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論文 γ-2cao SiO 2 を用いたセメント系材料のによる高耐久化 渡邉賢三 * 横関康祐 *2 坂井悦郎 *3 *4 大門正機 要旨 :γc 2 S で結合材の一部を置換したモルタルを若材齢にてすることによって, 極めて緻密なマトリクスが生成される 本論文では, さらに緻密なマトリクスを得るために, γc 2 S に加え, フライアッシュやシリカフュームなどの置換率について検討し, 最適マトリックスの配合を見出した また,γC 2 S を用いを行ったペーストの溶解特性を評価するとともに, 耐溶出性能が優れることを実験的に確認した キーワード : 炭酸化,γC 2 S, 空隙, 溶出, フライアッシュ, シリカフューム, 溶解平衡. はじめにコンクリートの溶出や塩類によるコンクリート侵食などは, 各種イオンがコンクリートの空隙中を移動し, セメント水和物そのものが溶出, もしくは反応することで生じる現象である それらの現象を抑制する手法としては緻密化による物質移動の抑制や水和物の組成を改質して溶解度や反応性を低下させることなどが効果的であると考えられる そこで, これまで低熱ポルトランドセメントを中心にによる耐久性向上手法を実験的, 解析的に検討してきた ),2) さらに徐冷スラグ微粉末や水和反応は示さないものの, 炭酸ガスと反応するダイカルシウムシリケートγ 相 ( 以下 γc 2 S) を混和材として添加し, 炭酸化することによって, 緻密化と低溶出性が同時に得られ, 耐久性に優れたセメントマトリックスが実現できることを確認している 3),4) 本論文では, 物質移動抑制効果のさらなる向上を目的としてγC 2 S, フライアッシュおよびシリカフュームを併用し, それらの置換率や粒度分布を要因として, 緻密化を追求した さらに, 耐久性評価を目的として, 耐溶出性について実験的な検討を加えた 2. 実験的検討 2. 使用材料および検討ケース使用材料を表 - に示す 水はイオン交換水, セメントは低熱ポルトランドセメント ( 以下 LPC) を用いた γc 2 S は工業原料を用いて実キルンで焼成し, ダスティング直後およびボールミルを用いて粒度調整したものの合計 3 種類を使用した ( ここでダスティングとはクリンカー焼成後の温度低下時にγC 2 S が生成し膨張することによって, 自ら微粉化する現象である ) さらに混和材としてフライアッシュおよびシリカフュームを用いた 細骨材は豊浦標準砂を用い, 繊維状鉱物であるワラストナイトを細骨材に置換したケースも検討に加えた 混和剤はポリカルボン酸系高性能減水剤および消泡剤を用いた 配合および検討ケースを表 -2 に示す 物性評価用のモルタルは水粉体比 ( 以下 W/P) を3%, 細骨材と粉体重量比を. とした なおγC 2 Sは水和反応を生じないが, ここでは粉体として結合材と置換した したがって,γC 2 S の置換率が増加すると水セメント比 ( 以下 W/C) は増加する 耐久性評価用ペーストは W/P を 4% とした モルタルについてはγC 2 S の置換率, 粒度およびフライアッシュの置換率を検討要因とした さらに, ケース -8 の配合において, 細骨材を * 鹿島技術研究所材料 LCE グループ研究員 ( 正会員 ) *2 鹿島技術研究所材料 LCE グループ主任研究員 ( 正会員 ) *3 東京工業大学大学院理工学研究科材料工学専攻助教授工博 ( 正会員 ) *4 東京工業大学大学院理工学研究科材料工学専攻教授工博 ( 正会員 )

種類記号名称 比表面積 (cm 2 /g) 表 - 使用材料 化学成分 (mass%) 密度 (g/cm 3 ) CaO SiO 2 Al 2 O 3 Fe 2 O 3 MgO SO 3 Na 2 O K 2 O セメント LPC 低熱ホ ルトラント セメント 3,38 3.22 63. 26. 2.76 2.66.86 2.2.29.22 γc 2 S ダイカルシウム, 2.99 6.9 3..7... γc 2 S4 シリケート 4, 2.99 6.9 3..7... 混和材 γc 2 S8 (γ 相 ) 8, 2.99 6.9 3..7... FA フライアッシュ,4 2.4 3.7.2 28.6 7.8.7..83.64 SF シリカフューム 2, 2.2. 97.7.4..4..6 細骨材 S 豊浦標準砂 2.6 WO ワラストナイト 2.9 47...2.4. 分類 物性評価 ( モルタル ) 耐久性評価 ( ヘ ースト ) ケース W/P (%) 混和材種類 表 -2 検討ケースおよび配合 γc 2 S:FA:SF 置換率 (mass%) γc 2 S 比表面積 (cm 2 /g) 単位量 (kg/m 3 ) W C γc 2 S FA SF S - :: 298 992 992-2 3:: 294 686 294 98-3 :: 4, 292 486 486 972-4 γc 2 S 7:: 289 289 67 964-3 3::, 294 686 294 98-6 3:: 8, 294 686 294 98-7 γc 2 S, 3:: 289 3 289 96 48 963-8 FA,SF 3:2: 4, 286 429 286 9 48 93-9 ( ) 3:3: 283 33 283 283 47 943 2- :: 2 379 2-2 4 γc 2 S 3:: 4, 42 949 47 2-3 ( ) 3:2: 22 87 39 26 6 ワラストナイトで,3,vol% 置換した 表 -3 溶解試験の液固比液固比, 2, 3, シリカフュームの置換率は, 大量置換によっ固相 (g) てフレッシュ性状および収縮性状などに及ぼ精製水 (g),,,, す影響 ) を加味して, その添加量を% に固定した なお, 全ての配合についてフレッシ行った ュ性状の目標値を, モルタルフロー 2±mm, 中性化深さは, 所定の材齢を経たモルタル破空気量 2.±.% とした ペーストについては断面にフェノールフタレイン% 溶液を噴霧し, 粉体の種類を検討要因とて, 物性評価に用いた赤変しない深さをmm 間隔で測定し, その平均モルタルを参考に3 要因とした 値を求めた 空隙率はアセトン浸漬によって水 2.2 試験項目和を停止した後, 水銀圧入法により.3~3 () 物性評価試験 μm( 圧力 4~.Mpa) の範囲の空隙を測定しモルタル供試体は,L モルタルミキサーを用た なおした供試体は中性化領域のいて,3 分練混ぜ,2 分静置さらに2 分練混ぜみを採取し, 空隙測定用サンプルとした また, とし, 練上り後,4 4 6mm の型枠に打設し, 炭酸化領域が不十分な場合は, 表面から2mm ま 日間 2,9%R.H. の恒温恒湿槽にて湿空養生でをサンプルとした を行った 脱型後, 材齢 28 日まで 2 標準水中 (2) 耐久性評価試験 ( 溶解抵抗性試験 ) 養生, あるいは 日水中養生後,%CO 2,3, 供試体は表 -2 に示すペーストをモルタルと同 6%R.H. の促進中性化槽にて強制を様に作製し, 打設後 日の湿空養生, さらに水

中養生を 日経た時点でmm 角 2 フ レーン値 4cm 2 /g γc フ レーン値 4cm 2 2 S 置換率 3% /g に粉砕し, 促進を行 2 γc 2 S 置換率 3% った 比較用として標準水中養 SF 置換率 % 生供試体は粉砕せずそのまま水 中養生を行った 材齢 28 日において全粒子が 2~2μm になるよう窒素ガス雰囲気中で粉砕 し, 粒度を調整した 粒度調整 2 4 6 8 4, 8, 2 3 4 試料に対して表 -3 に示す液固比 γc 2 S 置換率 (%) γc 2 Sフ レーン値 (cm 2 /g) FA 置換率 (%) にて純水を加え2カ月間,2 図 - γc 2 S 置換率, 粒度,FA 置換率が中性化深さに与える影響 にて静置した 浸漬終了後, 作用水をろ過した 2.4 後, ガラス電極にて ph を測定し, 各種イオンを.2 2 : 測定した..8 3. 結果 考察 3. 物性評価試験結果 () 中性化深さ試験 中性化深さ (mm) 図 - に中性化深さ試験結果を示す なお,4 4 6mm の供試体を用いているため, 中性化深さ 2mm は全面が中性化したことを意味する γc 2 S の置換率の増加に従い中性化深さが大きくなる結果となった これは,γC 2 S の置換率の増加に従い,W/C が大きくなっていることが理由として推測される またγC 2 S のブレーン値が大きく, 粒度が細かいほど中性化深さは小さくなるものの, その影響は小さい FA の置換率の増加に伴い, 中性化深さが大きくなる結果となり, この現象も W/C が大きくなったことが原因と推測される (2) 空隙構造図 -2 および図 -3 にγC 2 S の置換率が空隙率および平均空隙径に与える影響について養生方法ごとに整理した結果を示す 図 -2 のにおいては,γC 2 S の置換率が 3% の場合に, 空隙率が最も小さくなる結果となった また, 平均空隙径も空隙率とほぼ同様な傾向を示した これは, 炭酸ガスと反応して緻密化を生じるγ C 2 S が増加するによる効果と単位セメント量の減少による効果の相乗効果によるものと考えられる 2 2.6.4.2. 2 4 6 8 γc 2 S 置換率 (%) 図 -2 γc 2 S 置換率が空隙に与える影響 : 標準養生.4.2..8.6.4.2. 2 4 6 8 γc 2 S 置換率 (%) 図 -3 γc 2 S 置換率が空隙に与える影響 2 2 : 4 8.4.2..8.6.4.2. γc 2 S 比表面積 (cm 2 /g) 図 -4 γc 2 S の比表面積が空隙に与える影響

図 -3 の標準水中養生においては,γC 2 S の置換率の増加に伴って空隙が増加する関係となった これはγC 2 S の置換率の増加に伴って,W/C が大きくなるため, 空隙が増加したものと推測された なお, ここではγC 2 S を内割で置換しているため, 外割置換における今後の評価が必要である 図 -4 にγC 2 S の比表面積が空隙に与える影響を示す γc 2 S の比表面積が空隙率に与える影響は小さいものの, 比表面積が小さいほど, 空隙率が小さくなる傾向となった 一方で,γC 2 Sの比表面積が平均空隙径に与える影響は比較的小さかった 以上の結果から,,cm 2 /g のγC 2 S を使用することで空隙が効率的に減少することが分かった なお,γC 2 S は焼成, 合成された後の冷却過程で,γC 2 S 自身の体積変化によって自然にダスティングする 今回用いた比表面積,cm 2 /g 品は, ダスティング直後のγC 2 Sであり, 図 -4 の結果は粉砕工程を省略して使用した方が緻密化できることを示すものである 図 - に FA 置換率が空隙に与える影響を示す FA の置換率 2% において空隙率が最も小さくなる結果となった これは, 下において FA の置換率を増加させた場合, 以下に示す空隙増減の相互作用が生じているものと推測された すなわち, 試験に供した FA がセメント粒子より細かく, 形状が球状であるため,FA の置換率を 2% まで増加させた場合, セメント粒子の間の空隙に FA が効果的に充填し, 結果として空隙が若干減少したものと推測される 一方,2% を超えて FA 置換率を増加させた場合, セメント量の減少とさらに炭酸化によって Ca(OH) 2 が消費されることで FA のポゾラン反応を阻害し, 未反応の FA の存在率が多くなり, 結果として空隙が増加したものと推測された 図 -6にワラストナイトが空隙に与える影響を示す 空隙率および平均空隙径は添加率 3% において最も小さくなった これは, ワラストナイトが水和反応およびポゾラン反応などを示さない鉱物であることを勘案すると, フィラー効果 2 2 2 2 :.4.2..8.6.4.2. 2 3 4 FA 置換率 (%) 図 - FA 置換率が空隙に与える影響 : 2 4 6.4.2..8.6.4.2 ワラストナイト置換率 (%) 図 -6 ワラストナイトが空隙に与える影響 による水和反応促進と平均繊維長 6μm 平均粒子径 4μm の形状が空隙構造の複雑化を生じたものと推測される 以上の結果から, 今回の配合および養生条件においては比表面積が小さいγC 2 S を用いて,γ C 2 S3%,FA2%,SF% の重量割合でセメントを置換した場合, 空隙の最も小さいマトリックスが得られることが分かった また, ワラストナイトを細骨材体積に対して3% 置換することによって, 空隙率の減少, 平均空隙径の小径化が可能となることが分かった 3.2 耐久性評価試験結果 () 溶解抵抗性試験 図 -7 に溶解抵抗性試験における作用水の ph 測定値を示す 標準水中養生のpH は.2~2.4 の範囲であったが, のケースの ph は 9.~. であり,~2 程度低い ph を示した またのケースにおいて配合種類の影響は小さいものの, 混和材添加率の高い配合 2-3

が最も低い ph を示す結果となった 図 -8 と図 -9 に液固比と平衡水中のカルシウム ( 以下 Ca) イオン濃度およびシリカ ( 以下 Si) 濃度の関係を示す 既往の成果 3) と同様,Ca 濃度はを行うことで最大.7mol/L 程度減少する結果となった また, 配合種類が Ca 濃度に及ぼす影響は小さい結果となった これは, 配合種類によらず炭酸化によって生成される主成分が炭酸カルシウムを主とする同種の生成物であるためと推測される Ca 濃度の結果とは逆に, 炭酸化によって平衡水中に溶出する Si 量は標準養生と比較して多くなる結果となった これは, 炭酸化による水和物からの Si の遊離が原因と推測される また配合種類が平衡水中に溶出する Si への影響は顕著であり, 配合 2-3>2-2>2- の傾向となった これは混和材の置換率が増加するに従い, ペースト単位量当りに含有される Si 量が増加するためと考えられた ただし,Si の溶出率は配合 2->2-2>2-3 であり硬化体自体の溶解度は混和材で置換した方が小さくなる傾向となった (2) 溶解平衡関係図 - に既往の成果 6) を参考に, 液相中の Ca 濃度と固相中の残存 Ca 濃度比の関係を整理した なお図には LPC 単味のペーストについてと標準水中養生の結果を示した によって極めて溶解度の小さい硬化体に移行していることが分かる さらに, 図中矢印に示すように標準養生には Ca(OH) 2 の溶解を起因とする液相中で高い Ca 濃度を示す領域が存在するものの, のケースには確認されない のケースは初期から C-S-H の溶解と推測される曲線部が存在する これらは, によって溶解度の大きい Ca(OH) 2 から溶解度の小さい CaCO 3 が生成したためと考えられる また, 粉体種類の影響を図 - に示す 粉体種類が溶解平衡曲線に与える影響は養生方法の相違に比べて小さい結果となった しかし,γ C 2 S と各種混和材を添加したペーストの方が, LPC 単味に比べ液相 Ca 濃度が低濃度側にシフト 平衡水中の Ca 濃度 (mol/l) 平衡水中の Si 濃度 (mol/l) 平衡水の ph 固相 Ca 濃度比 Cp/Cp(-) 4 3 2 9 8 7.2.2.....8.6.4.2.8.6.4.2 液固比 図 -7 平衡水の ph への影響 液固比 図 -8 平衡水中のカルシウム濃度 標準養生 標準養生 標準養生 LPC :LPC(2-) :LPC,γ,FA,SF(2-3) :LPC(2-) :LPC,γ,FA,SF (2-3) :LPC(2-) :LPC,γ,FA,SF (2-3) 液固比 図 -9 平衡水中のシリカ濃度 LPC 標準養生.....2.2 液相 Ca 2+ 濃度 (mol/l) 図 - 溶解平衡曲線 (LPC 単味 )

しており, より Ca 溶出量が軽減できることを示唆している さらに, 図中の関係をモデル化した式および式に用いる係数を表 -4 に示す Cp / Cp = ACp ( mol L) 3 C =.44 / ( C C )n (C=.44-3 )(2) (.44-3 <C<C )(3) ここで,C: 空隙溶液中の Ca 濃度 (mol/l), C : 溶出初期における空隙中の Ca 濃度 (mol/l), C : 溶出最終段階における空隙中の Ca 濃度 (mol/l),acp :C-S-H 溶出に関する係数 (-),n: C-S-H 溶出に関する係数 (-) ここに示した溶解平衡関係式や空隙率から得られる拡散係数を用いることで, 溶脱による変質予測が可能となると考えられる 6) 4. まとめ () 今回の配合および養生条件においては, 比表面積の小さいγC 2 S を 3%,FA2%,SF% の重量割合でセメントを置換した場合, 空隙率の最も小さいマトリックスが得られる (2) γc 2 S を用いを行うことで耐溶出性に優れたセメント系材料が得られる (3) γc 2 S を用いを行ったペーストの溶解平衡関係を明らかにした謝辞材料および技術情報の提供に関しては, 電気化学工業 の盛岡実氏, 樋口隆行氏, 奥山康二氏に多大なご協力を頂きました ここに紙面を借りて感謝の意を表します 参考文献 ) 例えば, 横関康祐, 渡邉賢三, 安田和弘, 坂田昇 : によるコンクリートの高耐久化, コンクリート工学年次論文報告集, Vol.24,No.,pp.-6,22.6 2) 坂井悦郎, 盛岡実, 山本耕三, 張璽, 大場陽子, 大門正機 : 低熱ポルトランドセメント硬化体の炭酸化反応,Journal of the 固相 Ca 濃度比 Cp/Cp(-).9.8.7.6 C C :LPC(2-) :LPC,γ,FA,SF(2-3).2.4 液相 Ca 2+ 濃度 C (mol/l) 図 - 粉体種類が溶解平衡関係に及ぼす影響 表 -4 モデルに関する係数 配合 係数 ACp n C C ( -3 ) ( -3 ) 2- 炭酸化..3.44 2.86 2-2 炭酸化..88 2-2 炭酸化 7.2.89 2- 標準水中.84 2.. 9.2 Ceramic Society of Japan, vol.7, pp.6-66,999.6 3) 例えば, 渡邉賢三, 横関康祐, 坂井悦郎, 大門正機 : 各種混和材を含んだモルタルのによる高耐久化, コンクリート工学年次論文報告集,Vol.2,No.,pp.63-68, 23.7 4) 盛岡実, 樋口隆行 : 非水硬性製鋼スラグの中性化抑制効果, コンクリート工学年次論文報告集,Vol.2,No.,pp.647-62,23.7 ) 例えば, 土木学会 : コンクリートライブラリー 8, シリカフュームを用いたコンクリートの設計 施工指針 ( 案 ),99. 6) 横関康祐, 渡邉賢三, 安田和弘, 坂田昇, 大即信明 : 溶脱による劣化を対象とした地下構造物の, 年耐久性設計, 土木学会コンクリートの化学的侵食 溶脱に関するシンポジウム論文集 pp.99-26,22.6 C C