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トマト袋培地栽培マニュアル ( 追補版 ) ~ ミニトマト袋培地栽培 夏期高温対策 導入指針 ~ 内容 はじめに袋培地栽培システムの概要 Ⅰ ミニトマトの袋培地栽培マニュアル 1 ミニトマト袋培地栽培システムの設置 2 ミニトマト袋培地栽培システムでの定植 3 ミニトマトの施肥 かん水管理 Ⅱ 大玉トマトの夏期高温対策 1 保水性不織布 + 散水 2 2 回に分けての施肥かん水 3 かん水制御時間帯の 24 時間設定 Ⅲ トマト袋培地栽培システム導入指針 1 導入による時期別の労働時間の変化 2 導入による費用削減の効果 3 高温対策にかかる費用 4 袋培地栽培システム設置にかかる費用 はじめに 愛知県農業総合試験場では平成 18 年に袋培地システムを開発しました すでに大玉トマト メロン アオジソのマニュアルは作成いたしましたが 今回はミニトマトをそのラインアップに加えました また 大玉トマト袋培地栽培の夏期高温対策技術を開発しましたので あわせて マニュアルの追補をしました 袋培地栽培システムの概要 袋培地栽培システム ( 特許出願中 ) は 3L の袋培地に作物を植え付け 施肥はその必要肥料分を液肥で供給し かん水は水分センサの検知により保水容量の小さい袋培地に対して 1 回に 1~2mL の少量を高頻度に行って 過剰かん水による肥料溶脱を抑え 水分制御による高品質な野菜を安定的に生産します トマト袋培地栽培マニュアル平成 18 年 2 月発行 (PDF ファイルは袋培地栽培システム研究会 HP URL:http://www.hukuro.org/manual.pdf より取得可能 )

Ⅰ ミニトマトの袋培地栽培マニュアル 1 ミニトマト袋培地栽培システムの設置 ア ほ場の準備 袋培地を用い 地床と完全に分離した隔離栽培を実現します 下敷シートと発泡スチロールにより根の土壌への侵入を防ぎ 土壌病害をシャットアウトします 下敷シート 発泡スチロール板 ほ場を整地し 土ぼこりや雑草を防止するため下敷シートをほ場全面に敷きます 土壌病害虫の侵入を防ぐため隔離板 ( あぜ波板 発泡スチロール等 ) を並べます イ 袋培地の設置及び調整 約 14cm 72cm 2,1 株 (7 袋 )/1a の場合 袋培地を約 72cm 間隔でおき 上面を整地します 1 袋当たり 3 株定植できるように直径 1cm の穴をあけます 袋培地底部両端にハサミ等で切り込みを入れ 排水孔を設置します 袋当たりの定植数を変えて栽培したところ 生産性 経済性から一袋当たり 3 株が適正であることがわかりました ( 栽植密度 7. 株 /3.3m 2 の場合 ) 袋培地の定植株数と設置にかかる費用 (1a 当たり ) 区分 袋 袋の設置 数量コスト労働時間人件費 合計 袋円時間円円 2 株 / 袋 15 84, 47.764,1394,13 3 株 / 袋 7 56, 29.639,723599,723 4 株 / 袋 525 42, 21.929,39449,39 可販果収量 (t/1a) 16 14 12 1 8 6 4 2 2 株 / 袋 3 株 / 袋 4 株 / 袋 袋培地の定植株数と可販果収量 2,1 株 /1aとして試算 (2,1 株 /1a)

ウ 点滴かん水チューブの設置 分岐器 バーブチューブ ボタンドリッパー かん水用ペグ ストッパーポリエチレンパイプ 1 株ごとに施肥とかん水を行う点滴かん水方式です 給液は袋の脇に設置した 2mm ポリエチレンパイプに 72cm 間隔に取り付けたボタンドリッパー (8L/h 用 ) を介して行います ボタンドリッパーに分岐器を取り付け 4 本のバーブチューブで株もとまで導き かん水用ペグ ( 内 1 本はストッパー ) で滴下してかん水します エ 施肥 かん水制御装置の設置 水分センサにより少量高頻度かん水制御をします 水分センサを袋培地中央に設置して施肥 かん水制御器に接続します 液肥混入ポンプ2 台 ( 原液 2 液用 ) ポンプ排出管をかん水管に直接接続します 自動サンドフィルタ 減圧弁 電磁弁等の設置が必要です 水分センサ 施肥 かん水制御器 2 ミニトマト袋培地栽培システムでの定植無底ポット定植 ポット育苗した苗を定植時に同一サイズの底面のないポット ( 無底ポット ) に入れ替えて 培地上に置くだけです 無底ポットへ入れ替え 9cm ポットを用いる場合 ミニトマトは本葉 5~6 枚までポット育苗し 定植します 無底ポットに入れた苗を定植穴に置きます 定植 撤去時の注意点 無底ポット1つにかん水用ペグを 1 本ずつ培土に届くまで刺し ポットを固定します 差し込みすぎると根がチューブ内に侵入し 詰まりをおこすので 注意が必要です 初作では定植 2~3 日前から 1 穴当たり 2mL のかん水を行い 培土を湿らせておきます 定植前 撤去後の袋培地は pf1.8 で自動かん水しておきます

3 ミニトマトの施肥 かん水管理 施肥かん水はタイマー制御により午前 6 時と午前 1 時に 1 回ずつ 2mL/ 株の設定で行います かん水管理は水分センサ制御により 施肥かん水 1 時間後より日没まで 1 回 2mL/ 株のかん水を行います かん水後 3 分は休止とします ミニトマト袋栽培における促成長期作型 (8 月中旬定植 ) に対応した施肥 かん水基準 生育段階 定植 時期 8 月中旬 株当たり窒素施用量 33.3mg 袋当たり窒素施用量 1mg 液肥原液希釈倍率 3 倍 1 回当たり土壌溶液中 給液量 EC 1mL/ 株 <1.dS/m かん水の目安 手動 (1 回 / 日 ) 液肥原液の参考 : トマト袋培地栽培マニュアル の 5 液肥原液の作成 定植後の根の活着を促します 第 1 開花 第 2 開花 第 3 開花 第 4 開花 第 5 開花 収穫開始 暖房開始 8 月下旬 9 月上旬 9 月中旬 9 月下旬 1 月上旬 1 月中旬 11 月中旬 1~133.3mg 12 月中旬 2 月下旬 2 月上旬 3 月下旬 66.7mg 1mg 133.3mg 166.7mg 166.7mg 2mg 3mg 4mg 5mg 3~4mg 5mg 3 倍 高温期は生育が早いため 施肥量の増加が遅れないようにします 2 倍 15 倍 12 倍 2~15 倍 日射が強くなり かん水量が増大するのと同時に再び施肥量を増加します 12 倍 摘心後は施肥量を除々に減少させます 2mL/ 株 1.~ 3.dS/m 収穫開始期からは収量と品質を両立させるため EC のバランスを保ちます 3.dS/m 特に 厳寒期に 5.dS/m を超える場合は 春先に株がしおれやすくなるため 3.dS/m を超える場合は施肥量を減らします 自動かん水開始 (pf1.8) 夏期高温対策のため 9 月 15 日頃まで かん水時間帯を 24 時間に設定します (Ⅱ 大玉トマトの夏期高温対策参照 ) pf1.5 に変更 pf1.8 に変更 (12 月中旬 ~) pf1.5 に変更 (2 月中旬 ~) pf1.4 に変更 (3 月下旬 ~) 摘心 栽培終了 6 月上旬 7 月上旬 7 月下旬 8 月上旬 133.3mg 1mg mg 4mg 3mg mg 15 倍 2 倍 栽培終了 2 週間前を目安に施肥を止めます 次作の準備のため栽培終了時に EC が 1.dS/m 未満になるように施肥量を調整します <1.dS/m

Ⅱ 大玉トマトの夏期高温対策 8 月定植の作型を想定して開発された袋培地栽培ですが その後 7 月定植の作型へも普及されてきています 7 月定植の作型では夏期の高温にさらされるため 尻腐れ果 芯腐れ果などの生理障害や成長点付近に葉の黄化 奇形などの生育障害が起きることがあり 可販果収量が減少し 問題となります そこで 夏期高温対策を開発しましたので紹介します 従来の夏期高温対策 1 遮光カーテンの利用 2 遮熱シートの利用 新しい夏期高温対策 1 保水性不織布 + 散水 2 2 回に分けての施肥かん水 3 かん水制御時間帯の 24 時間設定 4 遮光カーテンの利用 1 保水性不織布 + 散水 ( 実施時期 : 定植から 9 月 15 日頃まで ) 袋培地を保水性不織布 ( 例商品名ジャムガード ) で覆い そこに散水することにより 日光の反射 気化熱による冷却が期待されます かん水チューブ 水 保水性不織布 温度 ( ) 4 35 保水性不織布 + 散水遮熱シート 無処理 収量 (t/1a) 8 6 4 2 不良果収量 可販果収量 3 : 4: 8: 12: 16: 2: 保水性不織布 + 散水 遮熱シート 無処理 培地温の比較 (28 年 8 月 15 日測定 ) 収量の比較 袋培地を不織布で覆い 散水することにより 無処理や遮熱シートで覆うだけより 日中の最高培地温を無処理に比べて 8.2 下げ 遮熱シートに比べて 4.2 下げます 袋培地を不織布で覆い 散水することにより 無処理や遮熱シートで覆うだけに比較して 生理障害や生育障害を低減させます その結果 収量と可販果収量が増加します

保水性不織布 + 散水の設置方法 定植前に保水性不織布 ( 例 : 商品名 ジャムガード ) を 5 cm幅に切り 袋の両側から不織布の片側を袋の下部に入れ込み 袋をくるむように袋全体を覆います 定植後に ポットの位置でポット幅 (9 cm ) に合わせて ポットの高さ (8 cm ) より深い 12 cmの切り込みを入れ ポットの位置の不織布を折り曲げて 散水が入らないように立てます 両側の重なり部分を不織布が袋に密着するようにホチキスなどで留めます ( 写真上 ) 12cm ホッチキス止め 9cm 散水チューブ ( できるだけ霧状に吐出するもの 例 : 商品名 エバフロー M 型 ) を袋の両側に 15 cmくらい離して設置します 散水は午前 9 時 ~ 午後 7 時の間 3 分毎に 1 袋当たり 2L を 5 分程度で散水します 散水がトマト ( 特に果実 ) に掛からないように注意します 保水性不織布 散水チューブ 22 回に分けての施肥かん水 ( 定植から栽培終了まで ) 従来午前 6 時に 2mL/ 株を施肥かん水 午前に 2 回施肥かん水することにより 培地溶液中の EC が高く推移し 後半の生育も良くなります 新 可販果収量も増加午前 6 時と午前 1 時にし 生育後半での糖分けて各 1mL/ 株を度の上昇も期待でき施肥かん水ます 収量 (t/1a) 8 6 4 2 午前 2 回施肥かん水 慣行 1 回施肥かん水 不良果収量 可販果収量 大玉トマト袋培地栽培における収量の比較 3 かん水制御時間帯の 24 時間設定 ( 定植から 9 月 15 日頃まで ) 従来かん水制御時間帯午前 7 時 ~ 午後 7 時 (5~9 月 ) 新かん水時間 24 時間制御 ( 定植 ~9 月 15 日頃 ) さらに かん水を制御する時間帯を 24 時間とすることで 高温による生育障害の発生を抑えることができ 可販果収量の増加が見込めます 24 時間かん水及び保水性不織布への散水による大玉トマトの尻腐れ果 生育障害発生軽減効果 1~2 の対策 + 24 時間かん水 遮熱シートのみ 尻腐れ果生育障害発生率 (%) 発生率 (%).6 8.6. 21.7 生育障害 : 葉の黄化 柳葉症状 ( 高温によると思われる縮葉症状 ) が現れたもの

Ⅲ トマト袋培地栽培システム導入指針 1 導入による時期別の労働時間の変化 1a 当たり労働時間 ( 時間 ) 3 土耕 25 袋培地 2 15 1 5 1 月 3 月 5 月 7 月 9 月 11 月 大玉トマト袋培地栽培導入による労働時間の変化 大玉 ( 年 2 作 ) では約 1% の労働時間を削減することができます 7 月 8 月の暑い時期の労働時間を短縮できます 1a 当たり労働時間 ( 時間 ) 25 2 15 1 5 土 耕 袋培地 1 月 3 月 5 月 7 月 9 月 11 月 ミニトマト袋培地栽培導入による労働時間の変化 ミニトマトでは約 7% の労働時間を削減することができます 特に 7 月の労働時間が短縮されるため 7 月まで収穫時期を延長することができます 2 導入による費用削減の効果 費用の削減効果を試算すると (1a 当たり 1 作につき ) 1 土耕栽培と比較して省力化が可能な作業と作業時間 育 苗 (34 時間 ) 接木作業の省略 土壌消毒 (4 時間 ) 土壌病害をシャットアウト 耕起 定植準備 (29 時間 ) 袋培地のため耕起不要 定 植 (15 時間 ) 無底ポット定植 かん水 (11 時間 ) 自動 後片付け (14 時間 ) 合計 17 時間の省力化労賃に換算すると 16,5 ( 時給円 1,5 円として ) 1 2 土耕栽培と比較して削減が可能な資材費 土壌消毒 : 5, 円 ( クロルピクリン3~4L) 自根苗 : 144, 円 ( 接木苗購入費 - 自根苗購入費 ) 合計 194, 円 2 1+2=354,5 円の削減が可能

3 高温対策にかかる費用 本マニュアル p.5~6 で紹介した高温対策にかかる費用 (1a 当たり 1 作につき ) 不織布 ( ジャムガード ) 散水チューブ 合計 138,9 円 72, 円 21,9 円 高温対策をしないも時に比較して約 2 トン収量増加が見込まれます 保水性不織布と散水チューブの耐用年数は袋培地と同様 5 年程度見込むことができます 4 袋培地栽培システム導入にかかる費用の目安 袋培地栽培システム (1a あたり 消費税込み ) 資材費のみ 178 万円 ( 研究報告 26) 工事費込み 27 万円 ( 見積もり事例 28) ただし 発泡スチロール代は含まれません 参考ロックウール栽培システム 45 万円 ( 研究報告 26) ロックウール栽培と比較すると 導入費用は 2/3 ですみ 土壌病害から開放されます こんな経営におすすめです! 土壌病害を低コストで回避したい夏期の作業負担を減らしたい 使用済みの培土と袋の処理方法培土 有機物 ( トマトの根 ) を多く含んだ土壌として耕地に投入できます 袋 廃プラスチックとして処分できます ( トマト袋培地マニュアル ( 平成 18 年 2 月発行 ) より ) トマト袋培地栽培マニュアル ( 追補版 ) ~ ミニトマト袋培地栽培 夏期高温対策 導入指針 ~ 平成 23 年 3 月発行愛知県農業総合試験場企画普及部経営情報 G 園芸研究部野菜 G 東三河農業研究所野菜 G お問い合わせ : 農業総合試験場東三河農業研究所野菜グループ ( 44-833 愛知県豊橋市飯村町高山 11-48 TEL:532-61-6235 FAX:532-61-577)