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  遺 伝 の は な し 1

兵庫大学短期大学部研究集録№49

四消化器系 ( 口腔及び歯牙 を除く ) 五血液及び造血器系六腎臓 泌尿器系及び生殖器系 ( 二 ) 心筋障害又はその徴候がないこと ( 三 ) 冠動脈疾患又はその徴候がないこと ( 四 ) 航空業務に支障を来すおそれのある先天性心疾患がないこと ( 五 ) 航空業務に支障を来すおそれのある後天性弁

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中耳疾患とめまい・平衡障害

補聴器販売に関する禁忌 8 項目 の解説 はじめに 難聴の方が 最近 聞こえが悪くなった と感じて補聴器店を訪れたとき しばしば 補聴器をあわせる より先に 診断と治療 が必要な場合があります このような時には できるだけ早く診断と治療を受けることが望ましく まずは耳鼻咽喉科専門医である補聴器相談医

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Part 1 症状が強すぎて所見が取れないめまいをどうするか? 頭部 CT は中枢性めまいの検査に役立つか? 1 めまい診療が難しい理由は? MRI 感度は 50% 未満, さらには診断学が使えないから 3

健康な生活を送るために(高校生用)第2章 喫煙、飲酒と健康 その2

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より詳細な情報を望まれる場合は 担当の医師または薬剤師におたずねください また 患者向医薬品ガイド 医療専門家向けの 添付文書情報 が医薬品医療機器総合機構のホームページに掲載されています

06: 耳鼻咽喉 頭頸部外科コース 1. 耳鼻咽喉 頭頸部外科コースの概説このコースでは 聴器 平衡器 鼻 副鼻腔 口腔 咽頭 喉頭 気管 食道および唾液腺 甲状腺を含む臨床解剖 生理を知り これら器官の疾患の診断および治療法についての概念を習得することにあるが さらにこれら疾患と他臓器疾患との関連

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平成 25 年度 PBLユニット8 運動 感覚器 MEQ 試験問題 ( 症例 ) 本試眼科症例 65 歳男性 右眼視力障害を主訴に外来を受診した 今朝から急に右眼が見えなくなった 左眼はこれまで通り良く見える と述べた 問 1. この患者の右眼の眼底検査で黄斑部に出血がみられた場合にはどの様な疾患が

イコール耳性めまいと早合点していないか? 4 振り返りポイント4 真剣に神経学的所見は探したか? 5 振り返りポイント5 頭部 CT や MRI を過信しすぎていないか? 6 振り返りポイント6 安易に BPPV とゴミ箱診断していないか? 7 振り返りポイント7 患者は歩けるか? 経口摂取ができる

第 2 週目 (8 月 13 日放送分 ) 滲出性中耳炎 Q 小さな子供が 聞きなおしが多く 呼んでも返事をしないことが多いらしく 耳を 痛がることもないという話を聞きました 本当に耳が悪いのでしょうか? A TV や遊びなどに夢中になっていなくても お母さんが呼んでも返事をしないとか 聴きなおすと

日本の糖尿病患者数は増え続けています (%) 糖 尿 25 病 倍 890 万人 患者数増加率 万人 690 万人 1620 万人 880 万人 2050 万人 1100 万人 糖尿病の 可能性が 否定できない人 680 万人 740 万人

10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

二 聴覚又は平衡機能の障害

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主な末梢性めまい ~メニエール病、BPPV~


「             」  説明および同意書

5 直腸診 : 消化管出血による貧血からの起立性失神を疑う場合に施行 6 外傷の有無 : 失神して転倒した際に外傷を合併していないか全身を評価する 検査 12 誘導心電図検査を全例に行う その他に必要に応じて血液検査 心エコー 胸部 X 線写真 頭部単純 CT 大血管造影 CT 脳波 妊娠反応 抗け

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5. 死亡 (1) 死因順位の推移 ( 人口 10 万対 ) 順位年次 佐世保市長崎県全国 死因率死因率死因率 24 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 位 26 悪性新生物 350

脳卒中に関する留意事項 以下は 脳卒中等の脳血管疾患に罹患した労働者に対して治療と職業生活の両立支援を行うにあ たって ガイドラインの内容に加えて 特に留意すべき事項をまとめたものである 1. 脳卒中に関する基礎情報 (1) 脳卒中の発症状況と回復状況脳卒中とは脳の血管に障害がおきることで生じる疾患

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インスリンが十分に働かない ってどういうこと 糖尿病になると インスリンが十分に働かなくなり 血糖をうまく細胞に取り込めなくなります それには 2つの仕組みがあります ( 図2 インスリンが十分に働かない ) ①インスリン分泌不足 ②インスリン抵抗性 インスリン 鍵 が不足していて 糖が細胞の イン

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サーバリックス の効果について 1 サーバリックス の接種対象者は 10 歳以上の女性です 2 サーバリックス は 臨床試験により 15~25 歳の女性に対する HPV 16 型と 18 型の感染や 前がん病変の発症を予防する効果が確認されています 10~15 歳の女児および

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認定看護師教育基準カリキュラム

図表 リハビリテーション評価 患 者 年 齢 性 別 病 名 A 9 消化管出血 B C 9 脳梗塞 D D' E 外傷性くも幕下出血 E' 外傷性くも幕下出血 F 左中大脳動脈基始部閉塞 排尿 昼夜 コミュニ ケーション 会話困難 自立 自立 理解困難 理解困難 階段昇降 廊下歩行 トイレ歩行 病

透析看護の基本知識項目チェック確認確認終了 腎不全の病態と治療方法腎不全腎臓の構造と働き急性腎不全と慢性腎不全の病態腎不全の原疾患の病態慢性腎不全の病期と治療方法血液透析の特色腹膜透析の特色腎不全の特色 透析療法の仕組み血液透析の原理ダイアライザーの種類 適応 選択透析液供給装置の機能透析液の組成抗

背部痛などがあげられる 詳細な問診が大切で 臨床症状を確認し 高い確率で病気を診断できる 一方 全く症状を伴わない無症候性血尿では 無症候性顕微鏡的血尿は 放置しても問題のないことが多いが 無症候性肉眼的血尿では 重大な病気である可能性がある 特に 50 歳以上の方の場合は 膀胱がんの可能性があり

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日本内科学会雑誌第98巻第12号

到達目標 家庭医療専門医プログラム ( 研修手帳第 2 版 p.8) I 一般的な症候への適切な対応と問題解決 項目めまい 達成段階 1: 基本的な知識を得た 5: 複雑な病態 状況下で 自らが中心となって対応できた 臨床研修の到達目標 Ⅱ 経験目標 B 経験すべき症状 病態 疾患 11) めまい

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糖尿病は 初めは無症状で経過しますが 血糖値の高い状態が長く続くと口渇 多飲 多尿 体重減少 倦怠感などの症状がみられます 糖尿病は自覚症状が乏しいので 血糖値がある程度改善すると 通院しなくなる人がいます 血液検査を行わなければ糖尿病の状態を知ることはできないので 自覚症状だけに頼ってはいけません


AC 療法について ( アドリアシン + エンドキサン ) おと治療のスケジュール ( 副作用の状況を考慮して 抗がん剤の影響が強く残っていると考えられる場合は 次回の治療開始を延期することがあります ) 作用めやすの時間 イメンドカプセル アロキシ注 1 日目は 抗がん剤の投与開始 60~90 分

盗血症候群について ~鎖骨下動脈狭窄症,閉塞症~

2 4 診断推論講座 各論 腹痛 1 腹痛の主な原因 表 1 症例 70 2 numeric rating scale NRS mmHg X 2 重篤な血管性疾患 表

幻覚が特徴的であるが 統合失調症と異なる点として 年齢 幻覚がある程度理解可能 幻覚に対して淡々としている等の点が挙げられる 幻視について 自ら話さないこともある ときにパーキンソン様の症状を認めるが tremor がはっきりせず 手首 肘などの固縮が目立つこともある 抑うつ症状を 3~4 割くらい

わが国における糖尿病と合併症発症の病態と実態糖尿病では 高血糖状態が慢性的に継続するため 細小血管が障害され 腎臓 網膜 神経などの臓器に障害が起こります 糖尿病性の腎症 網膜症 神経障害の3つを 糖尿病の三大合併症といいます 糖尿病腎症は進行すると腎不全に至り 透析を余儀なくされますが 糖尿病腎症

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障害程度等級表 級別じん臓機能障害 1 級 じん臓の機能の障害により自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの 2 級 3 級 じん臓の機能の障害により家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの 4 級 じん臓の機能の障害により社会での日常生活活動が著しく制限されるもの

複製 転載禁止 The Japan Diabetes Society, 2016 糖尿病診療ガイドライン 2016 CQ ステートメント 推奨グレード一覧 1. 糖尿病診断の指針 CQ なし 2. 糖尿病治療の目標と指針 CQ なし 3. 食事療法 CQ3-2 食事療法の実践にあたっての管理栄養士に

は減少しています 膠原病による肺病変のなかで 関節リウマチに合併する気道病変としての細気管支炎も DPB と類似した病像を呈するため 鑑別疾患として加えておく必要があります また稀ではありますが 造血幹細胞移植後などに併発する移植後閉塞性細気管支炎も重要な疾患として知っておくといいかと思います 慢性

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肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝

2

院内がん登録における発見経緯 来院経路 発見経緯がん発見のきっかけとなったもの 例 ) ; を受けた ; 職場の健康診断または人間ドックを受けた 他疾患で経過観察中 ; 別の病気で受診中に偶然 がん を発見した ; 解剖により がん が見つかった 来院経路 がん と診断された時に その受診をするきっ

虎ノ門医学セミナー

脂質異常症を診断できる 高尿酸血症を診断できる C. 症状 病態の経験 1. 頻度の高い症状 a 全身倦怠感 b 体重減少 体重増加 c 尿量異常 2. 緊急を要する病態 a 低血糖 b 糖尿性ケトアシドーシス 高浸透圧高血糖症候群 c 甲状腺クリーゼ d 副腎クリーゼ 副腎不全 e 粘液水腫性昏睡

様式第 1 号 (2)( 第 2 条関係 ) 総括表 身体障害者診断書 意見書 聴覚 平衡 音声 言語又はそしゃく機能障害用 氏名年月日生男 女 住所 1 障害名 ( 部位を明記 ) 2 原因となった交通 労災 その他の事故 戦傷 戦災 自然災害疾病 外傷名疾病 先天性 その他 ( ) 3 疾病 外

糖尿病経口薬 QOL 研究会研究 1 症例報告書 新規 2 型糖尿病患者に対する経口糖尿病薬クラス別の治療効果と QOL の相関についての臨床試験 施設名医師氏名割付群記入年月日 症例登録番号 / 被験者識別コード / 1/12

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な問診とはいえない 前者は末梢性 後者は中枢性 ( 意識中枢のある脳幹毛様体が虚血を起こす 脳幹 小脳などの中枢性の平衡障害 ) の傾向がいくらかあるという程度 まれに中枢性でも回転性めまいは起こる おかしいと思ったらアンカーを引き上げる それでも問診の入り口では めまいの性状を評価することが多いが

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佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

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(2) レパーサ皮下注 140mgシリンジ及び同 140mgペン 1 本製剤については 最適使用推進ガイドラインに従い 有効性及び安全性に関する情報が十分蓄積するまでの間 本製剤の恩恵を強く受けることが期待される患者に対して使用するとともに 副作用が発現した際に必要な対応をとることが可能な一定の要件

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第1 総 括 的 事 項

第三問 : 認知症の主な症状にどのようなものがあるか 下枠に二つ記入してください 例 ) 同じことを何度も言うなど ( 答えはたくさんあります ) 例 ) ささいなことで怒るなど ( 答えはたくさんあります ) 第四問 : 次の認知症に関する基礎知識について正しいものには を 間違っているものには

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医療が変わるto2020

3) 適切な薬物療法ができる 4) 支持的関係を確立し 個人精神療法を適切に用い 集団精神療法を学ぶ 5) 心理社会的療法 精神科リハビリテーションを行い 早期に地域に復帰させる方法を学ぶ 10. 気分障害 : 2) 病歴を聴取し 精神症状を把握し 病型の把握 診断 鑑別診断ができる 3) 人格特徴

系統看護学講座 クイックリファレンス 2012年 母性看護学

インフルエンザ定点以外の医療機関用 ( 別記様式 1) インフルエンザに伴う異常な行動に関する調査のお願い インフルエンザ定点以外の医療機関用 インフルエンザ様疾患罹患時及び抗インフルエンザ薬使用時に見られた異常な行動が 医学的にも社会的にも問題になっており 2007 年より調査をお願いしております

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

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Transcription:

1. 眼科領域の主要疾患と 薬物治療 白内障 1

毛様体 隅角 中心窩 水晶体 2

白内障 水晶体は蛋白質 33% 水 66% ミネラル 1% から構成されている この透明な蛋白質は老化に加え 外界の誘発因子 紫外線など により 蛋白分子が大きくなり 水に溶ける性質を失って白濁する また蛋白質の中のアミノ酸の一部は光によって分解され 水晶体が黄色に着色する 水晶体の中にあるビタミンCやグルタチオンなどの物質も減少し ミネラルでは カリウムの減少 ナトリウム カルカルシウムの増加があり 水晶体の濁りの原因となる 初期白内障 成熟白内障 3

白内障 (1) かすんでみえる水晶体の濁りが中心部に及んでくるとかすんでくる 濁りが進行すると かすみも強くなり しだいに物が見えにくくなる (2) まぶしくみえる水晶体の濁り 光がその部分で反射するために光の強い戸外や逆光ではまぶしく 見えにくくなり 中心部に濁りがある場合には 特にまぶしさが強くなる (3) 暗くなると見えにくくなるくくな水晶体は高齢になるとほど黄色に着色してくる これに水晶体の濁りが加わると暗いところで とくに見えにくくなる くくなる 4

白内障 (4) 一時的に近くが見やすくなる水晶体の中心にある核の濁りが強くなると 屈折力が増して 老眼が治ったような状態になり 眼鏡なしでも近くが見えるようになることがあるが 遠くは見えにくくなる 見 (5) 二重 三重に見える水晶体の濁り方によっては 物が2つにも3つにもみえるようになることがある (6) 眼の痛みや充血はない水晶体には神経や血管がないため 痛みや充血はほとんどないが まれに 水晶体の濁りが進んで緑内障になると急に痛みや充血が生じる 5

白内障 白内障の代表的な原因と名称 先天性白内障 : 遺伝 妊娠中の風疹疾患 未熟児 新生児代謝異常などによる白内障 老人性白内障 糖尿病性白内障 : 水晶体の新陳代謝障害による白内障 併発性白内障 : 重篤な眼内疾患に続発する水晶体の栄養障害による白内障 ステロイド白内障 : 副腎皮質ホルモンの連用により水晶体囊の透過性亢進が生じ 混濁をきたす白内障 放射線白内障 : 放射線照射による白内障 6

白内障の薬物療法 ピレノキシン ( カタリン K カリーユニ ) 点眼ジヒドロアザペンタセンジスルホン酸ナトリウム ( ファコリジン ) トリプトファン代謝異常によってキノイド物質が水晶体タンパクに結合するのを阻害 グルタチオン ( タチオン ) 点眼水晶体に多く含まれるグルタチオンが白内障では減少するために投与される ビタミン C の内服水晶体に多く含まれるビタミン C が白内障では減少するために投与される パロチン ( 唾液腺ホルモン ) の内服 パロチン ( 唾液腺ホルモン ) の内服チオプロニンの内服 : 水晶体タンパクの凝集を阻止 7

2. 結膜炎 網膜症について 8

結膜炎 充血や目やにを主症状とする結膜の炎症で 屈折異常とともに多く見かける眼疾患 主な原因はウイルスや細菌による感染とアレルギーであり 外傷や化学薬品による場合もある 感染症による結膜炎は 集団感染など社会的影響を及ぼすため適切な対処が必要となる 網膜症 眼底 ( 網膜 ) に病変を生じ視力障害をきたす眼疾患で おもに糖尿病や高血圧によって発症し それぞれを糖尿病網膜症と高血圧網膜症という 9

疾患と治療 IV 1. 感覚器疾患 眩暈 : めまい 2. 耳鼻科領域の主要疾患 扁桃炎 アデノイド 副鼻腔炎 10 平成 21 年 12 月 18 日

1. 感覚器疾患 眩暈 : めまい 11

眩暈 高齢者における三大愁訴 ( めまい 頭痛 しびれ ) の1つであり その頻度は約 20% である 生理学的には 前庭障害による二次的な運動の幻覚と定義されるが 多くに異なった病態によって生じる症候群である めまい症候群は 平衡感覚の障害により発現するが 平衡感覚は前庭機能と聴覚 視覚 深部感覚 小脳系 自律神経系などと関連していることから 最近では多感覚症候群として位置づけられている 12

耳介 外耳道 耳小骨 ( ツチ骨 キヌタ骨 アブミ骨 ) 半規管鼓膜前庭蝸牛蝸牛窓 ( 正円窓 ) 鼓室 耳管 茎状突起 13

眩暈 めまいには 色々な治療法が奏効せずに訴えの取れにくい症例がある 一方で めまいそのものはめまいそのものは一過性で自然に消失しても 背後に重篤な疾患が潜んでいる場合もあり 単純な疾患として片付けられない 心身症の訴えとしても多い 以上のことから 先入観にとらわれてめまいに対応すると 重大な疾患を見逃しかねないことに注意する必要がある 14

高血圧貧血 15

薬物による眩暈 特定の抗生物質 利尿薬 ( 特にフロセミド ) アス ピリン キニーネなどの薬物が 耳に損傷を与え 聴力と平衡感覚の両方に影響を与える可能性がある こうした薬物のほとんどが 腎臓を通して排出されるが 何らかの腎臓機能低下が起こると 薬物が血液 中に蓄積して 損傷を起こしうるレベルに達する可能しうるレ性が高まる 中でも抗生物質のストレプトマイシンは 聴覚よりも平衡感覚に影響を与える ストレプトマイシン の投与により生じる めまい と平衡感覚の損失はたいてい一時的なものではあるが 深刻で恒久的になる場合もある 16

眩暈の鑑別診断と留意すべき点 めまいの症状と起こり方 その後の経過 随伴する自覚症状の有無と消長 他覚的所見 特に聴力低下や眼振 神経学的異常や循環系の所見などの有無や程度 既往歴や生活歴 中でも耳鼻科疾患をはじめ頭部外傷や高血圧 さらに服用薬物のチェック 反復して起こる場合には その誘因の有無 眩暈の症状からの分類 回転性めまい 回転性めまい 非回転性めまい ( 動揺性めまい ) 17

回転性めまい 自分自身または外界 ( 特に天井や壁など ) がぐるぐると回っていると感じる場合 ( 物が左右や上下に流れるように感じることもある ) 内耳障害や前庭神経炎などの末梢性前庭神経障害 椎骨脳底動脈不全症をはじめとする脳幹部前庭神経核障害などにより急性発作のものが多く しばしば耳鳴り 聴力障害 悪心 嘔吐などを伴う とくに高齢者では脳血管障害の可能性を考慮し 脳神経症状随伴の有無に注意する 18

回転性めまいを伴う代表的な疾患 メニエール病 : 耳鳴りや難聴を伴い 発作を 繰り返す 突発性難聴 : 急に聞こえが極端に悪くなる 前庭神経炎 : 激しいめまいが起こり その後 もふらつきが続いている 中耳炎によるめまい : 昔から中耳炎があり 耳だれが時々ある 椎骨脳底動脈循環不全 : 高血圧症や動脈硬化症がある 小脳や脳幹の出血 19

非回転性めまい 身体の動揺感 足元のふらつき感 船上のような浮動感 エレベータ内のような昇降感 身体が傾斜したり転倒しそうな不安定感などの動揺性めまい 眼前が真っ暗になる感じ 頭から血が引く感じ 立ちくらみなどと表現される失神性めまいなどに分類することができる 動揺性めまい 浮動性めまい 立ちくらみ ( 眼前暗黒感 ) 20

動揺性めまい 頭やからだがグラグラ揺れている またはフラフラする感覚をいう ( 実際に歩くとふらつく感覚も含める ) 回転性めまいを起こす病気でも このような症状を示すこのような症状を示す場合がある この症状は 平行器官がある程度広い範囲で侵された場合に多く 歩行中にフラフラする時には 小脳の障害が原因であることもある 動揺性めまいを伴う代表的な疾患 上記の回転性めまいを起こす病気の慢性期 薬物によるめまい ( 暗闇でフラフラが強く 歩行中に物が揺れて見える ) 聴神経腫瘍 ( いつとはなしに片側の聞こえが悪く 歩くとフラフラする ) 脳幹 小脳梗塞 脊髄小脳変性症 21

浮動性めまい からだがフワフワする感覚 からだが宙に浮いからだが宙に浮いたような感覚 船に乗っているような あるいは雲の上を歩いているような感覚 また なんとなく頭がフワーッとする感覚などをいう 病状が軽い場合にはこの様な症状を示すことがあるが これらの症状だけでは実際の疾患の有無や程度は判断できない このような感覚が長く続く場合には 専門医を受診する 22

立ちくらみ ( 眼前暗黒感 ) 失神型めまい 立ち上がった瞬間にクラクラッとしたり 長くたっていて目の前が暗くなる感覚をいう 子供では時々みられる 低血圧ぎみの場合もこの症状に陥りやすい 最近注意が必要なのは 高血圧症や脳動脈硬化症の患者であり このような患者の血圧が急に低下した場合には 脳梗塞を誘発する危険がある 立ちくらみ ( 眼前暗黒感 ) 失神型めまいを伴う代表的な疾患 起立性調節障害 起立性低血圧症 23

眩暈 ( めまい ) の病変部位からの分類 前庭性めまい 末梢性前庭性めまい 中枢性前庭性めまい 非前庭性めまい 24

前庭性めまい : 末梢性前庭性めまい 典型的な回転性めまいが間欠的に出現し 症状は頭位により増悪する 方向性 左右差のある眼振や耳鳴り 聴力障害を伴うことが多い めまいの程度は激しく 悪心 嘔吐を伴う 原因 1 聴神経 ( 第 Ⅷ 脳神経 ) 障害 前庭神経炎( 全めまい症例の2~3%) 聴神経腫瘍など 2 内耳疾患 メニエール病 ( 全めまい症例の数 %~10%) 突発性難聴( 全めまい症例の数 %) 炎症 ( 中耳炎など ) 薬物( アミノ配糖体系抗生物質 シスプラチン等 )25

前庭性めまい : 中枢性前庭性めまい 頭位の影響を受けない非回転性の動揺感が持続的に出現する 眼振や耳鳴り 難聴を伴わないことが多いが しばしば脳幹症状 ( 嚥下困難 複視など ) や小脳障害 ( 体躯 四肢の失調 歩行困難など ) を伴う 原因 椎骨脳底動脈循環不全 脳幹の脳血管障害 ( 脳梗塞 脳出血など ) 薬物中毒( 抗けいれん薬 : フェニトイン カルバマゼピンなど ) 26

非前庭性めまい 種々の全身疾患が原因で起こるもので 回転感を伴わない身体の動揺感や眼前暗黒感や立ちくらみ 時には動悸などの胸部症状を伴って失神に至る場合もある 低血圧 貧血 低血糖 酸素欠乏 心因性 ( 心身症 うつ病など ) 27

前庭性神経炎 ( 全めまい症例の 2~3%) 上気道感染などに続発して前庭機能の急激で高度な障害によって 激しい回転性めまい 平衡障害 悪心 嘔吐をきたす めまいの程度は メニエール病より強いことが多く 数日間は動けない程の場合がある 症状は徐々に改善するが 体位変換時のめまいや体のふらつきが数週から数ヶ月持続する 大きなめまい発作は単回であるが 軽いめまいが残る場合がある めまいに 難聴や耳鳴りなどの蝸牛症状は伴わない 28

メニエール病 末梢性めまいをきたす代表的疾患 ( 全めまい症例の数 ~10%) 原因 内耳膜迷路内への過剰な内リンパの貯留 ( 内リンパ水腫 ) といわれ 耳鳴りや難聴を伴った回転性のめまい発作を繰り返す またメニエール病の 20-40% は左右両側で生じる ストレスや過労が発作の誘引となる メニエール病の内リンパ水腫の発症機序については不明な点が多い 29

メニエール病 耳の内耳は 骨と膜の二重構造で 膜の内側はリンパ液膜の内側はリンパ液 ( 内リンパ液 ) で満たされているが この内リンパ液がなんらかの原因で過剰になると 内リンパ水腫をつくり 神経を圧迫し めまい 耳鳴り 難聴などのさまざまな症状が現れる 内耳の中には 音を感じる蝸牛や回転運動を感知する三半規管 直線加速度や位置感を感じる耳石など さまざまな器官があり それぞれがリンパ液でつながっているため 多様な症状が現れる 突然 周囲がぐるぐると回転するような激しいめまいとともに吐き気や嘔吐を伴うこともある 初期は めまいの発作時に耳の閉塞感や圧迫感など 耳が詰まったような感じを受けるが 繰り返すうちに耳鳴りや難聴を伴うようになり 発作時以外にも症状が残るようになる 30

メニエール病 : 症状 誘引のない 主に回転性の激しいめまい発作が 20~30 分から長い時は半日程度持続する ( その後 1~2 日間浮動感がある ) めまい発作と前後して耳がつまった感じや 耳鳴り まった感じや 耳鳴り 難聴が一緒に出現する また初期には発作がない場合には聴力が回復するが めまい発作を何回も再発するうちに 聴力は次第に低下し 耳鳴りも持続するようになる めまい発作時には 悪心や嘔吐 冷汗 心悸高進 血圧の変動などの自律神経症状も呈する めまい発作の間隔は患者によって様々で 毎週のように発作を起こす場合も 何年かに 1 回という場合もある 31

耳介 外耳道 耳小骨 ( ツチ骨 キヌタ骨 アブミ骨 ) 半規管鼓膜前庭蝸牛蝸牛窓 ( 正円窓 ) 鼓室 耳管 茎状突起 32