Ⅰ はじめに

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2) エネルギー 栄養素の各食事からの摂取割合 (%) 学年 性別ごとに 平日 休日の各食事からのエネルギー 栄養素の摂取割合を記述した 休日は 平日よりも昼食からのエネルギー摂取割合が下がり (28~31% 程度 ) 朝食 夕食 間食からのエネルギー摂取割合が上昇した 特に間食からのエネルギー摂取

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11 平成 21 年度介護予防事業実施状況について 平成 22 年 7 月 大阪市健康福祉局健康づくり担当

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2. 栄養管理計画のすすめ方 給食施設における栄養管理計画は, 提供する食事を中心とした計画と, 対象者を中心とした計画があります 計画を進める際は, それぞれの施設の種類や目的に応じて,PDCA サイクルに基づき行うことが重要です 1. 食事を提供する対象者の特性の把握 ( 個人のアセスメントと栄

Shokei College Investigation into the Physical Condition, Lifestyle and Dietary Habits of the Members of a Boy s Soccer Team and their Families (1) Ph

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小学生のカルシウム摂取量に寄与する食品の検討 小学生のカルシウム摂取量に寄与する食品の検討 小川瑞己 1 佐藤文佳 1 村山伸子 1 * 目的 小学生のカルシウム摂取の実態を把握し 平日と休日のカルシウム摂取量に寄与する食品を検討する 方法 2013 年に新潟県内 3 小学校の小学 5 年生全数 3

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日本スポーツ栄養研究誌 vol 目次 総説 原著 11 短報 19 実践報告 資料 45 抄録


2. 経口移行 ( 経口維持 ) 加算 経口移行 ( 経口維持 ) 計画に相当する内容を各サービスにおけるサービス計画の中に記載する場合は その記載をもって経口移行 ( 経口維持 ) 計画の作成に代えることができる 従来どおり経口移行 ( 経口維持 ) 計画を別に作成してよい 口腔機能向上加算 口腔

ⅩⅩⅩ

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次世代ヘルスケア産業協議会第 17 回健康投資 WG 資料 6 職場における食生活改善の質の向上に向けて 武見ゆかり第 6 期食育推進評価専門委員会委員 ( 女子栄養大学教授, 日本栄養改善学会理事長 )

14栄養・食事アセスメント(2)

13 (参考資料4-5)松下参考人資料(三菱総研)

2214kcal 410g 9.7g 1 Point Advice

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2 経口移行加算の充実 経口移行加算については 経管栄養により食事を摂取している入所者の摂食 嚥 下機能を踏まえた経口移行支援を充実させる 経口移行加算 (1 日につき ) 28 単位 (1 日につき ) 28 単位 算定要件等 ( 変更点のみ ) 経口移行計画に従い 医師の指示を受けた管理栄養士又

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新しい介護食品 の考え方 平成 26 年 3 月 介護食品のあり方に関する検討会議 定義に関するワーキングチーム 平成 25 年 2 月より 介護関係者や学識経験者等による これからの介護食品をめぐる論点整理の会 ( 以下 論点整理の会 という ) を立ち上げ 同年 7 月に論点が取りまとめられた

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別表 有料老人ホームの類型及び表示事項 類型介護付有料老人ホーム ( 一般型特定施設入居者生活介護 ) 介護付有料老人ホーム ( 外部サービス利用型特定施設入居者生活介護 ) 住宅型有料老人ホーム ( 注 ) 健康型有料老人ホーム ( 注 ) 類型の説明介護等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設で


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1102 請求誤りによる実績取り下げ 1109 時効による保険者申立ての取り下げ 1112 請求誤りによる実績取り下げ ( 同月 ) 1129 時効による公費負担者申立ての取り下げ 1142 適正化 ( その他 ) による保険者申立の取り下げ 1143 適正化 ( ケアプラン点検 ) による保険者申

1 発達とそのメカニズム 7/21 幼児教育 保育に関する理解を深め 適切 (1) 幼児教育 保育の意義 2 幼児教育 保育の役割と機能及び現状と課題 8/21 12/15 2/13 3 幼児教育 保育と児童福祉の関係性 12/19 な環境を構成し 個々 1 幼児期にふさわしい生活 7/21 12/

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平成 28 年度介護保険事業状況報告 ( 年報 ) のポイント 1 第 1 号被保険者数 (28 年 3 月末現在 ) (29 年 3 月末現在 ) 3,382 万人 3,440 万人 ( 対前年度 +59 万人 +1.7% 増 ) ( 単位 : 万人 ) 3,500 3,000 2,500 2,0

2 11. 脂肪 蓄 必 12. 競技 引退 食事 気 使 13. 日 練習内容 食事内容 量 気 使 14. 競技 目標 達成 多少身体 無理 食事 仕方 15. 摂取 16. 以外 摂取 17. 自身 一日 摂取 量 把握 18. 一般男性 ( 性. 一日 必要 摂取 把握 19. 既往歴 図

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施策の方向 2 生活機能 身体機能を維持するための高齢者の健康づくり 年齢を重ねても できるだけ長く自立した活力ある生活を営むためには 高齢者の生きがいづくりや社会参加の支援とともに 要支援 要介護状態の主な原因疾患であるロコモティブシンドローム ( 運動器症候群 ) や 脳血管疾患 認知症などの予

まちの新しい介護保険について 1. 制度のしくみについて 東温市 ( 保険者 ) 制度を運営し 介護サービスを整備します 要介護認定を行います 保険料を徴収し 保険証を交付します 東温市地域包括支援センター ( 東温市社会福祉協議会内 ) ~ 高齢者への総合的な支援 ( 包括的支援事業 )~ 介護予

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学校給食摂取基準の活用 学校給食摂取基準は全国平均を示したものであるから その考え方を踏まえた上で 各学校の実態に応じた摂取基準 ( 給与栄養目標量 ) 作成する必要がある EER 算出シートに数字を打ち込めば EER( 推定エネルギー必要量 ) は算出できるが 専門職 ( 管理栄養士 栄養士 )

厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業)


カテゴリー別人数 ( リスク : 体格 肥満 に該当 血圧 血糖において特定保健指導及びハイリスク追跡非該当 ) 健康課題保有者 ( 軽度リスク者 :H6 国保受診者中特定保健指導外 ) 結果 8190 リスク重なりなし BMI5 以上 ( 肥満 ) 腹囲判定値以上者( 血圧 (130 ) HbA1

介護保険制度改正の全体図 2 総合事業のあり方の検討における基本的な考え方本市における総合事業のあり方を検討するに当たりましては 現在 予防給付として介護保険サービスを受けている対象者の状況や 本市におけるボランティア NPO 等の社会資源の状況などを踏まえるとともに 以下の事項に留意しながら検討を

= 掲載済 12 短期入所生活介護 (P107~P121) 13 短期入所療養介護 (P122~P131) 16 福祉用具貸与 (P153~P158) 17 (P159~P170) 18 入居者生活介護 地域密着型入居者生活介護 (P171~P183) 20 介護老人福祉施設 地域密着型介護老人福祉

1 基本健康診査基本健康診査は 青年期 壮年期から受診者自身が自分の健康に関心を持ち 健康づくりに取り組むきっかけとなることを目的に実施しています 心臓病や脳卒中等の生活習慣病を予防するために糖尿病 高血圧 高脂血症 高尿酸血症 内臓脂肪症候群などの基礎疾患の早期発見 生活習慣改善指導 受診指導を実

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01 表紙 老人保健課 - コピー

問 2 次の文中のの部分を選択肢の中の適切な語句で埋め 完全な文章とせよ なお 本問は平成 28 年厚生労働白書を参照している A とは 地域の事情に応じて高齢者が 可能な限り 住み慣れた地域で B に応じ自立した日常生活を営むことができるよう 医療 介護 介護予防 C 及び自立した日常生活の支援が

第43号(2013.5)

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各種健診等の連携についての考え方 一現行制度における各種健診等の連携. 基本健診において生活機能評価を同時実施 () 現在 老人保健法において 65 歳以上の対象者については 生活機能評価を基本健診において同時に実施するよう求めている 同時実施は 本人の利便性 受診率の向上 検査重複の回避に資する

4 月 17 日 4 医療制度 2( 医療計画 ) GIO: 医療計画 地域連携 へき地医療について理解する SBO: 1. 医療計画について説明できる 2. 医療圏と基準病床数について説明できる 3. 在宅医療と地域連携について説明できる 4. 救急医療体制について説明できる 5. へき地医療につ

加算 栄養改善加算 ( 月 2 回を限度 ) 栄養スクリーニング加算 口腔機能向上加算 ( 月 2 回を限度 ) 5 円 重度療養管理加算 要介護 であって 別に厚生労働大が定める状態である者に対して 医学的管理のもと 通所リハビリテーションを行った場合 100 円 中重度者ケア体制加算

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1 栄養成分表示を活用してみませんか? 媒体の内容 1 ページ 導入 ねらい : 栄養成分表示 とは 食品に含まれているエネルギー及びたんぱく質 脂質 炭水化物 食塩相当量などを表示したものであることを理解する 栄養成分表示を見たことがありますか? と問いかけ 普段から栄養成分表示を見ているか 見て

協会けんぽ加入者における ICT を用いた特定保健指導による体重減少に及ぼす効果に関する研究広島支部保健グループ山田啓介保健グループ大和昌代企画総務グループ今井信孝 会津宏幸広島大学大学院医歯薬保健学研究院疫学 疾病制御学教授田中純子 概要 背景 目的 全国健康保険協会広島支部 ( 以下 広島支部

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サービス担当者会議で検討し 介護支援専門員が判断 決定するものとする 通所系サービス 栄養改善加算について問 31 対象となる 栄養ケア ステーション の範囲はどのようなものか 公益社団法人日本栄養士会又は都道府県栄養士会が設置 運営する 栄養士会栄養ケア ステーション に限るものとする 通所介護

「平成30 年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.2)(平成30 年3月28 日)」の送付について【介護保険最新情報Vol.633】(厚生労働省老健局老人保健課:H )

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住所地特例に係る事務の見直しの概要について Ⅱ- 資料 2 本事務は 介護予防 日常生活支援総合事業の実施時期に係わらず 平成 27 年 4 月から 全ての市町村において必要な事務であるので 留意されたい 1. 平成 27 年 4 月からの住所地特例に係る事務の見直しの概要 住所地特例の対象施設にサ

保健機能食品制度 特定保健用食品 には その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をすることができる 栄養機能食品 には 栄養成分の機能の表示をすることができる 食品 医薬品 健康食品 栄養機能食品 栄養成分の機能の表示ができる ( 例 ) カルシウムは骨や歯の形成に 特別用途食品 特定保健用

「介護報酬等に係るQ&A Vol.2」(平成12年4月28 日)等の一部改正について(厚生労働省老健局振興課、老人保健課:H26.4.4)【介護保険最新情報Vol.369】

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改定事項 基本報酬 1 入居者の医療ニーズへの対応 2 生活機能向上連携加算の創設 3 機能訓練指導員の確保の促進 4 若年性認知症入居者受入加算の創設 5 口腔衛生管理の充実 6 栄養改善の取組の推進 7 短期利用特定施設入居者生活介護の利用者数の上限の見直し 8 身体的拘束等の適正化 9 運営推

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別紙様式 (Ⅴ)-1-3で補足説明している 掲載雑誌は 著者等との間に利益相反による問題が否定できる 最終製品に関する研究レビュー 機能性関与成分に関する研究レビュー ( サプリメント形状の加工食品の場合 ) 摂取量を踏まえた臨床試験で肯定的な結果が得られている ( その他加工食品及び生鮮食品の場合

目次 < 栄養表示の特徴 > 栄養表示の特徴 1 < 健康 栄養政策と栄養表示の関係 > 健康 栄養政策と栄養表示基準 2 健康 栄養政策と栄養表示 3 健康 栄養政策と栄養表示の関係 4 21 世紀における国民健康づくり運動 ( 健康日本 21) の具体的な推進について 5 < 栄養表示の重要性の

Transcription:

修士論文 ( 要旨 ) 2009 年 1 月 在宅高齢者に対する食生活改善プログラムの検討 指導 : 新野直明教授 国際学研究科老年学専攻 207J6008 久喜美知子

目次 第 1 章 : 研究の背景と目的 1 1-1: 介護保険制度における栄養改善プログラム導入の経緯 1 1-2: 先行研究における食生活改善の目的と効果 1 1-3: 食生活改善プログラムの意義 1 1-4: 目的 1 第 2 章 : 方法 1 2-1: 対象 1 2-2: 介入方法 1 2-3: 調査方法 1 2-4: 解析方法 1 2-5: 倫理的配慮 1 第 3 章 : 結果 1 3-1: 年齢及び身体状況の変化 1 3-2: 基本属性 1 3-3: 食生活アンケートによる食品の摂取頻度 1 1) 食品の摂取頻度 1 2) 食品の摂取頻度の推移 1 3-4: 食事記録用紙から算出した摂取エネルギー及び栄養素 1 1) 食生活改善プログラム群のエネルギー及び栄養素の摂取量 1 2) 食生活改善プログラム群のエネルギー及び栄養素の充足者と適正者 1 第 4 章 : 考察 2 参考文献

第 Ⅰ 章研究の背景と目的平成 17 年度の介護保険制度の改訂にあたっては 要支援と要介護 1の認定者が増大していることから 予防重視型システムへの転換 が図られ 要支援 要介護状態になる前からの介護予防を推進するため 地域支援事業 が創設された 1 ) 創設された介護予防事業に低栄養リスク者に対する栄養改善が導入された 2)3)4)5) 地域高齢者を対象とした栄養改善の介入研究 6)7)8)9)10)11)12) において食生活改善プログラムが実施されているが 現在 特定高齢者施策通所型介護予防事業を対象とした報告は少ない 介護予防活動では高齢者の身体的栄養状態を可能な限り高める改善活動がもとめられ 老化にともなう低栄養リスクを保有する高齢者への予防的介入の意義はきわめて大きい 13) 本研究では介護予防事業として要介護状態になるおそれのある高齢者に対し食生活改善プログラムを実施し高齢者の栄養摂取状況の変化を検討することを目的とした 第 2 章方法食生活改善プログラム群と対照群の2つのグループを対象として設定した 食生活改善プログラム群は平成 19 年 7 月から半年間実施した K 市特定高齢者施策通所型介護予防事業に参加した高齢者 42 名であった 対照群はほぼ同時期にY 市老人福祉センターに通所した高齢者 68 名であった 介入方法としては食生活改善プログラム群には個別栄養相談 3 回 調理実習 3 回 食生活に関する集団の学習会 2 回で1 人に対し合計 8 回の介入を行った 対照群には食生活改善プログラムを実施せず 毎月の老人福祉センターだよりに栄養情報の掲載のほか 月 1 回の試食会と数名の希望者に個別の栄養相談を行った 調査としては 食生活改善プログラム群 対照群の両群に介入前後の食生活アンケート調査 そして食生活改善プログラム群のみに介入前後の食品の摂取量調査を実施した 食生活アンケート内容は1 食品の摂取頻度 2 主観的健康感であった 食品の摂取量調査は栄養計算プログラムで計算し摂取エネルギー及び各種栄養素を算出してグラフ化し個別栄養相談の指導媒体として活用した データの解析にあたっては 食生活アンケートの食品の摂取頻度を 高頻度群 と 低頻度群 の2 件法に整理し 介入前後の高頻度群の維持改善の割合をカイ二乗検定で比較した 食生活改善プログラム群のみ実施した食品の摂取量調査ではエネルギー及び栄養素を算出し 食生活改善プログラム介入前後におけるエネルギーと各種栄養素の摂取量を対応のあるt 検定で比較した また 日本人の食事摂取基準から性別と年齢に基づいて一人ひとりの基準値を算出し 初回時と最終時点における基準値に対する充足者と適正者 ( 食塩のみ ) の割合の変化を比較するため McNemar の検定を行なった 倫理的配慮については食生活改善プログラム群及び対照群ともに内容を十分に説明し文書による同意を得た 第 3 章結果食生活改善プログラム群と対照群ともに BMI に有意な変化は認められなかった 食品の摂取頻度の推移では 食生活改善プログラム群において肉の摂取頻度を維持改善した人が有意に多かった また 乳製品についても維持改善した人が多い傾向となった 食生活改善プログラム群の初回時と最終時点のエネルギー及び各栄養素の摂取量を対応のあるt 検定で分析した結果 たんぱく質 食物繊維 カルシウム 鉄 カリウム 亜鉛 ビタミンCが有意に増加した 初回時と最終時点の充足者と適正者 ( 食塩 ) の割合の検定結果はカリウムとビタミンCの栄養素を充足した者が有意に増加し 鉄を充足した者が増えた傾向にあった 1

第 4 章考察特定高齢者として選定される人が少なく 14) 介護予防が必要な人を対象とした栄養改善プログラムの研究報告が少ないため 今回の食生活改善プログラムの検討の意義は大きいと考えられる 食品の摂取頻度調査の結果では 食生活改善プログラム群は介入後において 肉の摂取頻度を維持改善した人が有意に増加し 乳製品の摂取頻度の維持改善傾向が認められた 肉の摂取頻度については 先行研究において肉の摂取頻度が有意に増加した報告 6)7) と 同様の結果が得られた 食生活改善プログラム群のみ実施した食品の摂取量調査で 最終時点における栄養素摂取量の有意な増加は野菜の摂取量や動物性たんぱく質食品の増加が影響したものと考えられる 栄養不良が存在するときには たんぱく質 エネルギーの不足以外にも微量栄養素の欠乏をともなうことが多い 15) 本調査で 食生活改善プログラム群が対照群に比べて 肉の摂取頻度を維持改善した人が増え 乳製品の摂取頻度も維持改善傾向となり たんぱく質や水溶性ビタミンや亜鉛の摂取量が有意に増加し 水溶性のミネラルやビタミンを充足した人が有意に増えたことは 高齢者が要介護状態にならないための予防策として 今回のプログラムは意義ある介入であったと考えられる 2

参考文献 1) 国民衛生の動向 厚生の指標 臨時増刊 第 54 巻第 9 号通巻第 848 号,2007. 2) 松田朗, 小山秀夫, 杉山みち子 : 平成 7~10 年度厚生労働省老人保健事業推進等補助金高齢者の栄養管理サービスに関する研究報告書, 前国立医療 病院管理研究所, 東京,1996,1997,1998,1999. 3) 杉山みち子 : 要介護における低栄養状態を改善するために 平成 16 年度厚生労働省老人保健事業推進等補助金施設及び居宅高齢者に対する栄養 食事サービスのマネジメントに関する研究報告書, 日本健康 栄養システム学会,377, 東京,2005. 4) 杉山みち子, 遠又靖丈, 多田由紀 : 高齢者保健 福祉 (6) 介護予防における栄養ケア マネジメント, 日本公衆衛生学雑誌,55 (2): 110-111,2008. 5) 杉山みち子 : 改正介護保険制度と栄養ケア マネジメントに関する研究, 栄養学雑誌,65 (2): 55-66,2007. 6) 熊谷修, 柴田博, 渡辺修一郎, 鈴木隆, 芳賀博, 長田久雄, 寺岡加代 : 自立高齢者の老化を遅らせるための介入研究有料老人ホームにおける栄養状態改善によるこころみ, 日本公衆衛生雑誌,46(11):1003-1012,1999. 7) Kumagai S, Watanabe S, Shibata H, Amano H, Fujiwara Y, Yoshida Y, shinkai S, Yukawa H, Yoshida H, Suzuki T:An intervention study to improve the nutritional status of functionally competent community living senior citizens. Geriatrics and Gerontology International, 3:S21-26, 2004. 8) 木村美佳 : 運動と食事改善を組み合わせた老化防止プログラム-TAKE10!, 臨床栄養,109:625-629,2006. 9) 熊谷修 : 自立高齢者の介護予防をめざして- 高齢者の運動と食生活に関する複合プログラム TAKE10! 地域介入の効果の評価 -, イルシー,81:55-68,2005. 10) 渡邊美紀, 湯川晴美 : 高齢者栄養サポートの実際 - 低栄養予防を目的とした地域高齢者の対する栄養サポート, 臨床栄養,104:625-629,2004. 11) 渡邊美紀, 湯川晴美, 吉田英世, 鈴木隆雄 : 低栄養予防プログラムの開発と効果検証 ( 第二報 ) 介入効果に関する検討, 日本公衆衛生雑誌,52:S866,2005. 12) 渡邊美紀 : 介護予防 - 地域高齢者支援の実際 1 低栄養対策, 臨床栄養,108:497-504,2006. 13) 熊谷修 : 高齢者の栄養問題とその解決策 その科学的背景, 臨床栄養,109:618-624,2006. 14) 佐藤浩司, 佐藤秀寿, 鈴木仁, 安村誠司 : 基本健康診査の集団方式による高齢者の生活機能評価の実態, 老年社会科学,30: 90-96,2008. 15) 中屋豊 : 栄養評価における血清アルブミン値の考え方, 臨床栄養,112:453-459,2008.