1. 眼科領域の主要疾患と 薬物治療 白内障 1
毛様体 隅角 中心窩 水晶体 2
白内障 水晶体は蛋白質 33% 水 66% ミネラル 1% から構成されている この透明な蛋白質は老化に加え 外界の誘発因子 紫外線など により 蛋白分子が大きくなり 水に溶ける性質を失って白濁する また蛋白質の中のアミノ酸の一部は光によって分解され 水晶体が黄色に着色する 水晶体の中にあるビタミンCやグルタチオンなどの物質も減少し ミネラルでは カリウムの減少 ナトリウム カルカルシウムの増加があり 水晶体の濁りの原因となる 初期白内障 成熟白内障 3
白内障 (1) かすんでみえる水晶体の濁りが中心部に及んでくるとかすんでくる 濁りが進行すると かすみも強くなり しだいに物が見えにくくなる (2) まぶしくみえる水晶体の濁り 光がその部分で反射するために光の強い戸外や逆光ではまぶしく 見えにくくなり 中心部に濁りがある場合には 特にまぶしさが強くなる (3) 暗くなると見えにくくなるくくな水晶体は高齢になるとほど黄色に着色してくる これに水晶体の濁りが加わると暗いところで とくに見えにくくなる くくなる 4
白内障 (4) 一時的に近くが見やすくなる水晶体の中心にある核の濁りが強くなると 屈折力が増して 老眼が治ったような状態になり 眼鏡なしでも近くが見えるようになることがあるが 遠くは見えにくくなる 見 (5) 二重 三重に見える水晶体の濁り方によっては 物が2つにも3つにもみえるようになることがある (6) 眼の痛みや充血はない水晶体には神経や血管がないため 痛みや充血はほとんどないが まれに 水晶体の濁りが進んで緑内障になると急に痛みや充血が生じる 5
白内障 白内障の代表的な原因と名称 先天性白内障 : 遺伝 妊娠中の風疹疾患 未熟児 新生児代謝異常などによる白内障 老人性白内障 糖尿病性白内障 : 水晶体の新陳代謝障害による白内障 併発性白内障 : 重篤な眼内疾患に続発する水晶体の栄養障害による白内障 ステロイド白内障 : 副腎皮質ホルモンの連用により水晶体囊の透過性亢進が生じ 混濁をきたす白内障 放射線白内障 : 放射線照射による白内障 6
白内障の薬物療法 ピレノキシン ( カタリン K カリーユニ ) 点眼ジヒドロアザペンタセンジスルホン酸ナトリウム ( ファコリジン ) トリプトファン代謝異常によってキノイド物質が水晶体タンパクに結合するのを阻害 グルタチオン ( タチオン ) 点眼水晶体に多く含まれるグルタチオンが白内障では減少するために投与される ビタミン C の内服水晶体に多く含まれるビタミン C が白内障では減少するために投与される パロチン ( 唾液腺ホルモン ) の内服 パロチン ( 唾液腺ホルモン ) の内服チオプロニンの内服 : 水晶体タンパクの凝集を阻止 7
2. 結膜炎 網膜症について 8
結膜炎 充血や目やにを主症状とする結膜の炎症で 屈折異常とともに多く見かける眼疾患 主な原因はウイルスや細菌による感染とアレルギーであり 外傷や化学薬品による場合もある 感染症による結膜炎は 集団感染など社会的影響を及ぼすため適切な対処が必要となる 網膜症 眼底 ( 網膜 ) に病変を生じ視力障害をきたす眼疾患で おもに糖尿病や高血圧によって発症し それぞれを糖尿病網膜症と高血圧網膜症という 9
疾患と治療 IV 1. 感覚器疾患 眩暈 : めまい 2. 耳鼻科領域の主要疾患 扁桃炎 アデノイド 副鼻腔炎 10 平成 21 年 12 月 18 日
1. 感覚器疾患 眩暈 : めまい 11
眩暈 高齢者における三大愁訴 ( めまい 頭痛 しびれ ) の1つであり その頻度は約 20% である 生理学的には 前庭障害による二次的な運動の幻覚と定義されるが 多くに異なった病態によって生じる症候群である めまい症候群は 平衡感覚の障害により発現するが 平衡感覚は前庭機能と聴覚 視覚 深部感覚 小脳系 自律神経系などと関連していることから 最近では多感覚症候群として位置づけられている 12
耳介 外耳道 耳小骨 ( ツチ骨 キヌタ骨 アブミ骨 ) 半規管鼓膜前庭蝸牛蝸牛窓 ( 正円窓 ) 鼓室 耳管 茎状突起 13
眩暈 めまいには 色々な治療法が奏効せずに訴えの取れにくい症例がある 一方で めまいそのものはめまいそのものは一過性で自然に消失しても 背後に重篤な疾患が潜んでいる場合もあり 単純な疾患として片付けられない 心身症の訴えとしても多い 以上のことから 先入観にとらわれてめまいに対応すると 重大な疾患を見逃しかねないことに注意する必要がある 14
高血圧貧血 15
薬物による眩暈 特定の抗生物質 利尿薬 ( 特にフロセミド ) アス ピリン キニーネなどの薬物が 耳に損傷を与え 聴力と平衡感覚の両方に影響を与える可能性がある こうした薬物のほとんどが 腎臓を通して排出されるが 何らかの腎臓機能低下が起こると 薬物が血液 中に蓄積して 損傷を起こしうるレベルに達する可能しうるレ性が高まる 中でも抗生物質のストレプトマイシンは 聴覚よりも平衡感覚に影響を与える ストレプトマイシン の投与により生じる めまい と平衡感覚の損失はたいてい一時的なものではあるが 深刻で恒久的になる場合もある 16
眩暈の鑑別診断と留意すべき点 めまいの症状と起こり方 その後の経過 随伴する自覚症状の有無と消長 他覚的所見 特に聴力低下や眼振 神経学的異常や循環系の所見などの有無や程度 既往歴や生活歴 中でも耳鼻科疾患をはじめ頭部外傷や高血圧 さらに服用薬物のチェック 反復して起こる場合には その誘因の有無 眩暈の症状からの分類 回転性めまい 回転性めまい 非回転性めまい ( 動揺性めまい ) 17
回転性めまい 自分自身または外界 ( 特に天井や壁など ) がぐるぐると回っていると感じる場合 ( 物が左右や上下に流れるように感じることもある ) 内耳障害や前庭神経炎などの末梢性前庭神経障害 椎骨脳底動脈不全症をはじめとする脳幹部前庭神経核障害などにより急性発作のものが多く しばしば耳鳴り 聴力障害 悪心 嘔吐などを伴う とくに高齢者では脳血管障害の可能性を考慮し 脳神経症状随伴の有無に注意する 18
回転性めまいを伴う代表的な疾患 メニエール病 : 耳鳴りや難聴を伴い 発作を 繰り返す 突発性難聴 : 急に聞こえが極端に悪くなる 前庭神経炎 : 激しいめまいが起こり その後 もふらつきが続いている 中耳炎によるめまい : 昔から中耳炎があり 耳だれが時々ある 椎骨脳底動脈循環不全 : 高血圧症や動脈硬化症がある 小脳や脳幹の出血 19
非回転性めまい 身体の動揺感 足元のふらつき感 船上のような浮動感 エレベータ内のような昇降感 身体が傾斜したり転倒しそうな不安定感などの動揺性めまい 眼前が真っ暗になる感じ 頭から血が引く感じ 立ちくらみなどと表現される失神性めまいなどに分類することができる 動揺性めまい 浮動性めまい 立ちくらみ ( 眼前暗黒感 ) 20
動揺性めまい 頭やからだがグラグラ揺れている またはフラフラする感覚をいう ( 実際に歩くとふらつく感覚も含める ) 回転性めまいを起こす病気でも このような症状を示すこのような症状を示す場合がある この症状は 平行器官がある程度広い範囲で侵された場合に多く 歩行中にフラフラする時には 小脳の障害が原因であることもある 動揺性めまいを伴う代表的な疾患 上記の回転性めまいを起こす病気の慢性期 薬物によるめまい ( 暗闇でフラフラが強く 歩行中に物が揺れて見える ) 聴神経腫瘍 ( いつとはなしに片側の聞こえが悪く 歩くとフラフラする ) 脳幹 小脳梗塞 脊髄小脳変性症 21
浮動性めまい からだがフワフワする感覚 からだが宙に浮いからだが宙に浮いたような感覚 船に乗っているような あるいは雲の上を歩いているような感覚 また なんとなく頭がフワーッとする感覚などをいう 病状が軽い場合にはこの様な症状を示すことがあるが これらの症状だけでは実際の疾患の有無や程度は判断できない このような感覚が長く続く場合には 専門医を受診する 22
立ちくらみ ( 眼前暗黒感 ) 失神型めまい 立ち上がった瞬間にクラクラッとしたり 長くたっていて目の前が暗くなる感覚をいう 子供では時々みられる 低血圧ぎみの場合もこの症状に陥りやすい 最近注意が必要なのは 高血圧症や脳動脈硬化症の患者であり このような患者の血圧が急に低下した場合には 脳梗塞を誘発する危険がある 立ちくらみ ( 眼前暗黒感 ) 失神型めまいを伴う代表的な疾患 起立性調節障害 起立性低血圧症 23
眩暈 ( めまい ) の病変部位からの分類 前庭性めまい 末梢性前庭性めまい 中枢性前庭性めまい 非前庭性めまい 24
前庭性めまい : 末梢性前庭性めまい 典型的な回転性めまいが間欠的に出現し 症状は頭位により増悪する 方向性 左右差のある眼振や耳鳴り 聴力障害を伴うことが多い めまいの程度は激しく 悪心 嘔吐を伴う 原因 1 聴神経 ( 第 Ⅷ 脳神経 ) 障害 前庭神経炎( 全めまい症例の2~3%) 聴神経腫瘍など 2 内耳疾患 メニエール病 ( 全めまい症例の数 %~10%) 突発性難聴( 全めまい症例の数 %) 炎症 ( 中耳炎など ) 薬物( アミノ配糖体系抗生物質 シスプラチン等 )25
前庭性めまい : 中枢性前庭性めまい 頭位の影響を受けない非回転性の動揺感が持続的に出現する 眼振や耳鳴り 難聴を伴わないことが多いが しばしば脳幹症状 ( 嚥下困難 複視など ) や小脳障害 ( 体躯 四肢の失調 歩行困難など ) を伴う 原因 椎骨脳底動脈循環不全 脳幹の脳血管障害 ( 脳梗塞 脳出血など ) 薬物中毒( 抗けいれん薬 : フェニトイン カルバマゼピンなど ) 26
非前庭性めまい 種々の全身疾患が原因で起こるもので 回転感を伴わない身体の動揺感や眼前暗黒感や立ちくらみ 時には動悸などの胸部症状を伴って失神に至る場合もある 低血圧 貧血 低血糖 酸素欠乏 心因性 ( 心身症 うつ病など ) 27
前庭性神経炎 ( 全めまい症例の 2~3%) 上気道感染などに続発して前庭機能の急激で高度な障害によって 激しい回転性めまい 平衡障害 悪心 嘔吐をきたす めまいの程度は メニエール病より強いことが多く 数日間は動けない程の場合がある 症状は徐々に改善するが 体位変換時のめまいや体のふらつきが数週から数ヶ月持続する 大きなめまい発作は単回であるが 軽いめまいが残る場合がある めまいに 難聴や耳鳴りなどの蝸牛症状は伴わない 28
メニエール病 末梢性めまいをきたす代表的疾患 ( 全めまい症例の数 ~10%) 原因 内耳膜迷路内への過剰な内リンパの貯留 ( 内リンパ水腫 ) といわれ 耳鳴りや難聴を伴った回転性のめまい発作を繰り返す またメニエール病の 20-40% は左右両側で生じる ストレスや過労が発作の誘引となる メニエール病の内リンパ水腫の発症機序については不明な点が多い 29
メニエール病 耳の内耳は 骨と膜の二重構造で 膜の内側はリンパ液膜の内側はリンパ液 ( 内リンパ液 ) で満たされているが この内リンパ液がなんらかの原因で過剰になると 内リンパ水腫をつくり 神経を圧迫し めまい 耳鳴り 難聴などのさまざまな症状が現れる 内耳の中には 音を感じる蝸牛や回転運動を感知する三半規管 直線加速度や位置感を感じる耳石など さまざまな器官があり それぞれがリンパ液でつながっているため 多様な症状が現れる 突然 周囲がぐるぐると回転するような激しいめまいとともに吐き気や嘔吐を伴うこともある 初期は めまいの発作時に耳の閉塞感や圧迫感など 耳が詰まったような感じを受けるが 繰り返すうちに耳鳴りや難聴を伴うようになり 発作時以外にも症状が残るようになる 30
メニエール病 : 症状 誘引のない 主に回転性の激しいめまい発作が 20~30 分から長い時は半日程度持続する ( その後 1~2 日間浮動感がある ) めまい発作と前後して耳がつまった感じや 耳鳴り まった感じや 耳鳴り 難聴が一緒に出現する また初期には発作がない場合には聴力が回復するが めまい発作を何回も再発するうちに 聴力は次第に低下し 耳鳴りも持続するようになる めまい発作時には 悪心や嘔吐 冷汗 心悸高進 血圧の変動などの自律神経症状も呈する めまい発作の間隔は患者によって様々で 毎週のように発作を起こす場合も 何年かに 1 回という場合もある 31
耳介 外耳道 耳小骨 ( ツチ骨 キヌタ骨 アブミ骨 ) 半規管鼓膜前庭蝸牛蝸牛窓 ( 正円窓 ) 鼓室 耳管 茎状突起 32