 と死 刑を 言い渡せる の値が 近くなったことがわかるが, この 2 つの質問をクロスさせ両者の関係性を整理した のが表 1である 表をみると, 死刑に 賛 成 な層では 言い渡せる が多く, 逆に死刑に 反 対 な層では 言い渡せない が多かったことがわか せない が 3 2%, 言い渡せない が 14% となった 3つの選択肢の中では 言い渡せる が最も多くなったが, 別の見方をすれば 思っても言い渡せない と 言い渡せない を足し合わせると 46% であることから, 言い渡せる と 言い渡せない が拮抗した形ともいえる さて, 男女別にみると, 男性では 言い渡せる が多かったが, 女性では 言い渡せる と 思っても言い渡せない が拮抗した 一方, 年代別では, 前述の死刑への賛否同様,60 代で 言い渡せる が 55% と特に高くなった る 一方, 死刑について どちらともいえない 層では 思っても言い渡せない が 4 9 % で最も多く, 言い渡せる が 28% で続いた このように, 死刑への賛否と死刑を言い渡せるかの2 問の間には, 的にとらえると回答に一定の関係性がみられた また, 部分的にみると, 死刑に 賛成 でも自分がそれを判断する立場になると 22% が 思っても言い渡せない と, 揺れる心理もみてとれた ところで, 前の節で裁判員制度に 積極的 消極的 な回答者を定義したが, これを分析 軸にして死刑をめぐる 2 問の回答傾向を 表 1 死刑への賛否 と 死刑を言い渡せるか まとめたものが表 2である これをみる ないと, 裁判員制度に 積極的 な回答者の中では死刑に 賛成 や死刑を 言い渡せる が群を抜いて多かったことが わかる 一方, 消極的 な回答者の中 では, 死刑そのものは どちらともいえ 分母 = ない 賛成 が拮抗し, 死刑を言い渡 言い渡せない 14 4 53 16 4 では, 死刑への 態度 と刑事裁判その他 +わからない, 8 3 3 8 69 無回答の 現状認識 の間にはなにか関係性 言い渡せる 45% 71 12 28 14 せるかどうかについては 思っても言い思っても 32 22 32 49 12 言い渡せない渡せない 言い渡せる が拮抗した 死刑への賛否賛成反対いえどち無回答1,653 人 772 190 594 97 死わからない,刑を言い渡せる28 MARCH 2009
刑事裁判の評価量刑の感覚適正である問題がある無回答わからない,重い軽い適正わからない,言い渡せる表 2 制度への態度と 死刑への賛否 死刑を言い渡せるか 的分母 = ある と 2 段階にまとめたところ, 適正である が 4 3%, 問題がある が 4 4% で評価は拮抗した 一方, 後者の量刑の感覚は 重い 軽い 適正 の 3 択で尋ねたが, 結果は 重い がわずか 賛成反対どちらともいえない 47% 11 36 63 9 27 40 13 42 46 12 35 2% にとどまったのに対して, 軽い が 55%, 適正 が 28% となった 刑事裁判そのものは評価がわかれたが, 量 言い渡せる 45 71 35 44 刑については 軽い が圧倒的に多かった この 2 問と死刑をめぐる2 問との関 その他 +わからない, 無回答 8 2 7 10 ても死刑への 態度 に大きな違いはみ 思っても言い渡せない 32 20 38 33 係性を整理したのが表 3である 表をみると, 刑事裁判の評価でわけ言い渡せない 14 6 19 14 られなかったが, 量刑の感覚でわける があるのだろうか いまの日本で刑事裁判が適正に行われていると思うかどうかを尋ねた質問と, 刑事裁判で言い渡される刑の重さについてとしてどのように思うかを尋ねた質問を使って分析を試みる このうち, 前者の刑事裁判の評価は 4 段階で尋ねた その結果を 適正である 問題が と違いがみられた なお, 量刑の感覚で 重い はわずか 38 人しかいないため, この層の分析は避ける 量刑の感覚で 軽い とした 910 人中では死刑について 賛成 が 5 8% と最も多くなったが, 適正 とした 465 人中では どちらともいえない が多かった 一方, 量刑の感覚で 軽い 制度への態度積極的消極以外1,653 人 227 422 1,004 死刑への賛わからない, 無回答 6 0 6 7 死刑を言い渡せる表 3 刑事裁判の評価 量刑の感覚 と 死刑への賛否 死刑を言い渡せるか 分母 = 否どちらともいえない 36 40 34 30 34 31 45 37 賛成 47% 50 50 23 39 58 39 18 反対 11 10 15 7 26 9 15 12 無回答1,653 人 718 721 214 38 910 465 240 死刑への賛わからない, 無回答 6 1 1 39 0 2 0 34 死刑をか言い渡せない 14 12 16 14 34 11 17 16 言い渡せる 45 46 49 29 42 54 39 25 思っても言い渡せない 32 38 31 17 24 32 39 23 その他 + わからない, 無回答 8 4 4 41 0 4 5 35 MARCH 2009 29
と答えた層では死刑を 言い渡せる が多くなったが, 適正 と答えた層では 言い渡せる と 思っても言い渡せない が並んだ このように, 死刑に 肯定的 な態度をとるのは, いまの刑事裁判での刑の重さが 軽い と感じている層で多くなった おととしの道路交通法の改正で飲酒運転やひき逃げの罰則が強化されたように, 昨今, 犯罪に対する 厳罰化 の動きが出ている 今回の調査では 厳罰化 については直接, 質問していないが, 死刑を基軸に調査結果を詳しく分析していくと, として死刑に 肯定的 な意見が多く, その背景には現状の刑事裁判への不満があることがみてとれた こうしたことから, 国民の側にも 厳罰化 を望む傾向があることがうかがえた (3) よりよい裁判員制度の実現には 最後に, 裁判員制度を今後, どのように実施 していけばよいのかについて考えたい 図 7 は, 裁判員制度を実施するうえで必要だ と思うことをあげてもらった質問の結果である 図 7 制度で必要なこと この質問は 4つの選択肢から1つだけ答えてもらった 最も多かったのは 心理的負担を和らげる対策をとる (39%) であった そして 仕事を休んだ期間の収入を補償する ( 2 1 % ), 裁判員を辞退しやすくする (18%), 裁判期間を短くする ( 1 2 % ) と続いた 国民が求めているものは, 休業補償 や 辞退しやすさ よりも メンタル面での対策 であった この 心理的負担を和らげる対策をとる は 40 代と50 代で特に多く選ばれており,50 代では 54% と実に半数以上の回答者が選んでいた また, 裁判員制度に 積極的 な回答者では 41%, 消極的 な回答者でも43% と, 制度に対する積極性に関わらず多く選ばれていた 国民が裁判員として参加しやすくするためには, なによりも メンタル面での対策 が求められている さて, 裁判員制度では裁判を3 日から 5 日かけて集中的に開くことが予定されている あらかじめ検察側 弁護側の双方が争点や証拠をしぼったうえで, 審理が進められる この参加期間について尋ねた質問をみてみよう 参加期間について もっと長くするべきだ もっと短くするべきだ これくらいでよい の 3 択で選んでもらったところ, これくらいでよい ( 4 2 % ), もっと長くするべきだ ( 3 0 % ), もっと短くするべきだ (13%) となった これを制度に対する積極性で比べると表 4のようになる 裁判員制度に 積極的 な回答者の中では これくらいでよい が圧倒的に多かったが, これが 消極的 な回答者になると もっと長くするべきだ と これくらいでよい の差が縮まり, 有意な差ではなくなった 裁判員制度をよりよいものにするためには, 消極的 な回答者に 30 MARCH 2009
理解を深めてもらうことがかかせないが, その中には参加期間について もっと長くするべきだ と考える人たちが一定程度いることになる 消極的 なのは単に面倒くさい, 関わりたくないというだけではなく, 拙速な判断をしたくないという考え方もあるということである 実は, 本稿で最初に分析した裁判員制度が必要かどうかの質問で 必要ない と答えた 8 2 6 人にその理由を問うたところ, 専門家である裁判官の判断のほうが信用できるから (26%) や 裁判員になる国民の負担が重いから (29%) よりも えん罪など誤った判決につながるおそれがあるから (38%) が多くなった もしかしたら誤った判断をして他人の人生を狂わせてしまうかもしれないという不安 裁判員の 肉体的 な負担を減らし参加しやすくすることももちろん大切だが, こうした精神的な負担を軽くする対策が望まれている 終わりに 表 4 制度への態度と 参加期間について 分母 = もっと長くするべきだ 30% 28 31 30 もっと短くするべきだ 13 11 15 13 これくらいでよい 42 57 37 40 今回の調査からは, 裁判員制度に対して国民の間に 意識の格差 があることがわかった 半年前という時期になっても 賛否両論 であ 制度への態度積極的消極的以外1,653 人 227 422 1,004 参加期間についわからない, 無回答 15 4 17 17 り, 国民のコンセンサスが得られているとは言いがたい結果だ ただ, 制度がこれから始まることは変えられない 未知 な制度であるがゆえに, 我々一般の国民だけでなく, 専門家である法曹関係者の間にも 意識の格差 はあろう 裁判員制度をよりよいものにしていくためには, メンタル面での対策など国民が真に求めている施策を充実させ, 消極的 な人たちを一人でも 積極的 に変えていくことが大切である その視点で, 今後とも調査などを通じて検証を進めていきたい ( さかいよしふみ ) 注 : 1) 裁判員制度については, 最高裁判所が設けているホームページで詳しく紹介されている アドレスは次のとおり http://www.saibanin.courts.go.jp/ 2) 本稿では, 信頼度 95% 水準の検定の結果, 有意な差が認められれば 差がある 多い 少ない などと記述している ただし,RDD はコンピューターで無作為に電話番号を作っているとはいえ, 厳密にいえば 等確率抽出 (= 調査相手に選ばれる確率がすべての国民で等しい抽出 ) ではなく, サンプリング誤差を正確に見積もることは難しい あくまでも 目安 として, 等確率抽出に基づくサンプリング誤差の考え方を導入したものである 3) 厳密にいえば, 必要ない で 60 代と 70 歳以上の間に有意な差があった以外は, 近接する年代間で 必要 必要ない の値に有意な差はない しかし, 近接する年代間で差がなくても, 例えば 20 代と 70 歳以上の間では 必要 の値に有意な差があった 年代で結果を比べる場合は, 的な 特徴 を損なわないよう, 誤差を考えずに大まかな 傾向 として 年代が上がるにつれて減った などと記述している 4)70 歳以上の人は基本的に裁判員を辞退できる 5) 調査最終日の 2 日後に, さいたま市で元厚生事務次官の夫婦が殺害されているのがみつかり, 同じ日に東京 中野区で別の元厚生事務次官の妻が襲われた 今回の調査はこれらの事件の前で, 事件による調査結果への影響はない MARCH 2009 31
裁判員制度に関する世論調査 単純集計結果 調査の概要 1. 調査目的裁判員制度について制度開始半年前の国民の意識を探る 2. 調査時期 2008 年 11 月 14 日 ( 金 )~ 16 日 ( 日 ) 3. 調査相手全国の 20 歳以上の男女 2,723 人 4. 調査方法電話法 (RDD 追跡法 ) 5. 回答数 ( 率 ) 1,653 人 (60.7%) - 制度の認知度 - 第 1 問一般の国民が裁判官といっしょに刑事裁判を審理する 裁判員制度 が来年 5 月に始まります あなたはこの 裁判員制度 について, どの程度, 知っていますか 次の 4つの中から 1つ選んでお答えください 1. 詳しく知っている 1.7 % 2. ある程度知っている 41.7 3. あまり知らない 44.4 4. まったく知らない 11.3 5. わからない, 無回答 0.9 - 制度の必要性 - 第 2 問あなたは, いまの日本に裁判員制度は必要だと思いますか それともそうは思いませんか 次の 4つの中から 1つ選んでお答えください 1. 必要 10.9 % 2. どちらかといえば必要 31.2 3. どちらかといえば必要ない 32.2 4. 必要ない 17.7 5. わからない, 無回答 8.0 - 必要な理由 - 第 2 問 SQ1 [ 第 2 問で 1.2. と答えた人のみ ] それでは, あなたが, 裁判員制度が必要と思う主な理由はなんですか 次の 3 つの中から 1 つ選んでお答えください 1. 裁判に国民の常識や感覚を反映させるべきだから 35.5 % 2. えん罪など誤った判決を防ぐことができるから 26.3 3. 国民が司法に参加することで民主主義がより成熟するから 34.4 4. その他 0.7 5. わからない, 無回答 3.0 (100%= 695 人 ) - 必要でない理由 - 第 2 問 SQ2 [ 第 2 問で 3.4. と答えた人のみ ] それでは, あなたが, 裁判員制度が必要ないと思う主な理由はなんですか 次の 3 つの中から 1 つ選んでお答えください 1. 専門家である裁判官の判断のほうが信用できるから 26.2 % 2. えん罪など誤った判決につながるおそれがあるから 38.5 3. 裁判員になる国民の負担が重いから 29.2 4. その他 3.3 5. わからない, 無回答 2.9 (100%= 826 人 ) - 参加の意向度 - 第 3 問もし裁判員に選ばれた場合, 裁判への参加が義務づけられますが, あなたは, 裁判員として裁判に参加したい と思いますか それともそうは思いませんか 次の 4 つの中から 1 つ選んでお答えください 1. ぜひ参加したい 5.5 % 2. 参加してもよい 27.3 3. できれば参加したくない 44.1 4. 絶対に参加したくない 20.5 5. わからない, 無回答 2.6 - 参加したくない理由 - 第 3 問 SQ1 [ 第 3 問で 3.4. と答えた人のみ ] それでは, あなたが, 裁判員として裁判に参加したくない主な理由はなんですか 次の 4 つの中から 1 つ選んでお答えください 1. 仕事や家事などで忙しいから 10.7 % 2. 人を裁く責任を負担に感じるから 25.8 3. 正しい判断ができるか自信がないから 54.9 4. 裁判に興味がないから 4.1 5. その他 2.5 6. わからない, 無回答 2.0 (100%= 1,068 人 ) - 重大事件を扱う妥当性 - 第 4 問裁判員制度では, 死刑が求刑されることもある重大な事件について, 裁判員が刑の判断に加わります あなたは, 裁判員が重大な事件の刑を判断することについて, 妥当だと思いますか それともそうは思いませんか 次の 4つの中から 1つ選んでお答えください 1. 妥当 15.5 % 2. どちらかといえば妥当 28.0 3. どちらかといえば妥当でない 30.2 4. 妥当でない 17.3 5. わからない, 無回答 9.0 - 妥当な理由 - 第 4 問 SQ1 [ 第 4 問で 1.2. と答えた人のみ ] それでは, あなたが妥当だと思う主な理由はなんですか 次の 3 つの中から 1 つ選んでお答えください 1. 重大な事件こそ国民の常識や感覚を反映させた判断が必要だから 57.6 % 2. 重大な事件に限らないと, 裁判の数が多すぎて裁判員の負担が増えるから 15.4 3. 重大な事件のほうが国民の関心が高いから 21.6 4. その他 1.3 5. わからない, 無回答 4.2 (100%= 719 人 ) - 妥当でない理由 - 第 4 問 SQ2 [ 第 4 問で 3.4. と答えた人のみ ] それでは, あなたが妥当でないと思う主な理由はなんですか 次の 3 つの中から 1 つ選んでお答えください 1. 重大な事件では判断を間違えるおそれがあるから 24.2 % 2. 重大な事件では裁判員の心理的な負担が重すぎるから 25.6 3. 重大な事件は, 裁判員として参加する 3 日から 5 日では十分な審理ができないから 46.6 4. その他 1.8 5. わからない, 無回答 1.8 (100%= 785 人 ) - 死刑を言い渡せるか- 第 5 問もしあなたが裁判員に選ばれた裁判で, 死刑が求刑されたとします その場合, あなたはどうすると思いますか 次の 3つの中から 1つ選んでお答えください 32 MARCH 2009
1. 死刑に値すると思えば, 死刑を言い渡せる 45.2 % 2. 死刑に値すると思っても, 死刑は言い渡せない 32.4 3. どんな理由があれ, 死刑は言い渡せない 14.0 4. その他 0.6 5. わからない, 無回答 7.9 - 参加期間について- 第 6 問裁判員制度では, 裁判を 3 日から 5 日かけて集中的に開くことが予定されています あなたは, これについてどう思いますか 次の 3つの中から 1つ選んでお答えください 1. もっと長くするべきだ 30.1 % 2. もっと短くするべきだ 13.2 3. これくらいでよい 41.7 4. わからない, 無回答 14.9 - 守秘義務について - 第 7 問裁判員には, いわゆる 守秘義務 があり, 裁判員として知ることができた秘密を漏らしたときは刑罰が科せられることもあります あなたは, これについて妥当だと思いますか それともそうは思いませんか 次の 4 つの中から 1 つ選んでお答えください 1. 妥当 60.1 % 2. どちらかといえば妥当 22.1 3. どちらかといえば妥当でない 6.4 4. 妥当でない 5.4 5. わからない, 無回答 6.0 - 裁判官と判断することについて- 第 8 問裁判員制度では,6 人の裁判員が 3 人の裁判官といっしょに議論して判決を出します あなたは次の 2つの考え方のうち, どちらに近いですか 1. 専門知識を持つ裁判官がいたほうが安心だ 74.2 % 2. 裁判官の意見に押し切られてしまうのではないかと不安だ 18.0 3. どちらともいえない 1.6 4. わからない, 無回答 6.1 - 制度で必要なこと- 第 9 問裁判員制度を実施するうえで, あなたが最も必要だと思うことはなんですか 次の 4つの中から 1つ選んでお答えください 1. 裁判期間を短くする 12.2 % 2. 裁判員を辞退しやすくする 18.2 3. 仕事を休んだ期間の収入を補償する 21.2 4. 心理的負担を和らげる対策をとる 38.7 5. 特に望むことはない 0.1 6. その他 0.8 7. わからない, 無回答 8.8 - 死刑への賛否 - 第 10 問あなたは, 死刑制度に賛成ですか 反対ですか それともどちらともいえませんか ( 選択肢読み上げなし ) 1. 賛成 46.7 % 2. 反対 11.5 3. どちらともいえない 35.9 4. わからない, 無回答 5.9 - 裁判の参加経験 - 第 11 問あなたは, いままでに裁判に参加したり, 裁判を傍聴したりしたことがありますか ( 選択肢読み上げなし ) 1. ある 14.5 % 2. ない 80.9 3. わからない, 無回答 4.6 - 刑事裁判の評価 - 第 12 問あなたは, いまの日本で, 刑事事件の裁判が適正に行われていると思いますか 次の 4つの中から 1つ選んでお答えください 1. 十分に適正である 4.1 % 2. おおむね適正である 39.3 3. やや問題がある 36.7 4. おおいに問題がある 6.9 5. わからない, 無回答 12.9 - 量刑の感覚 - 第 13 問あなたは, いまの日本の刑事裁判で言い渡される刑の重さについて, としてどのように思いますか 次の 3 つの中から 1つ選んでお答えください 1. 重い 2.3 % 2. 軽い 55.1 3. 適正 28.1 4. わからない, 無回答 14.5 性年代男女 20 代 30 代 40 代 50 代 60 代 70 歳以上無回答 1,653 人 707 946 81 249 268 282 354 343 76 100.0% 42.8 57.2 4.9 15.1 16.2 17.1 21.4 20.8 4.6 男の年代女の年代 20 代 30 代 40 代 50 代 60 代 70 歳以上無回答 20 代 30 代 40 代 50 代 60 代 70 歳以上無回答 1,653 人 37 99 114 134 150 140 33 44 150 154 148 204 203 43 100.0% 2.2 6.0 6.9 8.1 9.1 8.5 2.0 2.7 9.1 9.3 9.0 12.3 12.3 2.6 職業 農林漁業自営業勤め人主婦無職 学生 その他 無回答 1,653 人 45 183 537 443 354 91 100.0% 2.7 11.1 32.5 26.8 21.4 5.5 特別区と人口 100 万以上の市 人口 30 万以上の市 人口 10 万以上の市 都市規模 人口 5 万以上の市町村 サンプル構成 人口 5 万未満の市町村 無回答 北海道東北 関東甲信越 地域ブロック 東海北陸 近畿 中国九州四国 1,653 人 349 344 353 193 226 188 165 630 230 274 354 100.0% 21.1 20.8 21.4 11.7 13.7 11.4 10.0 38.1 13.9 16.6 21.4 MARCH 2009 33