会員制 CD セミナー 2012 年 12 月号 会計プロの視点! 経済 会計 時事ニュース通信 < 目次 > 企業会計財務編 1. パナソニックが 7,650 億円の赤字見通し 2. オリエンタルランド 時価総額 1 兆円超 3. インドネシア 賃上げ要求デモで企業に圧力 パナソニックが特許資産規模 3 年連続首位 4. 会計士合格者 11% 減は憂慮すべき事態か? 5. ソニーが転換社債 1,500 億円発行か 6. 物価上昇と資産 負債価値の関係 P 2 P 5 P 8 P 10 P 12 P 15 P 19 経済ニュース編 1. 日本ブランド 東南アジアで健闘中 2. アジア各国が利下げを急いでいます 3.GDP 実質 3.5% 減少 4. フランス国債 最上位から転落 P 22 P 24 P 26 P 28 ワンポイント会計学 資産 の意義 P 30 著作 制作柴山会計ラーニング株式会社 1
企業会計財務編 1. パナソニックが 7,650 億円の赤字見通し ( 日経 12*11*1*1) パナソニックが 10 月 31 日に決算発表を行い 通期 2013 年 3 月期 で 7,650 億円の最終赤字になるとの見通しを示しました http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/2012/10/jn 121031-3/jn121031-3.html 日経新聞の 1 面で大きく報じられています つまり 日本経済に大きな影響を及ぼすニュース であると日経新聞側が判断したということですね このとおりいくなら 昨年の 7,721 億円に続き 2 年連続で 7,000 億円を大きく上回る巨額の赤字計上をすることになります 5 月 11 日に行った 2012 年 3 月期の決算発表では 通期の業績予測が最終利益 500 億円でしたので この間 わずか半年で 8,000 億円もの利益減少要因が浮上したことになります かつて ここまで業績を激変させるような環境変化があったでしょうか おそらく 10 年以上前には考えられないような状況です 現在の企業を取りまく経営環境がいかに速いスピードで変化しているということを 私たちにまざまざと認識させられます 具体的な減益要因につきましては 決算短信における 2012 年度通期の見通し などから 次の点が読み取れます 1. 営業利益は 1,400 億円の黒字予想 ( 当初は 2,600 億円の黒字予想 ) 2. デジタルコンシューマー商品の市況悪化などで大幅な減収 3. 新興国の景気減退も売り上げ減に影響を与える 4. 営業外費用として 第 2 四半期にのれん 無形資産の減損損失などを含む事業構造改革費用の計上などで 4,400 億円の減益となる 2
5. 現状の業績悪化を踏まえ 将来の黒字を前提として計上されている繰延税金資産 4,125 億円を 2012 年度 (2013 年 3 月期 ) の第 2 四半期に取り崩した いかがですか? これを見ただけでも のれん 無形資産 減損損失 第 2 四半期 繰延税金資産 日商 1 級レベルの上級簿記用語のオンパレードです ( 苦笑 ) ほんと 日経新聞の会計記事って 年を経るにしたがって どんどん難しい会計用語がたくさんでるようになりましたよね けっきょく これだけ赤字業績が続くと 今後も大幅に業績が回復するかどうかわからないから 今年は多くの資産の評価を下げておく必要があるんじゃないの? ということで のれんや無形資産や繰延税金資産といった会計特有の資産評価額をバシバシ切り落として損失を出していこう というコンセプトです それがあわさると数千億円もの利益の下方修正につながるのですから 今の会計ルールは恐ろしいです ここからが パナソニックの正念場ですね ぜひ日本経済のためにも がんばって V 字回復ふたたび となってほしいところです ちなみに この発表の翌日 11 月 1 日に ヤフー! ファイナンスでパナソニックの株価をみてみましたら 案の定 3
前日終値 514 円 (10/31) 始値 414 円 (09:33) 高値 432 円 (09:44) ストップ安 414 円 (09:33) 出来高 97,137,800 株 (11:30) 売買代金 40,811,124 千円 (11:30) 値幅制限 414~614 円 (11/01) 始値 ( はじめね ) から いきなりのストップ安 投資家は 行動が早いですね ~ 決算発表の価格に与える影響をまざまざと見せつけられた思いです ちなみに ストップ安とは 証券取引所が定める値幅制限のところまで値下がりした状態をいいます 値幅は 該当株の前日の終値を基に定められます これを超える メーターぶっちぎり の取引はできないのですね まあ ある程度下がって そこからさらに下がるとみんなが思ったら さらに売り圧力が増してパニック状態 なんてことにもなりかねません 株式市場のパニックは 経済にかなりの悪影響を及ぼします 以上 パナソニックの業績予想の大どんでん返しと その直後の株価の興味深い関係をご紹介させていただきました 4
2. オリエンタルランド 時価総額 1 兆円超 ( 日経 12*10*30*19) ( 注 ) オリエンタルランドのバランスシートと株価総額の図を 次の UR L でご覧いただけます http://ameblo.jp/studyja/entry-11397783749.html ( 図版だけ見たい場合はこちら ) http://voice-seminars.com/merumaga20121106.png 10 月 29 日の東京株式市場で 東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドの株式時価総額が 1 兆 92 億円になったそうです これは 2000 年 8 月以来 12 年ぶりの 1 兆円超えだとか ディズニーランドなどの集客力の強さを背景に 今後の業績上方修正を期待して投資家が買っているだろうとの見方を紙面ではしています ここで みなさんが目にする会社のバランスシート ( 貸借対照表 ) における 純資産 ( かつては資本の部 ) と どのように違うのか について かんたんにご説明したいと思います 基本的には 株式時価総額もバランスシートの純資産も株主の持分をおおむね意味している という点では共通しています たとえば 2012 年 9 月 30 日時点のオリエンタルランドの純資産は 4,046 億円でした この数値の計算根拠は 会社が所有している会計上の資産 6,278 億円から 借入金や社債などの負債 2,232 億円を引いた残高です これが 最終的に 会計帳簿に記録されている株主の持ち分 4,046 億円となるわけですね ここで注意が必要なのは 借方 ( 左側 ) に表示されている資産合計 6,278 億円の算定根拠です 5
時価のある上場株式などは おおむね決算日時点の時価で評価されていますが それ以外の たとえば建物とか土地とか棚卸資産のような事業活動で使用 消費などされる事業資産については それらを取得した時点 つまり 購入した過去の日付における評価額 をもとに表示しているケースが多々ありますので 資産合計は いわば 時価と原価の混合数値 なのですね こういったわけで バランスシートの資産合計は おおむねの目安にはなれど 細かく見ていくと なんだかよくわからない数字の塊 とみることもできなくもないです このような資産合計から負債を引いた差額なので 計算結果としての純資産も だいたい ( 過去の ) 原価ベース の数字が多くの部分を占めています 総資産の半分以上は 原価ベースで会計上の調整を加えた額です ここ 結構会計を知らない人には誤解を招きやすいところなのですね 資産総額は 会社が持っている資産の時価合計ではない ということです さらに バランスシートは原則的に過去の記録の集大成であることが多いですから 将来の成長性などを資産評価に加算するなどということはありません ここに 投資家にとって 将来情報としてのバランスシートの限界 があるのです そこで 会計上のバランスシートは あくまで 現在から過去の数値の集積 として参考にとどめておき 投資評価としては 会社の業績 ( 損益計算書 ) と将来の成長予測をからめてはじき出した 将来獲得できるだろう現金収入 ( キャッシュ フロー ) を予想し それらを将来十数年または数十年分を足した額のかたまりとして 会社の事業評価をするのです 6
将来のキャッシュの塊が会社の将来資源 (= 投資家にとっての資産総額 ) であり そこから現時点で評価した借金などの負債による支払い負担を引いた差額が 理論上の企業買収価値の上限であり それが理屈では株式時価総額に等しいはずなのですね そのさいに 過去の蓄積である会計上のバランスシートより 1.5 倍とか 2 倍くらいには将来の予測を考慮した株式時価総額が大きいことが 会社が資本市場で評価を得ているかどうかの判断基準になるでしょう オリエンタルランドの場合 株式時価総額 (10/29) が 1 兆 92 億円で 直前のバランスシート上の純資産が 4,046 億円ですから 2 倍以上の将来性を投資家が感じているといえます これらの差額 6046 億円は いわゆる無形の資産 ( インタンジブルズ ) の根拠になるものだ などといわれることもあります なお 11 月 2 日 3 面の日経新聞に 日本の電機業界の厳しい状況を表現するために パナソニック シャープ ソニーの株式時価総額が 2 兆円ちょっとなのに対し サムスンの株式時価総額がなんと 14 兆円以上だという比較事例を出した記事がありました ちなみに パナソニック シャープ ソニーの 3 社合計時価総額は 2007 年前半は 16 兆円あったそうですから わずか 5 年で なんと 8 分の 1 にまで下がったというショッキングな事実がこの時の記事でわかりました さすがに私も 一瞬わが目を疑いましたが たった 5 年で 14 兆円もの株式時価総額を失った日本の電機大手ですが その間に失ったものは株式市場からの評価だけではないのかもしれません いまや 10 年ひと昔などと 悠長なことは言っていられない時代になりましたね 7
3. インドネシア 賃上げ要求デモで企業に圧力 ( 日経 12*11*5*7) パナソニックが特許資産規模 3 年連続首位 ( 日経 12*11*7*11) (1) インドネシア 賃上げ要求デモで企業に圧力 ( 日経 12*11*5*7) 日本企業の進出が活発になっているインドネシアに置いて 賃金引き上げや待遇改善を求めた労働者の抗議活動が非常に活発になっています 首都ジャカルタでは 10 月下旬に労働組合が最低賃金の前年比 83% 増 = 約 280 万ルピア ( 約 23,000 円 ) 引き上げを要求しました 2000 人規模のデモを動員したとのことです この結果 200 万ルピア程度への引き上げが容認されるだろうとみられる動きに発展しています トヨタが主力工場を置く西ジャワ州カラワンでも労組連合による要求額が 260~300 万ルピアに上がったと報じられています ちなみに 月 2 万円程度の賃金水準は 日本で言えば昭和 30 年代ごろの状況に近いのではないかと思います 公務員の初任給に関する価格史の史料が手元にあるのですが これによると昭和 34 年 :10,200 円昭和 40 年 :21,600 円 ( 値段史年表朝日新聞社 ) と この間 6 年で賃金が 2 倍以上に増えていますね 平均給料をざっくりと初任給の 2 倍前後と考えれば だいたい昭和 30 年代の給料事情と今のインドネシアが整合する気がします では このころ労使関係でどんなことがあったのでしょうか 昭和 34 年に三池闘争という大規模かつ複雑なできごとがありました 8
Youtube で 今の日本では考えられないような殺気立った闘争の貴重な動画がみられます この一連の闘争では殺人事件にまで発展しています http://www.youtube.com/watch?v=4fr7stylbss 細かい話をすると この事件の背景には 国内産の石炭から石油や輸入石炭への燃料需要シフトという別の大きな経済要因が絡み合っているので ひとくくりにインドネシアの今回の案件とは同一視できません ただ 経済が急成長している時には 労使関係で大きなひずみが出やすい あるいは労働者に甘いささやきとなる主義主張が強くなりやすいという時代の法則を知っておいて損はないと思います 1954 年頃といえばいまからほぼ半世紀前 歴史は繰り返すといいます 国の違いによる調整は必要ですが 待遇改善を求める労働者の組織だった行動が 国家レベルの騒動に発展する危険性をはらんでいることを 今一度歴史に学ぶ必要があるでしょう なお 会計上は 賃金 給料は その発生場所によって 費用の表示場所が変わります ( 損益計算書 ) 売上高 売上原価 工場で働く人の賃金 販売費 販売員 営業所などの人の給料 一般管理費 本社 管理本部などの人の給料 営業利益 製造 ( 工場 ) か 営業か 管理か その人の属する職種によって損益計算書上の費用の表示場所が変わるというのも なかなか興味深い話ですよね 9
(2) パナソニックが特許資産規模 3 年連続首位 ( 日経 12*11*7*11) 2011 年に特許庁に登録された特許を対象に 企業が保有する特許の価値を示す 特許資産規模ランキング を パテント リザルトというところがまとめました それによると パナソニックが 3 年連続で 1 位 東芝が 2 位 三菱電機が 3 位と 電機大手が上位を占めています つづいて 4 位がトヨタ 5 位がキャノンだそうです 特許資産価値トップのパナソニックが 2013 年 3 月期の連結最終赤字 7,650 億円を見込んでいるのですから 特許資産の価値が高くても かならずしも業績を保証するものではないんだな と考えさせられます 宝の持ち腐れとならないよう その経営資源の有効活用の仕方が今後問われるでしょう 特許などの知的財産は その権利取得に要した支出額などをバランスシート ( 貸借対照表 ) の 無形固定資産 というところに表示します ( 貸借対照表 ) ( 資産 ) ( 負債及び純資産 ) 流動資産現金預金 : 固定資産有形固定資産建物 : 無形固定資産特許権 : ちなみに 特許権や商標権などの権利は建物や備品などと同じように償却されます 10
無形固定資産の場合は 簿記のテキストでは 償却 と言って 減価償却 とはいちおう区別します 現物の摩耗などがあるから 減価償却 と同じ取扱いであると考えて頂いてよいでしょう 償却年数は 商標権が 10 年 特許権が 8 年です 以上 無形固定資産に関するお話しでした 11
4. 会計士合格者 11% 減は憂慮すべき事態か?( 日経 12*11*13*17) 日経新聞 17 面で 2012 年度の公認会計士試験合格者数が前年比 11% 減の 1,347 人と報じられました 会計士 5 万人構想を打ち立てて鼻息の荒かった 2006 年前後の年以降では最小の合格者数ということです ちなみに 私が受検していた 1990 年前後は 500 人 ~1000 人弱だったので 当時からすると 今の合格者数も 多いなあ という気がしますが 今の会計士が活躍できるフィールドを考えると あきらかに毎年 1000 人超は供給過剰ですよね じつをいうと 学生から社会経験なしに受かった会計士合格者って あんがい使いずらいんです 昔は 組織で働けないから 将来が安定しているから あるいは人に会うのが苦手だから会計士に なんて動機で目指す人も身近にいました ちょっと人生の守りに入った志望動機ですね 2006 年前後といえば内部統制バブルと いずれやってくるときたいされていた国際会計基準の 2 次バブル期待で 会計士はもっと必要になる! という幻想が世間を覆っていました あのころは 実は年間 10% 以上の株価上昇率がつづいたりして 景気も良かったんです 加えて今では 会計士試験で経済学が選択科目になってせいで ほとんど経済学のイロハを知らない会計士も増えています 個人的には せめて マクロ経済の入門 と 民法 はぜったい会計専門家として必須科目と思いますが マクロ経済しらなきゃ 日経新聞 深読みできないと思いますよ いやマジで 12
アメリカの会計士が 30 万人だから日本も と思っているんでしょうが そもそも国の背景や文化や人口構成やらが全然違うんです 同じ土俵で 少ない! と断じる方が間違っている 今の試験制度で生み出される会計士に対するニーズは 基本的に監査法人以外では期待できません あとは個人の資質で 努力によって コンサルタント セミナー講師 個人事務所 会社経営 企業内の財務担当管理職 などとして独力で道を切り開くのがとりうる手段です でも 以上の事が独力でできる方は そもそも会計士をとらなくてもご自身で飯の種を見つけられます つまり 資格試験をよりどころにする会計士 は 余らざるを得ない社会状況なんですね これは 90 年代前半における 5 年間の監査法人勤務で すでに将来予測としてわたしの頭の中にありました だから 辞めたんですね 期待された内部統制ニーズや IFRS 導入の恩恵が見込み通りにいかなかったこと 景気が予想よりも早いペースで後退していることなどを勘案すると 年間 500~700 人くらいの合格者で ちょうど会計士のブランド価値を高めながら バランスのいい需給関係を維持できるのではないでしょうか つまり 今年の合格者でもまだ 倍くらい多い というのがわたしの読みです でなければ これからの会計士に 社会の過当競争を生き抜くという資質を問われていなかった以上 無理が生じるのは自明です そういえば 弁護士のほうで 最近興味深い事件がありましたね 13
http://mainichi.jp/select/news/20121111k0000e040150000c.html < 詐欺容疑で逮捕された弁護士のニュース > 毎日新聞の上記記事を見ると その背景には 司法制度改革で 10 年前の 1.7 倍 3 万人強に弁護士の数が増加したことが背景にあるようです 会計士業界でも 対岸の火事とは決して言えないと思います ところで 今 将来の会計専門職を目指す方からの相談に わたしは次のように回答するようにしています 昔は税理士と会計士だったら 会計士の方を勧めたけど 今は さいしょから税法に特化した税理士の方が 働きながら受かりやすいし 個人事務所でどぶ板の実務も身に着くし つぶしがきいてお勧めですよ というようにしています 今の時代に もしもわたしが 20 代後半から会計専門家を目指すとしたら 堅実路線ならば税理士 コンサルタント系で一旗あげようという野心を持つならば会計士 というようにその時点での人生の目標に応じて使い分けて考えたと思います 今 税理士と会計士は 将来性という意味ではイーブンの資格だと個人的には思っていますよ 要は 将来 自分がどのような会計専門家としての立ち位置をもつか ということですよね あくまでも現在の日本における状況を前提とするならば ですが 今 会計士が増えすぎると社会コストの増大につながる気がします 日商簿記 1 級や税理士試験の合格の方が キャリア面という意味では機動的につぶしがきくかもしれません 14
5. ソニーが転換社債 1,500 億円発行か ( 日経 12*11*15*13) ソニーは 14 日 1,500 億円のユーロ円建て新株予約権付社債を転換社債型 (CB) で発行すると発表しました IR 情報の関連 URL はこちらです http://www.sony.co.jp/sonyinfo/ir/ 転換価額は 957 円 参考資料として 11 月 14 日における株価は 870 円ですから アップ率 10% を行使価格算定の計算根拠としているようです つまり 今の株価よりも 10% 以上上がったら この時購入した社債を株式に転換して利益を得ることができる というストーリーですね なお ここで会計用語が 4 つ出てきました (1) 社債社債とは 会社が長期的な資金調達をするために投資家に対して発行する債券のことです 債券とは 利息がつき さらに期日になったら額面金額 ( 元本額 ) を返済 ( 償還という ) することを約束した証券のことです 社債を買う人を社債権者といいます 社債を発行するのは 一定の信用力のある組織に限られているのが普通です なお バランスシート ( 貸借対照表 ) 上は 長期的な資金調達手段 ( 返済まで 1 年を超える債務 ) として 固定負債 の区分に表示されます 15
バランスシート ( 流動資産 ) ( 流動負債 ) : : ( 固定資産 ) ( 固定負債 ) : 社債 ( 純資産 ) : なお 満期まで 1 年を切ると 流動負債の部に表示が組み替えられます (2) 新株予約権新株予約権とは 将来の一定期間に一定の価格 ( 行使価格 ) で ある会社の株式を購入できる権利です 将来 株主となるかもしれない人からの資金提供部分なので 純資産の部に表示されます バランスシート ( 流動資産 ) ( 流動負債 ) : : ( 固定資産 ) ( 固定負債 ) : : ( 純資産 ) 資本金 : 新株予約権 しかし 行使期間が来ても株価が回復しない場合 新株予約権を持っている人 ( 新株予約権者 ) は 株を買っても得しないのでその権利を放棄することでしょう そうなると 発行者側では 新株予約権という表示の金額をゼロにして 利益に組み入れます ちょっと変な話ですが 株価が余り好調でない場合に利益になる という項目なのですね 16
(3) 新株予約権付社債新株予約権付社債とは 新株予約権とセットで発行される社債です イメージとしてはお菓子についているおまけのおもちゃ ( 食玩 ) みたいな感じでしょうか 社債がお菓子で新株予約権がおまけのおもちゃとかカードといったイメージです ( 強引で済みません ) 表示の仕方としては 固定負債の社債と純資産の新株予約権を分けるやり方があります このような表示方法を 区分法 と日商簿記 1 級の教科書では教えたりします バランスシート ( 流動資産 ) ( 流動負債 ) : : ( 固定資産 ) ( 固定負債 ) : 社債 ( 純資産 ) 資本金 : 新株予約権 (4) 転換社債 (CB) 新株予約権付社債には 権利行使をしたときに次の 2 種類の払い込み方法が考えられます 1. 新たに行使価格で買う株式の代金を払い込む方法 2. 社債購入代金を株式の代金に充てる方法 上記の 2. を 転換社債型 といいます コンバーティブルボンド (Convertible Bond;CB) などという言葉が良く聞かれますが これがそうですね 17
CB の形だと 社債権者はあらためて払込の資金を用意しなくていいし 発行者側の会社は満期日に返済しなくて済むようになるので資金繰りが らくになります 株価が上がって転換権を行使してくれたら 双方ハッピー! みたいな結末になりますね さて ソニーの CB は 将来 10% 以上の値上がりをして 双方ハッピー! になれるでしょうか 今後のソニーの業績と株価の動きに興味がわいてきますね 18
6. 物価上昇と資産 負債価値の関係 ( 日経 12*11*20*1,3) 本日の日経朝刊で 自民党の公約として物価目標 2% を掲げるという話が報じられていました これが何を意味するか 考えてみましょう 会計にも大いに関連するんですよ たとえば商品在庫 先入先出法という期末在庫の評価方法を採用していれば 期末の商品単価は最新の価格情勢が反映されますから インフレになると資産評価が膨らみます 結果として売上原価に配分される費用が減るので 利益がガツン! と上がってしまうのですね このような物価上昇の影響による資産保有の利益を 保有利得 ( ほゆうりとく ) といいます ちなみに インフレになると 貨幣の価値が下がります どういうことかというと 次の事例を考えてみてください (1) 去年 缶コーヒー 1 本を買うのに 100 円かかっていた (2) 今年 缶コーヒー 1 本を買うのに 300 円かかるようになった かなり強引な例ですが もしも缶コーヒーの価格変動が 世間の一般的な物価変動とおなじ様子を示していたならば 一年間で物価上昇率が 200% だったと考えられます インフレ率の計算 : P/P(P は価格 は増加幅 ) (300 円 -100 円 )/100 円 ( 一年前 ) 100%=200% 19
これが何を意味するか といいますと 去年は缶コーヒー 1 本を 100 円で買えたが 今年は 300 円出さないと買えない 状態です つまり 円という貨幣の価値が 3 分の 1 に減ったことを意味しますね 反対の見方をしましょう 去年の 100 円 = 缶コーヒー 1 本 今年の 100 円 = 缶コーヒー 0.33333 本 (3 分の 1 本 ) です つまり インフレで困るのは お金をいっぱい持っている人なんですね ただ持っているだけではそのお金の価値がじわーりじわりと目減りしていきます 気が付いたら その 1,000 万円 年後にはその半分の価値に なんだかホラーな話です これは お金そのものではなく 貨幣で決済する資産 負債にも言えます たとえば 今年の初め ( 期首 ) に 100 万円の土地を持ち 同時に 100 万円の借入金を負っている場合を考えてみます バランスシート 土地 100 万円借入金 100 万円 この状態で 土地を 100 万円で売却処分して借入金を返済したら 手元に一銭も財産が残りません なお その 1 年後に一般物価が 2 倍に上昇し 土地の値段が 200 万円に上がりました 税金を無視すると 1 年後に土地を売れば 200 万円の現金が手に入ります 20
バランスシート 現金 200 万円 借入金 100 万円 利益 100 万円 バランスシートの借方 ( 左側 ) にある実物資産としての土地は貨幣との関係で相対的に値上がりしましたが 借入金自体はその金額が 100 万円のままで不変です この 2 分の 1 の価値に目減りした現金 で借入金 100 万円を返すことができたら ( もちろん できるんですが ) あら不思議 インフレによって 現金が 100 万円ほど残っちゃった! とまあ こんな感じで インフレ後の価値が目減りした貨幣で返済すると 借金の負担がかなり軽くなるんですね ~ 政府がインフレターゲットを言っているとき 一つの見方として そういえば 国の借金って もうすぐ 1,000 兆円とか言っているよね あれ インフレになるとどれくらい実質的な価値が目減りするんだろ みたいに疑問を持ってみるのも 会計と経済の行ったり来たりの思考トレーニングができて 面白いと思いますよ 経済って わかってくると興味深い世の中のうごきがいろいろと見えてきます 21
経済ニュース編 1. 日本ブランド 東南アジアで健闘中 資生堂が東南アジアで市場を開拓中です 11 月より タイなどの東南アジアで新ブランドを投入予定です 資生堂は 中国での販売に力を入れてきましたが 今後は 中国以外のアジア圏市場開拓に力を入れ始めています 例えば マレーシアにおいて 中国で限定販売されてきた商品を発売します 今後は 現地での生産も視野に入れているようです なぜでしょうか それは 中間層の急増で手ごろな価格の化粧品需要が増加しているからです 資生堂は 海外展開に伴い 連結売上高にしめる海外比率が国内を上回る目標を約 5 年と予想していましたが 現状のペースを鑑み 2~3 年 前倒しすることを視野に入れています 資生堂の PR 戦略は こうです 現地で販売するブランドの宣伝に 中国人女優を起用し 中国系の女性に対して欧米系ブランドよりもより身近な存在であることをアピールしています 価格も欧米ブランドよりもリーズナブルに設定しています この戦略が功を奏して タイで展開している低価格のブランドは 2012 年 前年比 2 倍となりました 好調です 22
一方 資生堂は 現地での生産拡大にも力を入れています 現在 資生堂の工場は 中国の北京 上海の 2 ヶ所 その他 台湾やベトナムに計 5 カ所です 今回の新ブランド投入においては 既存工場の稼働率アップで対応する予定ですが 現在 日本で生産する製品ブランドを現地生産して アジアでの販売拡大につなげようともしています 日本が消費不振 および 低価格に人気が集中する昨今 海外での販路を求めて各企業は 頑張っているのですね ( 出所 : 2012 年 10 月 31 日付 日経新聞 朝刊 ) 23
2. アジア各国が利下げを急いでいます アジア 太平洋の新興国の通貨当局が金融緩和を急いでいます 背景は何でしょうか 第一に 米国の大統領選挙があげられます 米大統領選挙が接戦となり 与野党の対立が継続した結果 米国財政運営が混迷するおそれがあるからです 第二に 欧州の債務問題や中国経済の先行きなどを含めた世界経済の今後に不透明感があるためです このために アジア各国の通貨当局は 予防的な利下げを実行することで 国内の景気を刺激するとともに 通貨高を抑えようとしているのです そうです 先進国に比べて金利が高いと新興国に投資マネーが流れ込むことになるからです 昨今の日米欧の中央銀行による大規模な金融緩和を受けての対応です たとえば マレーシアは 昨年来の欧州債務問題を起点にした金融混乱でも経済は安定を保っていました しかし 11 月 8 日の金融政策決定会合で利下げを検討する予定です オーストラリアは 10 月 2 日に 4 カ月ぶりの利下げを実施しました にもかかわらず 豪ドルの上昇はおさまってはいません そのため 12 月に追加の利下げが行われるのでは と予想されています 事実上のドルペッグ制を採用している香港ドルに対しても資金流入が加速しています 24
対米ドルでの変動枠の上限に達した結果 通貨当局は 約 3 年ぶりの香港ドル売り介入を実施しました 世界経済の先行き不安が取りざたされる中 どの国も自国の国民と経済を守る為 防衛策を張り巡らせはじめています ( 出所 : 2012 年 11 月 7 日 日経新聞 朝刊 ) 25
3.GDP 実質 3.5% 減少 内閣府が 11 月 12 日に発表した 2012 年 7~9 月期の国内総生産 (GDP) 速報値は 物価変動の影響を除いた実質で前期比 0.9% の減少 年率換算で 3.5% の減少でした マイナス成長は 3 四半期ぶりのことです 背景は 何でしょうか 1 番目が 海外経済の減速のために輸出が減少したことです 2 番目に エコカー補助金の終了で内需も低迷したことです 内需の落ち込みを外需の回復で補おうとする政府の景気回復のシナリオは功を奏しませんでした 今後の展望においても明るい兆しは見えません 10~12 月期においてもマイナス成長は続くとみられています エコカー補助金の終了の影響を考えてみましょう (1) エコカー補助金の終了で自動車の国内販売が低迷 (2) 自動車関連産業の減産で鉱工業生産が 4.2% の減少 (3)9 月の有効求人倍率が 3 年 2 カ月ぶりに悪化 と周辺に影響が出ています 自動車の減産で現場では 残業も減少します 消費者の給与の手取り額が減少すると消費意欲も減退します 加えて 大震災後の節約ムードの反動で増加傾向にあった宿泊 レジャーや外食への支出も影響を受けて再び減少へと転じています 26
一方 政府は 夏以降に海外経済が持ち直して輸出が回復して景気が内需型から外需型に移行すると予想していました しかし そのようなシナリオに反して中国の経済動向を示す株価が長期に低迷する (2007 年最高値の 1/3) など明るい材料は乏しくなっています 日本国内の政治が乱れる中 今後の舵取りは極めて困難を伴うと考えざるをえません ( 出所 : 2012 年 11 月 12 日 日経新聞 夕刊 ) 27
4. フランス国債 最上位から転落 米国の格付け会社であるムーディーズ インベスターズ サービスは 11 月 19 日付でフランス国債の格付けを最上位の Aaa から 1 段階引き下げて Aa1 にしました 格付けの見通しは ネガティブ ( 弱含み ) としており 今後もう一段の格下げ可能性も示唆しました この動きはどのような影響を与えるのでしょうか それは フランスは ユーロ圏第 2 位の経済規模を有する国です その国の国債の格付けの引き下げが行われると 欧州債務危機への対応にマイナスの影響を与えるのではないかという懸念が起きるのです ムーディーズ側の格下げの理由をみてみましょう (1) フランスの財政改革の遅れ (2) 産業競争力の低下 (3) 労働市場の硬直性 を挙げています また 欧州債務危機により フランス国内の財政状況の不確実性が欧州危機により一段と高まっているとも説明しています オランド政権は 前年よりも約 300 億ユーロを削減する緊縮予算案をまとめ 同年の国内総生産 (GDP) 比の財政赤字を 3% に抑える計画を策定しています しかし 欧州連合 (EU) の欧州委員会は 経済情勢の悪化などで この緊縮策の達成が難しいのではないかとみています 28
フランスはドイツと並んで欧州債務危機の収束に向けて指導的な役割を果たしています フランスの信用力に疑問符が付くと 欧州危機への対応は一段と難しくなるのではないかと懸念されます フランス国債の格付けに対しては 米国のスタンダード アンド プアーズ (S&P) が既に今年 1 月 最上位から 1 段階 引き下げています それゆえに今後のフランスの行方が注目されます ( 出所 : 2012 年 11 月 20 日 日経新聞 夕刊 ) 29
ワンポイント会計学 資産 の意義 1. 資産とは 貸借対照表 ( バランスシート ) は おおむね次のような表示形式で公表されます 貸借対照表 ( 資産の部 ) ( 負債の部 ) 流動資産 350 流動負債 200 固定資産 440 固定負債 240 繰延資産 10 ( 純資産の部 ) 360 資産合計 800 負債純資産合計 800 左側 ( 借方 ) は会社が所有している資産 右側 ( 貸方 ) はその資金調達方法 ( 裏を返せば財産の帰属先 ) を表しています 右側については 負債 は株主以外の者 ( 仕入れ先 銀行など ) に将来返済や役務提供などで何らかの義務を果たすべき分の金額を表し 資産と負債の差額である純資産は株主など企業の所有者に帰属する部分を表します ここで 左側 ( 借方 ) の内容である資産について考えてみましょう 資産は 企業が所有している現金預金などの支払い手段となる財産 売掛金や貸付金などの権利 建物や土地や備品などの長期間使用する現物財産などから構成されています 以前 購入をしたり契約の結果受け取ったりして企業が現在保有しているものですね これらは 経営目的のために存在し 将来 何らかの形で会社に恩恵をもたらすこと が予定されている経営資源という見方ができます 国際会計基準 (IAS) では 以上をふまえて資産を次のように定義しています 資産とは 過去の事象の結果として企業が支配 し 将来の経済的便益が企業に流入すると期待される資源 である ここで 注目していただきたい表現が 将来の経済的便益が企業に流入 のところ です 30
資産に関連付けられた将来の経済的便益とは 企業に対して 直接的 間接的に 現金及び現金同等物の流入をもたらす潜在的能力である です なお その流入の方法として以下が例示されています ( 例 ) 企業によって販売される製品及びサービスの製造に使用される 1 他の資産との交換 2 負債の解消 3 株主への分配 企業 取引相手 1 他の資産の受け取り 2 負債の解消 3 株主への分配 ( この場合 株主にメリットがあるので 理論上 株主会社の B/S における純資産を減らすことになる ) 貸借対照表 ( 資産の部 ) ( 負債の部 ) 流動資産 350 流動負債 200 固定資産 440 固定負債 240 繰延資産 10 ( 純資産の部 ) 360 資産合計 800 負債純資産合計 800 消費 使用 提供 他の資産との交換 負債の解消 株主への分配 けっきょくは 将来 何らかの形で現金収入または現金の節約に役に立つ経営資源 ( リソース ) のことを資産と呼びましょう と言っているわけなんですね 以上 31
柴山政行公認会計士税理士事務所 連絡先 169-0075 東京都新宿区高田馬場 3 丁目 1 番 5 号サンパティオ高田馬場 109 TEL FAX:03-6279-3306 URL:http://shibayama-kaikei.jp/ 設立 : 平成 10 年 7 月代表 : 柴山政行 事業内容 1. 税務申告書作成 ( 法人税 消費税 所得税 相続税 贈与税 地方税 ) 2. 巡回監査 3. 記帳代行 総勘定元帳 ( 会計帳簿 ) 作成 4. 試算表作成 決算報告書作成 5. 源泉徴収 年末調整代行 6. 相続対策に関するコンサルティング及び相続税申告代理業務 7. 法人の事業承継に関するコンサルティング業務 8. 税務調査立会 税務署等との交渉 9. 各種税務相談 まずは お気軽にご相談ください TEL:03-6279-3306 Email:contact@bokikaikei.net 32