腎盂尿管がんに対する手術 説明および同意書 四国がんセンター泌尿器科 患者氏名 ( ) さん 御本人さんのみへの説明でよろしいですか? ( 同席者の氏名をすべて記載 ) ( ( はい ) ) < 病名 > 腎盂尿管がん ( 右 左 ) 臨床病期 T N M ステージ (Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ) < 治療 > 手術部位 ( 原発巣 転移部位 ) 手術方法 :( 腎尿管全摘除術 尿管部分切除術 ) ( 開腹手術 腹腔鏡手術 ) ( リンパ郭清 : する しない ) < 手術日 > 平成年月日 < 開始時間と予定時間 > < 治療の前に> 腎盂尿管がんに対する手術は腎尿管全摘除術が一般的です この手術は 腎から尿管のすべてを切除します 副腎はがんの進行によっては切除することがあります また 尿管は膀胱内へ続いているため膀胱の一部も切除することになります 尿路上皮がんは異時性 異所性多発することが多いため 画像で腎盂のみあるいは尿管のみにしか病変がなくても腎から尿管まですべてを切除することになります 腎臓は左右に 1 つずつあり 片方の腎臓を摘出してももう一方の腎臓が正常に機能すれば生活上の制限はほとんどありません ただし手術前から腎機能が悪い人は注意が必要です 手術方法は開腹手術と腹腔鏡手術がありますが いずれの手術も全身麻酔下の手術となります 手術方法開腹手術腹腔鏡手術 長所リンパ郭清が確実に行える傷が小さい 1
短所 傷が大きい ( みぞおちから恥 骨まで ) リンパ郭清が不十分になる 尿路上皮がんの中で膀胱がんに関してはリンパ郭清をした方の予後が良くなることが証明されています 一方 同じ尿路上皮がんである腎盂 尿管がんに対するリンパ郭清に関してはまだ結論が出ていません しかし 最近の報告ではリンパ郭清を支持する報告が多く そのため当科ではリンパ郭清が確実に行える開腹手術を行っています 開腹手術の負担が大きく 術前検査でリンパ郭清をしなくても良いと判断された場合には腹腔鏡手術になることもあります 尿管のみあるいは腎盂のみにがんがある場合 尿管部分切除術や腎盂部分切除術が行われることがあります しかし 残った部分に再発する危険性があり 一般的ではありません 診断されたがんが低悪性度でステージも早期であれば再発率も低いのですが 術前に悪性度やステージを正確に診断するのは腎盂尿管がんでは困難です また 腎盂尿管がんでも内視鏡手術 たとえば YAG レーザーなどでの腫瘍焼灼術が試みられていますがこれらもまだ一般的ではありません < 手術方法 > このことから手術方法は ( 腎尿管全摘除術 尿管部分切除術 ) ( 開腹 腹腔鏡 ) を勧めます 開腹 腎尿管全摘除術 腹部の正中を切開し ( みぞおちのところから恥骨まで ) 腹腔内( 腸が包まれている袋 ) にはいります 腎臓は後腹膜腔 ( 腹膜の背中側の領域 ) にありますので 腸を移動させ 腎臓のあるスペースがみえるようにしていきます 腎が確認できると 腎動脈 腎静脈を糸で結紮して切断します 尿管は 膀胱の入り口まで丁寧にはがしていき 膀胱内の尿管口 ( 膀胱の一部 ) を含めて 摘除し腎門部 ます 膀胱は部分的に切除されますので その部分を吸収大静脈周囲糸で縫合します つづいて 大静脈後面リンパ節郭清を行います 腫瘍の場所によって 3 パター大動静脈間ンの郭清範囲があります ( 左右で少し違います ) 下腸間膜動脈 2
腎盂の場合 : 腎門部から下腸間膜動脈までの範囲を郭清します 左は大動脈周囲のみです腎門部が 右の場合は大静脈周囲と大静脈と大静脈大静脈周囲の間も郭清します 上部 中部尿管の場合 : 大静脈後面先ほどの腎盂の場合とよく似ていますが 下大動静脈間方が大動脈分岐部までになります 下部尿管の場合 : 総腸骨骨盤内のリンパ郭清を行います リンパ郭清が終了すると 出血仙骨前面がないことを確認し ドレーン ( 排液チューブ ) を留置し 創外腸骨を閉じて手術を終了します 大動脈分岐部 閉鎖と内腸骨 腹腔鏡 腎尿管全摘除術 横向きの体勢で脇腹 ( 肋骨と骨盤の間 ) に 5-12mm の穴を 4-5 箇所あけ手術を開始します まず 腎を周囲組織から注意深く剥がしていき 腎動脈と腎静脈をみつけます クリップなどを使用して動静脈を切断します 尿管は 中部まで丁寧にはがしていきます ここで腹腔鏡の手術は終了です 腹腔鏡用の穴を閉じます つづいて 仰臥位 ( 仰向け ) になり 下腹部の正中を切開します 創を先ほどの後腹膜腔とつなげて 遊離した腎臓と尿管を創外に出します 尿管の剥離を膀胱に入っているところまですすめて 膀胱内の尿管口 ( 膀胱の一部 ) を含めて 摘除します 膀胱壁は吸収糸で縫合します 出血がないことを確認し ドレーンを留置し 創を閉じて手術を終了します 尿管部分切除術 切除する尿管に近い部位を切開し 尿管に到達します ( ほとんどの場合 下部尿管であり 切開は下腹部になります ) 尿管を丁寧に剥離し 切除範囲を決めます 切除範囲がわかりにくいときは手術中に顕微鏡検査を行うことがあります 切除範囲が小さいときはそのまま尿管どうしを縫合します 切除範囲が大きいときは尿管の距離が不足することがあります このような場合には膀胱周 3
囲を剥離したり 膀胱を引き延ばしたりすることで距離不足を解消します 尿管縫合時にはステント ( 腎盂から膀胱までの尿を通す細い管 ) を挿入します このステントは外来で抜去します ( 約 1 ヶ月後 ) 腫瘍が膀胱に近い場合は尿管切除と膀胱部分切除を行います この場合残った尿管と膀胱を縫合します ( 尿管新吻合 ) < 手術ができない場合 > 腎盂尿管がんの治療は手術が中心になりますが 全身状態が悪く手術ができない症例などに対して BCG 注入療法があります BCG は弱毒化した ( 抗原性を失うことなく病原性を少なくした ) 結核菌で結核予防のための抗結核ワクチンです 膀胱上皮内がんなどには非常に有用で BCG 膀胱内注入は標準的な治療になっています 腎盂尿管がんに対してはまだ研究段階ですが 短期成績の報告では有効率は 70-100% との報告もあります 具体的な方法は 腎盂内にカテーテル ( 細い管 ) を留置し BCG を注入します 注入回数は 6 回が多いですが 1 回投与量や BCG の注入濃度や注入速度なども一般化されておらず 問題点の多い治療法です < 合併症について> 一般的な合併症として次のようなことがあげられます ただしこのような合併症が起こらないよう手術時および術後には十分な注意を払います 1. 出血腎血管から予期せぬ出血が起こると大出血につながります このような場合 輸血が必要になったり 腹腔鏡では開腹手術への移行が必要になったりします 2. 腎尿管全摘摘に変更 ( 尿管部分切除術の場合 ) 尿管の切除が広範囲に及んだ場合 尿管の吻合ができない場合があります 良性疾患であれば小腸の一部を継ぎ足して尿管を縫合する方法もありますが 悪性の場合 再発の危険性や手術中の状況を考え 腎尿管全摘除術に変更します 3. 肺塞栓手術中や術後は血栓 ( 血のかたまり ) ができやすくなります この血栓が肺に流れて詰まってしまうのが肺塞栓です 大きな血栓では呼吸ができなくなり 死に直結します このため 血栓予防として弾力ストッキングを履いてもらい 足には予防する機械を装着します ただし 100% の予防効果はありません 早期離床が大事です 腹腔鏡手術では気腹 ( おなかに二酸化炭素を入れて膨らます ) するため 血栓ができやすくなるのではと心配されていましたが 統計上差は 4
ありません 4. 感染手術部位の感染 ( 腹膜炎 ) 術後肺炎など感染症はいろいろあります 創部感染により 膿がたまった場合 創を開放し膿を出す場合があります 開放創の大きさによっては再縫合が必要になることがあります また感染症の中には 細菌が血液の中に入り重症化する敗血症というのがあり この場合には集中治療室での管理が必要になる場合があります 5. 腸閉塞術後腸の動きが悪くなって腸閉塞になることがあります 腸の癒着を防ぐためにも早期離床が大事です 絶食だけで治るものから 腸へのチューブの挿入の必要なもの 再手術の必要なものと重症度も様々です ときに人工肛門が必要になることもあります 6. 尿漏膀胱を縫合しているため 縫合不全が起こると尿が漏れることがあります 縫合部に緊張がかからないように術後は膀胱カテーテルを挿入し 膀胱が膨らまないようにしています 通常術後 6 日目に造影検査をします 尿漏等なければカテーテルを抜去しますが 尿漏があった場合には カテーテルの抜去を延期します 7. 創部痛 術後の痛みは個人差がありますがしばらく続きます 痛み止めは数種類あるの で効果が無いときはお知らせ下さい 8. 腎機能障害腎臓が2 個あったものが1 個になるため 腎機能が低下します 通常は1 個でも日常生活に支障はありません ただし もともと腎機能が悪い場合などは 腎機能の悪化がすすみ 腎不全に至る場合もあります この場合 血液透析が必要となることがあります 9. 合併切除 臓器損傷手術中に癒着 ( がんが周囲とくっついている ) があると周囲臓器 ( 腸 膵臓 脾臓など ) を一緒に摘出する必要があります また 手術時の操作により周囲臓器に損傷が起こったときも同様です 腹腔鏡手術でこのようなことが起こる 5
と開腹手術に移行します 10. リンパ漏ドレーンからのリンパ液の排出が多いときは ドレーンを抜くのに時間がかかることがあります (1 ヶ月以上のことも ) リンパ節郭清を行ったあとリンパの流れが悪くなり 腹腔内にリンパ液が貯留したり 下肢のリンパ浮腫が出現したりすることがあります 11. 気胸 臓器損傷の一つですが 横隔膜が損傷を受けると気胸 ( 肺が膨らまなくなる ) になります このときは肺を膨らますために肺にチューブが入ります 12. 空気塞栓 ( 腹腔鏡のみ ) 腹腔鏡で行う場合 二酸化炭素を使用して手術操作がしやすいようにスペースを作りますが この二酸化炭素が血管内に大量に入り空気の栓ができてしまうことです 報告はありますが 今までに経験したことはありません 13. 皮下気腫 ( 腹腔鏡のみ ) 炭酸ガスが皮下を広がって術後に痛みを生じることがあります 自然に軽快し ます 14. 治療関連死について手術中や術後に予期しない合併症 たとえば心筋梗塞や脳梗塞などが起こる可能性があります このような場合 当院で対応できなければ救急病院へ転院しなければならないことも考えられます また いろいろな合併症が重なると手術後回復せず 死亡につながるようなことも考えられます < 健康被害が生じた場合について> 予測できなかった重い副作用などの健康被害が生じた場合には 通常の診療と同様に病状に応じた適切な対処をいたしますが 治療費の自己負担分に関してはご自身で負担していただくことになります <ビデオ撮影など> 手術 ( 特に腹腔鏡 ) はビデオ録画し 教育目的でのみ使用しています もちろん個人データの保護には注意し 個人名が外部からわかることはありません また 当院はがん診療拠点病院であるため 外部から手術見学に来られたり 6
新しい手術機器を使用したりすることがあります 手術に影響することは絶対 にありませんのでご協力ください 手術の内容については 手術後にまず家族 の方へ説明します ご本人へは翌日体調が落ち着いてからの説明になります 7
同意書 独立行政法人国立病院機構四国がんセンター 院長殿 治療名 : 腎盂尿管がんに対する手術 < 説明および同意内容 > < 病名 > < 治療 > < 手術日 > < 開始時間と予定時間 > < 治療の前に> < 手術方法 > < 手術ができない場合 > < 合併症 > < 健康被害が生じた場合について> 私は 治療の内容についてそれぞれ説明を受けた上 治療を受けることに同意 いたします 同意日平成年月日 患者氏名 同席者氏名 私は 治療について上記の項目を説明し 同意が得られたことを確認します 確認日平成年月日 医師氏名 同席者氏名 8